私が晴れて鬼殺隊の柱達に認められ、共に鬼どもを狩る様になってもう時期数ヶ月が経とうとしていた。私の鬼殺隊の立場としては、特に決まりはないようでどの階級にも属さない特別なものとされている様だ。・・・・・・私のようなどこにでもいる様な馬の骨が柱になってしまっては、他の隊士達に申し訳が立たないからであろうな。
柱の者達とは、あの時会って以来頻繁に交流を深めていて、互いに鬼の情報を共有し合ったり、互いに剣を交えたりして技の練度を磨いたり、世間話をし合ったりなどをしていた。時たまに私の屋敷にやってきて、寿々の手料理を共に堪能したりもした。その様にして、柱達と友好な関係を築いていきながら、私は日々を楽しむ様にして過ごしていた。
そして、鍛錬の方なのだが・・・・・・あの日以来、毎日の様に柱の者達(特に杏寿郎、天元、実弥)が私に教えを乞うてきたため、私は自分のやり方ではあるが、呼吸の仕方を伝授した。最初はやはりというべきか、呼吸がうまく出来ずに失敗することが多々あったが、さすがは鬼殺隊の柱になった者達というのもあってか、始めてから一月足らずでその者達は呼吸を習得した。この呼吸の仕方ができることで、少なくとも今よりも技のキレや威力などは上がる。今後予想外の鬼と出会した時のための私なりの配慮だった。そして、以前に錆兎や義勇に習得させた”光の呼吸”【光天の舞(劣)】も、半ば強引に柱達に習得させた。その間の修行が地獄だったことは言わずもだが・・・・・・(これもまた習得に一月)。
そんなドタバタな日常を送りながら、鬼を狩っていたある日だった。いつもの様に任務で鬼を狩り、屋敷に戻ろうとしていた私のもとに、お館様からいただいた、鎹鴉が急報を知らせにきたのだ。・・・・・・何か嫌な予感を感じた私は、自分の腕に鴉を止まらせると、急報を聞いた。
「カァー!急報ー!急報ー!南南東ノ村ニテ花柱ガ上弦ノ弐ト抗戦中〜!!近クノ隊士ハ応援ニ向カエー!」
「花柱・・・・・・カナエか。・・・・・・あいわかった。すぐに向かうとしよう・・・・・・」
鴉を放した私は、すぐさま目的のその街へと向かった。上弦の鬼のことは、お館様から聞かされている。・・・・・・なんでもここ何百年の間、その鬼と遭遇したものは、誰一人としてその者らを倒すどころか生きて帰ることすらできてないらしい。先日会った巌勝兄上もその類に該当するらしいのだが、今はそれは置いておくことにした。今は何よりカナエの元に急がねばならなかったからだ。カナエも柱としてはかなりの実力者であり、私も少しだが手ほどきをしてあるためある程度の相手ならば問題なく相手にできる。・・・・・・だが、相手は上弦の鬼。勝てる保証も、負ける保証も、死ぬ保証も・・・・・・・・・・・・生きて帰れる保証も無い。だからこそ、私はカナエのもとへ向かわなければならなかった・・・・・・。
「カナエよ。・・・・・・其方はまだ散るべき時ではない。・・・・・・早まるでないぞ?」
先ほどよりも走る速度を上げ、私はカナエのもとへ急ぐのだった。
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その頃・・・・・・件の村の外れにある一本橋にて、花柱である胡蝶カナエはある鬼と対峙していた。その鬼は一見すれば洋風の着物を着たすらっとした好青年で、一部の女性であれば一目惚れもするのでは無いかと錯覚するほどの美貌を持ち合わせていた。だが、その虹色の双眼の瞳に”刻まれている文字”が彼を鬼だと決定付ける証拠となっていた。その瞳には・・・・・・・・・・・・【上弦の弐】と刻まれていた。
「ねえ?あなたは人間と鬼は仲良くできると思っているかしら?」
「ん?いきなりどうしたのかな?そうだね〜・・・・・・それは無理なんじゃないかな〜?人間は俺たち鬼のことを斬ろうとするし、俺たち鬼は人間を食べないと生きていけない。だから、結果的に俺たちは争う関係にあるわけだからね〜」
「そう。でも、私はいつかは人間と鬼が仲良くできると思っているわ。・・・・・・まだ何も根拠はないけれどね?」
「はは!キミって面白いね!名前は・・・・・・カナエちゃんだっけ?・・・・・・キミみたいな子を見てるとすごく俺が救済したくなるんだよね〜!」
救済と言った途端、その鬼の纏う空気が変わったことに気がついたカナエは、身構える。
「・・・・・・あなた、名前は?」
「俺は童磨。よろしく!じゃあカナエちゃん!早速キミのことを救ってあげるからね!」
童磨と名乗ったその鬼は、手に持っていた鉄の扇子をぱらっと広げると、その扇子で自身の腕をすっと斬った。
「っ?・・・・・・何を?」
「はは!こうするんだよ!」
童磨は腕から流れ出る血を吐息で霧状に凍り付かせると、その血をカナエに向けて扇子を使って飛ばしてきた。
「血鬼術【粉凍り】」
「っ!!(吸ったらまずい!)」
咄嗟に不気味な予感を感じ取ったカナエは、一歩後ろへと退き童磨とその霧から距離をとった。
「”花の呼吸”陸ノ型【渦桃】!」
カナエの放った技が渦を巻く様にしてその霧を打ち消していく。カナエのこの判断は正解で、もし仮に違う型を使っていた場合、その霧に巻き込まれ・・・・・・・・・・・・肺を壊死させていただろう。以前、この型をこの様な形で防御に応用できないかと昌継とカナエは話し合っていて、すでに実践していたため今回咄嗟ではあっても出すことができたのだろう。
「へぇ〜?面白い呼吸を使うんだね?まだまだいくよ!血鬼術【枯園垂り】」
「くっ!!・・・・・・速い!」
童磨の冷気を纏った鉄扇がカナエを襲う。先ほどまで遠距離にいた童磨だったが、一瞬にしてカナエとの距離を詰め、鉄扇を使った近接攻撃を仕掛けてきたのだ。あまりの速さに一瞬反応が遅れたカナエは、童磨の攻撃を受け止めることは出来たものの、力で勝る童磨に押し切られ、尻餅をついてしまう。
「さて、そろそろ救済の時間かな?・・・・・・ふっ!!」
「・・・・・”光の呼吸”【光天の舞(劣)】!」
「おっと?・・・・・・また見たことのない呼吸・・・・・・やっぱりキミはすごいよ!カナエちゃん!ますます俺が救済したくなったよ!」
昌継から伝授された”光の呼吸”【光天の舞(劣)】で何とか童磨の攻撃を弾いたカナエは、素早く立ち上がると再び童磨から距離をとった。
「(正直言って・・・・・・私じゃこの鬼には敵わない。いくら昌継さんに教えを受けていたとしても、私じゃせいぜい時間稼ぎができれば良いとこかしら?)はあっ!”花の呼吸”弐の型【御影梅】!!」
「良い動きだね!でも惜しいね〜?」
「くっ・・・・・・身のこなしまで化け物?」
カナエが必死になって放った技も童磨には全く通用せず、ひらりと躱されてしまう。それだけでもカナエは察してしまう。この鬼と自分の実力の差に・・・・・・。
「ちょっと本気を出そうかな?血鬼術【冬ざれ氷柱】!」
童磨が鉄扇を上に掲げると、カナエの頭上に巨大な氷柱がいくつも現れ、それがカナエの元に降り注ぐ。
「ひ、”光の呼吸”【光天の舞(劣)】・・・・・・きゃっ!!」
同じく光天の舞で凌ごうとしたカナエだったが、全部を凌ぐことは出来ずに一部の攻撃を受けてしまう。いくら【光天の舞(劣)】を使えるとはいえ、やはり昌継の様な完全なる【光天の舞】には遠く及ばぬため、上弦並の鬼相手だと全ての攻撃を受けることは出来ないのだ。
氷柱の攻撃を足に受けたカナエは、足を引きずりながらも立ち上がるが、もはや戦うことは不可能に近く、勝敗は目に見えていた。
「今度こそ終わりみたいだね〜?でも安心してよ。キミの存在はずっとこの俺の中に残り続けるからさ!」
「くっ・・・・・・(しのぶ・・・・・・カナヲ・・・・・・柱のみんな・・・・・・お館様・・・・・・昌継さん・・・・・・ごめんなさい・・・・・・)」
童磨が再びカナエの元に氷柱を落とそうとしている中、カナエは静かに目を瞑り、死を覚悟する。
・・・・・・・・・・・・だが。それを許さぬ者がこの場に現れた。
「カナエよ・・・・・・よくぞ持ちこたえてくれた。後は任せるが良い・・・・・・」
「えっ・・・・・・」
カナエの目の前に現れたその人物・・・・・・それは、カナエや他の柱達が尊敬をし、仲間として共に鬼と戦っている心強い味方・・・・・・・・・・・・継国昌継だった。
一話では収まらなかったので、もう一話続きます。
【大正コソコソ噂話】
昌継の存在は、柱達こそ知ってはいるが、他の隊士たちは知らない者が多いらしい。
炭治郎の家族は助ける?助けない?
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助けて!
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助けないで!
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禰 豆子以外助けて!