お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~ 作:とんこつラーメン
駒王町 上空
すっかり暗くなった町の空の上に、彼女達は特大の折り紙に乗って飛んでいた。
「冗談だろ…おい……俺って今…紙飛行機に乗ってるんだよな…?」
「私は折り鶴にゃ…まさか、生きてる間にこんな体験が出来るだにゃんて思わなかったにゃ……」
黒歌はともかくとして、歴戦の猛者である美猴ですら今の状況にドン引きしていた。
そんな二人を差し置いて、刑部姫は静かに自分が作り出した折り紙(蝙蝠)に乗っていた。
因みに、オーフィスは刑部姫の背中に捕まる形で一緒にいた。
「あんまり動かない方が良いよ。別にそれ自体は私の魔力を纏わせてるから、そう簡単に壊れたりはしないけど、落ちる可能性があるから。美猴さんも、この高度じゃただでは済まないでしょ?」
「まぁ…な。タイミングを見計らって衝撃を殺せれば無傷で着地も出来るかもしれねぇが……自ら進んでしたいとは思わねぇな……やった事無いし」
「おぉ~…」
幾ら斉天大聖の孫だからと言っても、美猴が継承しているのは武具である『如意金箍棒』だけで、移動用の『筋斗雲』は持っていない。
彼は昔から歩くのが好きだったから。
そして、オーフィスは純粋に空の旅を満喫していた。
「それよりも、本当に着いて来てよかったの?」
「何がだよ?」
「黒歌さんは兎に角として、美猴さんはもう自由の身でしょ? さっきも言ったけど、別についてくる必要は何処にも無いんだよ?」
「そうかもな。けど、ンな事は関係ねぇよ」
ずっと怪訝な顔で疑問を浮かべている刑部姫に対して、美猴はニカッと笑って答えた。
「俺もさっき言っただろ? お前さんに興味が出ちまったんだって。少なくとも、連中と一緒にいるよりはずっとマシだしな」
「……そう。好きにすれば」
「ん。我、好きにする」
「いや…君には何も言ってないんだけど……」
もう何を言っても無駄だと判断した刑部姫は、それ以上、何も言う事は無かった。
前を向き、その目は少し前まで自分が通っていた学校の校舎に向けられる。
「それよりも、もうすぐ到着するよ」
「あそこに…白音がいるの?」
「恐らくね。彼女はグレモリーさんの眷属だし、グレモリーさんは四大魔王の一角の妹だ。まず間違いなく、会談には出席するよ」
まるで推測をしているかのような言い方をしてはいるが、実際には原作知識と照らし合わせているだけだ。
それを思うと、失ったと思っていた後悔の念が浮かび上がってくる。
「にしても、まさか嬢ちゃんがあの『リアス・グレモリー』の同級生だったとはな。世間ってのは存外、狭いもんだ」
「それには同感。同級生と言っても、実際には一回だけ話したことがあるぐらいだけど」
今にして思えば、あの直後に自分の運命が狂い始めたのだ。
否、そうではない。
『彼』が死亡してしまった時点で、この世界の運命自体が根本から狂ってしまった。
「ん…? おい! あそこ!」
「学校から少し離れた場所に、沢山の魔方陣が浮いている…? あれってまさか……」
「間違いねぇ! 曹操の奴が言っていたカテレア達だ! 野郎…じゃなくてババアだけど、もう攻撃準備を整えやがったのか!」
「ど…どうするにゃっ!? このままじゃ白音が!」
思わず冷や汗を掻く美猴と、慌てふためく黒歌を手で制してから、刑部姫はさも当たり前のように言い放った。
「まさか、ここまで展開が早かったのは予想外。けど、それならそれでコッチにも考えがある」
「「考え?」」
「うん」
手の中に泥を生み出し、そこから更に真っ黒な折り紙で作られた手裏剣を持って、それを複数に増やして構える。
「強襲には強襲で応えるだけ。数の上では圧倒的に不利だけど、こっちはその代わりに質で勝ってる」
「へへ……言ってくれるじゃねぇか」
「が…頑張るにゃ!」
不敵な笑みを浮かべて闘志を漲らせる美猴と、今度こそ本当の意味で妹を守る為に決意を固める黒歌。
そんな二人を見て、刑部姫も覚悟を決めた。
「じゃあ、
「任せときな!」
「了解にゃ! 刑部姫様!」
「…………行くよ」
「おー」
こうして、たった三人(+α)の強者による戦いが始まった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
駒王学園の職員会議室内。
普段とは違って、簡易的ではあるが豪華に装飾されたこの場所で、三大勢力の重鎮たちによる会談が繰り広げられていた。
この場にいる三大勢力の代表者は主に4人。
悪魔側からは四大魔王でありリアスの実兄でもある『サーゼクス・ルシファー』と、ソーナの実姉の『セラフォルー・レヴィアタン』。
堕天使の組織『
そして、天界側からは四大天使の筆頭である『ミカエル』が出席している。
それとは別に、サーゼクスの妻であり『女王』、グレモリー家に仕えるメイド長でもある『グレイフィア』と、ミカエルの右腕とまで称されている四大天使の一人である『ガブリエル』も一緒にいた。
そこに駒王学園に通っているグレモリー眷属たちと、レヴィアタン眷属の代表として支取蒼那こと『ソーナ・シトリー』が端の方で椅子に座っている。
更に、壁際で腕を組んで静かに佇んでいる謎の青年もいた。
「なんだ…? 外で見張っている連中が妙に騒がしいような……」
一番最初に気が付いたのはアザゼルだった。
外で会場の守護についている筈の三大勢力たちの戦士たちがざわついているのを感じたのだ。
「まさか、前に僕宛に届けられた封書に書かれていた組織と何か関係が……」
「それは、先程アザゼルが言っていた例の……」
「仕掛けてきやがったか…『
椅子から立ち上がり窓の外を睨み付けるが、そこから見えたのはテロリストたちが攻撃を仕掛けてくる光景ではなく、彼らが次々と謎の存在によって倒れていく姿だった。
「な…なんだぁっ!?」
「誰かが…僕達を守る為に戦っている…?」
「けど、一体誰が……」
彼らは須らく人知を超越した身体能力を持っているので、ここからでもハッキリと相手の顔などが分かる。
だが、見えるからと言って全てが分かるとは限らない。
「戦っているのは三人で……」
「うち二人は女の子…みたいね。もう一人は大きな体の男の子だけど」
グレイフィアとセラフォルーも窓から外を見るが、全く心当たりがない。
一体どこの誰が、自分達の為に戦っているのか。
「う…そ……でしょ……」
「そんな……まさか……」
混乱渦巻く室内で、朱乃と小猫の二人だけが驚愕の表情を浮かべながら静かに立ち上がる。
「きゅ…急に立ち上がってどうしたのよ?」
「小猫ちゃん?」
親友たちのただならぬ様子にリアスと祐斗も思わず立ち上がって二人を見る。
朱乃は体を震わせながら、リアスの方を掴んで大きく叫んだ。
「刑部さんなのよ!!」
「は? え?」
「髪の色とかは変わってるけど間違いないわ! ずっと行方知れずになっていた刑部さんが外で戦っているのよ!!」
「なんですってっ!?」
朱乃に言われて、急いで窓際まで行って空を見上げる。
そこには確かに、自分も一度は話したことのある少女が無機質な顔で誰かと戦っていた。
「本当に…刑部さんだわ……」
「リアス。彼女の事を知っているのかい?」
「えぇ。刑部姫子さん…駒王学園の三年生…つまり、私や朱乃の同級生よ……」
「なんでまた、そんな嬢ちゃんが……」
全く状況が飲み込めない。
少なくとも分かっている事は、自分達がテロリストと思われる連中に襲撃を受け、それにリアスの同級生の少女と仲間達が立ち向かっている事だった。
「姉さま……黒歌姉さまっ!?」
朱乃に続くようにして、小猫もまた窓際まで走っていき外を見る。
彼女の目には、真っ黒で大きな折り鶴に乗って、いなくなったと思っていた自分の姉が必死に戦っている姿。
嬉しいやら、怒りを覚えるやらで、非常に複雑な感情が小猫の胸の中を渦巻く。
「それって、はぐれ悪魔認定されている……」
「はい…そうです。なんで姉さまが刑部先輩と一緒にいるんですか……」
もう訳が分からない。
けど、これだけはハッキリと言えた。
((お願いだから…無事に戻ってきて……))
妹と親友の想いは一つ。
彼女達の無事を只管に祈っていた。
ここで全く注目を浴びていない美猴には同情したくなる。
激戦が繰り広げられている窓の外を静かな目で見ている青年の口に怪しい笑みが浮かぶ。
彼の目にはもう、戦っている三人の姿しか映っていなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「なんなのだ、あの折り鶴は! どれだけ攻撃を加えてもビクともせんぞ!」
「刑部姫様特製の折り鶴が、そう簡単に壊せると思ったら大間違いにゃ! っていうか、いい加減にしつこい!」
仙術と自身の魔力を融合させた魔力弾を放って、後方から迫って来ていた魔術師を狙い撃つ。
相手は防御壁を張って耐えようと試みるが、呆気なく突破されて直撃。
そのまま地面に落下していった。
「おらおらぁっ! そんな生温い攻撃で、この美猴様が止められると思ってんじゃねぇぞ!!」
「く…来るな! 来るな! 来るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐはぁっ!?」
凄まじい速度で伸縮する如意棒に翻弄され、次々と魔術師たちが撃墜されていく。
それはまさしく『無双』。
生半可な練度の魔術師達では相手にすらならなかった。
「小娘風情が!! 真の魔王の直系である、この私に刃向って唯で済むとは思わない事ですね!!」
「はいはい。そーゆーのはどうでもいいから。とっとと死んでよ。オ・バ・サ・ン」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
怒りに身を任せながら密度の高い魔力が練られた冷気の魔弾を放っている褐色肌の女性こそが、今回の主犯である『カテレア・レヴィアタン』その人だった。
彼女と入れ違うようにして刑部姫が『禍の団』の本部に襲撃を仕掛けたので、まだ自分の所属する組織が完全壊滅したことを全く知らない。
刑部姫からすれば、その姿は滑稽にしか見えなかった。
「寒くないけど寒いんだよね。はいそこ。どーん」
「がぁぁっ!? なんで…こんな紙切れなんかに、この私の体が傷つけられるのよ……!」
刑部姫が投げた紙の手裏剣がカテレアの右肩に突き刺さって鮮血を噴き上げる。
凄まじい硬度になった彼女の折り紙は、並大抵の防御では防げない。
ならば避ければいいという話になるが、そう簡単に上手くいけば苦労はしなかった。
「逃げても無駄だから。姫の折り紙たちは何処までも追いかけるよ」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
小さな無数の折り鶴がカテレアを追撃してくる。
しかも、一発でも命中すれば致命傷は免れない。
「ええい! そこのお前! 私の盾になりなさい!!」
「カ…カテレア様っ!? 一体何をっ!? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
もうすぐそこまで折り鶴たちが迫ってきた瞬間、カテレアはすぐ近くにいた部下の魔術師の体を掴んでから自分の前に出して盾にした。
そのまま折り鶴たちは、盾にされた魔術師に全て命中し、彼を見るも無残な姿に変えた。
「この私の盾になれたのです。お前も本望でしょう」
ゴミを捨てるかのようにして、魔術師の死体を地面に放り投げる。
普通ならば、正義感に身を任せて怒るシーンなのだろうが、今の刑部姫にそんな上等な感情は無い。
あるのはただ一つ。『敵』を倒すというシンプルな気持ちだけだった。
「こうなったら仕方がありません。本来ならば、サーゼクスやアザゼル達との戦いで使用するつもりでしたが……」
どこからか黒い蛇を取り出して、大きく口を開けて飲み込もうとするカテレア。
だが、刑部姫はその一瞬の隙を見逃さなかった。
「キツネちゃん!」
刑部姫の影の中にずっと隠れて控えていた折り紙の狐が、カテレアの持っている蛇へと目掛けて飛び出していく。
そのまま、キツネは蛇を咥えてからカテレアの肩を足場にした勢いで主人の元まで戻ってきた。
「オ…オーフィスの蛇がっ!?」
「あんな幼女を騙してから、力だけはちゃっかりと貰おうとか、幾らなんでも虫が良過ぎでしょ」
捕まえた蛇は、そのままキツネの体に巻きつけておくことに。
「もう鬼ごっこは飽きたし、そろそろ終わらせようか」
ここで、刑部姫は十八番となる攻撃を仕掛ける事に。
「おいで……千羽鶴」
まるで、どこぞの英雄王の宝具のようにして、近くの空間から泥と一緒に漆黒の折り鶴軍団が姿を現す。
「何回にするか……どうでもいいか。数えるのも面倒だし」
ずっと外套の下に隠していた黒い籠手を前方に出してから、完全に光を失った宝玉に力を込める。
『Boost! Boost! Boost!…』
適当に何度も何度も倍加を掛ける。
すると、見る見るうちに折り鶴たちが増殖していって、気が付いた時にはカテレアの視界は黒で覆われた。
それはまさに『黒の群れ』。
数えるのも馬鹿らしくなる程の量の折り鶴がそこにはあった。
「大丈夫。殺しはしないよ。仮にも『あの人達』が見ているからね。けど、徹底的に戦闘不能にはなって貰う。それこそ、もう二度と今ある世界を壊そうと考えない程に」
「私こそが真の魔王!! その血脈に連なる者!! 貴様のような誰とも知れない小娘なんぞに倒されて…たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
自分の中にある魔力を全て使って、恐ろしく分厚い氷の障壁を作り出して己の身を守る。
その際に周囲にいた部下達も数名、巻き込まれて氷漬けにされたが、彼女は全く気にも留めていなかった。
「………あほらし」
籠手に覆われた指でカテレアを指すと、折り鶴たちが一斉に襲い掛かった。
とてつもない轟音と衝撃がカテレアの体に降り注ぐが、氷の障壁は無事だった。
「はは…どうだ! この私に逆らったのが貴様の運の尽き……え?」
無事なのは最初だけだった。
どれだけ防御が厚くても、全てを覆い尽くすほどの圧倒的な物量の前では悲しくなる程に無力だった。
氷の障壁に突き刺さっても折り鶴たちは前に進むことを止めず、そのまま氷の中に潜り込んでいく。
それに続くように、次から次へと折り鶴たちが我先にと氷へと突撃する。
するとどうなるか。答えは簡単だった。
ピキ……ピキ……。
僅かな罅が作られ、そこから徐々に障壁全体に向かって走っていく。
「そ…そんな馬鹿な…! バカなことが……! この私が! 真の魔王たるカテレア・レヴィアタンが!! こんな小娘如きに!!」
数秒後、氷の障壁は粉々に砕け散り、あっという間に水蒸気となって蒸発していく。
そうなれば必然的に、完全に無防備となったカテレアに向かって折り鶴たちが襲来する訳で……。
それからの結末は言うまでも無い。
カテレアは悲鳴すら挙げる暇も無く折り鶴たちによって全身を貫かれ、そのまま黒に覆われるようにして地面に落下。
折り鶴たちが刑部姫の指示によって消えた後に残されたのは、全身が血塗れになっている文字通りの瀕死の状態になったカテレアだった。
「あ……がぁ……!」
だが、そこは腐っても魔王の血脈というか、体だけは無駄に頑丈だったようで、辛うじてではあるが、まだ息はあった。
その瞬間を全て見ていた部下の魔術師達は恐れ戦き、次々と逃げていく。
静かに息を吐きながら、それを見ていた刑部姫は、ふと旧校舎がある方向へを視線を向けた。
(さて…と、こっちはなんとか片付いた。旧校舎に向かった私の分身とオーフィスちゃんは、無事に例のハーフな吸血鬼の子を助けられたかな?)
これからの展開に関する質問です。
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逆ハーレム!
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百合ハーレム!
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どっちもありのドタバタ系ラブコメ