お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~   作:とんこつラーメン

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クライマックス⑤

 今までずっと壁際で大人しくしていた謎の青年から、いきなり喧嘩を売られた刑部姫。

 本人は全く動じていないが、彼女の周りはそうではなかった。

 

「は…白龍皇っ!? しかもルシファーって…どういう事なのッ!?」

 

 一番動揺しているのはリアス。

 全く事情を把握出来ないでいる彼女は、余りにもいきなりの事に大声を出すしか出来なかった。

 

「そのまんまの意味だよ。こいつは先代魔王の孫と人間との間に誕生したハーフで、現代の白龍皇。まるでラノベの主人公みたいな奴だけど、其処は気にしたら負け」

「嬢ちゃん…そこまで知ってるのかよ……」

 

 ずっとひた隠しにしてきた事実を刑部姫が知っていた。

 会談が始まってから、アザゼルはもう何度驚いたか分らない。

 

「そんでもって、禍の団がここを襲撃できた理由も彼が原因。情報をリークしてたんでしょ?」

「んだとぉっ!? それはマジかッ!? ヴァーリ!?」

「そこまで御見通しとはな…恐れ入ったよ」

「お前……!」

 

 次々と自分の事が暴露されていくのに、全く余裕の表情を崩さない。

 それだけ自分の実力に自信があるという事なのか。

 

「少し前に英雄派の連中にスカウトされてね。今のままでは俺が求める場所には絶対に到達できないと判断し、奴らの元へと行くことにしたんだが……」

(わたし)が皆殺しにしちゃったからね」

「正直、本気で驚いたよ。純粋な人間だけの集まりだったとはいえ、奴らの強さは相当なレベルだった。それをたった一人で壊滅させるとは…流石は俺の永遠のライバルと言ったところか」

(余計な事を……)

 

 このまま知られずにいれば楽だったのに。

 心の中で舌打ちをしながら、目の前で好戦的になっている馬鹿を睨み付けた。

 

「永遠のライバルって…なんで刑部さんが……」

「まだ分からないのか? 他の連中は誤魔化せても、この俺の目だけは誤魔化せない。そうだろう……赤龍帝」

「「「「「「「!!?」」」」」」」」」

 

 遂に言われてしまった。

 そうなると、必然的に他の事まで説明しなくてはいけなくなる。

 自分の罪を。その象徴を。

 

「お…刑部さんが……」

「赤龍帝…ですって…?」

「おいおい…マジかよ…!」

「全く気が付かなかったけど……」

「それなら…あの強さも納得するにゃ……」

 

 大凡、予想していた反応。

 嘗ての自分ならば、間違いなく心苦しさを感じていた事だろう。

 

「…半分正解で半分間違ってるよ」

「なんだと?」

「姫はあくまでも『赤龍帝の代理』にすぎない。本当の赤龍帝は別にいるよ……」

「代理…だと? ならば、その『本当の赤龍帝』とやらはどうした?」

「それを聞くの? 分かってる癖に」

「…死んだのか」

「うん。とある堕天使によって殺された。覚醒する前にね」

 

 堕天使。

 それを聞いて、アザゼルが冷や汗を掻きながら立ち上がる。

 

「お…おい。その堕天使ってのはまさか…少し前にいなくなった下級の連中じゃ……」

「それぐらいは知ってるんだ。そうだよ。そいつら。ドライグ曰く『覚醒前だったから、近くにいた魔力の高い人間の体に引きつけられたんじゃないか』って」

 

 これが本当かどうかは彼女には分からない。

 だが、そうとしか言いようがないのもまた事実だった。

 

「ま…待って頂戴。その殺された赤龍帝っていうのは…例の殺された男子の事なの…?」

「ふぅん…それは知ってたんだ。まぁ…ニュースにもなってたしね。そうだよ。兵藤一誠…それが彼の名前。本当の赤龍帝。学校じゃ悪い意味で有名人だったから、この場で知っている人も多いんじゃないかな?」

 

 リアスを初めとしたオカルト研究部、生徒会長のソーナが苦しそうに目を逸らす。

 全てが始まる前に終わってしまったのだから、彼女達が一誠と交流が無いのは当然の事。

 名前だけしか知っていなくても無理は無いのだ。

 

「…だよね。それが普通だよ」

「だけど、それと刑部さんが戦うことにどんな関係が……」

「あるよ。凄くある。詳しくは言えないけど、姫は絶対に取り返しのつかない事をしてしまった。未来を変えてしまった。だから、その代理と償いをしなくちゃいけない。図らずも赤龍帝となってしまった以上は。…いや、もう姫は赤龍帝でもないか……」

 

 刑部姫は、漆黒に染まった籠手を見せつけるように突き出す。

 それを見た全員が、思わず目を見開き息を飲んだ。

 首脳陣だけでなく、あのヴァーリでさえも。

 

「な…なんだそれはっ!? どうして赤ではなく黒に染まっているッ!?」

「姫が闇に…いや、『とある悪神』に汚染されたからだよ」

「悪神だと…? 誰だそいつは?」

この世全ての悪(アンリ・マユ)

「ゾロアスター教の悪神…!」

「ならば、今の彼女は神…いや、神の使徒に等しい存在ということですか…?」

「そんな大層な存在じゃないよ。ただ、この身に『泥』を浴びただけ」

 

 またもや聞き慣れない単語が出てきた。

 彼女の言う『泥』がなんなのか。

 それを知らない者達には、それを自分達で想像するしかない。

 

「そして、姫が泥を浴びたって事は、当たり前だけどドライグも泥を浴びた。この意味は分かる?」

「……ドライグは籠手の中にいるのか?」

「さぁ? 少なくとも、今の姿になってからは一度も声を聞いてない」

 

 聞いてない、ではなくて『聞こえない』が本当は正しいかもしれない。

 実際、ドライグがどんな事になっているかは刑部姫にも分らないのだ。

 

「宛ら、今の姫は赤龍帝じゃなくて『黒龍帝』ってところかな。中々に良いネーミングじゃない?」

「面白い…!」

「ん?」

 

 ヴァーリが心から嬉しそうに笑って刑部姫を見据える。

 まるで、ずっと前から欲しかった玩具が手に入った子供のように。

 

「籠手の中がどうなっていようと俺には関係ない! 重要なのは、お前がどれだけ強いのかだ!」

「ヴァーリ!!」

 

 どこまでも戦う事しか頭にないヴァーリを止めようとするアザゼルだが、興奮している彼の耳には全く意味が無い。

 

「さぁ…早く戦おう!! 曹操たちを倒した貴様の実力…見せて貰うぞ!! 黒龍帝!!」

 

 背中から光の翼『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を展開し、窓を突き破ってから外へと飛び出した。

 

「…アザゼルさん」

「なんだ」

「彼…ボコボコにしてもいいですか?」

「…そうだな。もうそろそろ、アイツにも現実ってのを教えるべきなのかもしれねぇな。だが、出来るのか? こう言っちゃなんだが、アイツは強いぞ?」

「御心配なく。彼って美猴さんや曹操たちみたいに、頭まで筋肉で出来てそうなタイプですから。寧ろ、雑魚だと思いますよ?」

「え? 俺って嬢ちゃんからそう思われてたの?」

「「「「「「「……………」」」」」」」

 

 女性陣からの冷たい視線に晒される美猴。

 この時ばかりは、他の男性陣は彼に本気で同情した。

 

「…兎に角、行ってきます。まぁ…殺しはしませんよ。心はへし折りますけど」

「……程々に頼むわ」

「はいはい」

 

 ヴァーリが壊した窓から外に出ようとすると、刑部姫の袖を朱乃が掴んだ。

 

「……なに?」

「なんで……あなたなの……」

「……さぁね」

 

 それは、自分が異分子だから。本当は存在しない筈の女だから。

 そう言えればどれだけ楽だったか。

 でも言えない。言える筈がない。

 彼女の手をそっと振り解いてから、刑部姫は折り鶴に乗って夜闇へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 ヴァーリを追って空へと上がると、其処ではすでに彼は全身を鎧で固めた『禁手化(バランス・ブレイク)』形態へとなって悠々と腕を組んで待っていた。

 

「来たな」

「お灸を据える為にね」

「お前に出来るか?」

「楽勝」

「ほざけ!」

 

 その手に魔力を収束させ、バスケットボールほどの大きさとなった魔力弾を生み出し、それを全力で投げつける。

 刑部姫は全く避ける様子は無く、そのまま直撃する…と思われたが、彼女の前に一瞬で生み出された折り紙の盾によって簡単に防がれた。

 

「この程度は効かんか……」

「…………」

 

 なんだか面倒くさくなってきた。

 確かに戦うとは言ったが、彼との戦いはこれまでで最も面白みがないと感じた。

 

「しかし、その紙を操る能力…貴様が神器を二つも所有しているとは考えにくい。となれば、それはお前特有の特技のようなものか」

「ふーん…その程度の分析力はあるんだ。ま、普通に考えれば小学生でも簡単に看破出来そうな事だけど」

 

 別に驚きはしない。知られたところで痛くも痒くもないから。

 

「ところでさ、その神器の中にいるんでしょ? 白いドラゴンのアルビオン?」

『私ならばここにいるが、それがどうした』

「今でもドライグと決着をつけたいって思ってる?」

『当たり前だ! それこそが我等の悲願なのだからな! それを貴様は…!』

「その願い…叶えてあげようか?」

『な…なにっ!?』

「どういうことだ…?」

 

 両手を空へと掲げ、そっと目を瞑る。

 本来ならば、この大きすぎる隙を見逃す手は無いのだが、戦いが好きなヴァーリは敢えてそれを黙って見つめた。

 それが、自分を破滅させる事になるとも知らずに。

 

「黒絶の城、四方を滅せし暴虐結界。こちら隠世消し去る高津鳥、即ち姫は八天堂。絶望地獄の刑部姫。千代に八千代に全てを焦がせ」

 

 刑部姫の全身から漆黒の魔力が噴出し、それが彼女の頭上で塊となり、徐々に何かの形を形成していく。

 

呪われし黒き龍の解放(カース・オブ・ドライグ・サモン)

 

 黒い魔力の塊が明確な物体となって、大きな地響きを出しながらグラウンドに降り立つ。

 それは、嘗ての戦いを覚えている者ならば悪夢としか言いようがない光景。

 その威容。その巨体。その迫力は忘れたくても忘れられない。

 

「黒い…ドライグ…だと…っ!?」

『ま…まさか……奴を籠手の中から解放したのかっ!?』

「違うよ。これは『解放』じゃなくて『召喚』。そして、君もよく知っている『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の先にある裏技だよ」

「覇龍の先だとッ!? アルビオン! 今のは本当なのかッ!?」

『し…知らん! 寧ろ、こっちが聞きたいぐらいだ! 二天龍の力を究極まで高めれば我等を使役出来るだとっ!? 初耳だぞ!!』

「あっそ。良かったね。たった今、知ることが出来て。んじゃ、続きをやろうか?」

 

 刑部姫は召喚された黒いドライグの頭の近くまで飛んで行き、そこからヴァーリを見下ろす。

 好戦的なヴァーリにしては珍しく、本気で動揺していた。

 

「さぁ……掛かってきなよ」

 

 

 

 

これからの展開に関する質問です。

  • 逆ハーレム!
  • 百合ハーレム!
  • どっちもありのドタバタ系ラブコメ
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