世界にゾンビが蔓延してる中、私はマザーらしい。   作:Htemelog / 応答個体

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後半コメディ寄り
性転換要素注意

※昨夜の誤投稿分です。


ラトロモイ-造り帰る新しき憧憬

「っ、っはぁ……!」

 

 荒い呼気を吐く──深夜の、メイズの眠った二人の家のリビングで。

 イースはゾンビだから、睡眠の必要がない。いつもこうして静かな夜を、独りで過ごしている。とはいえ眠る必要がないのは外のゾンビ達だって同じなので、それを対処する人間の兵達の発する戦闘音はそれなりに響いているから、完全な静寂ではないのだが。

 それでも、メイズの声がしない夜は、イースにとって静かな時間だった。

 

「う──、ぐ」

 

 疲労を知らない体だ。睡眠を必要としない体だ。渇くこと以外、死の危険が遠ざかった体だ。

 勿論病にも、侵されることの無いはずの身体。そうだったはずだ。

 

 けれど今。

 

「う、ぁ……ぁあっ」

 

 イースは、内から込み上げる苦しみに、藻掻き喘いでいた。

 

 

 ф

 

 

 事の発端はその日の正午。

 アイズを名乗る"マルケル"と呼称されるゾンビの首を潰し、その後に現れた"マルケル"ゾンビの群れを対処せんとイースが現地に到着したあの時。

 通常のゾンビとは比べ物にならない、埒外の戦闘力を持つ"マルケル"ゾンビに対し防戦一方だった人間の兵は、"英雄"イースの登場によってその劣勢を覆すことになる。

 的確な指示と研ぎ澄まされた連携。各々がイースの手足になったかのような感覚と共に、今まで感じていた恐怖や不安が拭われた高揚感によって"マルケル"ゾンビを押し返していく。中には"マルケル"ゾンビとなってしまった者もいたが、それでも最小の被害で之を鎮滅した──はずだった。

 

 それは一瞬の隙か。

 

 全てを討滅し、一息を吐いたその瞬間、イースに最も近い位置にいた人間が"マルケル"ゾンビ化した。人間の誰もが反応出来ない中、イースだけが思考を置き去りにする情報処理能力でそれを判断し、殺しにかかり──いともたやすく、首を刎ねる事に成功した。

 けれど、それでも相手は"マルケル"──アイズで。アイズの卓越した戦闘センスは、無理矢理に子供の躰を動かしているだけのイースとは比べ物にならない。"マルケル"となった人間がこの国の兵であったのも理由の一つだろう。十二分に鍛え上げられた身体は死の直前に腕を動かし、イースの腕に微かな傷をつけた。

 本当に微かだ。微細で、僅かなひっかき傷。近づかなければ見えない程に小さなそれは、イースにはわかったけど、周囲の人間にはわからなかっただろう。

 ただ突然豹変しかけた仲間が一瞬の内に"英雄"に首を刎ねられ、死体となってからその首が灰緑色に染まるその様を見るばかりだっただろう。

 

 その後、イースが「各自持ち場に戻れ」と言った事に何の疑問も抱く事なく、やはり"英雄"は凄いと、彼さえいれば自分たちは大丈夫だと──そう思ったはずだ。

 

 けれどそれは、間違いだった。

 

 その時につけられた傷。

 ゾンビに痛覚はないから、痛みは感じない。けれど痛みではない。痛みではない──何か、熱いものが、そこを中心に広がっているのをイースは感じていた。

 イースは生前、蜂に刺された時の事を思い出す。ベランダにあるサンダルを履いたら中に蜂が居て、刺された事にすら気が付かなかったけど、段々と腫れていって──自分の身体とは思えない程固くなって、熱くなって、感触が無くなって。

 そんな感覚が、そのひっかき傷から感じられた。

 

 家に帰って、一応その部位を水で洗い流してみても無駄。ゾンビであるにもかかわらず消毒液なんてものを使ってみても、ダメ。

 何をしても無駄なまま、メイズにそれを悟られないよう振舞い、彼女を寝かせ──今に至る。

 

 今に至るのだ。

 

「……うる、さい」

 

 傷を付けられた方の腕が震える。左腕だ。抑えつけても震える。その震えは、傷の熱さと共に広がってきている。

 けれど、そんなことよりも。

 そんな、自分の身体の制御が利かない、なんてことよりも。

 

「黙って……黙ってくれ……黙れよ!」

 

 あぁ、メイズが寝ているというのに、声を荒げてしまうくらいには、煩かった。

 うるさいのだ。騒がしい。静かで孤独で、けれど彼女の存在を感じられる、安心できる夜のはずなのに。

 

 うるさい。ずっと、ずっと、叫びたてている。

 イースの中で。

 

「僕はイースだ。III(イース)だ!」

 

 いいや、違う。

 俺は。

 

II(アイズ)じゃない……!」

 

 俺が、マルケルだ。

 

 

 

 К

 

 

 

 気付くと、なんだか簡素な家にいた。

 簡素……質素と言った方が適切か。贅沢品の無い家だ。生活感があまりない、ともいえる。とはいえ壁に掛けられたランプや、新品らしい箒、数は少ないがいくつかの食器など、完全に無いわけではない。誰かが生活をしている。それはわかる。

 

「……どこだ、ここ」

 

 声に出して驚いた。

 これは自分の声じゃない。聞いたことのある声ではあるが、それにしてはどこか籠っているような感じ。

 

 自分の身体を見下ろす。肌色の肌。

 

「……もしかして俺は……生き返った、のか?」

 

 恐る恐る、その肌に触れる。

 ああ、けれど、どこか懐かしき肌のそれとは違う、粉っぽい感触。少し強めにそれを拭ってみれば、その下から見慣れた灰緑色の肌が顔を見せた。

 

「まぁ……そうだよな。今更人間に戻ったって嬉しかねぇが」

 

 もう一度見下ろす。自分は椅子に座っていたらしい。

 そして、子供らしい。

 

「いや、なんでガキの身体になってんだ? ……あぁ、前の身体はジョーに両断されたから、新しい身体をマザーが用意した、とか……ん? 何言ってんだ俺、マザーは死んだだろ。とっくの昔に……死んだ、よな? ん? 倒さなきゃいけない……いや、だから殺したって、ヴィィの奴が」

 

 記憶の混濁が感じられた。

 何か、どこか、知識が前後しているように感じられる。知っているべき事を知らないような、知っているはずのない事を知っているような。

 例えばこの家。この家は大切なあの子と共に住む家だ。あの子は俺にとって自分の命よりも大切で、彼女のためなら死だって怖くない。

 

「いや誰だよ、あの子って。……ミザリーちゃんか? おいおいよしてくれ、俺は相棒の女を取ったりしねぇぞ」

 

 遠くに聞こえる衝突音。今日も人間とゾンビが戦っているのだろう。余り長引くようであれば、助太刀に行くべきだ。勿論、人間の方に。何故って俺は、人間を導く"英雄"で、ゾンビからの脅威に立ち向かうべき存在なのだから。

 

「……俺が、同胞を? なんだこの記憶……マザーに植え付けられたか? いや、だからマザーは死んだって。ん? ん?」

 

 彼女だけは守らないといけない。俺をあの暗い路地裏から救い出してくれたあの子だけは。どんな障害も()()()()、必ず幸せにするために──彼女も"同胞"にしないと。

 何故って、旧人類でいるより、新人類……同胞になった方が死のリスクも減る。死は悲しい事だから、確実に幸せを掴み取ってもらうために、死に難くしなければいけない。

 

「彼女、ってのが誰かは依然わからねえが、そうだな、そうだ。何も間違ってねえ。ん? んん。んー。間違ってねぇな。まぁ俺達の見た目が死に近しいのは認めるけどよ、こっちになっちまえば特に怖い事もなくなる。説得しても聞かねえってんなら、力づくでやるしかねぇだろ」

 

 俺は、同胞たちを導いて、人間を殺す。殺すってのは言葉のアヤで、同胞にするって意味だ。俺は同胞たちの中でも抜きんでてそういうのが上手いから、率先してやってやる。戦うのが苦手な同胞もいるからな、無理強いはしたくねぇ。

 あんだけ強くなったジョーの奴だって、いつかは死ぬ。誰に何を残す事も、誰と何の記憶も共有する事も無く死ぬんだ。旧人類は簡単に死んじまう。そんな怖い事は、俺は許容できねえ。

 ジョーの奴も、ミザリーちゃんも、あの子も、誰も彼も同胞になれば、ようやく永遠に笑って過ごせる世界が訪れる。この星は水の惑星だからな、水分は潤沢だ。渇いて死ぬことも滅多になくなるだろ。食料も眠る場所も必要でない俺達は、同胞同士で争う必要だって無い。死のリスクは旧人類よりかなり少ないんだ。

 

 だから。

 

「イース、おはよう」

 

 声のした方へ向く。

 そこにはまだ齢十そこらだろう少女。眠そうに眼を擦って、こちらに挨拶をした。

 

「イース?」

 

 聞き返す。

 ああ、聞き覚えがあると思ったら、アイツの声か。同姓同名、か? つか、なんだって旧人類に挨拶なんかされてんだ。そもそもなんで、旧人類のままにしてる。早いとこ同胞にして──。

 

「ああ、もうアイズになっちゃったんだ。結構早いね、進行」

「──何?」

 

 一瞬、意識が白んだ。この容姿の少女に見覚えは無い。とても大切で、恩が有って、守り通したい少女だけど、俺はこの子を知らない。

 だが、覚えがある。

 ぞくっとした。寒気だ。俺はこれを感じたから──島から逃げたんだ。僕は。これが怖かったんだ。

 

()()()()()……()()だ?」

「大丈夫、安心してイース。貴方にはまだ役目があるから、今回は助けてあげる」

 

 椅子を蹴って立ち上がる。大切で大事で、言葉にした事は無いけれど、大好きな彼女から、距離を取る。蹴り技を主体とした独自の構えで彼女に相対し、その存在を確と見た。

 似ても似つかない。幼き少女の姿。

 ああ、けれどそれが、今はあの女性と重なる。

 

「お前、マザーか」

「うん。そうらしいね。なんでマザーって呼ばれてるのかは知らないけど」

 

 甘い香り。

 睡眠を知らぬはずの身体が、不意に眠気を覚えた。

 これに関しては覚えがある。いつか俺が自分を取り戻した時……ジョーからマザーを守った時に感じたもの。急に意識が落ちて、気付けば島に戻っていて、俺は。

 

「ゾンビは菌で動いているから、その活性を停止させれば簡単に意識を奪える。良かったよ、その構造は変わって無くて」

「──マザー」

「うん。おやすみ、アイズ。次に起きた時はイースだよ」

「メイ、ズを……返せ」

「──うん。そのつもり」

 

 意識が落ちる。闇に飲まれる。

 その日、僕は初めて意識を失った。

 

 

 

 Ё

 

 

 

 飛び起きる。

 いつも夜を明かす、机。リビングの机だ。

 

「眠っていた……?」

 

 あり得ない。ゾンビは睡眠をとらない。

 

「あ……腕の熱いのが、消えてる」

 

 あれだけ熱かった傷口から熱が取れ、震えも痺れも、おかしくなるほどの頭痛も消えている。

 窓の外を見れば、もう日が昇っている。まずい、初めて遅刻をしたかもしれない。急いで支度をする。鏡を見ると、首元の顔料が取れてしまっている事に気が付いた。

 

「うわ、これいつからだろう……何も言われてないからバレてなかったんだろうけど、危ないな。……もう少し、取れ難い顔料を探すべきかも」

 

 もし会議中なんかに顔料が取れて、その下の灰緑色の肌が見えてしまったらコトだ。僕は人間を殺したくはないけど、人間は僕を殺しに向かってくるだろう。さらに"英雄"がゾンビだったなんて事が知れ渡ったら、人間達は希望を失くしてしまう。ゾンビに負けてしまう可能性が高くなる。それは、ダメだ。

 何よりメイズに危害が加わるかもしれない。だって一緒に生活しているんだから、気が付かないはずがない。

 

「……これでよし」

 

 顔料を塗って、鏡で確認して。

 

「あ、起きたんだ、イース」

「メイズ。おはよう。けどごめん、遅れそうだから行ってくるよ」

「うん、いってらっしゃい」

「いってきます」

 

 奥の部屋から起きてきたメイズに挨拶を返す。僕は睡眠を必要としないけど、メイズは人間の子供。普段あれだけ頭を使ってるんだ、睡眠は摂っても摂っても足りない程だろう。この時間でも、全く寝坊には思わない。

 ああ、そんなことより急がないと。

 体の調子はなんだか万全だ。昨日の病のようなものが嘘みたいに。ゾンビの身体で体調の上下を感じるなんておかしな話だけど、それさえも悩んでいる時間が惜しい。

 

「……"マルケル"ゾンビの対策。ちゃんと考えないとね」

 

 言葉にして、確認して、家を飛び出した。

 しっかりしないと。僕は"英雄"イースだから。人間の国もそうだけど、誰よりも大切なあの子……メイズを守るために。

 

 

 

 ё

 

 

 

 珍妙な道中だったと、もし日記を付けているのであれば書き記した事だろう。

 マルケル……ワイニーはそう独り言ちる。

 

「不思議なもんだよな」

「何が……?」

「いやよ、お前が覚えてるかどうかは知らねえけど、言葉とか思考とかがよくわかんなかった頃、火って怖かっただろ? いや火が怖くない時期もあったみてぇだが、そりゃ覚えてねえからおいとくとして」

「ああ……そういえば、そんな時期があったような」

「けどこうして、真夜中に人間の頃みてぇに焚火に当たって。渇くのが天敵だってのに我ながらおかしなもんだと思うよ」

「別に、温度を求めているわけじゃないから……いいんじゃないか。俺達ゾンビにとっても、光は重要、だろう」

「そりゃそうだな、ははは!」

 

 少女マルケルと少年ワイニーの旅は、お世辞にも良好なものとは言えなかった。彼女らが出会った場所が大陸中央部で海から遠かった事もあるが、行く先々で"マルケル"を名乗る多種多様なゾンビが襲い掛かってくるからだ。それらは主に少女マルケルが対処をしたけれど、中には苦戦を強いられる程強い個体もいて、ワイニーがそれを助けることが多々あった。

 ワイニーはマルケルだから、自身の隙というか弱点ともいうべきものを知っている。そこを補う事が出来るのは、自身が基本後方に待機させられるからだろう。常に前方で戦いを続けてきたワイニーにとって、その視点は新鮮も新鮮。故に今の状況を"勉強になった"と称す自分も存在していた。

 そんな感じで、時には助け、助け合い、助けられを繰り返していくうちに、二人は相棒と言えるほどの相性を見せるようになっていた。元が自分同士なのだから当たり前と思う反面、襲い掛かってくる"自分"に嫌気も差す。

 

 ワイニーはもう認めていた。

 少女マルケルも、襲い掛かってくる"マルケル"達も、全部全員自分なのだと。勿論ワイニーもマルケルだ。そこは譲れない。けど、多分、彼ら彼女らも同じなのだと。

 認められないから排除する。短絡頑固の適当真面目人間。もっと対話を大事にさえすれば避けられた争いがいくつもあっただろうと溜息を吐くが、直せるものなら今こうなっていないと頭を振る。いつかジョーに言われた「相変わらず頭の固いヤロー」という言葉に苦笑せざるを得ない。

 体が変わってもコレだ。なら、コレは一生直らないのかもしれない。一生なんてとっくに尽きているが。

 

「明日一日歩けば、次の水場が見える。渇きはどんくらいだ、ワイニー」

「問題ない。そちらこそ昨日今日と連戦だっただろう。大丈夫なのか」

「ガキとは水分保有量が違うのさ。そう考えると女の身体も悪くねえな、()()に水を溜められるんだ」

「はしたない、といっても通じないか、お前には……」

「元男だからな! なった直後は違和感が拭えなかったが、慣れちまえば問題ねえ。この身体は相当鍛えていたみたいで動きやすいしな」

「羨ましいよ。俺は生前をよく覚えていないが、特に鍛えてもいない子供だ……ゾンビは成長しない、だろ?」

「ああ、成長しねえ。けどお前はよくやってる方だと思うぜ? 今日も助けられたしな!」

 

 ワイニーは自身をマルケルではないと偽っている。普通に知性を獲得した子供ゾンビだと。ワイニーはイースと同じ知性強化型で、だから早熟なのだと。そう言う事にした。

 ちなみにワイニーが"同胞"という言葉を使うのをやめたら、少女マルケルもそれに合わせた。未だ仲間意識はあれど、襲い掛かってくる"自分"を同胞だとは思えなかったから。

 

「ちなみに、どうよ、ガキの意見としては」

「何がだ」

「何が、って。そりゃこの身体の魅力だよ。俺にはガキにしか思えねえが、ガキのお前にはそうじゃねえだろ? ガキはこんくらいの年頃の女に憧れるもんだ、ってことくらい俺でも知ってる。で、どうだ? この胸とか、触ってみてえか?」

「散々思っていたが、お前馬鹿だな?」

「おいおい照れんなって! いいか? 男はな、幾つになっても獣なんだよ。ガキでもジジイでも同じだ。可愛い子がいたら可愛い。エロい姉ちゃんがいたらエロい。そう思うのが男なんだよ。で、どうだ? この身体、イイか?」

 

 ワイニーは物凄く嫌な気分になった。不快だ。そのセクハラが、とかじゃなくて、これが自分であるとわかってしまう事が。

 他人からはこう見えていたのか、と反省する。適当軽薄根は真面目、なんて評されてはいたが、その適当軽薄部分がどれだけ己の評価を下げていたのかと思うと目頭が熱くなる。涙なんて出ないが。

 なんだこの下卑た男は。そんなんだからモテなかったんだ。ジョーにはミザリーちゃんがいるからいいよな、俺には女の影なんて一つもないぜ、なんて嘯くことは多々あったが、確実にこれが原因だ。お前にたとえ幼馴染がいたとしてもお前の女にはならなかっただろう。潔く死ね。

 

「なんだ、イイ、と言ったら触らせてくれるのか」

「へへ、なんだなんだやっぱりお前も男だな! じゃあ、次の水場で、な?」

「もういいからその辺で干からびて死んでくれ」

「照れんなってぇ!」

 

 背中をバシバシ叩いてくる少女の自分。

 死んでほしいと、心から思った。

 

 

 

 к

 

 

 

 

 人間の国──。

 

 

 イースが出て行った家。

 開けっ放しの戸を丁寧に閉めて、一つ息を吐いた。

 

「……第二次パンデミック、って所かな。全く、何をやってるんだか」

 

 採取した細菌と投与した細菌を眼前に持ってきて見比べる。

 そこに差はあまりない。まぁ目で見てわかる事があったら逆に怖い。目に見える細菌はもう細菌とは言えない。あるいは目の方の倍率が凄すぎるか、だけど。

 そして、もう一つを取り出す。

 

「最悪の場合はリセットも考えてるけど……ま、上手くやるでしょ」

 

 鼻歌を一つ。古い古い歌だ。

 さて、今日はどんな料理にしようかな。

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