「それで、シグモニアでさ、」
登校中、昨晩シャンフロであった事をお互いに話し合うのは、いつものパターンとなっていた。楽郎と玲は『ゲーム』という共通項があるから、その話題は、会話のトピックとしては驚くほど有用なのだ。
……なにも有用、というだけではないのだけど。
また、蠍の所へ行ったそうだ。今度は、新大陸の方。
新大陸の蠍たちがいる場所は、聞いているだけでお腹いっぱいになりそうなほど混沌としていた。大量にいる、爆発する蜘蛛、巨大毒百足。そして、ビームで狙撃してくる蠍。
旧大陸の押しくらまんじゅうには手酷くやられてしまった身であるから、それをいとも簡単に周回すらしてしまう彼に、やっぱり凄いなぁ、なんて思いながらいつも話を聞いているのだが。彼はさらに、新大陸にいる蠍たちさえも攻略してのけるのだ。彼と蠍たちとの縁はどうなってるんだろう、と疑問にも思うのだけど。
あのクソ蠍、と昨日の事を思い出してか吐き捨てるように言う彼は、その瞳の中のまばゆい光を隠しきれてない。その光にまた、玲の心臓がキュゥウ、と締め上げられた。
ゲームの話をするときの楽郎は、瞳の中に熱がある。楽しそうな事が見てとれる、そんな熱が。
その熱が見たくて、玲は見ている事がバレないよう、いつも楽郎の瞳を見つめている。
勉強の話なんかをしてるときにはない、声に混じる僅かな弾みも、つり上がる口角も。そして、瞳の中の煌めきも。玲は楽郎のそれが、一等好きだった。
あの日見た光景を重ね合わせて、変わっていないその輝きに、心臓を跳ねさせる。
前を向いていた楽郎が、ふと、こちらに視線を向けた。
その瞳に自分が映る事に夢心地さえ感じる。シャンフロを始めて良かった、と夏に彼がロックロールでシャンフロを購入した日から幾度と思っていることを、また思った。
「玲さんは?」
「へぁっ!?」
「玲さんも昨日シャンフロしたんだよね?」
どうだった? と彼が言う。
それがあんまりにも不意打ちで、言われた事を噛み砕くのに、少し時間がかかった。玲が見ているだけの一方通行ではないことを、つい、忘れてしまいそうになる。
毎日登校を共にしているのに、まだ、心臓は慣れてくれない。痛いほどにぎゅうぎゅうと締め付けてくるのに、酷く甘やかだった。熱に浮かされ、耳元からもその音が聞こえてくるほど。幸福感で指先まで痺れて、どうにかなってしまいそう。
それでも、弾んだ息をなんとか落ち着かせ、玲は必死で言葉を手繰り寄せる。
「えぁ、え、えっと、昨日は、」
「うん」
また、煌めいた。
たどたどしく募る言葉に耳を傾けてくれているのがよくわかって。それだけでも嬉しいのに、瞳の色がもう堪らない。
玲はこの瞳に捕らわれて。ずっと見ていたいなんて願って。楽しそうな彼に、どうしようもないほど狂っているのだ。