初出、2022年5月23日 旧Twitter
再録です。
「え? それ関係なくない?」
ふわふわとした銀色が前髪の跳ねた癖ごとピシリ、と固まったのを、アーサー・ペンシルゴンは視界の端で認識しながら溜め息を吐き、言った。
「そりゃ、」
ないんじゃないの~?
今、随分と配慮に欠けた発言をしたサンラクと、その隣で固まっているサイガ-0は、確かリアルで付き合っていた、はずだ。
くっつくまでの過程でこちらも随分やきもきさせられたので、やっとくっついたことには思う存分からかってやろうと思っていた、のだが。
───『関係ない』とはどういうことだよ。
ペンシルゴンは心の中で悪態をついた。
レイは彼女だけの唯一無二の装備により、顔の大半が覆われており、その表情はうかがえないが、おそらく真っ青になっているのだろう。仮にも彼氏である男に、こんなことを言われてはさもありなん、といったところである。
少なくとも今の内容は恋人として、『関係ない』と言ってしまうのは、少々、いや、かなり不適切であろうに。
「そりゃないって、またなんで?」
「なんでもなにもさぁ、」
恋愛機能がついていないんじゃないかと思っていた男がついに『お付き合い』なるものを始めたと思ったらこれだ。本質は何も変わっていない。クソゲーとエナドリに、精神の根本を破壊尽くされている。
「そんなに言われること言ってないと思うんだが」
俺とレイさんで完結してるんだから、そんなのなんも関係ないじゃん。
……あ、こいつ、おかしい。
続いた言葉によって気づいてしまったのでとりあえず詳しく突っ込んでみると、要領を得なかったが、つまり、真意として、サンラクは、
「はいはいなるほどそうですね~! お前のその考え方だったら確かに関係ないですね~!!」
「なんでキレてんの?」
恋人という枠に入っているのだから、その他の人間は俺たちとはまったく関係ないだろ? と言ってるのだ。思考回路が理解できない。
そんなラベルの張り替えだけで人間を把握するような考えが通じるのはゲーム内だけであって、現実に持ち込むようなものではない。嫉妬だとか不貞だとかそういう概念はないのか?
ゲームが頭に侵食しすぎである。
「それにしても『関係ない』はないわ」
呆れを滲ませ、ペンシルゴンが言うと、きょとんとしたように首を傾げた。
「え? だってレイさん、俺のこと好きだよね?」
「ふぁえッ!?」
「ほら」
当たり前の事を聞いて当たり前の事が返ってきた、というような顔で、サンラクは悪友に向き直った。
横でわたわたしている少女の反応を、当たり前のように享受して。
ペンシルゴンはついにキレた。
「いつか好意に胡座かいてるしっぺ返しを食らえ、このバカ!」
バカ!
「自惚れ方、エッグ……」
ペンシルゴンの叫びも、ボソッとカッツォが呟いた言葉も、サンラクはさらりと無視した。おそらくまた思考をクソゲーに飛ばして耳に入っていないのだろう。
「レイちゃん……可哀想……」
こんな馬鹿とお付き合いなるものを……
ぷしゅう~、と煙が出たまま固まっている少女と、いまだにきょとんと、なにもわかってないような佇まいの鳥頭に、ペンシルゴンは一層深く溜め息を吐いたのだった。