「あー、目の前でいちゃつかれるのは勘弁してもらいたいのだが」
「だってさ、玲さん。ほら」
「ダ、ダメですっっまだこうしていてくださいっっっ」
妹の恋人と会うことになった。お見合いから逃げ回っており、さらにそんなものを経験したことのない自分には『恋』というものはよくわからん感情だ、と百は思う。
(しかし、あの玲がこうも大胆になるとは……)
目の前でおそらく恋人だろう男を後ろから目隠しをしている玲を見て思う。
恋というものは、ここまで人を変えるのだなぁ、と。
「男の方は大きな胸を非常に好むと聞きました。姉さんは、姉さんの胸は、あ、あんなものを楽郎君が見てっっ」
「大丈夫だからとりあえずこの状況なんとかならない? なにも見えないんだけど」
玲の動揺を慣れたように受け流しているのは、まあ思い違いじゃなければシャンフロのあの半裸鳥頭な『
「玲お前、後ろから自分の胸を彼の頭に押し当ててるように見えるがそれはわざとなのか?」
「あー、それ言ったら」
バッと目隠しをしていた手を離した玲が楽郎から距離を取る。
「ち、ちがっ、え、ぁ、そ、そんなつもりではっっ」
「うん」
「ち、違いますからぁああっっっ!!」
「あーー」
玲が走り去っていった。なんなんだいったい。
「あーどうも、サイガ-100、でいいんですよね?」
「ああ、それでそっちはサンラクか? あと、リアルでは百でいい……いや、玲がまたなにか言うか?」
あんなに嫉妬みたいな事をしといて二人っきりにするとはどういうつもりなのか。後で正気に戻ったときにこちらになにか言われても困る。
「では百さん、と。玲さんはまあ大丈夫じゃないかと思いますけどねぇ」
見れば見るほど普通の青年だ。これがあの空をかっ飛び燃えたり化け物になったり高笑いしたりする百に勝った半裸の鳥頭(鮭頭の時もある)なのか。
「玲は君の前ではいつもああなのか?」
「そうですねぇ」
彼は苦笑した。
しばらく話していると、扉が叩かれる。
「すみません、取り乱しました」
スッと部屋に入ってきた玲はすでに落ち着いていた。
目の前で楽郎の隣に座った玲の耳元に、彼がなにか囁き、玲の顔が赤く染まってぽすりと彼の背中を叩く。
(曲がりなりとも姉の前だぞ。いちゃついてる自覚がないのか、こいつらは……)
まあ、未来の義弟と我が妹の将来は安定だなぁ、と思う。自覚的にも無自覚的にもこうも見せつけてくるとは。
先ほど玲がいなかったときに玲の事を話す彼を思い出す。あの不審な挙動を愛しさを滲ませて話す彼に百は悟った。ああ、玲の一方通行な訳じゃなく、玲も愛されているのだと。
『恋』というものは、やはり自分からは遠い世界だなぁ、と思いを新たにさせ、百は今夜はどのカップラーメンを食べようかと思案するのだった。
このあとお見合いから逃げきれず色々あってとある人と妹たちよりもはやく結婚することになるのを百ちゃんは知らない……(いつか書くかも書かないかも)