「あはは、玲さんってやっぱりわかりやすいですね」
「いえ、あの、そんなことっ」
「こんなにわかりやすいのにスルーしてきたお兄ちゃんさぁ」
「……いいだろ、今はもうわかってるんだから」
「わ、わかっ!?」
ぷしゅう、と真っ赤になり、玲が固まる。
兄の些細な言動で、こうもわかりやすい反応を示すのに、兄は気づいてなかったんだな、と思うと鈍感唐変木ゲーム中毒と言わざるを得ない、なんて、瑠美は自分のファッション中毒を棚に上げて思う。
こんな兄の恋人であるこの人は、こんなに美少女で、さらに所作なんかも良いとこの家柄なのがわかるような、きっと高校では『高嶺の花』などと分類されてそうな人なのに、誰が見てもわかるほど兄が好きなのだ。兄には非常にもったいない。
「じゃあお兄ちゃん、玲さんもらってくから」
「は?」
唐突な事に頭がついていっていない玲を置いて瑠美は玲の手を取り、兄に向かって言い放った。
「玲さんとデートしてくる。お兄ちゃん、ついてこないでね」
「え?」
「おい、瑠美!」
ねぇ、玲さん。いいですか? と下からのぞきこまれ、玲は思わず頷いた。
……
…………
「玲さんはこういう服も似合うと思うんですよね」
瑠美に引っ張られるようにしてついた先は、近くのショッピングモール。素材が良いから楽しいですねー、なんてコロコロ笑う瑠美に、玲はされるがまま着せ替え人形と化していた。
「さて、どんな服がいいですか、お
「おねっっ」
お義姉ちゃん、と呼ぶだけで真っ赤になった玲に、瑠美はにんまり笑う。少しからかうだけでこうも反応が返ってくるのだ。面白くないはずがない。瑠美がからかってしまうのは致し方ない事である。
『あの』ゲームにしか興味がなく、恋愛を捨て去ってるとしか思えない兄の、恋人である。
初めて会った時は、まだ二人は付き合ってはいなかったものの、玲はやはりわかりやすく『なんでこんな美少女が兄の事を?』と思ったものだ。しかし、この人はとにかく兄の事が好きなのである。一途に必死で恋をしている、可愛い人なのだ。
───瑠美が背中を押して応援したくなるほどに。
……あれに惚れるのは瑠美には理解できないけど。なんといってもクソダサジャージ男なので。
「可愛い服着て、お兄ちゃんをぎゃふんと言わせましょう」
「へぁっ?」
え、いや、そんな、なんて言って慌てだした玲に瑠美は笑う。瑠美にできる背中の押し方は、これくらいだ。
「言わせたく、ないですか?」
意地悪くそう言うと、玲はまたすこぶる慌てた後、ともすれば聞こえないほど小さな声で「い、言わせたい……です」と肯定した。
……
…………
………………
「ふふん」
いつもと雰囲気が違う玲を見て固まっている兄に、瑠美は自慢気に笑う。
今玲が身を包んでいる服は、いつもの清楚で爽やかな色をしたものとは違い、濃い色合いでキリリと引き締め、少しの露出で妖艶さをも醸し出している。しかしそれは可愛らしいと言える範疇に収まっており、彼女自身の清楚さを逆に強調していた。髪の毛は瑠美に編み上げられ、一つ付けられた髪飾りが良いアクセントとなって全体の雰囲気を纏めている。
「お兄ちゃん、なにか言うことは?」
その一言に硬直が解けた楽郎が頬に色を刺し言う。
「あ、あぁ。玲さん似合ってる。可愛い」
「か、かゎっ!?」
挙動がおかしくなった玲しか見てない楽郎に満足感を覚えた瑠美は、私が全身コーディネートした玲さんは可愛かろう、なんて玲の後ろで笑った。
陽務家、身内に入れた人間に甘い……