本日2つ目
『自覚後告白RTA』
───ああ、俺は、
「玲さん」
「へ!?」
胸に灯った熱に従うまま、玲さんの手を掬い上げ、己の胸の前で握る。電撃の如く落ちてきた【それ】以外、なにひとつ考えてられなかった。溢れでる情をその勢いに乗せ、頭で理解する前に口から射出する。
「好きだ」
「へ!?」
「俺、玲さんの事が好きだ」
『りょうかたおもい』
「楽郎君、大丈夫ですか?」
「……なんで?」
「えと、顔が、赤いですよ……?」
ああ、くそぅ。この人は……!
玲さんのせいじゃないか、とはもちろん言えない。
「玲さん!? 大丈夫!?」
楽郎君のせいじゃないですか、だなんて口が割けても。
『宝石なんてモノじゃない』
※おそらく付き合ってる
満月に手を翳していたら、感傷的な気分にもなるわけで。
「空から欠けの無いダイヤモンドが落ちてきて、あまつさえそれがなんの偶然か自分の物になっちゃったらさ、どこか罪悪感を感じてしまうんだよな」
皆が皆、その価値を信仰してる事を知ってるから特に。
「……なんでそんなよくわかんないみたいな顔してるの?」
「だって、楽郎君の笑顔を初めて見た時から、とっくのとうに砕け散って楽郎君だけのものですよ?」
きょとん、とした顔でそうのたまうから参った。
『神様なんてガラじゃない』
※お好きな時間軸でどうぞ
「一方通行に祈っているだけだと思ってたんです」
……だから、まだ実感できなくて。
溢れた声は溶け消えていった。
「光って、平等なんですよ。まぶしくて、目を眩ませて。私もただそれに照らされたひとりだっただけなんです」
どうしてその考えに至ったかわからないけど、認識の仕方おかしくない?
だって、
「あの夜の狼に一緒に挑んだ時から、ずっと
うーん、そんな驚いた顔されるのは心外なんだが。
『好きだ、くらいは言わせて欲しい』
(もうそろそろ逃げるの止めてくれる?)
※付き合ってる
ああ、だってこれだけはどうしようもなく自惚れてる。
「玲さん、俺のこと好きでしょ?」
ピシリと固まった玲さんの手を逃げられないように捕まえる。
「ね、玲さん」
これだけ自惚れさせたんだから、もちろん責任とってくれるんだよな?
『玲さんからは初めてだったからさぁ!』
※付き合ってる
いつまで経っても慣れないみたいで、もう『初めて』の時からずいぶんと時間が経つのにな、と思いながらカチコチに固まった頬を指で撫でる。
唇の柔らかな感触と共に、花のような甘い匂いが鼻を通り抜けていった。
視界が一瞬暗くなり、唇に、柔らかな感触。
「それでは楽郎君! ま、また!!」
甘い匂いがまだ残ってる。
「玄関先でするには話長くない? ん? 玲さん帰ったの?」
え?
「あれ? お兄ちゃん? 聞こえてる? おーい、お兄ちゃ~ん?」
……え?
『崖っぷちにてタップダンスを』
※付き合ってない
根幹を焼き付くされる危機感に対する本能的な防衛反応が、じりじりと胸を焦がす。しかし、それがなんで沸き上がってくるのかはこれっぽっちもわからない。それでもただ『まずいな』と頭の中で繰り返す。
数ヶ月前からずっと変わらないことをしているだけだ。今の時間をいつも楽しいとすら思っている。それなのに、一歩進むたびに、崖の淵へ近づいていくような。
「ふふ」
隣で歩く玲さんが笑う。
───ああ、まずい、な。
『致命傷』(FATALITY………)
※付き合ってない
「楽郎君!」
玲さんが振り向く様がスローモーションで見える。このままいくと、とんでもないことになることを直感した。アラートが頭の中で鳴り続け、それでも俺はそのふわりとした茶色が揺れるのを眺めているだけで、目をそらすことすらできない。とある世界で【最大速度】を取っていようが、
「楽しいですね!」
正面からその笑みを叩きつけられた瞬間、最近ずっと感じていた焦燥感の答えと共に、俺は先ほどまでの焦りが的中したのを思い知る。
『箱庭の天使/in outside world』
※捏造過多
※斎賀玲さんの好きなものが散歩であることについて
幾つかの箱庭と、それを繋ぐ金属の箱の中だけが彼女の世界だった。それに疑問をひとつとして浮かべないまま、一度たりともそこからはみ出すことはなかった。ひとりで箱庭の外に出ることなど、頭を過りすらしなかったのだ。
───そう、今日までは。
アリスが走る兎を追いかける。彼女は、己が別世界に迷い込んだ事に気づかない。その笑顔で走る黒髪を追う事だけが、脳内すべてを占めている。
『このあと再起動まで5分かかった』
※付き合ってる
腕の中にすっぽりと入った柔らかなものが、ビクリ、と身体を震わせて動かなくなった。
たぶん、これはフリーズしたんだろう。
それがわかるくらいには一緒にいたし、どういう時にそうなるかだって既に理解している身だ。
だけど、熱いのはなにも、この人の体温のせいだけじゃない、ので。
状態『混乱』に陥ってる玲さんには悪いけど、今はちょっと離してやれそうにないし、もう少しだけ。あと少し。もうちょい。あとちょっと。
『期待だけでもさせてください』
※付き合ってない
今、自分たちが走ってる理由なんてもう、衝撃ですっかり忘れてしまった。
真っ白になった頭は稼働することもなく、ただ己の手を引きながら走る黒髪に必死でついていくことだけしかできない。
それでも、彼のことだから、意味なんてきっとないってわかってるのに。頭の少しだけ冷静なところで、この繋がれた手にこもった意味を探ったりもする。
『そうして彼女はヒトになった』
※ド幻覚
『そう』あることは当然だった。
太陽が東から昇るのと同じように、斎賀玲は『そう』だった。
だから、己の特異性にも気づけない。
「なんで、あんなに嬉しそうに……楽しげに……?」
彼女は知らない。背中に生えていた羽も、それがたった今溶け落ちたことも。
彼女は、ただ。モノクロームだった世界が衝撃で色づいていくのを、目の当たりにすることしか。
『あなたとならどこへでも』
※おそらく結婚してる
あなたとならどこでだって楽しいから
目蓋が開いていく。その瞳が灯す熱に、玲はもうずっとずっと狂わされている。
「おはようございます、楽郎君」
ぼやけた瞳が彼女を映す。胸がこれ以上なく締め付けられた。意思が見えるようになっていくそれは、太陽の光で煌めいている。玲は笑った。
「今日はどの
『日の出にてまた生まれる』
※妄言過多
人は二度生まれるという。一度目は母の腹から出現したとき。二度目は自我が発生したときだ。そして玲の二度目の生誕は、【彼】の存在をはじめてまともに視界に入れた瞬間なのだろう。
あの引き伸ばされた一秒間。光によって世界が色づき始めたあの雨の日。
太陽が昇る。玲は己の憂鬱さと対照的なそれに、疑問という自我を得る。
『私はアドバイスしかしないからね』
※付き合ってからはじめての誕生日
玲さん、お兄ちゃんのあげたものならなんだって喜ぶでしょ、という言葉を瑠美は飲み込んだ。たとえ兄の恋人が瑠美の理解できないクソゲー詰め合わせセットや、なんならそこら辺の石すら喜びかねないとしても、それはプレゼント選びを妥協する理由にはならないからだ。
「お兄ちゃん、まともな人間みたいなこと言えるんだね」
「俺をなんだと思ってるんだよ」
『ズルくない?それ』
(いや、確かにそれを刷り込んだのは俺なんだけどさぁ)
※付き合ってる
ああ、本当にズルい。
玲さんは、こんなにも全身で『好き』だと伝えてくる癖に、俺が感情を返す可能性なんて微塵も考えちゃいないのだ。
というわけで、ことあるごとに(といっても俺がそう思った時にだけだが)俺は玲さんに対する好意を本人に伝えることにした。なにも玲さんだけじゃないってことを思い知ればいい。俺の苦労もついでに思い知ってくれ。
「だって楽郎君は私のことが、好き、なんですもんね?」
その確信しきった顔といったら!