お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~ 作:とんこつラーメン
まずはその準備段階から。
単純な『救済』じゃ生易しいですからね。
やるなら徹底的にやりましょう。
お姫ちゃんを救い隊結成!!
ここは死後の世界。
一誠は映像越しに刑部姫が朱乃に抱きしめられながら死亡する瞬間を見て、顔を俯かせて体を震わせながら涙を流していた。
「なんで…だよ……! なんで…刑部先輩が死ななきゃいけないんだよ…!」
痛々しい程に拳を握りしめ、八つ当たりをするかのように全力で床に叩きつけた。
床はその程度ではビクともしないが、それでも今の自分の憤りをどこかにぶつけたくて、何度も何度も床を殴り続ける。
「あの人は皆の事を助けようと…守ろうとしたんだぞ!! たった一人で! 何もかもがボロボロになっても立ち上がり続けて!! 大勢の人を救ってみせたのに!! こんなのありかよ!! ふざけんな!!!」
そんな彼の後ろで悲痛な面持ちでいる女性、一誠をこの場に連れてきた張本人である転生女神は、少しだけ涙を流した後に顔を上げて、自分の頬を思い切り叩いて自分自身に喝を入れ直した。
「そうですね。確かに姫子さんは死んでしまった。それはとても悲しい事です。けれど、だからこそ出来る事がある。いや、今だからこそ彼女を本当の意味で救う事が出来るかもしれない!」
「何言ってんだよ! 先輩は…死んじまったんだぞ!!」
姫子の死に錯乱している一誠は、女神のいきなりの言葉にも食い掛かってくる。
だが、今の彼女はその程度では怯まない。
「…私が前に『私達は生きている人間には干渉出来ない』と言った事を覚えていますか?」
「それがどうしたんだよ……」
「分かりませんか? 今までは姫子さんが生きていたから、我々は何も出来ずに傍観をするしか出来なかった。けど、今は状況が違う。姫子さんは壮絶な人生の末に亡くなった。この意味が分かりますか?」
「ま…まさか……」
ここまで来て、ようやく一誠も女神が言おうとしている事が理解出来た。
「そう……死んだ彼女の魂を再び回収し、二度目の転生を執り行います」
一誠の目が大きく見開かれ、思わず立ち上がって女神を見据えた。
「そ…そんな事が出来るのかよッ!?」
「出来ます。同じ人間を複数回転生させることは別に違法でも何でもありませんから。寧ろ、これまでに幾度となく行われて来ています。なので、何にも問題はありません」
「そっか……そうなのか……」
ここで終わりじゃない。
僅かではあるが希望が見えた。
その時、突如としてこの場に威厳ある声が響いてきた。
「よくぞ言った! それでこそ栄誉ある転生を司る神よ!」
「だ…誰だっ!?」
「この声はまさかッ!?」
驚いている二人の背後から、普通に誰かが歩いてやって来た。
白いローブを着て、木製の杖を握りしめ、オールバックな白髪と髭を生やしている眼鏡を掛けた老人の男性。
だが、その体からは圧倒的なプレッシャーが放たれていた。
「カーネル様っ!?」
「久し振りだな、アリシア」
「カーネルって、まんまな名前だなっ!? っていうか、アンタってアリシアって名前だったのかよッ!?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
「初耳だわ!!」
女神さま、ようやくの名前判明。
「んで、この人は…?」
「カーネル様は、私の上司に当たる転生神であり、ウチのクソジジイと同期の方なんです」
「神様に上司とかあるのっ!?」
「そりゃ普通にありますよ。これはどの種族も同じですよ?」
「あんまり知りたくなかった新事実……」
現実味がありすぎて、ファンタジーも何も無くなってしまった。
思わず脱力して肩が下がってしまう一誠。
「因みに、この『カーネル』という名前は渾名なんですよ」
「神様に渾名って……」
「名前の由来は、ワシがカーネル・サンダースにそっくりだかららしい」
「でしょうね。流石の俺もそれだけは一発で分かったわ」
「週一ぐらいの頻度でケンタッキーに行ってる」
「余計な情報はいらないから!」
神様の予定の一部なんて聞かされても、一誠には反応のしようがない。
「あ~…コホン。そろそろ本題に入るか」
カーネルの咳払いで茶番は終わり、ようやく彼が来た目的が明かされることに。
「お前の祖父…アイツには我々もいつも困っていてな。まさか、あそこまで馬鹿な奴とは思わなかったが」
「全くです。あんなのを祖父だなんて想像もしたくありません」
「…一応、聞いておくが、アイツのことをどうしたんだ? 報告では、どこかの世界に落としたとしか聞いていないのだが……」
「別に大したことはしてませんよ。神としての全ての権限を剥奪した上で、アメリカのルイジアナ州の片田舎にあるベイカー邸に放り込んだだけですから」
「「幾らなんでもやりすぎなのではッ!?」」
「え? すっごく生温くし過ぎたかな~って思ってたんですけど……」
アリシアの言葉にドン引きした男二人は、ズザザ…と後ずさりをしてからヒソヒソ話をする。
「あんな子を女神にして大丈夫なんスか?」
「あれでも、昔は純粋無垢で可愛らしい子だったんだがなぁ……」
年月の経過とは残酷なものである。
「そ…それで、例の刑部姫子の事についてだが……」
「はい」
「この度の件に関しては、完全に我等全員の落ち度だ」
「いや、あのジジイこそが全ての元凶なんじゃ……」
「あ奴を御しきれなかった我等にも責任はある。よって、刑部姫子の死亡が確認された瞬間から、全ての転生神が彼女の二回目の転生に向けて行動を開始し始めている」
「そ…そうなんですかっ!?」
転生を司る神は非常に多く存在しており、しかも転生させる世界や性別などで役職が多岐に渡っている。
その全員がたった一人の少女の為に動き始めた。
従来ならば絶対に有り得ない事態に、事情を詳しく知らない一誠ですらも空いた口が塞がらなかった。
「だがな、今回は単純に彼女を転生させればそれで済むという話ではない」
「承知しています。彼女の体に巣食っている『この世全ての悪』を取り除かないと……」
「それに関しては問題無い」
「と申しますと?」
「どうやら、『聖杯の泥』は彼女の体までは完全に浸食できても、心や魂までは浸食できていなかったようでな。魂さえ確保できれば、あとはどうとでもなる」
「そうだったんだ……」
「身体機能の低下はあっても、最後の最後まで刑部姫子は正気を保ち続けていたのがいい証拠だ。もしも、身も心も聖杯の泥に侵されていたら、彼女自身が世界の脅威となっていただろう。だが、実際には……」
「先輩は、その力を皆を救う為に使っていた……」
「その通りだ。彼女の強大な精神力の成せる業だな」
うんうんと満足そうに頷くカーネル。
ここでは言わなかったが、姫の心の強さが全ての転生神の琴線に触れ、満場一致で彼女の事を助けることが決まったのだ。
「現在、生前に刑部姫子に関わった全ての人物達にコンタクトをし、とある確認を行っている」
「「確認?」」
「刑部姫子と同じように転生をし、彼女と同じ世界に行ってくれるかという確認だ」
「へ? それってどういう…?」
「この場には時間の概念が存在しない。故に、非常に長寿な悪魔を初めとした異種族たちの遥か未来にアクセスし、通信をすることが可能なのだ」
「で…でも、それって違反だってアリシアが……」
「今回は特別だから問題無し!!」
「やってる事は凄いけど、それって普通に職権乱用じゃね?」
一誠、一般人故の反応だった。
「幾ら転生をさせても、誰も知らない世界に一人で放り出されては意味が無い。彼女を真の意味で救済するには、彼女の事を大切に思っている者達も一緒に転生させなくてはいけないのだ」
「な…成る程……」
アリシアが引き気味に頷くと、いきなりカーネルが一誠の方を振り向いた。
「兵藤一誠くん」
「は…はい!」
「君に問おう。
「俺は……!」
何を迷う必要がある。
答えなんて最初から決まっている。
姫が苦しんでいる姿を見ている時から、ずっと心の中で考えていた事。
それを堂々と言えばいいだけの話だ。
「今度は俺が先輩を守りたい! もう二度と、あの人が苦しまないように、悲しい目に合わないように、俺があの人の身も心も守りたい!!」
「よく言った! それでこそ日本男児よ!!」
カーネルは力強く笑いながら、一誠の肩に手を置いた。
「君の事はワシが責任を持って転生させてやろう! 同時に、彼女を守れるような『転生特典』もついでに付けてやる!」
「あ…ありがとうございます!」
涙を浮かべながら礼を言う一誠。
己のやるべき事を見つけた彼の目に、以前のような欲望の塊は何処にも無かった。
あるのは、守るべき女性の為に全てを尽くすという覚悟だけ。
「だが、今のまま転生しても意味が無い。彼女を守るためには、君自身も強くならねばな」
「そ…そうッスね」
「そこで!」
カーネルがパチン! っと指を鳴らすと、いきなり背後の空間に扉が出現する。
その扉からは言葉では言い表せないような力が発せられている。
「あの扉の向こうには、古今東西、ありとあらゆる歴史や神話の英傑たちの魂が存在している。彼らの手によって、心も体も徹底的に鍛えられてくるがよい!!」
「うす!! 兵藤一誠、先輩を守る為なら、どんな辛い特訓にも絶対に耐えてみせるッス!!」
「その意気だ! さぁ…行ってくるがよい!!」
「はい!!」
両拳をぶつけてから、全力ダッシュで扉まで向かって、なんの躊躇も無くそれを開けて中へと入っていった。
入る瞬間、アリシアに向けてサムズアップをして、視線で『頼んだぜ』と言っていった。
「…よかったんですか?」
「構わん。寧ろ、それぐらいの覚悟が無くては、本当の意味で彼女を救済なぞできるんだろう。それに、今のあ奴ならば必ずや乗り越えられるだろうと信じている」
「それは私もですけど……」
心配そうに一誠が入っていった扉を見つめるアリシア。
彼の死を見て、ここまで導いた身としては気が気ではないのだろう。
「それよりも、アリシアには他にやって貰う事がある」
「なんでしょうか?」
「お前には姫島朱乃と通信をし、彼女に確認を取って欲しい」
「聞くまでも無いとは思いますけどね……了解です」
「うむ」
「ところで、姫子さんが彼女に託した無限龍オーフィスはどうしますか? あの子の場合は存在そのものが無限ですから、転生させることは不可能なんじゃ…」
「知っておる。オーフィスの場合は転生ではなく『転移』をすれば良かろう。奴の事だ。間違いなく二つ返事で応じるであおるよ」
「でしょうねぇ~……」
「では、頼んだぞ」
伝えるべき事を全て言い終えたカーネルは、二の句も告げずにその場から瞬間移動をして消えた。
「さぁ~ってと……やりますかね。姫子さん…今度こそ、貴女のことを全力で幸せにしてみせますからね」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
何も無い真っ白空間。
カーネルはそこを歩きながら、左手に真っ赤な光の玉を持っていた。
「ドライグよ。お主にも聞いておこう。お前さんはどうしたい?」
『言うまでもない。今度もまた『相棒』と共に有り続ける。それだけだ』
「いいのか? ワシがその気になれば、元の主である兵藤一誠の体に戻す事も可能だが?」
『結構だ。それに、それはあいつも望んではいないだろう』
「ほぅ?」
『あの男は今、一人で立ち上がり、一人で試練に向かっている。そこに俺が割って入るのは無粋というものだ』
「…かもしれんな」
『それに、この俺が今の時代の『相棒』として認めたのは、あの『刑部姫子』のみよ。それ以外の奴など必要ない』
「言うではないか。嘗てはあれだけ好き放題に暴れていた奴が」
『ふん……』
それからドライグは黙ってしまい、沈黙だけが場を支配した。
(刑部姫子よ。お前はこれだけ多くの人々に愛されているのだ。決して自分を悲観してはいけない。本当によく頑張った。その偉業は間違いなく『英雄』と呼ばれても差し支えないだろう。だからこそ……)
何も無い空間を見上げ、そっと呟いた。
「マキリの聖杯を通じて、お前は『英霊の座』に導かれたのだろうな……」
救済計画第一弾!
まずは転生の神様たちが総動員で頑張って、同時に一誠をめっちゃ鍛えてチート仕様に。
次回は一旦、元の世界に舞台を戻してから、向こうの神様たちのお話などをお送りします。
これからの展開に関する質問です。
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逆ハーレム!
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百合ハーレム!
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どっちもありのドタバタ系ラブコメ