お姫ちゃんは引き篭もりたい ~TS系オタク転生者美少女の生存戦略?~   作:とんこつラーメン

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ここから一気に急降下していきます。

暫くの間は、ほんわかするような展開は無いので覚悟をしてください。








『暗殺者』から『狂戦士』へ

 テレビを消した姫子は、フラフラとした足取りで自分の部屋まで戻っていった。

 そして、普段は鍵を掛けている引き出しの鍵を開け、中にある小さな箱を取り出した。

 

『お…おい! 一体どうした!? 大丈夫かッ!?』

「ねぇ…ドライグ……」

『な…なんだ?』

「さっき言ってたよね…『堕天使を自分の手で倒して、敵を討たないのか』って…」

『あ…あぁ……それがどうかしたのか?』

 

 そっと箱を開けると、そこには束になった札があった。

 札には紅い線で五芒星が書かれていて、明らかになんらかの力が込められている。

 

(わたし)は敵を討とうとは思わないけど……しなくちゃいけない事は出来たよ……」

『ま…まさか…お前……』

 

 猛烈に嫌な予感がしたドライグは、必死に姫子を説得しようと声を荒らげた。

 

『考え直せ! お前も言っていたではないか! 身体能力には自信が無いと! 確かに今のお前は赤龍帝となっているが、だからと言って無理に戦う必要は何処にも無いんだぞ!?』

「それは違うよ……全然違う」

 

 震えるように首を振り、目の焦点が合わない状態で札を手に取る。

 

(どうして、彼は様々な敵と戦った?)

 それは、彼が主人公だから。

(どうして、彼は皆に愛された?)

 それは、彼が主人公だから。

(どうして、彼は諦めなかった?)

 それは、彼が主人公だから。

 

 その主人公を、自分は死なせた。

 己の油断が、無知が、自分勝手さが、彼を死なせた。

 主人公が死ぬことで、この世界にどんな影響が出るか知っていたくせに。

 

 このままでは全てが狂ってしまう。壊れてしまう。

 それは許されない。絶対に許されない。だから……。

 

「姫が…彼の代わりに皆を守る……」

 

 『泥』が、流れる。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 深夜。町外れの教会付近にある小さな森。

 普通ならば誰も近寄ろうとはしない場所に、一つの小柄な影があった。

 ピンク色の特徴的なフードを被り、草を踏む足音が静かな森に響く。

 

「止まれ」

 

 影が止まり、声が聞こえてきた方角に視線を向けると、そこには黒い翼を広げた二人の女性がいた。

 片方は金髪でツインテールなゴスロリな女。

 もう片方は黒いボディコンスーツを着た青い髪の女だった。

 

「矮小な人間風情が、この時間のこの場所に何の用だ」

「迷子か、それとも私達の事を知ってやって来た何者かか……。どっちにしても、生かして帰す気は無いけどね~!」

「……………」

 

 二人の挑発的な言葉に、影は何も答えない。

 

「返事がない…か。別に構わん。何を言おうと、ここで死ぬことには違いないのだからな!」

「まだ『例の子』が到着していない以上、目撃者を生かしていく訳にはいかないッスよね! それじゃ…バイビー!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 惨劇。

 そう表現するしかない惨状が、その場には広がっていた。

 先程まで生き生きとしていた女たちが、バラバラ死体となって地面に転がっている。

 最低でも10以上にパーツに分割されていて、夥しい量の血が辺り一面に飛び散っていた。

 

 その中央に、影が静かに立っていた。

 右手には『札』で作られた『剣』が握られていて、左手には女たちの生首が握られている。

 髪の部分を掴んでいるらしく、女達の死に顔は上に引っ張られている。

 

「……なりふり構わずに捧げられる物を全て捧げちゃうと、『E』でもどうにかなるもんなんだな……」

 

 影が振り向き、転がっている死体を見る。

 

「思ったよりも、何も感じないもんだね……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 その後は誰も妨害に出てこず、影はそのまま教会へと辿り着く。

 静かに扉を開け、完全に廃墟と化した礼拝堂を進んでいく。

 一歩一歩と足を進める度に、木製の床が悲鳴を上げる。

 

「あそこか……」

 

 祭壇の影に隠れていた地下へと続く階段を見つけ、静かに降りていく。

 出口が見えてくるにつれて、明るさが増していき、影の顔が明らかになっていった。

 

「成る程。これは酷い」

 

 そこにあったのは、明らかに何かの儀式の準備をしていると思われる光景で、石造りの床には魔方陣が書かれ、奥にある台座には木製の十字架が。

 そして、ローブを纏った男達が大勢いて、その中に一人だけ目立つボンデージのような恰好の女がいた。

 その女にも黒い翼が生えていて、手に持っている生首と同じ種族であることが分かる。

 

「な…なんだ貴様はッ!?」

「どうして、この場所がバレたっ!?」

 

 男達が急に騒ぎ出し、辺りに混乱が拡散する。

 そんな中、女だけが極めて冷静に振る舞い、堂々とした足取りで影…返り血に染まった姫子の元まで来た。

 

「騒ぐんじゃないわよ。所詮は人間。しかも、たった一人。お前が何者か知らないけど、これを見られた以上は死んでもらうわ……なっ!?」

 

 近づくことで初めて、女の目に彼女が握っている生首が視界に映った。

 苦悶の顔でぶら下がっている、自分の腹心の部下達の無残な姿が。

 

「カラワーナ! ミッテルト! 人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「よくも偉大なる堕天使であるお二人を!! 絶対に許さん!!」

「レイナーレ様に続けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 女…レイナーレの怒りに呼応するように、男達も同じように剣を取り大声を出す。

 それを無言で静かに見据え、姫子は生首を床に放り投げ、懐からある物を取り出した。

 

「これ…な~んだ?」

「折り紙…ですって? アハハハハハハハハハっ!! まさか、それで私達を倒そうとか思ってるんじゃないでしょうね!? 冗談ならもっとマシな事を言いなさいな!!」

 

 姫子が取り出したのは、二房の千羽鶴。

 そんな紙切れ程度で何が出来ると思っているレイナーレは、高笑いをしながら光の槍を生み出す。

 

「それじゃあ…そのまま死になさ……え?」

 

 レイナーレが槍を投擲しようとした瞬間、彼女の顔の真横を何かが高速で飛んでいき、そのまま壁に激突し、巨大なクレーターを作った。

 

「な…なに…今の……」

 

 恐る恐る後ろを振り向くと、そこには壁に深々と突き刺さった折鶴が。

 先程の高速物体は折鶴であるとすぐに理解した。

 

「姫の作った折り紙…甘く見ない方が良いよ」

 

 姫子が手を離すと、千羽鶴が散らばって、彼女の周囲に展開する。

 その数、合計で二千。

 二千の千羽鶴がレイナーレ達の方を向いて浮いている。

 

「ドライグ」

『あぁ……』

 

 左手を前に出すと、そこに龍の体を彷彿とさせる真紅の籠手が装着される。

 それを見て、レイナーレは初めて本気で驚愕し、思わず後ずさりをした。

 

「その籠手は…まさか神器(セイクリッド・ギア)!? しかも、ドライグって事は…伝説の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)っ!? お…お前が今代の赤龍帝だというのっ!?」

「それは違うよ。姫は……」

『Boost!』

 

 まずは4000。

 

「単なる……」

『Boost!』

 

 これで8000。

 

「代行者だよ」

『Boost!』

 

 そして、16000。

 地下の狭い空間が、合計で16000もの折り鶴で覆い尽くされた。

 その威力は先程、見せられているので、レイナーレ達にはそれがギロチンのように見えた。

 

「じゃあ……さようなら」

「「「「「ああああぁぁああぁあぁああぁああぁああぁぁぁっ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 死屍累々。

 今の地下の惨状を表現するのに、これ以上の言葉は無いだろう。

 

 ローブを着た男達は一人残らず絶命。

 どれもこれもがバラバラに千切れていて、人の形を保っている死体の方が少ない。

 

 そんな中、辛うじて生き残っていたのがレイナーレだった。

 普通の人間よりも耐久力がある堕天使であるが故に、血塗れ、傷だらけになりながらもギリギリのところで意識があった。

 といっても、背中から生えていた黒い翼は見る影も無い程に引き裂かれ、右腕と左腕は胴体から離れて辺りに転がっている。

 

「お前…は…何者…なの…よ……!」

 

 息も絶え絶えになっているレイナーレに近づき、目の前に座ってから視線を合わせる。

 何の感情を映さないその目に、死に体になっていて意識が朦朧としていたレイナーレでも本能的な恐怖を感じた。

 

「私にこんな事をして…ただで済むと思ってるの…? お前は堕天使全体に喧嘩を売ったも同然なのよ……!」

「それが何か?」

「そうだ…! まだドーナシークがいた…! アイツが来れば……」

「ドーナシークって、もしかして……」

 

 どこからか、成人男性が被るような帽子を取り出し、それをレイナーレに被せた。

 

「こんな帽子を持ってた男の人?」

「まさか……ドーナシークまで……」

 

 自分の部下が全滅した。

 全く知らない少女の手によって。

 信じられなかったが、体の痛みがこの事実を肯定する。

 

「ここで問題です」

「なに……?」

「悪魔。堕天使。天使。そして人間。この四つの種族に共通しているのはなんでしょうか?」

「い…いきなり何……」

 

 姫子は何も言わなくなり、レイナーレの言葉を待つ。

 

「わ…分からないわ……」

「正解は……」

 

 レイナーレに胸に札で作られた剣が突き刺さる。

 それは心臓を貫通し、彼女を即死させた。

 

「体の構造。どんなに長寿な種族でも、人体の弱点を突かれれば簡単に死ぬ。首を切り落としたり、心臓を潰したりとか」

 

 自分以外に生きている者がいなくなり、場は静寂に包まれる。

 足元に転がっている、血に染まった折り鶴を見下ろしながらポツリと呟く。

 

「『(ヴィラン)』は『人』じゃない……だから…姫は……」

『相棒……お前は……』

 

 余りにも残酷な光景に、ドライグも驚きを隠せなかった。

 虫も殺せないような少女のどこに、これ程までの残酷性が隠れていたのか。

 

「あ……これは……」

 

 その時、姫子の目から涙のように『漆黒の泥』が流れだし、目だけではなく口や鼻からも出てきて、籠手の隙間からも溢れ始めた。

 

『な…なんだこれはっ!? 黒い泥が俺の全てを侵食していくっ!? やめろ!! やめてくれ!! ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

「ごめん……ドライグ……けど…もう……」

 

 増大した『泥』は周囲にある全てを飲み込み、教会全体を覆い尽くした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 澄み切った夜空の下、姫子は空を見上げながら一人で立っていた。

 その周囲には何も無く、つい先程までそびえ立っていた教会は跡形も無く消滅している。

 勿論、中にあった大量の死体もまた消滅した。

 

「もう…戻れないな……」

 

 泥から出てきた姫子の姿は変わり果てていた。

 黒かった髪は真っ白になって、その肌も病的なまでに白く豹変している。

 着ている服も漆黒に染まって刺々しくなり、血管の様な紅い線が走っていた。

 それは左腕にある赤龍帝の籠手にも及び、燃えるような真紅だった籠手は黒くなり、手甲部にあった緑色の宝玉も赤く鈍く光り、表面には衣服と同様に赤い線が走っていた。

 

「人間…辞めちゃった……」

 

 もう刑部姫子という人間は何処にもいない。

 ここにいるのは英霊としてではなく、(あやかし)として顕現した『刑部姫』だった。

 

「ドライグ……」

『…………』

 

 籠手に話しかけても返事は無い。

 彼の意志も『泥』に飲み込まれてしまったようだ。

 

「ごめんね……」

 

 籠手を優しく擦ってから、この場を後にしようとすると、物陰から一人の男が現れた。

 

「おいおい…こいつは一体どーゆーことですかい? なんで教会が無くなってるんだよ? 森の中には堕天使ちゃん達の首なし死体もあったし……おやぁ?」

 

 男は刑部姫に気が付いて、思わず近づこうとするが、すぐに危険だと察したのか、必要以上には近づこうとはしなかった。

 

「はぐれ神父のフリード・セルゼン……」

「ボクちゃんの事を御存じ! もしかして、これってお嬢ちゃんの仕業だったり?」

「だとしたらどうするの? 姫と戦う?」

「まさかぁ! アイツ等に義理立てする必要とか全く無いし? それに……」

 

 フリードは刑部姫を鋭く睨み付け、いつでも逃げられるような体勢を取る。

 

「ボクちん。絶対に勝てないと分る奴とは戦わない主義なもんで。見ただけで分かるぜ……お嬢ちゃん。理由は分からないけど、最悪の形で人間を辞めちまったな?」

「うん…まぁね……」

 

 無表情で答える刑部姫。

 余りにも無機質なので、まるで機械と話しているような気分になる。

 

「この町…というか、もう二度と三大勢力とは関わらない方が良いよ。もしも敵対とかされると、命の保証は出来ないから」

「みたいだな。他の連中なら、ンな言葉ソッコーで無視で決まりだけど、お嬢ちゃんみたいのを相手にする可能性が出てくるとなれば話は別だわ。よし! ボクちゃん神父さんや~めた! バイビ~! そうだ、この剣とか銃はあげるから、好きに使ってもいいよ~ん!」

 

 持っていた武器を全て放り投げると、フリードは意気揚々とした足取りで森の中へと消えていった。

 本人の宣言通り、これ以降、彼は二度と三大勢力は疎か、刑部姫の前にも姿を現す事は無かった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 森を出ると、その直後に一人の女の子とぶつかりそうになった。

 咄嗟に避けて事なきを得たが、彼女が被っていた帽子が外れて地面に落ちた。

 

「これ」

「あ…ありがとうございます」

 

 落ちた帽子を拾い上げ、少女の頭に被せてあげる。

 夜の闇で良く見えていないのか、人とは思えない姿に変貌した刑部姫にも恐れることなくお礼を言った。

 

(アーシア・アルジェント……どうして、こんな時間にこんな場所へ…?)

 

 彼女が知っている知識では、アーシアと会うのは昼間だった筈。

 だが、今はもう完全な真夜中だ。

 

「女の子が一人じゃ危ないよ。この町は比較的、治安はいい方だけど、それでも危険な事には違いない」

「そうです…よね。実は、乗る筈だった飛行機のフライト時刻が遅れてしまって…空港に着いたのも、ついさっきなんです」

 

 本来ならば、これは単純な空港側のトラブルで終わるのだが、今の刑部姫はそうじゃなかった。

 

(これもまた、姫がいたことによって起きた変化…なのかな……)

 

 全ての事象の変化の原因を自分のせいだと思い込み、更に闇が深くなる。

 最悪の堂々巡りだった。

 

「君って…物覚えはいい方?」

「い…一応」

「なら、ここから先、真っ直ぐと歩いていって3番目の十字路を右に曲がって。そこに交番があるから、おまわりさんに事情を話せば、きっとなんとかなると思う」

「そ…そうなんですか? でも、私はこの町にある教会に赴任する事になっていて……」

「残念だけど、この町に教会なんて存在してないよ。昔はあったらしいけどね」

 

 本当は、ついさっきまで存在はしていた。

 それでも、人が住めるような状態ではなかったが。

 

「そんな……」

「誰に教えられたかは知らないけど、きっと上手く情報伝達が出来てなかったんだよ」

「みたい…ですね」

「姫は用事があるからついてはいけないけど、この時間帯なら人気も少ないから問題無いよ。それでも、早く交番に行くことを推奨するけどね」

「分かりました。親切にしてくださって、ありがとうございました」

「うん。それじゃあね」

 

 夜でも眩しく輝く笑顔を見せてから、アーシアはゆっくりとこの場から去っていった。

 

 この後、彼女は交番にて全ての事情を話し、天涯孤独の身であることが判明すると、駒王町にある孤児院に引き取られ、そこの子供として生活をしていくことになる。

 その過程で駒王学園にも入学することになり、その『能力』が切っ掛けとなりリアス達とも知り合っていくのだが、彼女は悪魔に転生することなく、人間のままで生きていったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




刑部姫オルタ誕生。

クラスはアサシンからバーサーカーに。

次回もまた『原作の敵』を葬っていきます。

これからの展開に関する質問です。

  • 逆ハーレム!
  • 百合ハーレム!
  • どっちもありのドタバタ系ラブコメ
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