明日人たちは、朝早くから東京のFFスタジアムに向かっていた。なぜならば、ユースティティアの天使からの果たし状が来たからだ。明日人たちが練習をしていたその時、木に紙が巻かれた矢がまた空から刺さったのだ。
『明日、東京のFFスタジアムで待つ』
そう書かれた果たし状を手に、明日人たちは緊迫とした表情でスタジアムに向かおうとしていたのだが…
「おえ…気持ち悪い…」
意気揚々とバスに乗りこんだ夜舞だったものの、初めて乗る車の密閉間と道路を曲がる際の揺れによって、さっきまで可愛らしい桜色の頬をした肌はすっかり青ざめており、吐きそうになる口を手で抑えていた。
「や、夜舞ちゃん…酔い止めいります?」
大谷が夜舞に差し出したのは、水なしで飲める酔い止めキャンディだった。それを急いで夜舞が飲むと、飲んだ夜舞も驚くほどに酔いが無くなっていく。
「すごいすごい! この飴凄いね! どこの病院で貰うの?」
「いや…普通にそこのドラッグストアで売ってますよ」
「え?」
夜舞の村にはドラッグストアがない上に、ましてや都会では薬がそんな簡単に手に入るという事実を知った夜舞は、石のように固まった。
「夜舞…大丈夫?」
明日人が石になった夜舞をコンコンと優しく叩くも、びくともしない。
***
「いよいよ来たね…」
スタジアムに降りた夜舞がそう意気込む。先ほどまでバス内で石のように固まった人とは思えないと、明日人たちが夜舞を見て苦笑いをしている中、空からユースティティアの天使たちが舞い降りる。
レンの手にはサッカーボールとお札があり、これから聖戦ともいえる戦いが始まるのかと、明日人たちは緊張していた。
「そろそろ…決着をつけようか…ラストプロテクター・アースよ!」
感情のこもったレンの声は、衝撃波の風となって明日人たちの髪を靡かせる。
「試合を始めようか。その前に…怪異を使え、一星光」
レンの言葉は、怪異の本質、そしてスペクトルフォーメーションを理解した上で言っているのかは一星には解らなかった。しかし、怪異を使わないことには勝てないと、一星はスペクトルフォーメーションをしようとする。
「駄目だ! 一星くん!」
一星がスペクトルフォーメーションを発動しようとしたその時、野坂が切羽詰まった表情で一星の腕を握ったのだ。その為、集中が途中で途切れて怪異と融合出来なかった。
「野坂さん!?」
「どうしたんだよ野坂!」
「まさか、何かあるってのかよ」
明日人が腕を掴む野坂の手を振り払うと、野坂に何があったのかと事情を聴く。野坂は明日人も見ずに、一星だけを見ていて、一星はとても不気味に感じた。ユースティティアに勝つためには、スペクトルフォーメーションが必要なのだ。適合率もちゃんと上がっている筈なのに_
「一星くん、怪異を使うことを、何だと思っているんだ!?」
「え…」
一星は野坂の言葉に驚きの表情を見せる。なぜなら、野坂がそんなことを言うだなんてとても思っていなかったからだ。
「スペクトルフォーメーションを使った時、君はあの時倒れたじゃないか! 僕は君の命が大事だと思っている。これ以上命を脅かすようなことは_」
野坂は、一星の命が大事だと言った。
しかし、一星は野坂の言葉にもその決意を崩すことなく、スペクトルフォーメーションを使った。
「スペクトルフォーマ―ション、リライズ…」
今度は一星の髪が上から赤に染まっていく度に後ろ髪が伸び、その後ろ髪を三つ編みとして纏める。
「一星くん! 君は_」
「野坂、今は一星を信じろ」
「一星は、適合率を上げる為に夜遅くまで夜舞の祖母の修行をしていたからな」
鬼道が野坂を制する。
豪炎寺が言った通り、実は豪炎寺と鬼道は一星の夜の修行を隠れて見ていたのだ。その為、スポドリとタオルを一星に隠れながらに渡したのも、彼らだ。
「だけど…」
「野坂、試合が始まる。今は一星を信じるしかないよ」
明日人が野坂を説得させ、お互いがポジションにつく。
『ラストプロテクターのキックオフで、試合開始です!』
「侮(あなど)るな。もうあの人間たちは、私達が雷門中のグラウンドで戦ったような人間ではない。気を抜くな」
レンが仲間たちに鼓舞し、天使たちは必死になって試合を進める。しかし、一星たちの快進撃は、目で見てもわかるくらいにラストプロテクターの方が有利だった。
「アンタレス・エトワール!」
明日人からのパスから、一星がシュートを決める。
「エンジェルラ―ダー・カデンツァ!!」
カデンツァが止めようと奮闘するも、ゴールの手は通ってしまう。
『ゴール! 一星、スペクトルフォーメーションの必殺シュートで、ユースティティアから先制点を奪いました!』
「やったな! 一星!」
明日人が大喜びで一星とハイタッチする。一星の呼吸は安定している。適合率が上がっているんだと明日人は確信していた。
「よーし! 私も!」
ユースティティアから持ち前のカットでボールを奪い、夜舞がFW並みのドリブルでゴールまで一直線に駆け上がる。
「凄い…夜舞さんのおばあさんの修行で、さらに瞬発力が上がっている!」
「それって本当ですか!? 風丸さん!」
長い髪を靡かせながら走る夜舞に、風丸がその伸びしろの良さに驚愕した。
「ムーンライト・メテオ!」
夜舞もDFながらも必殺シュートを決める。巨大な魔女の隕石に、天使の壁は役に立たない。
『またしてもゴール!! DFとFWを使い分ける夜舞のシュートで、ラストプロテクターに二点をもたらしたー!!』
「この調子でどんどん行くよ! 一星くん!」
「はい! 夜舞さん!」
「皆ー! ここからが本番だ! 俺達の力を見せつけてやろうぜ!」
新たな力を手にした一星、新しく入った夜舞とのシュートで、ラストプロテクターに勝利の輝きが見えていた。そして円堂がチームの闘志を燃やさせ、勝利への布石を残す。
しかしその中で野坂は、一星のスペクトルフォーメーションに対して思い悩んでいた。
それに気づいたのは、ベンチに居た西蔭だった。
「野坂さん? 顔色が悪いですよ?」
「あ、あぁ、大丈夫だよ。少し考え事をしていただけさ」
「それだけだったらいいんですが…貴方は少し思い悩み過ぎです。どうか、無理のないように」
「わかっているよ」
そう、わかっている。
一星のことは。
***
その後はラストプロテクターの優勢で試合は進んだ。しかしユースティティアの天使たちも、そう簡単にゴールを許してはくれない。
そして円堂も、そう簡単にはゴールを許さない。
「ジャッジメント・シンフォニア…」
「正義の鉄拳!」
円堂が黄金の拳のオーラでボールを止め、一星に渡った。
「一星! 絶対勝つぞ!」
「はい!」
そう明日人と一星が意気込んだその時、一星が運んでいたボールがスライディングによって動かされ、コートの外へと転がった。
ユースティティアの天使か!? そう思った明日人たちだったが、違った。
「…野坂?」
一星にスライディングをしたのは野坂で、この両手には拳が強く握られている。
自分を見つめる明日人に目もくれず、自身の意を決した野坂は、一星に近づき、一星の両肩を両手で掴む。
「野坂さん…?」
「一星くん。スペクトルフォーメーションを解くんだ。そうしないと君は、『命を落とすことになりかねない!』」
野坂から命を落とすと言われた一星は、どうすればいいかわからず、頭の中が真っ白になっていた。
「の、野坂さん? 何を言って…」
適合率は上がっているので、大丈夫ですと言いたかったが、その前に野坂が大きな声で言った為、声を出すことは出来なかった。
「一星くん、僕は君が毎晩夜舞ちゃんのおばあさんのところで修行しているのわかっていた。だからあの時、僕も鬼道さんや豪炎寺さんみたいに何か渡そうとしたけど、一星くんとはすれ違ったみたいなんだ。だけどこのまま帰るわけにはいかないから、夜舞ちゃんのおばあさんさんのところに尋ねに言ったんだ。僕が家に上がって、おばあさんの部屋に行こうとしたその時、おばあさんが監督と話していたのが聞こえて、僕は聞いてしまったんだ…『君の適合率は上がってない。長く使えば寿命を削ってしまう』とね…」
一星は、夜舞緋華里がそんなことを言っていたなんて信じられず、頭の中が何も考えられないでいた。
「そ、そんなわけないじゃないですか! 夜舞さんのおばあちゃんだって、ちゃんと上がっているって言ってたじゃないですか!」
「それが間違いなんだ! 夜舞のお婆さんは、君の適合率が上がってないことを知っていながら、君を特訓させて、スペクトルフォーメーションを使わないままで勝たせようとしていたんだ!」
野坂の言葉に、一星はハッとなる。
夜舞緋華里の特訓は、確かに体力や脚力を鍛えるもので、精神を高めたりするものは少なかった。それに一星は気づかなかった。
しかし、それでも一星は怪異を解こうとはしなかった。
「野坂さん。今回は俺に任せてください。大丈夫です! ちゃんとやりますから!」
そう野坂の手を振り切り、一星はスローイン時のポジションに着く。ユースティティアの天使からのスローインのコースをカットし、前線へと走る一星。
しかしここで、不調が発生する。一星の胸に痛覚が生じたのだ。
一見気のせいかと思ったが、その勢いはどんどん強くなり、怪異の力でもある素早さが上手く引き出せなかった。
しかし、嘆いている暇なんてなかった。
なぜならレンは、今自分の目の前にいるのだから。
『神錠結界!』
レンは必殺技の強度を調整するかのように、今度は四枚から八枚にお札を配置する。その中の四枚は一星の腕と足に巻きついて拘束したが、その中の四枚は、一星の三つ編みの中に入り、その中に眠っていた蠍を強引に引き離し、スペクトルフォーメーションを無理やり解除したのだ。
「___!!?」
そのため一星の髪は元に戻るも、その瞬間にスペクトルフォーメーションをした時の拒絶反応が一気に一星の体で痛みとなって現れた。
「~~!!!」
その痛みに声も出ず、札による拘束が解けた瞬間、一星はその場に倒れた。
「一星!」
「一星くん!」
明日人たちが駆け寄る中、野坂は一星のスペクトルフォーメーションが解除されて、どこか安心した感情が心の中にあった。本当なら、いけないことなのに。
「(これで…よかったんだ…一星くんは、絶対に死なせない)」
一星が倒れ、担架で一星はベンチにまで運ばれた。一星の容態は怪異の専門家でもある折谷曰く、とても危険で、とても試合が出来るような状態ではなかった。試合続行は不可能だと感じた趙金雲は、代わりに不動明王を交代させる。
「攻撃の手段は完全に途絶えた。ここから反撃だ」
『はい』
一星が不動と交代したその瞬間、ユースティティアの天使たちはタックルやスライディングなどの荒々しいプレーをするようになった。しかし、ラフプレーになるようなことは避けながら。しかし、ボールを持っていると狙われるのは確かだ。
そんな中ボールを持っているのは明日人だ。明日人は今四人に囲まれ、四つの角からスライディングで狙われている。
「夜舞!」
しかし明日人は四人の隙間にいたフリーの夜舞に目がけてパスを出した。そのパスは奇跡的に通り、夜舞はそのボールをユースティティアのゴールに向けてシュート____するかと思いきや、GKを引き付けた上での近くに居た不動にパスをした。
「不動先輩!」
不動がトラップでボールを取ると、すぐに空いたゴールに向けてシュートの体制に入る。
「マキシマムサーカ……」
「させない」
しかしその時、シンフォニアがタックルでシュートをしようとした不動を吹き飛ばしたのだ。さすがにこれは神父もイエローカードを出し、レンもシンフォニアを叱咤する。
「不動先輩!」
「不動さん!」
夜舞と明日人がボールをコートの外に出して試合を止め、すぐさま不動に駆けつける。
「大丈夫ですか!? 不動さん!」
明日人が不動に声かけをしている中、夜舞は不動の靴下を脱がせて傷の確認をしていた。
「酷い傷…」
赤くて大きい擦り傷を見て夜舞が呟く。
「うるせぇ…これくらいなんとも…」
そう不動が言うが、立とうとしたその瞬間、足が痛んだのか、痛む足を抑え始める。
それを見た趙金雲が、不動くんでは試合を続けるのには難しそうだと、タツヤと交代を命じる。
「タツヤくーん、お願いしますよ~」
仕方ねぇな。とすんなり納得した不動は、明日人に肩を貸してもらいながらベンチへと座る。
これで、動けるMFは明日人、野坂、鬼道、タツヤしか居なくなった。これ以上MFが怪我でもすれば、控えの選手が居なくなってしまう。
不動からタツヤに変わったが、それでもレンたちの攻防は止まらず、レンがクロスハートをした状態で必殺シュートを繰り出した。
「神珠・陰陽玉!」
「正義の鉄拳!」
円堂が身構えるも、先ほど倒れた一星のことが気がかりとなり、ボールに集中できなかった。
「うわっ!」
『ゴール! ラストプロテクター、点を取られました! しかしまだ点では勝っています! ここから持ち直せるかぁー!?』
「大丈夫か円堂!」
「円堂先輩!」
風丸と夜舞が円堂に駆け寄る。二人とも円堂が外した理由を知っているようだ。
「一星のことが気がかりなのか?」
「あぁ…そうかもしれない…すまん風丸、夜舞」
「大丈夫ですよ! ここから巻き返せればいいんですから!」
調子の悪い円堂を見て、夜舞はそれをフォローする。そして風丸たちDFたちと何も言わずに顔を合わせ、頷いた。
『試合再開です!』
前に上がった夜舞に豪炎寺はパスし、花伽羅村特有の瞬発力でレンたちを退ける。
『ここで夜舞! DFからFWのように前線へと進んでいきます!』
「灰崎くん!」
相手を避ける為に空中に飛んだ夜舞。そのまま灰崎にパスをする。
夜舞からのパスをトラップで受け止め、灰崎はシュートの体制を取る。その隣にはヒロト、ペンギン・ザ・ゴッド&デビルを使う気だ。
『ペンギン・ザ・…』
「アルファゴッド!」
「&デビルオメガ!」
神の翼が生えたペンギンと悪魔の翼が生えたペンギンが一斉にゴールへと向かう。
『カデンツァ・オブ・ディステニィー!』
ここでカデンツァの新必殺技、カデンツァ・オブ・ディステニィーが発動する。左手首と右手首を合わせ、両手を花のような形にすると、その両手をボールに向けて黒と赤のビームを撃った。そのビームはペンギンたちを焼き尽くし、ましてやボールすらも焼き尽くした。
『ここでカデンツァの新必殺技! 灰崎とヒロトの必殺技は、跡形も無く燃やし尽くされてしまったー!!』
「どんまい! 次がんばろ!」
夜舞が二人を励ます。
とその時、趙金雲が夜舞をMFに上げるよう指示した。
しかし、夜舞がMFに上がったのと同じように、ユースティティア側もセレナーデとシンフォニアと上げてきたのだ。
「いくよシンフォニア!」
「うん、セレナーデ」
シンフォニアのドリブル技術とセレナーデのドリブル技術とはかなり噛み合わせがいいのか、誰にも邪魔されることなく駒を前に進めた。
「いかせない!」
明日人が立ちはだかるも、ボールを持ったシンフォニアが明日人をおびき寄せ、すぐに明日人の股を使ってセレナーデにパスした為、通り抜けられてしまう。
『ジャッジメント・シンフォニア…』
セレナーデとの連係プレイでシンフォニアの士気が上がっているのか、レーザーも色とりどりの花のような色に染まっている。
「ぐっ…ダイヤモンド…ハンド!」
しかし円堂はここで威力の低いダイヤモンドハンドを使ったのだ。しかし、正義の鉄拳とは違って威力を一つに纏めることが出来るため、それが理由だとは思うが…無謀すぎる。
「円堂!?」
「大丈夫だ! 威力を集中させれば、大丈……どわっ!」
しかし、シンフォニアの必殺シュートの威力が上がっているのと同時に、ダイヤモンドハンドという正義の鉄拳よりかは威力の低い必殺を出した為、ゴールを許してしまった。
『ゴール! ラストプロテクター、同点に持ち込まれてしまったー!!』
これで2-2。同点に持ち込まれてしまった。
***
試合は後半戦へと持ち越しになり、明日人たちはベンチで休憩をしていた。
「明日人くん、気づいたことがあるんだけど、何だかユースティティア一星くんが交代してから攻撃が激しくなってきたとは思わない?」
視野が広い夜舞の言う通り、明日人たちもユースティティアの攻撃が激しくなってきたと感じていた。
「俺も、ゴールから見ていたが、確かにユースティティアん攻撃が激しいのは感じるな」
まるで、何か焦っているみたいだ。と円堂もそう感じていた。
「焦っている? なんでだろう…」
明日人がなぜユースティティアが焦っているのかと疑問に思っていると、灰崎が言った。
「お前をとっとと救助してぇって思ってるからだろ」
「灰崎~そんな怖い事言わないでよ~」
「事実だろ」
そうだけど~! と明日人は灰崎の発言に頬を膨らませる。その様子を見て灰崎は本当に自分が狙われてるってことわかってんのか? と疑問視していた。
「あの…一星くん、なんだかうなされているんですが…」
とそこで、大谷が一星がうなされていると明日人たちに報告してきた。
明日人たちが急いで担架に横になっている一星を見ると、確かに一星はまるで悪夢か何かをみてうなされているような感じに見えた。額には汗がにじんでいる。
「うわああ!」
明日人が一星の顔を覗き込んだその時、一星が跳ね起きる。危うく明日人が一星とぶつかる前に一歩引いたため、何とかぶつからずには済んだ。
「一星! 何があったんだ?」
「…明日人くん…よくわからないけど、夢の中で、鍵を探していたんだ」
「鍵?」
目の前に明日人が居たことに気がついた一星は、明日人に夢のことを話す。
「そうです。白い空間にある開けられた錠がいっぱいある中で、一つだけ開いていない錠の鍵を大量の鍵の中から探す夢を見ていたんです」
誰もが変な夢だな…と思った。そう思われても仕方ないだろう。そうなれば、うなされていた理由は鍵錠を開ける鍵が見つからなかったからというなんともまぁ…みたいな夢になってしまう。
「あ、MFがもう居ないんですよね…だったら俺が」
「駄目だよ。君はまだ怪異が抜けたことによるショックが残っている。止めた方がいい」「どうしてわかるんですか?」
「僕は怪異の専門家だからね」
そ、そうですか…と、一星は思った。折谷がとにかく謎が多い人物なのだから。
***
試合が再開されるも、ラストプロテクターは形成を変えることも出来ず、ラストプロテクターの雰囲気は緊迫としていた。
レンがここまま押し切ろうと思たその瞬間_
「うぐっ…!」
全身に痛みが生じ、体がふらついた。しかしそれを表に出さぬよう、レンはその痛みを歯を食いしばって耐え、走り続ける。
「させるかぁ!」
ここにきてタツヤが立ちはだかる。その瞬間また先ほどのと同じように不調が出てしまった。その為、普段荒いタックルなどをしないレンは、思わずタックルでタツヤを突破する。
「(ここにきて…! だが…!!)」
エンジェルクロスによる痛みが続き、このままではクロスハートも長くは持たない。しかしそれでもレンは、エンジェルクロスの痛みに耐え続けた。
『邪心在りし人形代の陰陽玉!』
これ以上は戦えないかもしれない。ここでレンは最終奥義ともいえる必殺シュートを出してきたのだ。その威力は花伽羅村の時よりも強力で、円堂は反応すら出来なかった。
『ゴール! ここにきてユースティティアに形成を逆転されました! もう後がないぞラストプロテクター!』
レンがクロスハートを解くと、呼吸が急に荒くなり、そのまま力なく膝をついた。
『レン様!』
天使たちが一斉に駆け寄り、肩を貸してベンチまで運ぶ。疲れているレンをベンチに座らせ、セレナーデが治療を行う。
「レン様も、あの一星光という人間と同じく適合率が低い…これ以上の負荷は受付られないと思う。私達でフォローしよう」
シンフォニアの指示で、天使たちが一斉に頷く。しかしレンはまだ戦えると言ってきた。
「安心しろ、私ならまだ戦える。この体朽ち果ててもな」
ケープを脱いだレンがそう天使たちに言う。
その言葉は天使達を安心づけているようにも見え、レンがキャプテンに選ばれた理由もわかった。
その後レンは気休めとはいえ、天界の大福を口にすると、再びフィールドに立つ。その頃ラストプロテクター側では混乱に包まれていた。
「タツヤ!」
ヒロトが真っ先に倒れたタツヤに駆け寄った。
「ヒロト…俺なら大丈夫…ぐっ」
タツヤが立ち上がろうとするも、レンに吹き飛ばされた時に怪我をしてしまった右足が痛み、立てずに膝をつく。
「んなわけねぇだろ! ベンチ行くぞ!」
タツヤに腕を無理やり自分の肩に乗せ、タツヤを無理やりにでもベンチに運ぶヒロト。
「残念だけどタツヤ、この足じゃ試合は続行できない」
折谷のその発言は、このチームに動けるMFが居なくなったことを示唆していた。一応GKの砂木沼が居るが、彼も十分にMFの本質を上手く発揮できていない節があった。
「そんな…」
「じゃあ、もう動けるMFは居ないってことですか!?」
大谷が目に涙をためている。
それもそうだろう。今この状況は絶望的なのだから。
しかしその空気を突き破って挙手したのは、彼だった。
「一星くん!?」
「俺がいきます!」
そう凛々しく宣言するも、まだ右手でベンチの柱を掴み、体を支えている状態だ。とても試合できるとは思えない。
「光、君はまだ動けるほどの体力を取り戻していない。そんな状態で試合に出たら…」
「お願いします! 動けるのは俺しか居ないんでしょう!?」
そう強く一星は折谷に懇願する。そんな一星に折谷はため息をつきながら承諾した。
「…わかった。だけど、もし辛そうだと判断したら、すぐに戻すからね」
「はい!」
タツヤに変わり、一星がフィールドに、そして一星の代わりをしていた夜舞は、DFに戻る。
しかし一星の体はエンジェルクロスをしているレンと同じようにふらついていた。だが辛そうだと折谷に判断されれば、ベンチ行きは確定だ。そう意を整え、なんとか足を踏ん張らせ、その場に立つ。
「一星くん…大丈夫でしょうか…」
大谷が一星の心配をしている。それもそうだろう。一星の顔は遠くからでもわかるくらいに顔色が悪いのだから。
「(大丈夫だ…きっと、きっと!!)」
ふらつく体を立ち直らせ、ボールをドリブルして走る一星。
しかし。
「うわっ!」
セレナーデによるスライディングでボールを奪われ、一星は地面に転ぶ。中々自分で立つことが敵わず、少し時間がかかってしまったが、なんとか立つことが出来た。
「一星! 行け!!」
セレナーデからボールを取った豪炎寺が、喝ともいえるパスを一星に渡すと、一星はその思いにこたえるように、前に進む。
すると一星の目線の先には、レンによってむりやり剥がされた蠍がいた。小さな光を放ちながら衰弱している。それは一星にしか見えていないようで、一星は今のうちにと蠍を拾おうと走った。
他の天使たちに感づかれる前に_しかし、レンに感づかれ、札を投げられた。
当たれば危ない。そう直感で感じた一星は、札をなんとか避けながら、札にあたってユニホームが破れても、一星は蠍の元へと辿りつき、その手を伸ばした。
『スペクトルフォーメーション! リライズ!!』
その瞬間、水色の光がサソリから放たれ、一星を中心に空間を作り出す。
***
「え…こ、ここは…」
一星は目覚めると、そこは、あの時夜舞たちと一緒に見た天の川のすぐそばで、地上はなく、宇宙の星々が浮かんでいる空間だった。そして、自分の服を確認してみると、そこには自分が着ていた青いユニホームではなく、水色の透き通るノースリーブと半ズボンを着ていた。
一星が目の前の光景に困惑していると、一星の胸から一つの光が漏れだし、それは一星の前に具現化した。
「_兄、ちゃん…!?」
一星の前に現れた光の正体は、幼い頃に交通事故で亡くし、人格統合を果たし、一星と一つのチームとなったはずの、一星充だった。
「いや、これは夢だ。違いな…っててて! 何するんだよ兄ちゃん!」
自分の目の前に現れた充を見て、光は心から会えたことに嬉しくなったが、既に充は死んでいることに気づき、これは夢だと自己暗示し始めた光に対し、充は光の頬をつねり、夢じゃないことを伝えた。
「夢なんかじゃないぞ。光。俺はここにいる」
あと、つねって悪かったな、というように、充は先ほど自分が抓った光の頬を撫でる。
「兄…ちゃん…」
充が自分の頬を撫でる時の感覚が、あの時頭を撫でられた時の光景と重なった。忘れもしなかったあの思い出を、鮮明に思い出し始め、光の頬に涙の筋が零れた。
「光、よく頑張ったな」
その瞬間、充が光を抱きしめた。兄特有の手加減しない抱きしめ方だったが、それでも光は嬉しかった。
「蠍の力で、お前があいつらにしてきたことを見ていたんだ。俺が居なくても、頑張ってきたんだな、光」
自分が弟の光を置いて死んでしまったから、そのせいで光は苦しい思いをしているんじゃないかと、充は思っていた。だが、違っていた。明日人、野坂、フロイなど、様々な人たちと出会い、繋がり、支えられ、救われてきながら、光は今もこうしているのふぁと、充は蠍が見せてくれた映像をまた思い出し、自分が見ていないうちに光がこんなに成長していたんだと嬉し泣きする。
「で、でも兄ちゃん。俺、フロイに酷い事をしちゃったんだ。そして、フロイが俺なんかに責任を感じて、俺の元から去って行っちゃったんだ。兄ちゃんの親友だったフロイを、俺が…」
その絆を壊してしまったんだ、と、光が言おうとしたその瞬間、額に痛みが生じた。
充にデコピンされたのだ。
「光、フロイはきっと戻ってくるし、仲直りも出来る。そして、お前のことを許してくれるはずさ。俺が保証する! あと光、親友とかに限らず、仲間や家族でもそうだ、俺達は、お互いに迷惑をかけあって生きてんだ! 迷惑をかけて、かけられて、それでもお互いを愛し合って、生きているんだ!」
人差し指を光に向けながら、充は光を励ました。
「誰かに迷惑をかけずに生きるなんて無理だ。お前だって、あいつらに迷惑をかけてしまっただろ?」
でも、あいつらは許してくれたんだ。お前の過去、それによって傷ついた心を、受け止めたんだよ。俺の人格を作ることでしか、自分の辛いという心を受け止めきれなかった程だったお前の気持ちを聞いて、あいつらは光のことを許したんだ。いい仲間を持ててよかったな、光。そう言いながら、充は泣きながら光の頭を撫でた。
自分のことをここまで思ってくれた、今は亡き兄に撫でられ、励まされたのは、もう何年ぶりだろうか。もう撫でられることもない。そう思っていたのに__。あまりに懐かしすぎて、そして充の言葉と充に会えたことによる嬉しさが、充の心を涙と共に癒していった。
「兄ちゃん…俺…おれ…」
「光、俺はこれからも、お前のことを見ているからな」
「うん…! 兄ちゃん! 俺、頑張るよ!」
「それでこそ、俺の光だ」
そう光の頭から手を放したその直後、充は光の粒となって再び光の胸の中に入ったその時、天の川たちが次々に星の光の粒を出し、それを一星の体に纏わりつかせた。無数ともいえる光の粒は、やがて新たな衣装の形を作り、実体化させる。
その瞬間、星空の空間は弾け、外の世界へと一星の視界は変わった。
明日人たちからすれば、一星が謎の空間に包まれ、すぐにその空間が弾けたようにも見えただろう。しかし一星は、先ほどのユニホームとは違う服を身に着けていた。
「あれは_!?」
「一星くん、何か衣装を着ていますけど…?」
水色の光を放ち続けるその服は、一星光が誇れた充の面影でもある青、そして星ともいえる白の服。周りに浮いている星型のオプション。それらは一星光を構成しているもの全てとも思わしき衣装だ。
「__ハァッ!」
一星が声を上げると、周りに衝撃波が走り、突風を起こした。明日人たちはその風を受けながら、一星を見ていた。
『な、なんとぉ!? 一星を包んでいた水色の球体から弾けて出てきたのは、何かの服を身にまとった一星だぁ!』
実況も観客も困惑している。それもそうだろう。今の一星光の姿は、ユニホームというよりかは、もはや学芸会に使われそうな衣装だ。
しかし、一星は特に恥じらいを感じなかった。
むしろ、誇らしく思えた。今、充と共に戦っているのだから。
「一星! その服…」
明日人が思わず一星に駆け寄る。
「……明日人くん…野坂さん…あとは俺に任せてください。ほら、適合率も、上がっている感じがするので!」
そう一星は、蠍の宿った赤い髪を触る。
「……だけど、僕はまだ君の容態を安心したわけじゃないからね」
「わかってます! だから、野坂さんは俺を信じてください!」
それを一星が言うとは思わず、野坂は思わずクスッと笑った。
しかし、適合率が上がったからといっても、まだ安心はできない。今得点は2-3だ。ここから巻き返さなければ、絶体絶命だ。
「野坂さん! いきますよ!」
一星と野坂が同時に走る。しかし、一星の方が数倍速かった。それもそうだろう。一星の足を速くさせる蠍の力と謎の衣装の力で、基礎能力がスピードに傾いているのだから。
「速い!?」
「わっ! すみません!」
まだ使いこなせてないのだろう。すぐにスピードを調整し、野坂の近くになるように速さを調整した。
『ザ・ジェネラル!』
野坂たちが必殺タクティクス、ザ・ジェネラルを展開する。しかし、一星の分析能力は従来の分析能力よりも鋭くなっていた。一星が野坂に手を伸ばすと、そこから情報の光が溢れ、野坂の指に当たる。それはとても強く、情報を明日人たちに渡す野坂の方がキャパオーバーしそうだ。しかし野坂はそれを何とか明日人たちに振り分ける。
「スゴい! ユースティティアの情報がわかるよ!」
「これが一星くんの分析能力…!」
一星の鋭くなった分析力は、少ない時間の中でのユースティティアの情報が詰め込まれており、明日人は一星の分析能力がさらに鋭くなったことに嬉しさを感じていた。
「よし! 皆反撃だ!!」
円堂が明日人たちを勇気づけ、ユースティティアに立ち向かう勇気を与えた。
一星の分析能力のおかげで、夜舞は自由に前方に進めるようになり、明日人たちもボールを取られることなく前線に進んだ。
「一星!」
明日人が一星にボールを渡す。
「野坂さん! いきますよ!」
「うん! 一星くん!」
『ブリザード…』
『トルネード!!』
一星がボールを蹴ると、ボールに星と雪が集まり、大きなトルネードのような物を創りだす。それは槍のようにトルネードの形を残しながら進んでいき、その途中に野坂がもう一度ボールを蹴ると、さらにトルネードは地面おも抉り取るほどの威力の大きさになっていた。
『カデンツァ・オブ・ディステニィー!』
カデンツァがビームでボールとトルネードを止めようとする。しかし、怪異と謎の力によって必殺技が極限にまでパワーアップしており、カデンツァはトルネードを抑え込むことが出来ず、ゴールに入れられる。しかしそれだけにはとどまらず、ゴールと一緒にカデンツァもブリザードの竜巻に巻き込まれる。
『ゴール!! ラストプロテクター、ついに同点に追いついた! しかし残り時間はすくない! このまま引き分けで終わってしまうのかー!?』
「野坂さん!」
一星の呼びかけに、野坂は何も言わずに承諾した。
「うん、行くんだ。一星くん」
まず一星はユースティティアからボールをカットし、ドリブルで前線にまで進んでいく。しかし_
「いかせるかよ!」
「うわっ!」
それでもユースティティアは強く、敵のタックルによって一星が吹き飛ばされる。が。
「うおおおおおおおおおお!!」
そこに明日人がボールをカットし、すぐに一星にパスをした。
「いけぇ! 一星!」
「はい!」
ボールを運んでくれる明日人たちの想いを無駄にはしたくない。と、一星はボールを運ぶ。そしてレンとの一騎打ちとなった。
「うおおぉぉぉぉぉぉおおぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおお!!」
「はああぁぁぁぁぁぁぁっぁあああああああああああ!!!」
札を周りに展開したレン、オプションを浮かばせてレンに立ち向かう一星。
しかしその瞬間、レンの横に風を感じた。
それは突風ともいえる速さで、レンが後ろに振り向くと、そこには一星がとっくにレンを突破しており、お札も飛ばされていた。
「凄いです! 何も見えませんでしたよ!?」
「速すぎて何も見えないんだわ…」
「凄い…」
大谷たちが一星の速さに驚いている。目を凝らしてみないとわからない。
そうこうしているうちに、一星がシュートの体制に入る。
『スターライト…ミルキーウェイ!!』
一星が空中に浮くと、一星の後ろは天の川と夜空で満たされ、一星の後ろでは天の川の星々が光った。その光は、天の川による星の光のレーザーであり、その中には白い短剣
も混ざっており、同時にゴールへと向かう。
カデンツァが必殺技を出そうとするも、大量のレーザーの光ではどれがボールかすらもわからず、ゴールを許してしま___
『させるかぁ!!』
その瞬間、一星の目の前にレンが立ちはだかったのだ。
十枚の札を使ってレンとボールとの間にバリアを作りあげ、レンの全身全霊の力を使ってバリアの強度を高める。その強度はとても固く、ボールが吹き飛ばされそうだ。
しかし。
『ハァ!!』
そこに一星はボールに足の裏を当て、バリアを壊そうとする。
「人間はッ、人の不幸を望む醜い生き物だ! 本来ならば、幸せになる筈だった人の命を、簡単に奪うのだからな!」
レンの意志、言葉に反応しているのか、バリアの強度が高まっていく。
しかし一星も負けてはいられない。明日人たちのおかげで、自分はやっと気づけたのだから。幸せと、守るべきものを。
「不幸だからこそ、人は幸せを望むんです! 誰かを不幸にする人は、自分を好きになることが出来ずに、今に至るまで苦しんだ人たちなんだッ!!」
星型の青い球をオプション二つから放ち、シュートの勢いを強める。
「苦しんで、悲しくなっても、俺は皆さんのおかげで立ち上げってこれた! その皆さんは、今も俺の大事な人です! だから…!」
レンの動揺に、バリアに亀裂が入るも、さらに強まったバリアに一星とボールは吹き飛ばされてしまう。
『だから俺はっ! 皆さんを守る為に、強くなったんですッ!!』
しかし一星が体制を立てなおし、再びボールを蹴り返すと、そのボールは一点を集中した水色の光の短剣たちとなる。その光の短剣たちは先ほどの亀裂に当たり、バリアを壊した。
「__!!?』
バリアを壊されたレンの目の前に、刃の切っ先が視界に写る。レンが腕で頭と体を守ろうとするも、この短剣はレンを傷つけたりするものではなく、レンの体をすり抜けてゴールの中へと入っていく。
しかし、その途中で胸元のエンジェルクロスを壊され、強制的にクロスハートを解除された。その勢いでレンは吹き飛ばされ、その刹那にレンは思った。
「そうか…これが、人間の強さか…」
その瞬間、レンは何かを納得したかのように、初めて心から微笑んだ。
***
『ゴール!! ここで試合終了! ラストプロテクター! 逆転勝利です!』
ユースティティアのゴールにはボールが入っており、これで4‐3となり、明日人たちの勝利となる。
「か、勝った…」
「勝ったぞー!!」
明日人たちが勝利に喜びを感じ、これでサッカーが元に戻るんだと確信し、明日人たち全員で喜んだ。
「(兄ちゃん、ありがとう…この力は、皆を守る為に使うよ…)」
姿変わった体を見つめながら、一星は涙して兄に誓った。
「さぁ! 一星の胴上げだ!」
「え、円堂さ…うわっ!」
『バンザーイ! バンザーイ!!』
演奏の陰声により、明日人たちは一斉に一星を抱え、勝利の胴上げを行った。一星も最初は驚いていたものの、次第に勝利を喜ぶ表情へと変わった。
「ところで、一星くんの衣装、なんだったんでしょうね…」
「じゃあ、名前をつけましょうよ! 『ハーツアンロック』とか!」
「あ、それいいですね!」
茜が大谷のネーミングセンスに賞賛の声を上げている。
「みなさ~ん! 一星くんのその衣装は、ハーツアンロックによるものではないでしょうか!?」
「ハーツアンロックって?」
「たったいま私がつけました!」
「なんだよそれ~」
明日人たちがハーツアンロックはたった今つけられた名前だということがわかり、名付け親の大谷を茶化す。
その光景を、レンは仰向けに倒れながら見ていた。
「大切な…人、か。悪く…ないな…」
命は取り止めたものの、ダメージは大きく、そのままレンは気を失った。
「レン様!」
「酷い傷だ…休ませないと…」
カデンツァがレンを抱こうとしたその時、天から声が聞こえた。
「あらあら…レンを倒しちゃうなんて、中々やるじゃない」
空から聞こえた声は、レンと同じく天使のようで、六枚の翼を持って天から地上へと降りてくる。
「気に入ったわ。貴方達のこと」
日傘を刺しながら、天使は明日人たちの方へと歩いていく。
それに気づいた明日人が、天使の正体に気づく。
「君は…あの時伊那国島であった…!」
「あら…久しぶりね」
明日人の存在に気づいた天使は、明日人に挨拶を交わす。
「ん…? お前は誰だ?」
天使の存在に気づいた円堂が、一星を降ろしてから天使の方へ向いた。
「あら…? まだ名乗ってなかったのかしら…てっきり教えたものかと…まかいいわ。私は『エレン』。平和の天使にして天使たちの統率者。そして、正義の神フォルセティの一人娘よ」
正義の神フォルセティと聞いて、明日人たちはエレンを凝視する。
フォルセティといえば、レンが自分達を産んだと言った神の名前だ。その神の一人娘ということは、レンとは違って血が繋がっているのだろう。
「貴方、一星光の持つスペクトルフォーメーション、そしてハーツアンロックが気になって、来てみたの」
いかにも一星を狙っているかのような口ぶりに、明日人たちは一星を取り囲む。一星は明日人たちが何をしているのかがわかっていないようだ。
「一星をどうするつもり?」
「そんなに怯えなくてもいいのに…私は一星光を部下として引き入れてみたいだけ。そして、稲森明日人を迎えにきたのよ」
一星は勿論エレンの部下になることを望んではいないが、明日人は自分が狙われている為、危険なのは見て分かる。
「稲森明日人、貴方はお父様によって救われるべき人間よ。可哀想に…母親を亡くした上に、偽の父親に騙されて、本当の父親に会えなくて、サッカーという命に代えてでもまもりたいものを奪われて。本当に酷く悲しい人生を歩んできたのね…」
エレンからの告発に、明日人はその場から崩れ落ちた。幼馴染みの氷浦も知らないその情報を、皆に知らされてしまったのだから。
「あ…あぁ…」
「明日人、これってどういう…」
円堂が明日人の過去についてを訪ねようと、明日人に手を伸ばすも、それを明日人は払いのける。そのため、円堂は明日人の行動に酷く驚いた。
「でも、もう大丈夫よ。貴方のその苦しみも、悲しみも、お父様はみな知っている。だからこそ。貴方は救われなければならない」
エレンの十字架が光りだすと、膝をついていた明日人は一気に体が動かなくなる。
「明日人!」
「貴方…あの時俺に助言してくたのに…なんでこんなことをするんですか!」
一星がエレンに怒号を飛ばす。しかしそれにエレンは怯えた表情すらない。
「あれは気分よ。たまたまそういう気分になっただけ」
「だったら…明日人くんを返してください!」
「私と戦うつもり? 私は戦うのは好きじゃないんだけど…まぁいいわ。ちょうど貴方のハーツアンロック、スペクトルフォーメーションも知りたかったところだしね」
エレンが日傘を閉じると、その傘をどこかへとしまう。
「さぁ…死なない程度に手加減してあげるから。本気でかかってきなさい!」
そう宣戦布告した瞬間。エレンの前に白い何かが走った。
それはボールではなく、白い狼だった。
狼は明日人の方へと駆け、何も言わずに明日人の中へと入る。
「ッ__!?」
しかし、一星の時のような痛みは無い。むしろ、軽い。
その瞬間、明日人は立てるようになった。十字架の効果を受け付けなかったのだ。
「あらあら…私の十字架の魔法が解かれちゃうなんて…でも、貴方たちと話せてよかったわ」
日傘を取り出し、もう一度日傘を刺すと、カデンツァが抱きかかえていたレンを片手で持つと、それを自分の左肩に乗せる。
「じゃあね。また会う時は、よろしくね」
さ、帰るわよ。と、エレンは天使達と共に六枚の翼を出して天へと帰っていった。
***
「一星! お前凄いじゃないか!」
試合終了後、控室で円堂が一星に歓喜している。
「まさかここまでの力が隠されていたなんて…驚きだよ…」
ハーツアンロックを解いた一星の周りをぐるぐるしながら、夜舞が感想を述べる。
「一星くん」
「はい」
「僕は少し君のことに干渉しすぎたみたいだ。君はもう生まれたての星じゃない。一等星に生まれ変わったんだ。だから…これからも、僕の参謀として、よろしく」
「はい! 野坂さん!」
野坂と一星が握手を交わす。
とその時、控室の向こうで声が聞こえた。
「フロイさん! ここに一星さんが居ますから!」
「フロイ!」
ルースとマリクの声だ。フロイを引っ張ってここまで来たのだろう。
控室の扉が開かれると、そこには私服姿のフロイだった。それを見て一星は、本当にラストプロテクターを抜けるつもりなんだと確信した。
「ヒカル…」
「フロイ。ごめん!」
フロイが何かを言う前に、一星はフロイに頭を下げる。
「俺は君に酷い事をしてしまった。そして、君に責任を感じさせてしまった。あの事故のことは、俺はもう気にしてない。だから…」
「うん。わかってる。戻ってきてってことでしょ? うん、僕もそのつもりだったよ。それと、ヒカルの為とかなんとか言っておきながら、居なくなろうとしてごめん」
「フロイ…! 俺はもう大丈夫だからな!」
「そっか。ただいま、ヒカル」
一星とフロイが握手を交わし、仲直りをする。
「ほら! やっぱりいつの間にか仲直りしているもんなんだよ!」
「まぁ、そう言わざるをえねぇな」
あの六等星は、一等星よりも輝いていた。
そして、これからも一つの星として輝くだろう。
キャラ説明
『全ての天使を集える統率者であり、正義の神フォルセティの一人娘。大人しいながらもカリスマ性と人間たちに対する余裕が感じられる』
妄想CV.日笠陽子さん
名前 エレン
年齢 不詳
性別 女性
一人称 私
二人称 貴方・フルネーム・呼び捨て
好物 基本的に地上のものは好きで、一番なのはたい焼き。
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜