お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~   作:とんこつラーメン

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久し振りにして、今年最後の更新。

さぁ、ヴァーリをフルボッコにしましょう(愉悦)








クライマックス⑥

 籠手の中から漆黒に染まったドライグを召喚した刑部姫。

 それを室内から見ていた面々は、その事に驚きを隠せないでいた。

 なんせ、自分達が総力を挙げて死に物狂いで戦って、ようやく封印することに成功した最強のドラゴンを、あろうことか、まだ高校生の少女が易々と手懐けて使役しているのだから。

 

「あ…あれは……!」

「おいおい…冗談でも笑えねぇぞ……!」

「しかも、あのドライグは我々が戦った時よりも力が増しているように見えます……!」

 

 ミカエルの指摘は正しかった。

 現在のドライグは刑部姫と同じ『泥』に浸食され、リミッターが解除されているの等しいのだ。

 大昔と思っていたら、簡単に返り討ちに遭うのは明白だった。

 

「だけど、今は彼女の制御下にあるようだね……」

「あの頃みたいに、見境なく暴れられないみたいですね…」

「ヴァーリ…!」

 

 どう考えても無謀過ぎる戦い。

 自分達でさえ、一人では決して戦いを挑もうとは思わない程の存在に、たった一人で挑もうとしているヴァーリ。

 傍から見ている限りでは、無謀にしか見えない。

 

「あれが嬢ちゃんの切り札かよ……」

「凄いにゃ……流石は刑部姫さま……」

 

 英雄派を始末した時は全く本気じゃなかった。

 一体、彼女は何処まで力を隠しているのだろうか。

 美猴は冷や汗を流しながら引き攣った笑いを浮かべ、黒歌は少しだけ後ずさりをしながら驚いていた。

 

「刑部さん……」

 

 誰も彼もが、突如として出現したドライグに驚愕している中、たった一人だけ刑部姫の事を心配している者がいた。

 朱乃は胸の前で両手を組み、今にも泣きそうな顔で上空に佇んでいる刑部姫を見つめていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 自身を完全に圧倒する漆黒の巨体の出現に、ヴァーリは今までにない高揚感を抱いていた。

 今までずっと強さを求めて数多くの戦いを繰り広げてきたが、まさか最も因縁深い二天龍そのものと戦う機会があるだなんて誰が想像するだろうか。

 震える体を抑え込むように拳を握りしめる。

 これは恐怖ではない。武者震いだと自分に言い聞かせる為に。

 

「どうしたの? とっとと掛かって来ないの?」

「勘違いをするな。自分の興奮を少し押さえていただけだ」

「ふーん…別にどうでもいいけど」

 

 冷めた目でヴァーリを見下ろす刑部姫。

 対戦相手ではあるが、彼女の目はヴァーリの事を全く見ていない。

 ずっと、この後にするべき事を考えていた。

 

「あ、一応言っておくことがあるんだけど」

「なんだ? 今更になって命乞いか?」

「…君の神器の『半減』の能力ね、(わたし)とドライグには通用しないから」

「……なに?」

 

 聞き捨てならなかった。自分の能力が効かない?

 そんな筈はない。この能力が通用しない敵なんて一人もいなかったから。

 

「その能力が通用するのは、あくまでも『君よりも弱い相手だけ』なんだよ」

「俺より…弱い奴だけ……!?」

「そりゃそうでしょ。だって、自分よりも格上の相手の能力を半減させて吸収しても、確実にキャパオーバーになって自滅するだけじゃん。そんな事も分からないの?」

「そんな馬鹿な事があるか! たとえ相手が何であっても、俺の能力は不滅だ! 実際にその身で確かめてみろ!!」

『Divide!』

 

 凄まじい速度でドライグに接近し、鎧に覆われた拳で殴りかかると同時に『半減』の力を発動させる…が……。

 

「な…なんだと…っ!?」

 

 攻撃が通用した手応えが無ければ、半減した力が吸収された感じも無い。

 確かに能力は発動したのに、なんの効果も発揮されていないのだ。

 

「実際にその身で確かめて分かった? 君が今までしてきたことは、単なる『弱い者いじめ』だったって事が」

「ち…違う…そんな筈は……」

「自分よりも弱い奴と戦って強くなるわけないじゃん。そんなにもチート主人公を気取りたかったの?」

「五月蠅い!!」

 

 激高したヴァーリは刑部姫に向かって魔力弾を放つが、それはドライグの手によって阻まれる。

 勿論、ドライグの黒い鱗には傷一つ付いていない。

 

「っていうか、自分の能力も満足に扱えてない癖に『歴代最強』とか笑えるよね」

「どういう意味だ…!」

「そのまんまの意味ですけど。大体さ、『自分の手で触れたものを半減する』とか、どう考えても未熟な証拠じゃない。ねぇ…アルビオンさん?」

「なに…?」

 

 自分を無視してアルビオンに語りかける。

 確かに、アルビオンは神器の中で歴代の白龍皇を見てきたから、その実力もよく知っている筈だ。

 

「本来なら、手で触れたりしなくても、視界に入れるだけで能力は発動出来る筈だよ。実際、歴代の人達はそうしてたんでしょ?」

『あ…あぁ……。他の連中は実際に触れずとも能力を自在に操っていた……』

「なっ…!?」

 

 初めて聞かされた事実。

 別に歴代の白龍皇に対して興味が無いわけではなかったが、それよりも戦う事を優先してきた為に聞く機会が無かったのだ。

 故に思い知らされる。自分の未熟さを。

 

「というか、まず君には致命的に足りないものがあるよね」

「なんだそれはっ!?」

「それはね……」

『Boost! Boost! Boost!……』

 

 折り鶴に乗った状態だというにも拘らず、ヴァーリが捕えられない程の速度で接近し、何度も倍化の能力を発動させつつ静かに黒い竜の鱗に覆われた手を添えた。

 

黒龍帝の贈り物(ブラッディ・ギア・ギフト)

「!!!」

 

 何かが自分の体に入ってくる感覚。

 赤龍帝は本来、倍化の他に『譲渡』の能力も兼ね備えている。

 刑部姫はそれを使用したのだ。

 

「か…体が動きにくい…だと…!? これはなんだ…!?」

「摩擦係数」

「は……?」

「君の肉体の摩擦係数を倍加した。知ってる? 摩擦係数ってのは少なければ少ない程、ツルツルと滑って、多いと逆に滑りにくくなる。今の君の肉体は宛ら、全身がトリモチになったかのようになってるんじゃない?」

 

 刑部姫の言う通り。

 今のヴァーリの体は殆どと言っていい程に自由が利かない。

 何かに拘束でもされているかのように、体の動きが鈍くなっていた。

 

「着ている服と鎧が体の動きを束縛してるんだよ。まるで、服を着た状態で全身がずぶ濡れになってしまった時のように」

「く…くそ…! こんな事が…!」

 

 空中には浮いていられるが、出来るのはそれだけで、今は指一本動かす事すら難しい。

 

「君に致命的に足りない物。それは工夫。別の言い方をすればイメージ力だよ」

「イメージ…だと……!?」

「そ。どんな能力も工夫次第で強くなれる可能性を秘めている。それこそ、ジャイアントキリングが可能な程に。特に、半減の能力なんてその最たるものじゃない。姫なら、パッと思いつくだけでも軽く20以上の応用方法を考え付くよ」

「くっ……!」

 

 もう身動きすら出来なくなったヴァーリに思い切り近づき顔を覗き込む。

 装甲越しで表情は見えないが、その顔は苦痛に歪んでいた。

 

「そもそも、レベルを上げて殴れば最強とか、頭の中身が小学生以下だよね。英雄派の連中でも、もっと創意工夫をして戦術を練るよ。なに? 自分が悪魔と人間のハーフで身体能力が生まれつき高いから大丈夫とか思った? 何その慢心プレイ。寧ろ、素の能力が高いからこそ筋力よりも技術を磨いていくもんなんじゃないの? ねぇ、姫の言ってる事って間違ってるかな? それとも、頭の中身まで筋肉になってて姫の言う事が理解出来ないのかな?」

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」

 

 正論だった。正論だと分かっているが故に何も言えない。

 最強の存在を目指して己を鍛えているのに、実際には目の前の少女に手も足も出ない。

 こんな事なんて許されない。ヴァーリのプライドが許さなかった。

 

「……もういいや。これ以上は時間の無駄だし、それ以上に飽きた」

『ならば、この手で引導を渡してやろう』

「……っ!? ドライグ…意識が戻って……」

 

 今、確かに聞き慣れたドライグの声が聞こえてきた。

 『泥』に浸食されて以降、ずっと聞けなかった声が。

 

『…済まなかった。お前の苦痛を、嘆きを、悲しみを知っていながら安易な言葉を掛けてしまった。泥の中から意識を浮かび上がらせるのに必要以上に時間が掛かってしまった。お前には苦労をさせてしまった……』

「ううん……ドライグが謝る必要はないよ。全ては姫が悪いんだから……」

 

 ずっと胸の中に引っかかっていたナニかが取れたような気がした。

 同時に、不思議と気が楽になる。

 

『これからは、俺もお前の苦痛を共に味わおう。少しでも相棒の負担を軽くするために』

「ありがとう…ドライグ」

『礼には及ばん。では、まずは……』

 

 巨大な腕を振り上げて、力強く握り拳を作る。

 見ただけで分かるほどに魔力が集中していて、その拳がどれ程の威力があるのかを物語っている。

 

『身の程知らずの小僧に現実を教えてやろう。貴様程度にはブレスを使う価値すらない。お前には俺に…俺達に挑む資格など無いのだからな』

「ドライグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」

『ヴァーリ……くっ!』

 

 回避も防御も出来ないまま、ヴァーリは凄まじい一撃をまともに喰らい、そのまま地面に叩きつけられてクレーターを作った。

 白龍皇の鎧は強制解除され、両手足が有り得ない方向へと曲がっていた。

 誰の目にも、彼の両手足が折れているのは明らかだった。

 

「が…ぁぁ……!」

 

 鼻血、血涙、吐血。

 顔中から血を出して、ついでに泡も拭いて白目を向いて気絶していた。

 痙攣するように体がピクピクしていることから、ちゃんと命は取り留めている事が伺えた。

 

「ちゃんと…約束は守ったよ。ドライグ、ご苦労様」

『お前こそな』

 

 ドライグの体が黒い粒子となって消え、刑部姫の体に吸収されるようにして融合した。

 気を失ったヴァーリには目もくれず、折り鶴を下降させてから着地。

 そのまま無視してから校舎へと戻っていくことに。

 彼を回収するのは自分ではなくてアザゼルの役目だと思ったから。

 

「……手加減をするのも楽じゃないね」

 

 

 

 

 




ドライグ復活からのヴァーリKO。

生きてはいますが、強制入院確定。

無駄に丈夫な体に感謝ですね。

これで今年の更新は終了。

続きは来年になります。

これからの展開に関する質問です。

  • 逆ハーレム!
  • 百合ハーレム!
  • どっちもありのドタバタ系ラブコメ
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