ブラック・ブレット『漆黒の剣』   作:炎狼

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第五十話

 強化アクリルガラスで仕切られた部屋で凛と蓮太郎は真剣な顔で向き合っていた。

 

「意外と元気そうで安心したよ、蓮太郎くん」

 

「まぁな、一応メシは出るし睡眠もしっかり取れてるからな」

 

 肩を竦めながら言ってのける蓮太郎は凛が想像していたよりも、気が楽そうだった。恐らく、金本が声をかけて軽い世間話でもしていたのだろう。

 

 凛も僅かに笑みを零すとアクリルガラスを見回しながら溜息混じりに言う。

 

「本当は今すぐにでもこのアクリルを斬って君と木更ちゃんたちを引き合わせてあげたいんだけどね、生憎と刀は持ち込み不可だってさ」

 

 彼の言葉を聞いた瞬間蓮太郎の後ろにいた留置係が軽く咳払いをして凛を睨んだ。しかし、彼はそれに悪びれた様子もなく適当に会釈をする。

 

「……ところで、凛さん。木更さん達は大丈夫か?」

 

 蓮太郎の問いに凛は無言で頷き、留置係から見えないように指でアクリルガラスに字を書いた。『二人も大丈夫』と言う文字を。

 

 それを理解した蓮太郎はほっと胸を撫で下ろすが、同時に自分の旧友が殺されたことに対する怒りも見え隠れしていた。

 

「あぁそうだ。あのこともちゃんと聞いてるから安心してね。こっちで調べてるから」

 

「サンキュ、迷惑かけて悪い」

 

「気にしないでいいよ。他に何かある?」

 

 問いを投げかけると、蓮太郎は思い出したように顎に手を当てて呟いた。

 

「水原のイニシエーター……」

 

 彼の呟きに凛も思い出したように眉間に皺を寄せて考え込んだ。

 

 事件の後、凛は民警のアクセス権限を用いて水原のことを調べてみたのだ。彼は民警であり彼にも当たり前のようにイニシエーターの少女がいた。名前は『紅露火垂(こうろほたる)』だったか。

 

 しかし、水原が殺害されたと言うのに彼女の話題は一向に世に出る事はなかった。

 

 通常プロモーターを失ったイニシエーターはIISOによって施設に戻されるのがセオリーだ。だが、凛が調べてみたところ彼女が施設に収容されたと言う情報はなかった。

 

「考えられるとすれば、水原くんが殺害されたことを知った後、IISOに身柄を移されないように何処かに逃亡しているのが濃厚かもね」

 

「ああ、それが一番考えられそうだな。でも、その子から話を聞ければ水原があの二つについて、どんなことを調べていたのかわかるかもしれねぇ」

 

「そうだね。よし、それじゃあそっちの線もいろいろ調べてみるよ」

 

 凛が言った瞬間、面会時間である三分になったようで凛のいる部屋の扉が開いた。

 

「もう時間か……じゃあ蓮太郎くん、僕は一旦出るけど木更ちゃんが来てるからちゃんと話してね」

 

 凛はパイプ椅子から立ち上がってそれだけ言い残すとさっさと出て行ってしまった。最後に声をかけようかと思っていた蓮太郎は拍子抜けしてしまったが、凛が出て行った扉から少し俯きがちに木更が部屋に入ってきた。

 

「里見くん……」

 

「よぉ木更さん。結構元気そうでなによりだ」

 

 少しの時間しかあっていないと言うのに、まるで長年あっていなかった様にどたどしくぎこちない動きをする二人だが、すぐに両方とも黙ってしまった。

 

 壁にかけられている時計の秒針が時を刻む音だけが響き、なんともいえない雰囲気が二人の間に流れるが、不意に木更が小さくふきだした。

 

「なんだよ、急に」

 

「ううん、案外元気そうだなって思って」

 

「今日二回目だなそれ言われんの。先生は『やつれたかい?』なんて言ってたけど」

 

「そう。……ねぇ里見くん? 弁護士さんとはもう話したの?」

 

「あぁ話したよ。起訴は確実でしかも勝てる見込みは低いと来たもんだ。これぞ八方塞がりってヤツだな」

 

 蓮太郎は呆れ気味に肩を竦めるが、木更は心配そうな顔をして彼に告げる。

 

「大丈夫よ、里見くん。こっちでも色々調べているから、里見くんの無罪もすぐに証明してあげる」

 

 木更は微笑んで言うものの、その目尻には涙がたまっており彼女が今相当参っているというのも理解できた。

 

 同時に蓮太郎は薄く笑みを浮かべた後、勢いよく頭を下げて彼女に頼んだ。

 

「あぁ、よろしく頼む。木更さん」

 

「もちろん! 出てきたらまた皆で事務所を再開しましょうね」

 

「おう、わかってんよ。凛さんにもよろしく言っといてくれ。っと、そろそろ時間だな」

 

 蓮太郎は壁に立てかけられた時計を見やりながら言うと自分から立ち上がった。そしてそのまま踵を返すと木更に背を向けながら告げる。

 

「木更さん……俺、絶対にあきらめねぇから」

 

「……うん、私も絶対にあきらめない」

 

 木更の返答を聞いた蓮太郎は小さく笑みを浮かべると、片手をヒラヒラと振りながら面会室を後にした。

 

 そんな彼の後姿を見送りながら木更もまた拳を握り締めた。どうやら覚悟を決めたようだ。

 

 木更はドアノブに手をかけてそのまま凛の元に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凛達が蓮太郎と会っているちょうどその頃、櫃間は警視庁内に設けられた自分の私室でスマホを片手にある人物と連絡を取っていた。

 

「以上が里見蓮太郎と断風凛の情報だ。頭に入っているか? 『ダークストーカー』」

 

 櫃間の声にスマホの向こうからはまだ若い青年の声が聞こえた。

 

『わかっていますよ。しかし、断風流というのは随分と謎が深いようですが?』

 

「フン、そんな事はどうでもいい。お前はあのお方が作った傑作なんだ、同じ機械化兵士である里見蓮太郎を抹殺できるレベルだ。断風ごとき簡単に殺せるだろう?」

 

『実際に見ていないのでそれはわかりませんが……普通の人間であれば可能でしょう』

 

「だったら四の五の言わずにやれ。近いうちにまた連絡をする、その時までに準備を整えて置けよ。『ハミングバード』と『ソードテール』、『リジェネレーター』にも先ほどの情報は伝えておけ」

 

『了解しました』

 

 ダークストーカーが了解したのを確認すると、櫃間は通話をきってスマホを自分の胸ポケットにしまいこむと、そのまま私室を後にした。

 

 

 

 

 櫃間が部屋を出て行ってすぐ、彼の私室の天井裏にて動く影が二つあった。

 

「いいこと聞いちゃったねぇ」

 

「はい、かなり有益な情報です」

 

 そう言いながら互いに笑みを浮かべているのは焔と翠だった。

 

 彼女等は今日の早朝、まだ日が出ない時間帯に警視庁内に文字通り忍び込み、昨日櫃間に渡した紅茶の缶に仕掛けられた発信機を辿ってここまでやってきたのだ。

 

「それにしても本当に忍者みたいですね」

 

「まぁね、うちはそれが専門だし。さてっと、とりあえずまずはこっから出てから今度はあの男の自宅に行こうかな」

 

「自宅にですか?」

 

「そう、パソコンのデータを見たいからね。さっき行ってた『ダークストーカー』やらそのあたりの情報とかのってそうだし」

 

 焔は言うと盗聴器やら持ってきたものをしまいこんで、そのまま翠と共に匍匐前進しながら辿ってきた道を戻っていく。

 

「でもあの人、一体何を企んでいるんでしょうか?」

 

「さぁね。でもとりあえずあの男の協力者が少なくとも四人いるってわかった。これだけでも十分大きな成果だよ」

 

 焔はニヤリと笑うと更に言葉を続ける。

 

「それにああいう人の方が結構罠に引っかかってくれるんだよねぇ。まぁそれが面白くもあるんだけど」

 

「なるほど……」

 

 翠は感心したように頷き、焔もとても満足げだった。

 

 そして二人はエレベーターの上に乗ったり、その他監視カメラの死角を縫うようにして地下駐車場まで何事もなく降りきり、そして何事もないように警視庁から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、黒崎民間警備会社の事務所では零子と杏夏が二人で仕事をしていた。摩那達は昼食の買出しに行っているのだ。

 

「杏夏ちゃん、一つ頼まれてもらってもいいか?」

 

「なんですか?」

 

 杏夏はパソコンから手を離して小首をかしげた。零子はそれに頷くと真剣な面持ちで彼女に告げた。

 

「新しい弾丸を作って欲しいのだけれど、作れるか?」

 

「構いませんけど何用ですか?」

 

「狙撃用」

 

「わかりました。でも珍しいですね、零子さんが狙撃なんて」

 

 杏夏が言うと、零子は肩を竦めて僅かに笑みを浮かべながら静かに告げた。

 

「私の本領が発揮出来るのは狙撃なんだ。もちろん今の拳銃二丁でも十分戦えるんだがな。それに今回はどうやら敵方にスナイパーがいるようだし」

 

「なるほど、それで使う銃の種類はノーマルの狙撃銃ですか? それとも対物ライフル?」

 

「対物ライフルで頼む。弾丸は12.7x99mm NATO弾でね」

 

「その弾丸だと使うのはヘカートですか?」

 

「大正解。まぁヘカートといっても未織ちゃんに頼んでかなりスペックは上げってもらっててな」

 

 コーヒーを片手にいう零子だが、杏夏はその間もパソコンを使って彼女から出された注文を打ち込んでいった。

 

「それで一番望むこととかは?」

 

「とにかく飛距離を伸ばして欲しい。銃のほうはカスタムして最大射程が三キロまで達してるんだが、どうにも今回はそれ以上あったほうがいいと思ってね」

 

「となると最大でも五キロ以上は飛んだ方がいいですか?」

 

「高望みすればな。まぁ無理はしなくてもいいが」

 

 零子はそういうものの、杏夏は指を軽く振って悪戯っぽく笑みを浮かべると自慢げに胸を張る。

 

「あまいですよ零子さん。その注文絶対に叶えてみせます。だから、少しだけ時間をもらってもいいですか?」

 

「ああ、君が作れる最高の物を作ってくれ。その間は事務所にも来なくても大丈夫だ」

 

「了解です。では早速明日から制作に取り掛かりますね」

 

 ニッと笑う杏夏に零子も微笑を向けると小さく頷いた。

 

 同時に零子の右目が僅かに疼いた。彼女は眼帯の上からなぞるように右目に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蓮太郎との面会を終えた凛と木更は事務所への道を歩いていた。

 

「蓮太郎くんは、結構平気そうだったね」

 

「はい。思ったよりも元気そうで何よりでした」

 

 木更も満足げに凛の問いに頷くと、蓮太郎と会ったことで少しだけ気が楽になったのか微笑を浮かべた。

 

 しかし、凛は顎に手を当ててこの後予測されることを考えていた。

 

 ……もし櫃間が今までの事件全てに関与しているのであれば、邪魔者となってくる蓮太郎くんをすぐにでも裁判にかけるはず。遅かれ早かれ手を打たないと。

 でもあまりに早計だと逆に足元を掬われる可能性もあるから、手を出すには細心の注意が必要かな。

 

「……様! 凛兄様!!」

 

 ふと隣の木更が大きな声を発したので、凛はハッと我に返って彼女を見やる。

 

「ん、あぁごめん」

 

「大丈夫ですか? すごく怖い顔してましたけど……」

 

「うん、平気。少し考え事しててね」

 

 苦笑を浮かべる凛だが木更は少々不安そうだった。

 

「凛兄様、本当に櫃間さんが怪しいと思っているんですか?」

 

「……そうだね。君には悪いけれど、僕はどうしてもあの人が信用できないし、それにあの人の君を見る目が気に入らない」

 

「目?」

 

「……ごめん、今のは忘れて。ちょっと感情的になりすぎだね」

 

 凛は木更に顔をみせないように片手で軽く顔を覆った。木更は凛にそれ以上は問わず、別のことを質問した。

 

「延珠ちゃんとティナちゃんは兄様のご実家で預かってもらってるんですよね?」

 

 その質問に凛は覆っていた手を離して頷いき、話を始める。

 

「うん、少しの間離れ離れになっちゃうけど、うちなら安全だから。二人には外に出ないように言ってあるし。今日も摩那が裏道を使って目立たないように行ってるから平気なはずだよ」

 

「そうですか。それなら良かったです」

 

 木更は薄く笑みを浮かべるものの、その表情にはどこか暗いものがあり、やはり蓮太郎達とやってきた『天童民間警備会社』が運営できないと言うことにショックを感じているのだろう。

 

 すると、そんな彼女を見かねた凛がポンと軽く彼女の頭を叩いた。

 

「大丈夫。きっと再開することが出来るよ、いいや、僕達がさせてみせる。君達を離れ離れには絶対にさせない」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕刻、凛は自宅のリビングで焔と翠が仕入れた情報を聞いていた。

 

「以上が今日、櫃間篤郎を監視して得た情報です。また、今の事は零子さん達にも伝えてあります」

 

「『ダークストーカー』、『ハミングバード』、『ソードテール』、そして『リジェネレーター』か……」

 

「恐らくそれは何かのコードネームだと思われます。櫃間篤郎は間違いなくクロと見込んでいいでしょう」

 

 焔の視線は鋭く、いつもの彼女からは感じられないほどの威圧感があった。凛は彼女の眼光を見て凍と彼女を照らし合わせてしまった。

 

 ……やっぱり姉妹だなぁ。凍姉さんそっくりだ。

 

「兄さん?」

 

「あぁ、ごめん。続けて」

 

「はい。明後日には櫃間宅に潜入して櫃間篤郎のパソコンを調べてみようと思います」

 

「わかった、でもパソコンにデータを引き出すにしてもパスワードとか必要なんじゃない?」

 

 凛が問うと焔はニヤリと笑みを浮かべて彼に告げた。

 

「心配無用ですよ兄さん。私にはこれがあります」

 

 彼女がそういって取り出したのは普通とは少し形が違うUSBメモリ二つだった。

 

「そのUSBメモリの中に何かあるの?」

 

「はい、これの中には姉さんが開発したとあるソフトが入っています。これを電源を入れたパソコンに差し込んで、私のほうのパソコンにもう一方をさせば、あら不思議。あっという間にパスワードを読み取ってしまうんです。

 そしてUSBをさしたままにしておけば、パソコンの中に入っているデータは全てこちらのハードディスクに送信されるってわけです。痕跡は残りませんし、誰かが開いたと言う情報も残りません。まさに完璧なスパイソフトです」

 

「なるほどね。それじゃあそのUSBの差込口じゃない方についてるのは、データを送受信するトランスミッターのようなものだね?」

 

「はい、そう思ってくれて構いません」

 

 焔はUSBをしまいこみながら彼の問いを肯定した。凛もそれに答えるように頷くと、焔に問うた。

 

「そういえば翠ちゃんは?」

 

「翠なら疲れたようで今は眠っています。恐らく初の隠密行動で気疲れしたんだと思います」

 

「まぁ……そりゃあそうだよね」

 

 凛は彼女が疲れるのも仕方ないと思った。何せ今まで隠密行動などしたことのなかった少女が、いきなり緊張感が最大の隠密行動に耐えられるわけがないからだ。

 

「でも、翠には隠密の素質がありますよ。嗅覚が優れているのでターゲットの匂いを追ったり、ターゲットが帰ってきたりなどをあらかじめ察知できます。鍛えればかなりの逸材になると思います」

 

「元々翠ちゃんはかなり強かったからね。組んでいたパートナーが相当の使い手だったって言うのもあるけどね」

 

 凛は彰磨のことを思い出すように虚空を仰いだ。すると、焔が彼に問うてきた。

 

「そういえば木更はどうしたんですか?」

 

「木更ちゃんなら着替えを取りに行くっていったん事務所に戻ったよ。多分そろそろ繰るんじゃないかな? 摩那もそろそろだと思うけど――」

 

「――ただいまー!」

 

「ただいまもどりました」

 

 と、彼がそこまで言ったところで玄関の方から威勢の良い声と摩那の声と、木更の控えめな声が聞こえてきた。

 

「帰ってきたみたいだね。そうだ、焔ちゃん明日はゆっくり身体を休めていいからね。今日一日色々回って大変だったでしょ」

 

「いえ、そんなことないですよー」

 

「ううん。君の情報のおかげで敵の数が随分と絞れた。これだけでも感謝しきれないくらいだよ」

 

 凛が柔和な笑顔をみせながら言うと、焔は一瞬にして茹蛸のように顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。

 

「あ、ありがとうございます。それじゃあ明日はお言葉に甘えて」

 

「うん。ゆっくり休んでて、さてっと……今日の夕飯は何にしようかな」

 

 彼はそのまま何事もなかったかのように踵を返すと、キッチンへ向かって冷蔵庫の中身を見て今日の献立を考えた。

 

「はーおなかすいたー……ってなに口半開きにしてんの焔?」

 

 リビングに戻ってきた摩那がそんなことを漏らしていたが、今の焔にはそんなことは聞こえていないようで、彼女の周りにはなにやらふわふわした雰囲気が醸し出されていた。

 

 彼女のそんな様子に木更と摩那は揃って首を傾げるが、木更は凛がキッチンに立っているのを見て彼に声をかけた。

 

「凛兄様、私も手伝います」

 

「え? いいよ、木更ちゃんはゆっくりしていて」

 

「いえ、里見くんたちが帰ってきたときに私が作ったお料理で迎えてあげたいので……ダメですか?」

 

 木更は僅かに頬を染めて気恥ずかしそうに言う。そんな彼女の様子に凛は苦笑すると頷いて食器棚の下に置かれている収納棚の中を菜ばしで差した。

 

「そこにあまりのエプロンがあるからそれつけてね」

 

「はい!」

 

 凛に言われ、木更は明るく返事をすると彼が差した収納棚からエプロンを取り出して準備を始めた。

 

 やがて彼女が準備を終えたのを見ると、凛は彼女の今日作るものを発表した。

 

「今日はオムライスとコンソメスープ、あとはサラダを作ります。木更ちゃんは卵を十個用意して、一人分で二つ使うから焼くときになったらボウルにあけてね。

 チキンライスの方はマッシュルームがないけど何とかなると思うから、こっちは僕が作るよ。調味料とかを入れるタイミングはそのつど説明を入れていくからよく聞いておいてね。

 あとはスープだけど、こっちはチキンライスに入れるタマネギを少し使って具の代用をするね。あとはサラダだけど……これは特に問題はないね。摩那でも作れるし。では、調理開始」

 

「はい」

 

 凛が言うと木更は気合たっぷりといった様子で頷き、二人はそのまま調理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、草木も眠る丑三つ時……。

 

 凛は自室から持ち出したパソコンである人物のことを調べていた。それは今回殺された水原鬼八と彼のイニシエーターである紅露火垂についてだった。

 

 IP序列が第三次関東会戦の終結後に元の十三位という数字に戻ったため、凛はそのアクセス権限を使って二人のことを調べているのだ。実は昨日も見たのだが、今回はそれよりももっと深く調べて見ることにしたのだ。

 

「水原鬼八、十六歳……使用拳銃はグロック。民警としてはいたって普通のようだけど……彼は一体何を知ったんだ?」

 

 凛はソファの背もたれに背をあずけて考え込む、だがふとそこで何かに気がついたのか水原の情報が載っているページをスクロールしてガストレアの殲滅記録を見る。

 

「これ……なんで一ヶ月前から更新がされていないんだ?」

 

 彼の視線の先には水原と火垂がいままで倒してきたガストレアが記録として残っていた。しかし、そのページは一ヶ月前に飛行型のステージⅡのガストレアを狩ったときから全く更新されていないのだ。

 

 民警は基本的にガストレアを狩って生計を立てていく、それが一ヶ月もないとなると、凛からすれば不審でならなかったのだ。けれど他の仕事で生計を立てると言うのもあるとすればある。

 

「でもこれは明らかにおかしい……一ヶ月前なら関東会戦が終わったすぐ後ぐらいだから、ガストレアの出現率が尤も多かった時だ。そんなときに一体しかないなんて……」

 

 関東会戦が終わってからというもの、ガストレアのエリア内での目撃情報は多くなっていったはずだ。もし水原が普通に民警をしていたなら出動要請で他にも何体かのガストレアをかっていてもおかしくはないはずなのだ。

 

 しかし、このページには一ヶ月間まるでガストレアの討伐記録がない。

 

「調べてみる価値はありそうだね。でも、まずは彼のイニシエーターであるこの子を探さないと……」

 

 凛はマウスで水原のイニシエーターである火垂の画像をクリックして情報を表示した。

 

「紅露火垂、九歳か……モデルは……プラナリア? プラナリアって確かかなり再生能力が高い生物だっけ」

 

 顎に手を当てながら凛は考え込むが、小さく息をつくとパソコンを閉じて頭を軽く振った。

 

「今は彼女を見つけることが先決だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 都内某所。

 

 簡素なアパートの一室で部屋の明かりもつけずに一人の少女が膝を抱えて座っていた。

 

「鬼八さん……」

 

 少女の口から小さく漏らされたのは、他でも水原鬼八の名だった。少女のいでたちは、下はデニムのショートパンツ。上はピンクのタンクトップにその上にジャケットを羽織っており、髪色は栗色で髪型は所謂ショートボブと言う髪型だった。

 

 彼女こそ、殺害された水原鬼八のイニシエーター、紅露火垂だ。

 

 すると彼女は抱え込んでいた膝を離して、ゆっくりと顔を上げた。

 

 彼女の眼光はとても鋭く、獲物を逃がさない肉食獣のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凛達が蓮太郎に会った二日後、蓮太郎は起訴処分を受けて被疑者から被告人となった。




よし……とりあえずこれで火垂を出すことが出来た。
櫃間の計画? ハッ (゚⊿゚)シラネ。
まぁいろいろ準備が始まりましたからそのうち蓮太郎くんが逃亡して、色々あってダークストーカーさん達が出てきて、色々あって色々あった結果、最終的に櫃間が惨めな最後を迎えるのでしょう。
うん、それだけ覚えてれば完璧だな!!

最後の方は結構無理やり感が否めませんね、申し訳ない。
というか零子さん……五キロってアンタ……どんな位置から狙撃するつもりなんだかw
まぁターミナルホライズン使えるからいろいろ平気なんでしょうがw
そしてそれを作ろうとする杏夏ちゃんもスゲェ……。
しかしそんな事は気にしない。ほら、最近やった吹き替えがひどかった『WANTED』って映画でもスゲェ位置から狙撃してたし……w
それに最終兵器……『この物語はフィクションです』がありますしおすし……。

まぁ変な言い訳は終わりにして、
ついに五十話まで来ました。ここまで書けたのも皆様の暖かい感想と評価の賜物でございます。
本当にありがとうございます。
これからも頑張って書いていきたいと思います。

では感想などありましたらよろしくお願いします。

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