「凄く可愛いね。俺とお茶でもどう? おごるからさぁ」
「いえ、人を待っているのでお断りします」
大学生となり『清楚な高嶺の花』だった玲は、楽郎と付き合い、化粧をし、華やかさをグッと増していた。素のままでも十二分に顔面偏差など総合値がずば抜けているにも関わらず、恋、そして恋人の存在がその可憐さを引き上げている。
あんなこんなをしたことで花開くように出てきた色気もよくなかった。高校時にあった清楚さを残しつつ、その清楚な装いや振る舞いからのぞく色気は、ギャップも相まって非常に威力が高い。
結果として、玲はナンパホイホイになった。
高校の時もよく告白されてはいたが、大学生となり、軽い誘いが増えた。彼氏がいる、ということを隠していないにも関わらず、この手の誘いはとどまる所を知らない。
この誘いのめんどくさい所は"玲が彼氏持ちだと知った上で話しかけている"または"玲のことを知らない"のほとんど二択な所であり、しつこく非常に煩わしい。
楽郎のことを悪く言われた際、玲が一度
目の前でペラペラと話しているいるこの人は、おそらく玲の事をよく知らないのだろう。玲の『待ち人』は大方楽郎であり、その時点で知っていたらなんらかのアクションを起こすはずだ。
「待ってるのってお友だち? その子も一緒でいいから」
話を聞き流し無視していたが、触られるのは嫌なので、伸ばされた手を避けようとして後ろからグッと引き寄せられ、頭がぽすりと彼の胸に着地した。
「俺の玲さんに、なにか?」
「 」
固まった玲の頭上に楽郎の手が置かれる。近い。非常に近い。
楽郎となにか言い合い、目の前にいた男が去っていくが、玲はもはやそれどころではない。
「玲さん、大丈夫だった?」
「ひっ、ひゃい」
先ほど引き寄せられた体勢のまま、楽郎が玲を上からのぞきこむ。非常に近い。
また固まった玲を見て、自分が原因で玲の挙動がおかしくなってることを察した楽郎が玲を解放し、それでやっと玲は正気に戻った。
「す、すみません。お手数煩わせてしまい……」
「こっちこそごめん。玲さん一人で待たせたらああいうのが寄ってくるって事知ってたのに」
もっと気をつけておくべきだった、と吐き捨てるように楽郎が溢す。
「いえ、別に、あの、だ、大丈夫ですから!」
ぶんぶんと勢いよく手を横に振り、そのしぐさを見て楽郎が笑う。
「これでも彼氏なんだから、頼ってくれると嬉しいかな」
「あふっ」
その言葉に、また玲は
「待たせてごめん。じゃあ行こうか」
「は、はいっ」
目の前に伸ばされた手に、玲も手を伸ばした。