随分とエタりました。
鬼である妹を助けようと、必死に俺たちに向かってくるこの目の前の少年。勿論、来られたところで俺や義勇には及びもしないだろうから、俺たちは特段気にする事もなく対処した。
「甘い。そんな気迫で俺たちを倒せるとでも思ってるのか?」
「くっ!禰豆子を離せ!」
怒りそのままに向かってくる少年だが、その姿勢はまさに猪突猛進。躱しつつ、こいつの対処をするのは最も容易いものだった。何せ、普段から鬼との戦闘に向けた厳しい鍛錬をしている俺たちだ。こんな少年、赤子の手を捻るよりも簡単に、いなすことが出来る。
「吠えるだけか。はぁ・・・・・・もう、大人しくしろ」
「くっ・・・・・・そっ・・・・・・」
これ以上相手をしたところで時間の無駄と察した俺は、この少年の鳩尾に一撃を加え、動きを止めさせた。
「っ!?・・・・・・ぐっっ・・・・・・がぁぁっ!!」
「っ・・・・・・何だ、急に暴れっ・・・・・・っ!しまった!」
少年の妹を取り押さえていた義勇だったが、いきなり暴れ出した妹に拘束を解かれてしまったようだ。拘束から逃れた妹は、我を忘れたまま蹲った少年の目の前に猛烈な勢いで迫ろうとしていた。
「させると思って・・・・・・っ!・・・・・・何だと?」
少年が喰われる前に、頸を切ろうと刀を抜いた俺と義勇だったが、次に出た”その妹の行動”に面を喰らった。
「うぅ・・・・・・」
「っ!禰豆子・・・・・・?」
その妹は、鬼になったのにも関わらず、まるで兄であるあの少年を守るかのようにして、俺たちの前に立ち塞がったのだ。無論だが、誰でも鬼と化せば、例え相手が肉親であろうと兄妹であろうと友人であろうと、何の躊躇いもなく襲い掛かろうとし、最終的にはその肉を食い尽くす。これまで、俺たちはその光景をいくつも嫌と言うほどに見てきた。・・・・・・今回も例に漏れず、それに慨すると思っていたのだが・・・・・・一体どう言うことなんだ?
「錆兎・・・・・・どう見る?」
「わからない。だが、どうであれ鬼である事に変わりはない。俺たちの任務はただ一つ・・・・・・この目の前にいる鬼を始末することだ!」
「・・・・・・そうか」
どこか不満げな表情を浮かべた義勇だが、俺は気にせず刀を向けた。
「行くぞっ!」
「ま、待ってくれっ!頼むから禰豆子だけはっ!!」
「吠えるだけでは何も守れないって言っているっ!妹を守りたければ、己の身を曝け出てでも止めに入って見せろっ!」
俺は少年に檄を飛ばすが、俺の一撃が相当効いていたのか、起き上がれそうになかった。・・・・・・ここで起き上がってでも来さえすれば、俺も少しは考えを改めたかも知れないが・・・・・・まぁいい。これで・・・・・・終いにするっ!
「はぁっ!!」
俺の横凪の一閃が、鬼の頸にせまる。・・・・・・あともう少しで頸を刎ねる・・・・・・そう思った時だった。
(ガァキィィィィンッッ!!!!)
俺の刃が、すんでの所で何者かに止められた。しかも、同じ日輪刀で・・・・・・。義勇は俺の背後にいるため、義勇であるはずは無いのは明白。・・・・・・では、一体誰なのか?・・・・・・それは。
「錆兎・・・・・・しばし待て」
「っ!昌継・・・・・・さん?」
何故か、この場にいた俺の師でもある昌継さんだった・・・・・・。
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「錆兎・・・・・・しばし待て」
「っ!昌継・・・・・・さん?」
鬼と化した禰豆子を滅するべく刃を振り翳していた錆兎に対し、私は刀を抜きつつ咄嗟に割って入り・・・・・・此奴の剣を受け止めた。
「錆兎、義勇。すまぬが、この鬼と炭治郎には少々話がある故、少し時を貰っても構わぬか?」
「その女は鬼ですよ?一刻も早く仕留めないとその少年が危険に晒されます!」
「安心するがいい。・・・・・・もし、この鬼が炭治郎を喰おうと動いたならばすぐさま頸を刎ねる。であるからして、ここは私に任せてはもらえぬか?」
「「・・・・・・」」
少し納得の言っていない様子の二人だったが、最後には渋々と言った形で刀を収めてくれた。それを見た私は、軽く会釈をした後で改めて鬼と化した禰豆子へと視線を向けた。
「ううぅぅ・・・・・・」
「(やはりこうなったか・・・・・・。だが、この女子・・・・・・まるで炭治郎を守るかの様にして・・・・・・)」
「くっ・・・・・・だ、誰かは知りませんが、お願いですから禰豆子を・・・・・・妹を殺さないでください!お願いします!」
後ろで倒れている炭治郎は、私に媚びるように妹を殺さないように願ってくる。私とて、できれば殺したくは無いが・・・・・・仕方ない。
「ふっ・・・・・・」
「っ!?がっ・・・・・・」
私は一瞬にして、禰豆子の背後に回り込むと、首筋に一撃を入れて意識を刈り取った。いつ暴れ出しても不思議ではなかったので、今はこうしておくべきなのだ。
「っ!禰豆子!」
「安心するが良い。少しの間眠って貰っただけである」
そう静かに口にした私は、倒れた禰豆子を近くの木にもたれ掛からせると、そのまま炭治郎の前に立った。
「炭治郎よ、其方に問いたい。其方はそんなボロボロになりながらも、何故に鬼となった妹を生かしたいと願う?鬼となった者は肉親であろうと兄妹であろうと、関係なく喰おうと凶暴化するのだぞ?」
「でも、だとしても家族である事に変わりはありません!家族を助けたいと思って何が問題なのですかっ!」
「助ける?・・・・・・其方がどのようにしてその妹を助けるというのだ?鬼から人間に戻すような手段は存在しないし、何の力も持ち合わせていない其方が?」
「・・・・・・」
その言葉には、炭治郎は口を紡いだ。鬼から人間へと戻す薬は、珠世が開発の途中だが、それがいつ完成するかは定かにはなっていない。だからこそ、救いようが無い鬼は斬るべき所なのだが、幸いにも禰豆子はまだ人は喰っていないので留まっていた・・・・・・あくまでも、今は・・・・・・だが。
「其方が言うように、その禰豆子を生かして、その矢先に禰豆子が罪なき人間を喰らったらどう責任を取るつもりだ?・・・・・・例えるならば、其方の家族。其方の家族を禰豆子が全員喰らった場合、其方はどうする気であるか?」
「禰豆子が・・・・・・家族を・・・・・・そんなことする筈・・・・・・」
無い!・・・・・・とは言い切れなかった様子の炭治郎は、しばし何かを考えるように俯く。この判断の遅れは非常に難点だが、私であるなら即刻その場で禰豆子の頸を斬り、自分も自害するだろう。
「私たちは、”鬼殺隊”というそこの禰豆子のように鬼と化した人間を狩る組織に身を置いている」
「鬼殺隊・・・・・・?」
「その組織の関係者が今、”鬼を人へと戻す事が可能となる薬”を作っている最中である。もしも、この禰豆子を私たちに預けることを了承するのであれば、禰豆子を人間に戻す事を保証しよう」
「っ!本当ですかっ!?」
妹を人間に戻せる可能性が少しでもある事に希望を見出したのか、炭治郎は途端に顔が明るくなる。
「昌継さん!?何を勝手な事をっ!」
「すまぬ。私としても、勝手な事を言っているというのは重々承知である。だが、私はこの鬼・・・・・・禰豆子には何か、今後を左右する可能性のような物が感じられるのだ」
「可能性・・・・・・?」
「聞くが、今まで其方らが見て来た鬼で今の禰豆子のように、人間を庇うような行動をとる輩はいたか?肉を欲する事もせず、ただただ人を守るべく立ち向かおうとする鬼を見た事はあるか?」
「「・・・・・・」」
私の問いに二人は、言葉を発する事はなかったがその代わりに首を小さく左右へと振る。
「私とて、このような鬼は見た事がない。なればこそ、この禰豆子を珠世に預けさえすれば、珠世の研究は捗る可能性が高い。”鬼を人間に戻すことを可能とする薬”が出来る時間が短くなる事を意味しているのだ。故に、私はこの禰豆子を斬る訳にはいかぬ」
「本当にそれだけの理由ですか?その鬼を斬らぬ理由は?」
錆兎が訝しむように、私の問いかけてくる。
「・・・・・・どうにも、重なってしまってな。この炭治郎と私が」
「っ?この少年と昌継さんが?」
「うむ。私には尊敬する二人の兄がいたのだ。一人はもう亡くなられて終われたが、もう一人は今もなお生きている」
「え?昌継さんって、400年以上も前の時代から来たのですよね?そんな前の時代から生きているあなたの兄上とは・・・・・・まさか?」
「・・・・・・私が尊敬した兄は、悪しき鬼へと変貌されていた」
私の暗く重いその言葉に、二人は口をつぐむ。
「私はこの鬼殺隊に入る前、実は鬼となった兄と対峙した事があったのだ。その時は、私もこの炭治郎同様に酷く慌てふためいたものだ」
「お館様が『昌継は上弦の壱の鬼を撃退した事がある』と仰られていましたが、もしかしてその上弦の壱が・・・・・・」
「・・・・・・私の兄である」
私の実の兄が鬼。その事実に二人はいよいよ驚きを隠せなくなっていた。
「私は、出来れば兄上を元の人間へと戻したいと考えているのだ。これ以上、兄上と刃を交えたくなどないのでな?」
「ですが、その鬼が人間に戻りたいと願っている保証は・・・・・・」
「兄が何故に鬼へと堕ちたかは大方の見当がついている。故に、今度会った時にこの件について話し合ってみるつもりだ」
淡々と口にする私は、続け様に二人に対してゆっくりと頭を下げた。
「この件については私が全責任を取る。お館様にも他の柱達にもしっかりとした説明をするつもりである。錆兎、義勇よ。私の顔に免じて、今回は見逃してはくれぬか?」
「・・・・・・そこまでされては、もう断れる訳が無いじゃないですか?・・・・・・義勇はどうだ?」
「俺も、この鬼には他の鬼には無い異様な雰囲気を感じていた。・・・・・・俺も、昌継さんの意見を尊重します」
「かたじけない、二人とも」
二人から了承を得た私はほっと息を吐くと、炭治郎へと視線を移す。
「炭治郎よ。禰豆子の事は私達に任せ、其方は家へと戻るのだ」
「あ、ありがとうございます。それで、その・・・・・・一つ頼みを聞いてはくれませんか?」
「・・・・・・?」
頼みを聞いて欲しいと話す炭治郎の顔つきは、どこか覚悟の決まった凛々しい顔つきになっていた。
「オレも、禰豆子を人間に戻す手伝いをしたいんです。オレを鬼殺隊に入隊させて下さい」
「よせ。お前の様な非力な子供が入ったところですぐに鬼に喰われて終わりだ。お前の妹は約束は出来ないが、できる限りに手は尽くす。だから、お前は家に戻って平穏にくら・・・・・・」
「家族がこんな酷い目に遭ってるのに何もせずにはいられないんです。自分の身は自分で守ります!力だって付けます!だから、どうかっ!!」
錆兎がその頼みを断ろうとしても、この炭治郎は断固として譲る気は無さそうだ。私としても、炭治郎には助かった家族と共に暮らして貰いたいが、本人がこう言ってる以上これ以上断っても無駄だろう。
そう判断した私は、ゆっくり口を開く。
「あいわかった。その其方の家族を想う強い気持ちがあれば、鬼どもにも遅れをとる事はないであろう」
「っ!では・・・・・・!」
「鬼殺隊に入る事を認めよう」
炭治郎の顔がみるみる明るくなる。
「いいんですか、昌継さん?言いたくないですけど、あの少年は今のままではとても・・・・・・」
「私が炭治郎の稽古をつける。幸いにも、ここ最近は鬼の活動は酷く落ち着いている。時間は十分に設けられる」
「「ま、昌継さん直々の稽古・・・・・・?」」
炭治郎には私が指南する。その旨を伝えただけなのだが、何故か二人は顔を引き攣らせていた。
「(どうする、義勇?昌継さんの稽古は・・・・・・)」
「(・・・・・・柱の俺たちでも、根をあげそうなくらいきつい)」
二人が何を考えてるのかはわからないが、そんな二人は放っておいて炭治郎にもその事を伝えておいた。
「よろしくお願いします!」
炭治郎の元気な声が山中に響き渡る。これは、私も久々に指南に力を入れるのも悪くないと軽く肩を鳴らすのだった。
「「・・・・・・あの少年が稽古中に死なない事を祈ろう」」
そんな二人の声は、強く吹いた山風によって掻き消された。
と言うわけで、次回は炭治郎には昌継のスパルタ稽古を施します。柱でも参るくらいの昌継の稽古を炭治郎は耐える事は出来るのか?
一応、万が一のストッパーとしてあの人にも手伝って貰いますが。
原作編ではどのように書いて貰いたい?
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昌継無双で原作無視で上弦や無惨を蹂躙
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昌継が強くした柱達と共闘して無惨達を倒す
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原作に沿って地道に書いていってほしい