ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して   作:neo venetiatti

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第20話

他のゴンドラよりもいち早く到着したふたりは、船着き場の端にゴンドラを止めた。

「良かったぁ。間に合った!」

「出るとき、ちょっと手間取ってたから心配しましたよ」

「えへへへ」

アリスのツッコミに灯里は照れ臭そうに笑った。

「ねぇ、ちょっと、ちゃんと説明してよ。私さっきから頭の中がこんがらがって、変になりそうなんだから!」

「藍華ちゃん、まだ聞いてなかったの?」

「ここまできて、でっかい不思議です」

「なんにも聞いてないわよ、わたし」

そんな会話をしている間にゴンドラの列が、船着き場に到着しようとしていた。

そんなに広くない船着き場は、すぐにゴンドラでいっぱいになってしまった。

「あゆみ、ちゃんと仕切ってくれないと困るじゃない?」

「アトラさん」

灯里はその眼鏡をかけた、なつかしい姿に声をかけた。

「お久しぶり。元気でしたか?」

「私もいますよ」

「杏さん」

「そんな挨拶は後回し後回し」

アトラと杏は、自分たちの乗ってきたゴンドラを船着き場につけると、乗船していたお客様に手を差し伸べ、ゴンドラを降りるためエスコートした。

お客様を下ろし終わったゴンドラは、そのまま船着き場の端の方へと移動し、船着き場に対して縦に着けるようにした。そうして、狭い船着き場のスペースを稼ごうという段取りだった。

あゆみはゴンドラを操作するウンディーネたちへの指示に、灯里とアリスは、降りたお客様を中庭に設けられたパーティー会場へと案内した。

「こ、この方たちは・・・誰?」

藍華はみんなが段取りよく事を進めて行く様に呆気にとられていた。

最後のゴンドラが到着し、そこに乗船していたお客様が船着き場に降り立った。

「灯里さん、ありがとう。そしてご苦労様。私たちのわがままに付き合って頂いて、どう感謝していいか」

綺麗に着飾った婦人は、灯里の手を取って微笑んだ。

アリスやあゆみ、その他のウンディーネたちにも感謝の言葉をかけて回っていった。

そして、最後に藍華の前にやってきた。

「あなたが藍華さん?」

「は、はい」

藍華は訳がわからないといった表情だった。

「このカンナレージョ支店の若き支店長さんね。お会いできてうれしいわ」

藍華は、助けを求めるように灯里の方を見た。

「藍華ちゃん、この方がアマンダ婦人です」

「えっ、アマンダ婦人ていったら、あのマンホームの賓客一行の方ってこと?」

「そうだよ」

「そうだよって、そんなあっさり」

それを聞いたアマンダ婦人は笑いだした。

「藍華さん、灯里さんと私たちはお友達なの。ね、灯里さん?」

「はひ、お友達です」

「あんたいつの間にそんな親しくなったの?」

「でっかいお友達づくりの達人です」

「そう、でっかいのよ。私たちの関係は」

楽しそうに話すアマンダ婦人の言葉に、アリスは照れ臭そうにうつむいた。

「藍華さん、驚くのも無理もないわ。あなたには、どうしてもおもてなしパーティーを開いて欲しかったの」

「どうしてですか?」

「私たちの突然の来訪で、ネオ・ヴェネツィアのみなさんの日常に、こんなにも影響を及ぼすだなんて考えてもみなかったの。本当に申し訳ないことをしたとおもってるわ。その上、藍華さんのこの支店の一周年とちょうど重なったことで、記念のお祝いもやめざるを得なくなったと聞いて、このままではいけないと思ったの」

「いえ、そんな・・・」

「藍華さんは気になさらなくていいの。これは私のわがままで頼んだこと。わがままついでに、最後のわがままを、思いきって頼んでみたってわけ。そしてら、何故か話が通っちゃたの」

アマンダ婦人は、茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた。

藍華はどうリアクションしていいかわからず、顔を赤らめた。

「藍華ちゃん、かわいい」

灯里が思わず声をかけた。

「でっかい乙女ですね、藍華先輩」

「あ、あんたたち、こんな時に」

周りから笑いが起こった。

しかしそんな中、辺りがすっかり暗くなった中庭のパーティー会場において、照明に照らされて、ひときわ輝きを放つ存在が姿を現した。

「あらあら楽しそうね」

「アリシアさん!」

アリシアが藍華とアマンダ婦人の前にやってきた。

そして、アマンダ婦人に改めて一礼した。

「本日はお出でいただき、誠にありがとうございます」

「アリシアさん、あなたには本当に感謝しています。あなたのご尽力がなかったら、私は心残りのまま、このネオ・ヴェネツィアを離れなくてはならなかったと思うわ」

「いいえ、私の力だけでは実現できなかったことです。今回は、ゴンドラ協会や水先案内業界に特別のご配慮を頂いて実現できました。そしてグランマにも力を貸していただきました。グランマの口添えがなかったら、何も実現できていません」

「そんなにご謙遜されなくても」

ふたりの会話の間で、藍華はあんぐりと口を開けて立ち尽くしていた。

「藍華ちゃん、大丈夫?そんなに緊張しなくてもいいのよ」

「いや、そう、いわれて、も・・・」

そんな藍華の表情を見て、アマンダ婦人が少し不思議そうに尋ねた。

「改めて思ったのだけど。藍華さん、あなたとどこかでお会いしたことはなかったかしら?」

「えっ、私とですか?」

藍華には、全く覚えがなかった。

「そんな気がしたんだけど、違ったかしら」

そう言って今度はアリシアの方を見た。

「そうなんですか?」

アリシアはそう言うと、藍華とアマンダ婦人を交互に見て微笑んでみせた。

「どうかしたんですか、アリシアさん?」

藍華は気になって聞き返した。

アマンダ婦人もアリシアの表情に何かあるのかと思った。

「アリシアさん、あなた何かご存知なの?」

「いいえ。私は、ふたりがようやく出会えたことがうれしいだけなんです。アマンダ婦人が姫屋の支店にまでお気遣い頂いたことに本当に感謝しています」

藍華はアリシアの言葉に促されるように、アマンダ婦人に改めてお礼の言葉を述べた。

「アマンダ婦人、この度は姫屋のカンナレージョ支店一周年記念のイベントを開催できるようお力添えをいただき、ありがとうございます。この支店の支店長として感謝の気持ちを言わせて下さい。本当ににありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

「藍華さん、協力ができて本当に良かったです。私の方こそありがとうを言わせて下さい」

灯里が目を潤ませながら、パチパチと拍手していた。

それを見てアリスも拍手しはじめた。

すると、周りにいた一行の関係者やゴンドラに待機していたシングルのウンディーネたちからも拍手が起こった。

「さぁ皆さん、堅苦しい挨拶はここまで。せっかくだから大いに楽しみましょう。ね、藍華さん?」

「はい!」

そう言ってアマンダ婦人は、その場にいたみんなをパーティー会場へ促した。

藍華も笑顔で会場にみんなを案内した。

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