お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~   作:とんこつラーメン

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他の作品も更新したいと思ってるけど、今は自分の衝動に従った方が良いと思っている今日この頃。

因みに、MGウィングガンダムゼロEW ver.Kを買いました。

カッコ良すぎか。美しすぎか。最高かよ。

完全な、リアル機械天使ですよアレ……。










クライマックス④

「ミカエル様……それはどういう事ですか……」

 

 震える口で恐る恐る尋ねる祐斗。

 自分達がずっと苦しみ続けた元凶の一つが偽物だったなんて信じられない彼は、目の焦点が合わないまま冷や汗を掻いていた。

 

「ミカエルさんからは言い難いだろうから、ここは(わたし)から説明するよ」

「お…刑部先輩が…ですか……」

「うん。多分、ミカエルさんよりも詳しいと思う」

 

 聖剣とは縁も所縁も無さそうな刑部姫が、いきなり自分から『聖剣について話す』と言い出したことで、祐斗は勿論だが、それを同じぐらいに朱乃が驚いていた。

 

「ど…どういうこと? なんで刑部さんがそんな事を知って……」

「…………」

 

 こればかりは言葉で説明できないので、敢えて沈黙で答える事に。

 

「まず質問だけど、『エクスカリバー』って何だと思う?」

「何って、そりゃ……」

「かの騎士王『アーサー王』が所有していたとされる伝説の聖剣じゃないのかい?」

「まぁ…普通はその程度の情報しかないよね……」

 

 仕方がないとはいえ、落胆せずにはいられない。

 だからこそ、これからの事を考えてちゃんと説明をした方が良いと思う訳で。

 

「まず、エクスカリバーは最初から聖剣だったわけじゃない」

「え……?」

「エクスカリバーは、嘗ては『カリバーン』と呼ばれていた」

「カリバーン……」

「ブリテンの王を選定する為の黄金の剣であり、同時に儀礼などでよく使われていた剣でもあった。しかも、まだこの段階じゃ『聖剣』ですらなかったしね」

「聖剣じゃなかった……?」

 

 先程からずっと心臓がドクドクと激しく鼓動を打っている。

 目の前で刑部姫が語る話の一つ一つが、耳から全く離れない。

 

「カリバーンは、その所有者…若かりし頃のアーサーが真の意味で王として完成した時に、初めて聖剣となり、それに相応しい威力を発揮すると言われていた。けど、その前にカリバーンは失われてるけど」

「失われたっ!? なんでっ!?」

「それは知らない。けど、まず間違いなく破壊されたのは確かだろうね。アーサー王だって人間なんだ。どこかで騎士道に反した行為を無意識の内にしていたのかもしれない」

「破壊…された…? じゃあ、それが七本の剣に……」

「それは違うって言ってるじゃん。ちゃんと最後まで話は聞いてよ」

「あ…はい」

 

 結論を急いでしまった祐斗は、刑部姫によって叱られてしまった。

 少しだけ先輩らしいことが出来たかもしれないと、心の中で少しだけ微笑んだ。

 

「破壊されてしまったカリバーンは、その後に湖の貴婦人によって修復されると同時に、星の内部において世界中の人々の『こうあってほしい』という想念によってコーティング、結晶化されて鍛え直された、全ての『聖剣』というカテゴリーの中の絶対的な頂点に未来永劫に渡って君臨し続ける最強にして究極の聖剣なの。その際、湖の貴婦人によってカリバーンは新たな名前を授かる事になった。それが……」

 

 目を細くしてから、静かに祐斗だけを見据える。

 

EX(エクス)Caliburm(カリバー)

「………っ!」

「そもそも、エクスカリバーって直訳すると『カリバーン・改』って意味なんだよ。分かる?」

「は…はい……」

「星の息吹をその刀身に浴びて、人々の願いを乗せた黄金の聖剣が、本当に砕けると、壊れると思っているの? エクスカリバーの破壊は即ち、世界の終りに等しいんだよ? 世界…終わってる?」

「いえ……」

「でしょ?」

 

 ここでようやく納得してくれたのか、祐斗はジッと立ち尽くしながら大きく一回だけ頷いた。

 

「しかも、エクスカリバーには様々な制約も存在している」

「制約…ですか?」

「そう。まず、円卓の騎士たちによる決議による『13の条件の封印』が施されている。エクスカリバーが真の威力を発揮する為には、その『条件』をクリアすることが最低条件なんだ」

「騎士たちの決議による封印……」

「更に言えば、エクスカリバーを初めとする俗に言う『神造兵装』は本来、『地球という惑星を滅ぼす可能性を持った外敵』…即ち、姫たちがよく言っている『宇宙人』や『エイリアン』『インベーダー』的な連中に対する切り札なんだよ」

 

 話が一気に壮大になって、首脳陣が苦しそうに頭を抱えだす。

 

「マジかよ…! エクスカリバーが、まさか『外からの連中』と戦う事を想定した武器だったとか……冗談きついぜ…!」

「逆を言うと、湖の貴婦人はいずれ、地球が必ず『外宇宙からの敵』と遭遇することを予見していた…という事になるのか……」

 

 だが、そんな彼らの事を無視して、刑部姫は説明を続ける。

 端の方で興味深そうに聞き耳を立てている青年の事に気が付きながら。

 

「エクスカリバーの真の力は『世界を救う為の戦い』でしか発揮出来なくて、もし仮に地球上でその威力を発揮しようとしたら、なんらかの形で抑止力が働いてブレーキが掛かってしまう可能性があるらしいよ」

「はぁっ!? エクスカリバーってのは、それ程までの威力を秘めてるって事なのかよっ!?」

「うん。実際、本来の所有者であるアーサー王も、全ての拘束を解除して真の威力を発揮したのは、生涯に一度あるかないかぐらいらしいし」

「「「…………」」」

 

 遂には首脳陣が絶句。

 そんな超威力の一撃が、自分達の知らない所で放たれていた事実に、己らがどれだけ視野の狭い日常を送って来ていたかを思い知らされる。

 

「先輩…教えてください。オリジナルのエクスカリバーは何処にあるんですか?」

「湖の貴婦人の所じゃないの? 史実の通り、ちゃんとアーサー王の死後に返却されてるんだから。少なくとも、どれだけ超常の力を有していても、誰かの手に渡るのは不可能なんじゃないかな」

「それじゃあ……僕らがずっと聖剣だと信じていた物は……」

 

 衝撃の事実に愕然とした祐斗は、その場に膝をついて崩れ落ちる。

 それを見て、不憫だとは思ったが、手を差し伸べようとは思わなかった。

 これは彼の問題であり、彼が自分で解決しなければいけない事だから。

 

「それは、かの研究者『バルパー・ガリレイ』が生み出した『仮想聖剣』です」

「仮想…聖剣…?」

 

 祐斗の疑問に、今度はミカエルが重い口を開いて答えた。

 その顔は何処までも苦しそうにしている。

 

「つまり、あの者の『聖剣ならば、このような力を持っていてもおかしくない』という妄想が詰まった疑似的な剣……偽物の聖剣なのです……」

「にせ…もの…じゃあ……僕達は……」

 

 遂には床に両手をついて四つん這いの格好になり、目を見開いたまま涙を流す。

 許されるならば、彼の体を置きしながら謝罪をしたいところだが、そんな事をしたところで気休めにもならない事は、彼についての全ての事情を知っているミカエルは分かっていた。

 

「…私からも質問をしてもいいですか?」

「なんなりと」

「貴女は…バルパーも殺したのですか?」

「「え?」」

 

 ミカエルの唐突な質問に、朱乃と祐斗が反応する。

 

「殺しました。生かしておくには危険すぎるし、その価値も無いと思ったから」

「そう…ですか……」

 

 別に責めるつもりはない。怒るつもりも無い。

 もしも自分が彼女の立場ならば、絶対に同じことをする確信があったから。

 今のミカエルの胸中に存在しているのは、刑部姫に対する罪悪感だけだった。

 本来ならば自分がすべき事を彼女に押し付けてしまった。

 彼女の手を汚さなくてもいい血で汚してしまった。

 何が大天使だ。何が主の右腕だ。

 たった一人の少女の運命を狂わせて、自分達だけが呑気に仕事をしているなんて笑わせる。

 そんな天使を、一体誰が信仰なんてするのだろうか。

 

「ごめん。君と仲間達の仇を姫が勝手に殺してしまって」

「謝らないでください……先輩は何も悪くない……」

 

 ずっと無表情を貫き通しているが、それでも、彼女の瞳には確かな感情があった。

 祐斗に対する申し訳なさと、これからの自分に対する決意が。

 

「君には…姫のようにはなって欲しくなかったから……」

「先輩のように…?」

「そう。今の姫の姿を見てよ」

 

 涙を拭き、立ち上がってから改めて刑部姫の事を見る。

 嘗ての彼女の姿をよく知らない祐斗からしても、今の彼女は異常に感じた。

 

「どこまでも真っ黒になって、『泥』に沈んで、あらゆる物をかなぐり捨てて、その果てが今の姫だよ。今の姫はもう人間じゃない。それどころか、もう『生き物』ですら無いかもしれないね……」

「先輩……貴女は……」

 

 本人は全く無自覚だが、その時の刑部姫は確かに笑っていた。

 悲しそうに、漆黒の涙を流しながら。

 

「これが、絶望の果てに辿り着く末路の姿だよ。君は、こっち側に来ちゃダメ。まだ戻れる場所が、待っていてくれる人達がちゃんといるんだから」

「はい……」

「復讐とは恨みを晴らす為にするんじゃなくて、自分の運命に決着をつける為に行うんだよ」

「……先輩の言葉ですか?」

「偉大な先人の言葉。木場君みたいに復讐心に捕らわれていた人の…ね」

 

 誰とは言わない。でも、彼女の事は凄く尊敬している。

 

「ここにある魔剣たちは君の好きにしていいよ。姫には不必要な代物だし、例え偽物でも、存在するだけで争いを呼ぶから。壊すもよし。保存しておくもよし」

「僕は…壊すべきだと思います。復讐心とかは関係なく、純粋に危険だと思うから」

「そう…でも、これはかなり頑丈だよ?」

「分かっています。だから、いつの日かこれを壊せるような魔剣を作り出せるように、これから修行をします」

「うん…君がそれを望むのなら、姫はその意思を尊重するよ」

 

 やろうとしている事は刑部姫の知っている祐斗と同じだが、今の彼の目には黒い感情は一切ない。

 祐斗は確かに『前』を見ている。否、見始めたと言うべきか。

 

「刑部さん……」

「姫島さん……」

 

 そして、遂にこの二人が話す時が来た。

 朱乃は何から話したらいいのか迷って、一方の刑部姫は真っ直ぐに彼女の事を見据えていた。

 

「どうして…どうして貴女が戦っているの……どうして……」

「それが、姫のしなくちゃいけない事だから」

「しなくちゃいけない事…?」

「そう。姫は絶対的に取り返しのつかない事をしてしまった。下手をすれば、この世界の存亡に関わる過ちを」

「そ…存亡って…そんな……」

 

 全ては言えない。言える筈がない。言うつもりも無い。

 関わったのはほんの少しの間だけ。たった一晩の関係。

 それでも、その出会いは二人の心に鮮烈に残っていた。

 

 痛いほどの沈黙が室内に流れる。

 この空気の中、誰も声を発する事はしない。というか、出来ない。

 だが、そんな事なんて全く知らない二人が、唐突に部屋に戻ってきた。

 

「うぅぅ……まだ頬っぺたが痛いにゃぁ~……」

「当然の報いです。寧ろ、その程度で済ませた私に感謝してください」

「はい……本当に申し訳ありませんでした……」

 

 完全に立場が逆転した黒歌と小猫が仲良さげに部屋に戻ってきたが、すぐに奇妙な空気に気が付いて目をぱちくりとさせる。

 

「話は終わった?」

「はい。言いたいことは全部言えたし、聞きたい事も全部聞けました」

「それは良かった」

 

 試しに黒歌に目配せをすると、彼女は苦笑いを浮かべながら小さく頷いた。

 それを見て、もう安心だと判断した刑部姫は、これでこの場ですべき全ての事が終わったと思った。

 

「えっと…小猫? 本当に大丈夫だったの?」

「はい。これから、姉さまから聞いたことをお話しします」

 

 そして、彼女は語り始めた。

 自分達の過去を。何があったのかを。

 姉である黒歌がどんな気持ちだったのかを。

 今まで何をしていたのかを。

 どうして刑部姫と一緒にいて、ここに来る羽目になったのかを。

 

「…と言う事らしいです」

「あの男が、そんな事をしていたとは……」

 

 サーゼクスが言っていた『獅子身中の虫』は、禍の団とは関係が無い所にも存在していた。

 今日ほど、自分達が情けないと思った事は無い。

 

「おい…サーゼクス。この猫耳の嬢ちゃんが言った事が事実なら、相当にヤバいんじゃねぇのか? あの嬢ちゃんは完全な被害者で、それをはぐれ悪魔に指定しちまったなんて事が世間にばれた日には……」

「分かっているよ。けど、全ては僕達の失態だ。全てを公表した上で、彼女のはぐれ悪魔認定をすぐにでも解除する。同時に、他にも似たような謂れのない理由ではぐれ悪魔となっている者達がいる可能性があるから、それらも綿密に調査してから認定をすべて解除していこう。セラフォルーもそれでいいかな?」

「私は全く異論はないよ。ほんと……私達ってちゃんと魔王らしい仕事をしてなかったのね……カテレアちゃんみたいな悪魔が出るのも、なんだか納得しちゃったかも……」

 

 二人の魔王が本気で反省の意を示し、すぐにも行動する事を言ってくれた。

 後は、最後に一言だけ言ってから、この場を去るだけ……そう思っていた。

 自分に向かってくる拳を視認するまでは。

 

「長話は終わりか?」

「…何のつもりかな?」

「刑部さん!!」

 

 飛んできた拳は、今までずっと壁際にいた青年のものだった。

 彼は好戦的な笑みを浮かべながら、拳を放ってきたが、それは刑部姫の展開した折り紙の盾によって防がれた。

 

「ヴァーリ! いきなり何をやってやがる!!」

「決まっている。この女と戦うのさ」

「…そうか。君はそんな男だったね」

 

 ある意味、曹操よりも聞き分けの悪い男が出現し、刑部姫は大きく溜息を吐く。

 今の彼女は、退社時間であるにも拘らず、いきなり上司から残業をするように云われたOLの気分だった。

 

「分かったよ。やろうか。言葉で納得するような、お行儀の良い性格をしてないみたいだし」

「分かっているじゃないか!」

「まぁね。けど、するなら外でやろうよ。ねぇ……」

 

 外套の下から漆黒に染まった籠手を出しながら、静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白龍皇…ヴァーリ・ルシファー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、激突。

これからの展開に関する質問です。

  • 逆ハーレム!
  • 百合ハーレム!
  • どっちもありのドタバタ系ラブコメ
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