ARIA The PIACERE 1 その輝かしい船出を祝して   作:neo venetiatti

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第9話

「ということなんだけど・・・」

灯里は、マンホームからやってきた婦人との出来事を、パンケーキを頬張っている藍華に話して聞かせた。

「へぇ~、そんなことがあったのね。もしかしてあの教会、いわく付きのなんかがあるのかも・・・」

「もう藍華ちゃん、せっかくいい話なのに」

「冗談よ、冗談。でも、歓迎レセプションの間、灯里はそういう出会いをしていたのね」

「そうなんだよねぇ」

「そして、このパンケーキを焼いた」

「うん。藍華ちゃん、おいしい?」

「おいしいわよ。というか、あんたいつの間に腕を上げたの?」

「えへへへ」

「なんか気持ち悪い笑い方」

藍華はパンケーキを食べ終わると、ふう~と軽く息を吐いた。

「ごちそうさま。なんか悪かったわねぇ。灯里が出席できなかった歓迎レセプションの報告をしに来ただけなのに、こんなご馳走になっちゃって」

「ううん、いいの。藍華ちゃんに是非食べてもらって、感想を聞きたかったから」

「とてもおいしかったわよ。でもお客様に出すとなるとねぇ・・・」

「えぇ~、そうなの~?」

「うそよ、うそ」

「もう~、藍華ちゃ~ん」

 

「今日は漫才のお稽古ですか?」

カウンターの外にアリスが立っていた。

「あんた何やってんのよ、そんなところで」

「アリスちゃん」

アリスはにっこりほほえんでふたりを交互に見た。

「何?どうかしたの?」

「アリスちゃん、何かいいことでもあった?」

「いえ、特に何かあったという訳ではないのですが。しいて言えば、ARIAカンパニーの方から何やらおいしそうな、芳ばしい香りが漂って来たので、これは覗いてみないとと思った次第です」

「漂って来たってねぇ、あんた、そんなに遠くまで届く訳ないでしょ?」

「バレましたか?」

「そりゃあそうでしょう」

「アリスちゃん、なんか楽しそうだね」

「そうですか?いつもと変わらないつもりですが」

「あんたまた何か企んでるんじゃないでしょうね?」

「そんな人聞きの悪いこと考えてません」

「ほんと?だってさあ、晃さんと何を話したのか、まだ聞いてないしね」

「じゃあここで話しましょうか?」

「いや、ちょっと待って。それは今度でいいわ」

「晃さんは藍華先輩のことで・・・」

「わぁ~、いいって言ってるでしょ!」

「ふたりのお互いを思いやる気持ちが・・・」

「ちょ、ちょっと待って。なんで灯里が知ってるのよ?」

「だってわたし、全部聞いちゃったもん」

「なんで灯里が知ってて、私が知らないの?」

「そうだ」

アリスは肝心なことを思い出した。

「何よ、いきなり」

「先日ここで言ってたあの件、どうなりました?」

「あの件て何?」

「おもてなしパーティーですよ」

「あぁ、あの件ね」

「私も気になってたんだけど」

「もちろん考えてるわよ。でもマンホームの賓客の歓迎式典やらレセプションやらで、やっと一段落したところなのよねぇ」

「確かにそうだよねぇ」

「なんかおばさん臭いですね」

「ちょっと後輩ちゃん、言っていいことと悪いことがあるわよ」

「これは失礼しました」

「そうだね。姫屋の新プリマとして大切なお仕事だったもんね」

「確かに」

「あんたたち、わざと言ってるでしょ?」

「何が?」

「もう、いいわよ」

藍華は呆れたように二人の顔を見比べた。

「はぁ~」

「でも藍華先輩。私たちウンディーネですから、ここはやはりゴンドラで遊覧観光ていうのはどうでしょうか?」

「それも考えたんだけど、うちは今マンホームの賓客への対応にかなりの比重をおいてるし、そもそもこれは私の個人的アイデアとも言えるでしょ?会社としてどこまで協力してもらえるか、期待はそんなにできないと思うのよねぇ」

「確かに・・・」

「というか、あんたたちは別の会社のウンディーネなんだから、そんなこと頼めるわけないでしょ?」

「そうなんですか?」

「当たり前じゃない」

「じゃあ、あの、人手をさがしてるという件はなんだったんですか?」

「あんたねぇ、それ灯里から聞いたわよ。私があんたたちに手伝わそうとしているんじゃないかって、相当怒ってたらしいじゃない?おまけに私がおかしくなったんじゃないかって」

「だってそうとしか思えませんでしたよ」

「そんなこと頼めるわけないでしょ?みんなそれぞれ忙しい身になって、シングルの時のようなわけにはいかないんだから」

「それはそれでちょっぴり寂しいけど・・・」

「灯里・・・」

藍華は、腕を組んで灯里をじっと見た。

「灯里、やっぱりあんた、ひとりでいるのは良くないと思う。最近ちょっと気になってたのよ。私がARIAカンパニーに来ると、なんだかんだ言いながらも嬉しそうにしてるでしょ?」

「そう・・・かなぁ・・・」

「私もそう思います」

「ほら、後輩ちゃんまでそう感じてるのよ」

「いえ、漫才のクオリティがだんだん上がってきてることがです」

「なっ、何を言ってるのよ、後輩ちゃん。ここは灯里に少しでも早く新しい従業員を雇う気持ちになってもらわないと・・・」

「私ってそんなにおしゃべり、上手になった?」

「いや、だからぁ~」

「はい、突っ込みのタイミングが前よりいい感じだと思います」

「えっ、ちょっと待って。突っ込みは私の方でしょ?」

「以前は藍華先輩が突っ込み担当でしたけど、最近は灯里先輩が突っ込むことが多くなったような気がします」

「ということは、わたしがボケてるってこと?」

「そういうことになります」

「ちょっと待って!ボケは灯里の専売特許でしょ?」

「なんでまた私の話しになるのぉ~?」

「人気者ですね」

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