「最近玲ちゃんとはどう?」
「玲さんですか? 最大火力はだてじゃないと言いますか……頼りにしてます。よく一緒に攻略に行きますね」
(そーいうことを聞きたかった訳じゃないのよねぇ……)
このクソゲーバカはなにもわかってない。時々……いや、よく、こいつのクソゲーカセットとエナドリホルダーを引っこ抜いてやろうか? という衝動が脳裏を走る。まあ、よく一緒に攻略に行く、という事だけでも彼女にとってはずいぶん進歩か、とずいぶんと長い間玲を見てきた岩巻は思う。
「リアルではどう?」
陽務楽郎という人間は、ゲーム内では恋愛的思考回路を捨て去ってる節がある。だから玲にはリアルから攻めさせてる訳で。いや、攻めてるとは言い難いけども。
この楽郎の女っ気の無さと、玲のヘタレ度合いが相まってここまで進展しなかったんだな、と再認する。
「うーん、最近なぜか前より目が合うようになりましたが特に何も……? いつもバグってんなぁとしか」
「バグってるって……そんな、ロボットじゃないんだから」
玲も少しくらい慣れてきてもいい頃だとは思う。毎日のように登校し、実質的デートイベントも幾度かこなしてるのにも関わらず、未だ挙動不審になるのは疑問を禁じ得ない。数年間話しかける事すら出来なかった期間を越えての今なので土台無理な話なのかもしれないが。
(玲ちゃんもあのヘタレ具合を治せればねぇ……)
いや、彼女のそれが治せたらこんなに苦労してない。じれった過ぎてキレそうだ。
「おっ、もうこんな時間か。すみません、もうそろ行きますね」
「はいはい、またねー」
新たなるクソゲーを手に入れ楽しそうに駆けていく楽郎を見送る。玲はあの笑顔に憧れたと、始めに目を追いかけ始めたきっかけが楽郎の楽しそうな笑顔だったのだ、と何度も聞いたが、悪魔に喜んで魂を売り渡す笑顔に惹かれるとは中々こう……
「えと、こんにちは」
「おー、よく来たね玲ちゃん。もう少し早く来れば楽郎くんがいたのに」
「いびゃっいえ、別に、そんな……」
「いた方が嬉しい癖に~」
「それはそうとも言えなくはないと言いますかっいえ、あの、そういうことではなくっ」
少しつつくだけで面白いほど反応を返す彼女をからかって遊ぶのは中々楽しい。楽郎はクソゲーを楽しむようなマゾではあるが、玲の性質を正しく理解したらSっ気を発揮しそうな気はする。しかし、今の認識はせいぜい『ゲームでもリアルでもストロングだけど、不定期でバグる面白い人』レベルだろう。玲が動揺するのはいつも楽郎の事だと、彼は知らない。
「最近楽郎くんとはどう?」
「えと、シャンフロではよく、ふ、二人っきりで攻略をですね!」
「うんうん、君も大概ゲームに染まってるよね。リアルは?」
玲の顔が真っ赤に熟れる。
「あの、最近、楽郎君が、なぜかこちらを見てくるんです」
なるほど。進展はあったというわけか。つまりいつもバグってるように見えたのは、楽郎が玲を眺めていたから、だと。……これは楽しくなりそうだ。
岩巻は詳しく話を聞こうと、玲に先を促した。
楽郎くーん!!!!!無意識に玲さんのこと目で追い始めてくれーー!!!!!の話
深淵をのぞくとき深淵もまたお前を見ており、お前もまた深淵を見ている。