「ごめん、玲さん寝てるから」
寝てるもなにも、俺の言動で気絶してしまったんだけど。玲さんの友人が話しかけてきたので、そう返す。
春のぽかぽかとした陽が降り注いだ、大学の中に隠れるようにあるベンチ。そこに座っている俺は膝の上に玲さんの頭を乗せ、玲さんはそのまま横たわっている。いわゆる膝枕の体勢だ。
玲さんは付き合う前からよくバグっていたし、まぁそういう性質のお人だと思って過ごしてきたが、俺に関することに反応してバグってるとは、付き合ってから知った。
俺の言動一つで、分かりやすく好意を示してくれるんだから、つい、からかいたくなる。それでやり過ぎてしまうことも、しばしばで。
すっかり赤もひいてきた頬を見て、先ほどの事を思いだし、ふっと笑みをこぼす。
「あー、お熱いことですなぁ」
「ん?」
ぼそっとつぶやかれた言葉を聞き逃す。
「いや、スカートの中見えちゃうかもだから上着でもかけとけば?」
「おー、さんきゅ」
「玲に『先帰ってる』って伝えといて! じゃあね」
去っていった玲さんの友人の助言通り、とりあえず自分の上着をかけておく。有難いこって。
意識を失っている玲さんの髪に落ちてきた桜の花びらを拾い上げ、そのまま透けるような茶色をした髪をすく。ふわふわとした柔らかな質感は、いくらでも触っていれそうだ。
今はそんなに赤くもない顔が、俺の手で林檎のように熟れるのを、今の俺はよく知っている。それが、なにを示すのかも。
髪の先を指でもてあそんでいると、玲さんがまつ毛を震わせた。
「……ん、」
漏れでた声を聞いて、玲さんを上から顔をのぞきこむ。
「起きた?」
「へ? らくろ、くん……?」
まぶたを開いた玲さんが、俺を瞳に映す。ぼんやりとした顔が徐々に覚醒していき、一気にぼふんっと赤くなった。
「おはよ、玲さん」
「えぁ? へっ? ~~~ッ!!」
勢いよく起き上がろうとしたので、額を抑え、起き上がれないようにする。
玲さんのバグり方にも慣れてきて、反射で対処できるようになった気がする。今のは対応はSS評価を狙えるんじゃなかろうか。
抑えた額の温度が熱く、先まで白かった頬は見る影もない。
玲さんがこうなるのは、俺のせいだと、俺はすでに知っている。その事に対して思う感情は、嬉しいとかだけじゃなく、優越感なんかもあって、まあ少し汚なくもあるので言わないが。
玲さんが起き上がった事を少し残念に思いながら、俺が気絶させたようなものなのに気絶したことを必死で謝る玲さんを宥めた。