ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して   作:neo venetiatti

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第21話

「しまった!」

アマンダ婦人とともにやって来た一行と、その一行を連れてきたシングルのウンディーネたちを見て、藍華は思わず声を発していた。

「どうしたの、藍華ちゃん?」

灯里は、藍華の表情に心配になった。

「藍華先輩、突然どうしたんですか?」

「ここまで人が集まるとは思ってなかった。これじゃあ注文した料理や飲み物が足りない」

「えぇ~そうなの?」

「どうするんですか、藍華先輩?今から注文するとしても、間に合うかどうか」

「でもなんとかしないと」

藍華たちは、心配な表情で会場に集まったたくさんの人たちを見ていた。

すると、エントランスの方で招待客がざわつき始めた。

「え、どうしたの?」

藍華は心配になって、エントランスの方へ向かった。

その途端、先程のざわつきが一段と大きくなり、中から悲鳴にも似た声が上がった。

「何?何があったの?」

しかし、人だかりの真ん中が開いて、そのざわつきの理由がわかった。

「藍華ちゃん、開業一周年おめでとう!」

そこには、華やかなドレスに身を包んだアテナ・グローリーが姿を現した。手にはバラの花束が抱えられていた。

「アテナ・グローリーだ!」

「なぜ彼女のようなスターがここに?」

アテナは藍華の前まで歩みでて、抱えていた花束を差し出した。

すると、周りから一斉に拍手が沸き起こった。

「ありがとうございます。でもどうしてですか?」

「藍華ちゃんがすごくがんばってるって聞いたから、是非お祝いしたいと思ったの」

藍華は目をウルウルさせて、アテナを見つめ返した。

「それに、時間があったら来て欲しいって、アリスちゃんから何度も頼まれていたの。アリスちゃんの頼みなら、必ず来ないといけないと思って」

「後輩ちゃん」

藍華はウルウルさせた瞳でアリスの方に振り返った。

するとみんなの視線が一斉にアリスの方に向けられた。

「な、な、なんですか?私は時間があったらちょっと寄ってみてくださいと言っただけです。あくまで、時間があったらです。こんな派手な登場をお願いした訳じゃありません」

「えぇ~アリスちゃ~ん」

藍華はアリスの方を向いて、一歩踏み出した。

「後輩ちゃん、ありがとう。とっても素敵なプレゼントだわ」

「喜んで頂けたのなら、良かったです」

アリスは顔を赤らめてうつむいた。

「藍華ちゃん、プレゼントはこれだけじゃないのよ」

アテナがそう言うと、エントランスの奥からワゴンに乗せられた料理が次々と運ばれてきた。

「いつも頼んでるケータリングの会社にお願いして来てもらったの」

「わざわざこんなことまでして頂いて、なんて言ったらいいか」

「ううん、大丈夫よ。さっきまでやってたライブ会場からそのまま来たところだから、気を使わなくていいの」

「さっきまでライブって、アテナ先輩、そんなこと言ったなかったですよ」

「ごめんね、アリスちゃん。急に決まった追加コンサートだったの」

「それじゃあ大変だったわねぇ」

今度は別の方から話しかける声がした。

「アリシアちゃん」

周りを囲んでいた人だかりの前にアリシアが立っていた。

「アテナちゃん、ご苦労様」

「ううん、ちゃんと連絡通りに手配したから大丈夫だと思うの」

「連絡通り?」

アリスは眉間にシワを寄せて、アテナをにらんでみせた。

「あ、あのねぇ、これはねぇ・・・アリシアちゃん!」

「あらあら、どうしようかしら」

アリシアは困った顔でアテナを見た。

しかし、その様子を見た藍華は申し訳なさそうにふたりに言った。

「アリシアさん、アテナさん、本当にありがとうございます。ここまでしていただいて、なんて言ったらいいか・・・」

「いいのよ、藍華ちゃん。お祝いよ、お祝い」

パーティー会場は一気に華やいだ雰囲気に包まれた。

藍華は、これまでの紆余曲折のあった出来事が、まるで嘘のような目の前の光景にうれしくて仕方がなかった。しかし、それと同時に不安にもなっていた。こんないいことばかりが続いてもいいのかと。

アテナと談笑していたアリシアのところに、灯里が何か話しかけていた。

そして今度は、藍華のところへやってきた。

「藍華ちゃん」

「何?まだなんかあるの?」

「藍華ちゃんが考えていたおもてなしパーティーのかたち、それが実現できるようになったの」

「おもてなしパーティーのかたちって、何?」

灯里が振り返ると、あゆみ、アトラ、杏が招待客の間に消えていった。

そして今度は、灯里が藍華を船着き場の方へ行くよう促した。

そこには先ほどアマンダ婦人ら一行を運んできたウンディーネたちが、それぞれゴンドラの前後に立ち、いつでもお客様を迎えられるようスタンバイを済ませていた。

「この近くでゴンドラを浮かべて、招待客のみなさんをおもてなしするぐらいだったら構わないと、特別な許可が出たの」

藍華は灯里の説明に、まだ事態が呑み込めずにいた。

「灯里、さっきから思ってたんだけど、なんで私の知らないところで、こんなにも話が進んでいるわけ?しかもサプライズ続きじゃない?一体何がどうなってるやら。パニックよ、パニック!」

「ごめんね、藍華ちゃん。急に話がどんどん進んじゃって、説明してる余裕がなかったの」

「もうしょうがないわねぇ。でも、こんなにも準備するの大変だったでしょ?」

「大変だった!」

「あんたって、つくずく正直なのね。ところで、このあと私はどうすればいいの?」

「そうだった!」

藍華は、灯里から説明を受け、そのまま招待客のところまで戻って声をかけた。

「みなさーん!ここで特別なおもてなしのご用意があります。船着き場の方へどうぞ!」

ざわめきが起こりつつも、少しずつ招待客が船着き場の方へ移動し始めた。

「藍華ちゃん、何があるんだい?」

招待客がたずねてきた。

藍華は、みんなの前に立って説明を始めた。

「ここにあるゴンドラで、しばしのご遊覧をお楽しみ下さい!」

集まった招待客にどよめきが起こった。

「ここで乗せていただけるの?」

「これ、トラゲットで使うゴンドラだよね?」

「もしかして別料金かい?」

みんなが口々に藍華を質問攻めにしていた。

「料金なんて取りません!ただし、今夜限りの特別営業です!」

そう言うと歓声が上がった。

そこにいた人たちの嬉しそうな笑顔を見て、藍華は心の底からやってよかったと思った。

灯里やアリス、支店所属のウンディーネたちも協力して、順番に乗っていただくよう声をかけ、案内した。

ゴンドラの上には、簡易的に椅子が用意されていて、そこに座った招待客たちは、いつもは味わえない優雅なひとときを楽しんでいた。

そのいつもと違うゴンドラの様子は、これがいかに特別な光景なのかを物語っていた。

水面のあちこちに浮かぶゴンドラには、その前後に灯りが取り付けられていて、まるでホタルが飛び交うような光景に見えた。

そして、その夢のような光景に藍華は、言葉を失っていた。

「よかったね、藍華ちゃん」

「素敵なおもてなし、でっかい成功ですね、藍華先輩」

いつの間にか藍華の両側に、灯里とアリスが寄り添うように立っていた。

「ありがとう、灯里、後輩ちゃん。感謝してもしきれない」

「これは、わたしたちや協力してくれたシングルたちからの、せめてものお祝い」

「藍華先輩、以外と人気者だったっていうの、初めて知りました」

「以外っていうのは余計よ、後輩ちゃん。私だって結構人気あるんですからね」

「でもこちらのチャンピオンにはかなわないと思いますけど」

「それは認める。悔しいけど確かにチャンピオンよ」

「えっ、どういうこと?」

「どうもこうもないの!」

「えぇ~藍華ちゃ~ん」

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