マチルダに連れられ歩き続けること数時間、二人は大きな門の前に立っていました。門の両側には棍棒を持った半裸の門番が睨みを利かせています。
「さあ、着いたわ。ここがマッチョタウンよ!」
「マッチョタウン?」
「ええ!この国で一番マッチョが集まる町なのよ。大きな見世物小屋もあるわ!」
「そ、そうなんでござるか。……まあ、とにかく休めるならどこでもいいでござる。さすがに歩き疲れたでござるよ」
「元筋は軟弱ね。ここで待ってて、手続きをしてくるわ!」
マチルダは小走りで門番へと近づくと、懐から小さい袋を取り出して渡しました。
門番は中身を確認し一度は首を振りますが、マチルダはさらにもう一つ小袋を取り出しにぎらせます。
「これくらいでどうかしら?」
「………いいだろう。おいっ開けてやれ!」
門番が声をかけると、屈強な男が門の前へと現れます。男は門に向かって一礼した後、扉に手を当てゆっくりと深呼吸をし始めました。
「元筋、よく見ておくのよ!」
男が大きく息を吸うたびにミチ、ミチミチ、ミチ…と音を立てて筋肉が大きく、大きく膨らんでいきます。そして、地面を踏みしめるとウォォォォォーッと叫び声をあげながら扉を押し開き始めました!
「人力って効率悪くないでござるか?」
ミチ、ゴゴゴッ!ミチミチッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
男の体が3倍ほどの質量となった頃、扉は開き切りました。
「あ、あんな大きな扉を…。すごいでござる!」
「ええ、素晴らしいわ!何度見ても壮観ね!」
屈強な男は筋肉を膨張させたまま、門番から小袋を一つ受け取り去っていきます。
元筋とマチルダは目を輝かせながら男の大きな背中を見送りました。
「それじゃあ、中に入りましょう。とりあえず武器屋に行きたいのだけれどいいかしら!」
元筋は頷きマチルダと共に武器屋へ向かうことにしました。
道中、広場で駆け回るこどものマッチョや井戸端会議をしている奥様のマッチョ、巨大な杖を突いて歩くおじいさんのマッチョなど、様々なマッチョが元筋の目を楽しませます。
「気持ち悪いくらいマッチョが多いでござるなぁ」
「この町の水は全部プロテインだから当然ね。ほら、あの川濁っているでしょ?濃度の高いプロテインが流れているのよ!」
そう言ってマチルダは川を指さしました。川の周辺には屈強なマッチョたちが集まっており、その姿は元筋にそびえたつ岩山を想起させます。
マッチョは川に入ると、プロテイン水を互いにかけ合ったのち、首まで浸かり目を閉じました。
「あれは何をしているでござるか?」
「プロテインを肌から吸収しようとしているのよ。もちろん医学的根拠はないわ!でも、マッチョになろうと努力する姿は美しいと思わない?」
元筋は否定も肯定もしませんでした。考え方は人それぞれ、自由であるべきだと思っているからです。