お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~ 作:とんこつラーメン
でも、水着の刑部姫は持ってないんですよね……。
バチカンにてコカビエルとバルパーを殺害した刑部姫は、そのまま日本に戻ろうとしたが、その途中である事を思い出してから進路を変更した。
その場所の事は全く知らなかったが、不思議と感覚的に分かって、いつも通り影を通じて『ソコ』まで向かった。
「ぐぅぅぅ……!」
「う……くっ……!」
『
悪魔や堕天使、天使などの三大勢力を憎悪したり打倒を誓っている者達によって構成された、俗に言うテロリストグループ。
主に
組織は幾つかの派閥に分かれていて、その中で最も力を振るっているのが、自分達を『英雄の子孫』と言っている『英雄派』と呼ばれている者達だった。
無論、そんな彼らをよく思っていない者達も多く、派閥ごとの連携や連絡などは殆ど無い。
それ故に、虚を突かれればあっという間に牙城は崩れ去るのだ。
「はぁ……」
そこは、普段から英雄派の者達が使っている広間なのだが、今は辺り一面に血溜りと大量の死体が出来上がっていた。
溜息を吐きながら、刑部姫は辛うじて生き残っている二人の事を冷めた目で見ていた。
といっても、二人とも完全に虫の息で、このまま何もしなくても確実に死は免れなかった。
「ほんと……慢心し過ぎ。この程度の強襲にも対応できないなんて…どれだけ自分達の実力を過信してるのよ……」
本当は、簡単に対処されてからの戦闘に持ち込まれると思っていた。
だが、現実はこうだった。
生き残っている二人の他はバラバラ死体になっていて、血の海の中に肉片が浮かんでいる。
グロ耐性が無いものが見れば一生レベルのトラウマになるだろう。
「テメェ…何モンだ……何を…しやがった……!」
「あら意外。まだ喋れるんだ」
生き残っているのは巨漢の男と剣士と思われる女性の二人。
男の方が全身から血を流しながら刑部姫を睨み付けるが、立ち上がる程の力も残されていないようで、それだけが彼に出来る必死の抵抗だった。
刑部姫にとっては微風にも等しい行為だが。
「これ見て」
倒れている男に近づき、彼の目の前に座ってから指で摘まんでいる小さな物体を見せつけた。
「これね、超極小の折り鶴なの。分かり易く言うと、米粒の十分の一ぐらいの大きさかな」
「んな……!」
そんな馬鹿な。そんなにも小さい折り鶴がこの世に存在している筈がない。
だが、霞んでゆく彼の目には極小の折り鶴が映っていた。
「普通なら絶対に無理だけど、今の
「まさか……さっき…窓から入ってきた黒い煙みたいなもんは……!」
「全部これ。ほんの少しでも吸い込んだが最後。体の中に入り込んで臓器とかを食い破って外に出てくる。どれだけ体を鍛えても、どれだけ強い神器を持っていても、体の中までは対処できないよね?」
この時、男は生まれて初めて本当の恐怖を感じた。
目の前にいる少女が、こんなにも残酷な事を顔色一つ変えずに実行したのだから。
「ところでさ…君ってヘラクレスの子孫を名乗ってるんでしょ?」
「それが……どうした……!」
この期に及んで何を言いだすのか。
体さえ万全ならば、己の神器を使ってぶち殺すのに。
けど、今の彼の体は腹部から食い破られ、碌に呼吸もままならない状況だ。
こうして喋れるだけでも奇跡に近い。
「その名前…死ぬ前に返上した方がいいよ」
「んだと……!?」
「姫が知ってる大英雄ヘラクレスは、一度でも忠誠を誓った主には死ぬまで仕えるし、仲間の為ならば自分の体を迷わず盾にする勇気がある『黄金の精神』を持つ真の勇者だよ。仮にも、そんなにも素晴らしい英雄の子孫を名乗ってるなら、自分勝手な理由で力を振るおうとか絶対にしない筈だけど?」
「……………」
何も言えない。否、言う事が出来ない。
彼女の言っている事は全て正しく、自分が今までしてきたことを死に際になって振り返ってしまったから。
「そんなにもヒーローごっこがしたいなら、地獄でお友達と好きなだけやってなよ。冥府の神々がそれを許してくれたら…だけど」
「くそ……ったれ……」
その言葉は誰に向けたものなのか。
ヘラクレスの子孫を自称した男は、目尻に涙を貯めながら死亡した。
「ヘ…ヘラ…クレス……」
「んで、其処に倒れてるのはジャンヌの子孫を名乗ってる子…だっけ?」
今度は倒れている少女の方に向かっていく。
彼女は今しがたの同志の死亡する瞬間を目撃し、死の恐怖を感じて歯をカタカタと鳴らしていた。
「あのさぁ…嘘は止めたら?」
「う…そ……?」
「そ。そもそもさ、ジャンヌが死んだのが何歳だったのか、知らない訳じゃないでしょ?」
「あ…あぁ……」
「19歳。ジャンヌ・ダルクは国を守った守護聖人なのにも拘らず、異端者として大人にもなれずに火刑に処された。独房で性的暴行を受けそうにはなったらしいけど、ちゃんと貞操は守り抜いたって聞いてるし、ちゃんと彼女が処女かどうかも調査したらしいしね」
少女は刑部姫の言葉を聞きながら、徐々に自分の体が冷たくなり、意識が遠くなるを感じていた。
自分の全てを、人生を否定するような言葉を聞きながら、少女は心の底からの絶望とは、こんな事を言うのかと、どこか他人事で自分の事を見ていた。
「そこで聞きたいんだけど……処女だった女の子が、一体どうやって子供を産むのかな? 今みたいに医療技術も発達してない時代に。ねぇ…どうやって? ジャンヌの子孫なんでしょ? 教えてよ」
「知ら…ない……。私…は……ただ…そう…聞かさ…れて……」
「それで、他の人達と一緒にヒーローごっこ…じゃなくて、聖女サマごっこをしたって? もうそれ聖女様じゃないでしょ。そもそも、ジャンヌに聖剣を振るったなんて伝承はないし。そんなに暴れたかったんなら『竜の魔女の子孫』とでも名乗ればよかったじゃん。そっちの方が違和感ないよ…って、もう聞こえないか」
「……………」
返事は無く、彼女は既に息絶えていた。
その手には、自分の体を食い破られて出てきた血塗れの子宮が握られていた。
「さて、後は……」
ジャンヌの子孫を自称する少女の死亡を確認した刑部姫は立ち上がり、出入り口である扉の方に視線を向ける。
すると、其処から『別の刑部姫』が何人もやって来た。
「そっちはどう?」
「ちゃんと『旧魔王派』は皆殺しにしてきたよ。もうちょっと苦戦するかと思ってたけど、こっちの事を超見下して慢心しまくってたから、簡単に隙を突いて魔剣で首チョンパ出来た」
「そっちは?」
「目的は達したよ。なんか余計なのまでついてきたけど」
「余計なの?」
三人目の刑部姫が少し横にずれると、そこから中華風の鎧を着た男と、黒い着物を着た猫耳の女性が入ってきた。
「な…なんじゃこりゃぁっ!?」
「うそ……全滅…してる……!?」
余りの惨状に、二人揃って言葉を失っているようだ。
だが、それ以上に自分達を連れてきた存在に驚いていた。
「っていうか、どうして同じ姿形をした奴が何人もいるんだよッ!?」
「君は…何者にゃ……?」
「姫が誰かだなんて。どんなのはどうでもいいでしょ。それよりも、もうこの組織は終わりだよ。残党とかはいるかもだけど、ここにいる連中は君達を除いて皆殺しにしたからね」
「み…皆殺し…って……」
自分の分身を作れる謎の少女によって、いとも簡単に崩壊してしまった自分達の所属する組織。
驚いたと言えば驚いたが、そこに悲観するようなことはなかった。
「……遅かれ早かれ、こうなる事は予想出来てたからな。驚きはしねぇよ。つーか、ここまで徹底的にするなら、どうして俺達は生かしたんだ?」
「二人は殺す必要が無いと思ったから」
「「は?」」
いきなり言われたことに目が点になる二人。
だが、そんな事にはお構いなしに、刑部姫は着物の女性の方を見た。
「あなたが黒歌さん…だよね?」
「わ…私の名前を知ってる…? なんで……」
「それはどうでもいいって言ったよね? それよりも、妹さんに会いたくない?」
「し…白音にっ!? 会えるのっ!?」
「会えるよ。姫について来れば」
「絶対に行くにゃ!!」
言うが早いか、黒歌はすぐに刑部姫の隣に並んだ。
「それと、一つだけお節介させて」
「な…なんにゃ?」
「妹さんと会ったら、隠し事なんてしないで全部話して。自分の過去に何があったかも、自分の気持ちも、今までどうしていたかも、包み隠さすに。色々と文句を言われるかもだけど、それも全て受け入れて、その上で抱きしめてあげて。今のあの子に必要なのは、それだと思うから」
「うん……キツそうだけど…やってみるにゃ……」
「ん……」
姉は強し。
もしも、自分にも姉と呼べる人間がいたら何かが変わっていたのかもしれない。
ふと、そんな事を考えてしまった。
「そっちはどうするの? 斉天大聖の子孫の美猴さん」
「こっちの事も御見通しってか……。嬢ちゃんマジで何者だ? この分身体といい、明らかに普通の人間じゃないだろ」
「まぁね」
否定はしない。する気も無い。全てが事実だから。
(まさかとは思うけど、ネトゲ仲間の『ドラゴンボールさん』って彼の事じゃないよね…?)
そうでないとは信じたい。じゃないと、余りにも残酷だから。
「そうさな……俺は元々、強者と戦う事が目的でここに入ってるからな。他の連中とは違って、其処まで強い愛着は無いんだわ。潰れたら潰れたで、また放浪の旅に出るつもりだしな」
「そう」
「早速、今から宛ても無い旅に出るのも悪くは無いが……」
なにやら意味深にこちらを見てくる美猴。
久し振りに嫌な予感がした。
「少しだけ嬢ちゃんに着いていくわ。今から、どこかに行くつもりなんだろ?」
「…好きにすれば」
「おう。好きにさせて貰う。で、名前は?」
「好きに呼べばいいじゃん」
「確かに『嬢ちゃん』でも悪くは無いけどよ、呼べるなら名前で呼びたいじゃねぇか」
「はぁ……」
この手のタイプは無駄に諦めが悪い。
彼女がこれまでで学んだ数少ない事の一つだ。
仕方がないので、自分の『真名』を名乗る事にした。
「……刑部姫」
「お…刑部姫さまっ!? あの姫路城に隠れ住んでいたという大妖怪のッ!?」
「マジかよ……俺でも知ってるほどの有名人じゃねぇか。そんな奴がここに攻め入るって事は、遂に日本妖怪共が重い腰を上げたって事なのか?」
「……姫はそんなに大層な存在じゃないし、この件に日本妖怪は関係ないよ。これは、姫がしなくちゃいけない事をしてるだけだから」
「「???」」
ぼかした言い方をしたせいで二人は小首を傾げるが、刑部姫は全く気にしない。
今の彼女には本気でどうでもいいから。
「それよりも……」
「どうした?」
廊下に出て奥の方を見つめると、そこから別の刑部姫がゴシック風の服を着た小さな女の子を連れてやって来た。
「その子が?」
「うん。お題目上の頭目である『オーフィス』ちゃんだよ」
オーフィス。
様々な姿を持ち、無限の力を有する最強の龍種。
何故か今は無垢な幼女の姿をしているが、その理由は不明。
だが、容姿に精神も影響しているのか、全く状況も分からないという感じで辺りをキョロキョロとしていた。
「同じのがいっぱい……お前、誰?」
「君を解放しに来た者…って言えば分かるかな」
「解放……?」
「もう分かっているとは思うけど、君は連中に騙されてたんだよ。奴らが欲しかったのは、君が与える能力とネームバリューだけ。本気で協力しようなんて微塵も考えてない」
「我……嘘をつかれてた…?」
「そうだよ。事実、今までに一度でも連中が君の事を手伝おうとしてことがある?」
「ない……」
「でしょ? つまりはそういうことだよ」
彼女の性格上、力よりも言葉で説得した方が遥かに楽だと判断した刑部姫は、久し振りに優しい口調でオーフィスに視線を合わせながら諭した。
「オーフィス。この嬢ちゃんの言ってる事は本当だ。あのバカどもは一度もお前さんの事なんざ見ていねぇ。都合のいい道具程度にしか思ってねぇよ」
「我…静寂……欲しかっただけ…なのに……」
「辛かったね……」
泣きそうになったオーフィスをそっと抱きしめて慰める黒歌。
本当は残酷な事実を告げた自分がするべきなのだろうが、今の自分にそんな人間らしいことをする資格なんてないと思った刑部姫は、黙って二人の事を見つめていた。
「そういえば、オーフィスちゃんを探す途中で小さな男の子を見つけたんだけど……」
「あぁ…例の魔獣を作り出す系の神器を持ってる子ね。どうしたの?」
「流石に殺せなかったから、影を使ってから、あの孤児院の近くに転移させた」
「それが一番妥当…か。今更って感じだけど、最後で最後の一線だけはまだ越えられないからね……」
まだ越えられない。
逆を言えば、越えなくてはいけないと判断した時は躊躇なく越える覚悟があるということだ。
「そろそろ戻ってもいい?」
「いいよ。もうすぐだと思うし……」
周りにいた刑部姫の分身たちが人の形を失い泥に戻ってから、まるでスライムのように刑部姫本体にくっついて戻っていった。
「今のは……」
「あれが分身の正体。姫は基本的にボッチだから割と便利」
「悲しい事を言うなよ……」
今まで一人でこんな事を繰り返してきたのか。
そう思うと、流石の美猴も同情を禁じ得なかった。
「……来る」
徐にオーフィスが来た方向とは逆の廊下の奥を見つけると、そこから誰かが走ってくるような足音が聞こえてきた。
「あいつは……」
それは、漢服を着た黒髪の男。
明らかに普通じゃない事態に焦燥しながらも急いできたようだ。
「曹操……」
美猴が『曹操』と呼んだ男がこちらに気が付いて立ち止まる。
その顔には驚きだけがあった。
「美猴! 黒歌! 一体何があった! これはどういうことだっ!?」
そして、物語の舞台は再び、歴史の裏で変容していく。
思った通り。やっぱり一話じゃ終わらなかった。
曹操とのお話は次回に。
死ぬかどうかは不明ですが。
これからの展開に関する質問です。
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逆ハーレム!
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百合ハーレム!
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どっちもありのドタバタ系ラブコメ