お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~ 作:とんこつラーメン
つまりは、そういうことです。
職員会議室の扉を開くと、いきなりの訪問者に部屋にいる全ての者達の視線が一点に集中する。
その中でも、最も驚愕していたのは朱乃と小猫の二人だった。
「お…刑部さん……」
「姫島さん……」
刑部姫としては、もう二度と会うつもりは無かったのだが、黒歌を小猫と合わせようとすれば否が応でも朱乃とも顔を合わせる事になる。
少し前までの彼女ならば迷って懊悩していたかもしれないが、ここまでに既に多くの戦いを経験して精神がすり減って疲弊しきっている刑部姫には、悩みも迷いも存在しない。
ただ只管に『主人公』の代理をするのみだ。
「なんで…なんで貴女がここにいるのっ!? その顔は、その髪は、その格好はどうしちゃったのよっ!? どうして…どうして刑部さんが……こんな……」
「…うん。姫島さんが言いたいことは分かるし、理解も出来る、けど、少しだけ待っててくれないかな」
「え?」
軽く手を挙げて朱乃を制すると、チラっと視線を後ろにやって黒歌に目配せをする。
それを見た彼女は、俯いたまま前に出てきた。
「白音……」
「黒歌姉さま……なんで先輩と一緒にいるんですか…。いえ、それ以前にどうして、あの時に私を……」
案の定、小猫は生き別れとなった姉に向かって自分の抱えていた思いをぶつけようとする。
それはいい。しなくてはいけない。けど、ここではダメだ。
「ちょっと待って」
「な…なんですか?」
「君が何を言おうとしているのかは知らないけど、それはここで言っちゃダメだよ」
「…どういう意味ですか」
「そのまんまの意味。皆に事情を話すにしても、まずは二人だけで話した方が良い」
「姉さまと話す事なんて……」
「ある筈だよ。いっぱいね」
「…………」
暗い顔をして小猫も同じように俯く。
それを見てから、刑部姫はそっと小猫の肩を叩いた。
「別にお姉さんの事を許せとか言うつもりはないよ。そんな甘い事を言う権利なんて
「じゃあ……」
「文句。自分の気持ち。なんでもいいよ。二人で思い切りぶちまければいい。思う存分ね」
ここで、端の方でずっと控えていたソーナの方を見て、ある事を確かめた。
「生徒会長さん」
「な…なんですか?」
「隣の部屋…この時間なら空いてるよね?」
「あ…はい。隣は生徒指導室ですから」
「じゃあ、そこで話せばいい。あそこって確か防音加工がされてたと思うから。誰にも聞かれずに話せると思う。いいですか?」
確認を取る為に、窓際に並んで座っている三大勢力の重鎮たちに視線で許可を促した。
「し…しかし…彼女は仮にもSSS級のはぐれ悪魔……」
「それに関しては、後でちゃんと説明をしますよ。謂れのない誤解だってね」
「誤解…だって?」
「えぇ。姫よりも本人から話した方が信憑性があると思うから、こっちからは何も話すつもりはないけど」
「君はその『誤解』の内容を知っているのかい?」
「えぇ。一応は」
全ては『転生者』であるが故。『原作知識』を持っているが故。
だが、それを話すつもりは毛頭ない。当然だが。
「だから、黒歌さんは大丈夫。安心していい」
「……いいだろう。どちらにしろ、そうしなければ話が進みそうにないしね」
「ありがとう。という訳だから、行ってきなよ」
「…分かりましたにゃ。白音…」
「…はい。こうなったら、全部ぶちまけます。覚悟しておいてください」
「望むところにゃ」
そうして、黒と白の姉妹は久方振りに揃って廊下へと出て行った。
「小猫…大丈夫かしら……」
「きっと大丈夫ですわ」
「朱乃…?」
今までずっと塞ぎ込んでいた朱乃の顔が、ほんの少しだけ明るくなっていた。
それは、行方不明となっていた少女が現れたからなのか。
「…それで、君は一体何者なんだい? リアスが言うには、君は駒王学園の生徒らしいが……」
「話してもいいけど、その前に…ギャスパー君」
「は…はいっ!?」
「そろそろ、グレモリーさん達の方に戻ってもいいよ」
「あ…分かりました……」
刑部姫に言われるがまま、トテトテとギャスパーはリアスの所へと戻っていった。
今までずっと刑部姫たちの背後に隠れていた為、その姿が見えていなかったので、ここで初めて彼女達は彼の存在に気が付いた。
「ギャスパーっ!? なんで貴方がここにいるの? 旧校舎にいた筈じゃ……」
「そうだよ。でも、それが拙かった」
「ど…どういうこと?」
「彼が一人になった所を狙われたから。こいつらに…ね。美猴さん」
「おう」
視線を向けられた美猴はすぐに、肩にずっと抱えていた瀕死のカテレアを床に放り投げた。
その際にカエルが潰れたような声が聞こえたが、カテレアと縁が深いセラフォルー以外は何も反応しなかった。
「カ…カテレアちゃんッ!? なんで彼女がここにっ!? しかも、この怪我はまさか……」
「姫がしました。敵だったので」
「て…敵……?」
刑部姫がカテレアを倒したと聞かさせ、一瞬だけ殺意を剥き出しにしたセラフォルーだったが、すぐに彼女の無機質な目によって萎縮してしてしまった。
それは、恐怖なんて生温い代物じゃない。
もっと別の、根本的な何かだった。
「…おい、まさかとは思うが、こいつは……」
「お察しの通りですよ。アザゼルさん。カテレア・レヴィアタンは三大勢力を裏切って『
「やっぱりな……」
アザゼルは納得した顔で頷き、サーゼクスは苦虫を潰したような顔でカテレアを見る。
「…僕宛に手紙を送ったのは君だったのかな?」
「はい。その様子だと、ちゃんと読んでくれたようですね」
「まぁね。最初は信じられなかったけど、ダメ元で密かに調査を進めたら、想像以上に多くいたよ…『獅子身中の虫』が」
今になって初めて聞かされたことに頭が追いつかず、リアス達は困惑気味になってサーゼクス達の方を見る。
そんな中、朱乃だけが刑部姫の方を見ていた。
「お兄様…どういう事? 調査に手紙って……」
「リアスも知っているだろう? ついこの前、あの『ディオドラ・アスタロト』がいきなり行方不明となった事件を」
「え…えぇ。冥界でもかなりの騒動になったから……」
「その直後に『手紙』が届いてね、それで調べてみた結果……」
机に両膝を付きながら、重々しく告げた。
「ディオドラ・アスタロトは密かに禍の団と通じていた。しかも、個人的に」
「な…なんですってっ!?」
自分の同期がまさか、テロリストに加担をしていたなんて。
彼女もディオドラの悪い噂は非常に多く聞いていはいたが、まさか犯罪組織に属するようになるとは思ってもみなかった。
「すると、そこから芋蔓式にあれよあれよと出てきたよ。禍の団に所属している悪魔たちが」
「そ…そんな……」
余りの衝撃に、リアスは思わず後ずさりをして椅子にもたれ掛る。
まだ頭では信じられないようで、視線がゆらゆらしていた。
「これは全て、僕の怠慢のせいだ……。まさか、ここまでの事になっていたなんて……」
「サーゼクス君だけのせいじゃないわ……、これは、私達四人の責任だよ……」
床の上で未だに息も絶え絶えなカテレアを見ながら、セラフォルーも悲しそうに呟いた。
「つっても、もう意味ねぇけどな」
「なんだって? いや、そもそも君は一体……」
「そういや、まだ自己紹介をしてなかったな。俺は美猴。元は禍の団に属してたけど、今は完全に自由の身となってる」
「おい…ちょっと待て。色々とツッコミ所が満載だったぞ。まずよ、お前はまさかあの斉天大聖の……」
「おう。その孫だ」
「やっぱりかよ……」
情報網だけは人一倍あるアザゼルは、すぐに美猴の正体に辿り着き、痛々しく頭を抱え込んだ。
「元は所属してたって言ってたよな。それはどういう事だ? 普通に抜けたって事か? それとも……」
「潰れたよ。完膚なきまでな」
「「「なっ……!?」」」
自分達が最も危惧していた組織が、知らぬ間に壊滅をしていた。
流石に彼等も、その事実には驚かざるを得なかった。
「まさかとは思うがよ、それをやったのは……」
「この嬢ちゃんだ。しかも、たった一人でな」
「冗談でも笑えねぇぞ……」
こんな虫も殺せなさそうな少女が、単独で自分達すらも苦戦しそうな組織を滅ぼした。
こんな状況でなければ一笑に伏す所だが、それを事実とする出来事が目の前で起きてしまっているので、彼等も馬鹿には出来なかった。
「俺の情報が正しければ、禍の団は主に神器を持った連中で構成されていた筈だが……」
「『英雄派』って呼ばれてた連中だな。それとは別に『旧魔王派』って連中が存在していた」
「禍の団も一枚岩じゃなかったって事か……」
「それどころか、同じ組織内でいつも睨み合っていたぐらいだ。俺は何処にも所属してなかったけどな。因みに、其処に転がってるカテレアも旧魔王派に属してる悪魔の一人だ」
「なんで…カテレアちゃん……」
息はあるが話すことが出来ないカテレアに、言葉に出来ないような気持ちになるセラフォルー。
同じ『レヴィアタン』だからこそ、その思いは大きかった。
「それは本人に直接聞いてください。本当はここで殺す事も出来たけど、それを敢えてしなかったのは、こいつを本当の意味で裁く権利があるのは魔王である貴方達しかいないと思ったからです。このまま冥界に連れて帰ってから拷問をするもよし。尋問で済ませるもよし。それはそちらの裁量にお任せします」
「……そうだね。これは完全に『身から出た錆』だ。僕らの手で決着をつけないといけないだろう」
今までずっと迷っていたサーゼクスの目に決意が満ちる。
どうやら、彼もまた本当の意味で覚悟を決めたようだ。
「一つだけ聞かせてくれ。他の旧魔王派の者達は……」
「全員、私が殺しました。彼女だけを生かしたのは、単純に皆の目の前にいたからに過ぎません。そのまま何も知らないままで終われば、それに越した事は無いですから」
「……そうか。いや、ここは礼を言うべきなんだろうね。本来ならば、これは僕達が真っ先にしなければいけなかった事だ……」
「そうね……」
礼を言うべきだと聞かされても、刑部姫は全く喜ばない。
彼女はそんな物なんて望んではいないから。
「なぁ…俺からもいいか?」
「なにか?」
「…これもまた少し前の事になるんだがよ……うちの組織に属してた『コカビエル』って野郎がいなくなっててな。お前さんは知らねぇか?」
「なんで姫に聞くんですか?」
「俺達とお前さんとは完全に初対面の筈なのに、そっちだけが一方的に俺達の名前や立場なんかを知っていた。どう考えても、一介の女子高生にゃ知り得る筈のない情報だ。しかも、『旧』って枕詞が付くとはいえ、魔王級の相手を単独で倒せるような嬢ちゃんが何も知らないとは思えなくてな」
遠まわしに言ってはいるが、要はアザゼルはこう言いたいのだ。
『お前がコカビエルを殺したのか?』と。
「…あいつは三大勢力間で再び戦争が起きることを望んでいた。だから、排除した。それだけ」
「矢張りか……」
予想はしていた。だが、淡々と業務連絡のように云われると、流石のアザゼルも精神的にクるものがあった。
決して刑部姫を責めようとは思わない。
彼もまた知っていたからだ。普段のコカビエルの言動の数々を。
「彼はバチカンにある教会に潜り込み、そこで『聖剣』を盗み出し、その後に日本の駒王町にやって来てグレモリーさんを殺害するつもりでいた」
「聖剣だってッ!?」
「わ…私を殺害って……」
ここで、ずっと黙って静観していた祐斗が激しく反応した。
それとは逆に、自分の殺害予告がされていた事にリアスが怯える。
「教会から聖剣を盗み、魔王の妹を殺す。その下手人が堕天使の幹部だった。となれば、必然的にどうなるか……」
「戦争まったなし…だな……」
「彼はそのために、ワザと堂々と自分の身を晒して行動していたみたい。だからこそ見つけやすかったんだけど」
「コソコソするのが嫌いなアイツらしいぜ……クソッ!」
自分も決して人の事は言えなかった。
それどころか、最悪の場合はここにいる者達で再び殺し合いをしていたかもしれない。
アザゼルも、これまでの様な軽口は言えなくなり、途端に表情が暗くなる。
「前々から危ない事を言ってる奴ではあったがよ…まさか実行に移すだなんてな……嬢ちゃんには身内の恥を晒したばかりか、尻拭いまでさせちまったって事か……」
「アザゼル。セクハラですよ」
「事実なんだから仕方ねぇじゃねぇか……」
ミカエルからのツッコミにも反応が鈍い。
それ程までにコカビエルの事が堪えているのだろう。
「刑部先輩…でしたよね」
「そういう君は木場祐斗くんだね。どうしたの」
「奪われたっていう聖剣はどうしたんですか?」
「ここにあるけど?」
影の中から五本の剣を取り出してから床に刺す。
だが、そのいずれもが漆黒に染まり、お世辞にも聖剣とは言い難い風貌になっていた。
「これが…聖剣…!?」
「もう『聖剣』じゃないけどね。今のこれは完全な『魔剣』だよ」
「魔剣……僕の神器と同じ……」
自分の両手を見つめながら、祐斗は焦点の合わない目のまま再び、嘗ては聖剣を呼ばれていた物を見上げた。
「というか、そもそもの話、これは最初から聖剣じゃないんだけど。そうだよね、ミカエルさん?」
「なんだってっ!?」
絶対に聞き逃せない事実に、祐斗は一番の叫び声を上げる。
名指しで呼ばれたミカエルに、全員の視線が集中する。
「えぇ……彼女の仰る通りです……」
今度はミカエルが苦い顔をしながら答える番だった。
説明会はまだまだ続くんじゃよ。
そして、その後は赤と白の因縁。
更にその後は…?
これからの展開に関する質問です。
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逆ハーレム!
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百合ハーレム!
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どっちもありのドタバタ系ラブコメ