イナズマイレブン テミスの正義   作:暁月の太陽

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第二十二話 彼らの青春

「所長! 大変です!」

「どうした! 静かにしろ!」

 ロシアで起きたテロ集団などの極悪人を収容する刑務所、『ブラック・ドルフィン』の所長室に、看守がノックもなしに切羽詰まった表情で入ってきた。所長はノックしなかったことにいら立ちを感じたが、今はそれどころではないらしい。

「それが所長、ユースティティアの天使の一人であるレン・ナオビが、とある罪人をこちらに引き渡してほしいと交渉しに来ました!」

 ユースティティアの天使の一人、レン・ナオビがこの刑務所に来ている。それはこの刑務所の罪人も看守も、この天使が恐ろしく思えた。なぜならユースティティアの天使の行動はもはや世界中に広まっており、世界中が恐れる存在となっていた。しかしそれでも、ここの所長は怯えもせずに、天使に対して大胆不敵な構えを取った。

「そうか。では、呼んで来い」

「は、はい!」

 所長が看守にレンを呼んで来いと命令し、看守は怯えながらもそれに従う。だが、看守が所長室の扉を開けたすぐ目の前にレンが立っており、看守はレンの存在に気づかず、気づいた時には尻餅をついていた。

「ひぇ!」

 しかしレンは、看守のことを道端の石のように通り抜け、所長が座っている椅子の机の前に立つ。そのレンの隣には、二人の神父たちが付いており、そいつらは罪人を確保するための人材なんだろうと所長は察した。まぁ、それを本人に問うことはないが。

「お前がレンか」

「あぁ」

 感情も表情も籠っていない声で、レンは所長の質問に答える。噂通り感情のこもっていない目だと、所長は心の中で罵倒する。テレビでは感情があるように振る舞っていたが、本当はこんなに冷酷なのだろうと。まぁそれでも所長はそれをレンに話すことなく、所長は要件を話していく。

「罪人を引き渡せとは、どういう意味だ?」

「それは君たちが知る由は無い。だが、その様子だと引き渡す気があるようだな」

「……ハハハッ! 罪人を引き渡してもらえるのは、私としても嬉しいからな! それに、この刑務所だけはお前に壊されたくないからな」

 特にお前に。と所長はレンの額に指を指しながら、笑い出す。それを見てレンは性根の腐った奴と所長のように罵倒した。

「そうか、では、私の言う罪人を、こちらに引き渡してもらおう」

 所長の指を払いながら、レンは言った。

 世界を壊そうとしたオリオンの魔女、イリーナ・ギリカナンと。

 その名前と二つ名を聞いて、所長がまた笑い出す。

 

 

 

「はぁ…」

 ロシア国会の大統領が座る席に、メリーは座っていた。なぜなら、本来のロシア大統領は国民に黙って兵器を隠し持っていた罪でメリーに殺され、今はメリーが大統領となってしまっている。しかし、退屈そうに肘をついている。

「エレンお姉さま、怒ってるかな…」

 肘つきから机に突っ伏したメリー。メリーは自分のしたことに罪悪感を覚えているようだった。いくら堪忍袋の緒が切れて、理性を失くしていたとはいえ、エレンに怪我をさせてしまった。結果はエレンが勝ったが、それでもメリーはエレンが怒ってないかと思っているようだった。

「電話してみよう…」

 エンジェルクロスの十字架を持ち、エレンに神経を研ぎ澄ませた。すると、すぐにエレンのエンジェルクロスに繋がり、エレンの声が聞こえた。

『あら、どうしたの?』

 繋がったことにメリーは嬉しくなり、顔を上げた。良かった。お姉さまは私からの電話を拒否するほど怒ってはいない。

「エレンお姉さま…この前はごめんなさい…」

『いいのよ。私も少し言い過ぎたわ。ごめんなさい』

 どうやらエレンも、幼いメリーにあんなことを言ったことは悪いと思っていたらしく、メリーに謝った。

「エレンお姉さま、あのね、」

『エレン、メリー。次の仕事だ』

 エレンが怒っていないと知ったメリーは、エレンと話そうと声を出したが、それはフォルセティによって遮られる。フォルセティも狙ったわけではないのだが、それでも話に割り込んできた為、メリーはぶーと頬を膨らませた。

『メリー。この国は神父たちに任せよう。お前は次の国に向かってくれ』

「えー私ここ気に入ってたのに…」

 大統領をしていくうちに、メリーはここが気に入ったらしい。しかし、フォルセティは他の国に行って欲しいと言った。フォルセティの言うことは絶対だ。絶対に。

『エレンも、次の仕事だ。稲森明日人の監視をお前に任せる』

『はい。わかりましたお父様』

 エレンは「今だけは」フォルセティの言うことに従っていたが、メリーは思った。どうせすぐにサボるんだろうなと。

『では頼んだぞ』

 割り込んできたかと思えば、仕事の話をするだけして通話を閉じたフォルセティ。しかしメリーには気になったことがあったらしく、フォルセティという上司の横暴さも気にせずにエレンに質問した。

「エレンお姉さま。お父様から稲森明日人の監視をしてって言われてたけど、元からしていたよね」

 メリーが自分のしていた行動を知っていたことに、エレンはメリーがここまで鋭くなったなんてと、エレンは成長に喜んだ。

「あら…そこまでに目が回るようになったなんて、私は嬉しいわ…」

「ううん、レンお兄様から聞いた」

 しかしそれはメリーが鋭くなったからではなく、レンから聞いたというのを聞いて、エレンは一気に喜びから怒りへと落とされた。

「(レン…さっきまで私がメリーが成長したと思った喜びを返してほしいわね…まぁ、メリーはこれからも伸びしろがあるからいいけど)」

「それに、稲森明日人と話しているんだよね…なんで? 稲森明日人は私達が救済しなくちゃいけない人間なのに…」

「…………」

 エレンが沈黙する。

 そして、寝ているかのような鼻息が聞こえてきた。

 エレンが寝ている振りをするのには、だいたい答えたくないからという理由も含まれている。これでは埒があかないとメリーも思ったのか、メリーから電話を切った。

 

 ***

 

 雨の中を、ボロボロのローブのフードを被った女性が、裏路地を走り抜ける。片手には古そうな天秤を抱えており、その天秤は、女性の走る足と共に皿が揺れた。女性は追われていた。その追手は、黒いローブをした男性たちが走っており、傍から見ても、この人物たちは、ユースティティアの天使の配下である、神父たちであることは確かだった。

 曲がり角を曲がり、裏路地から街角に出る。すると女性の目線から見て左の方向の建物に、野坂と一星がいた。買い出しをしていのだが、雨が降って雨宿りしているのだろう。だが、それでも女性はユースティティアの天使と戦っている二人を見ると、急いで二人に助けを求めた。

「あの、助けてください!」

 突然ローブを被った女性に助けてほしいと言われ、野坂と一星の二人は驚いた。しかし、野坂は女性の元に追ってくる人たちを見て、状況を掴んだようだ。

「僕の後ろに隠れてて」

 野坂は女性を自分の後ろに回し、女性を追手から守る。一星も、ハーツアンロックとスペクトルフォーメーションの準備は出来ている。しかし、神父たちは何かを話し合ったあと、すぐに瞬間移動で消えてしまった。

「野坂さん、行ってしまいました!」

「深追いは駄目だよ、一星くん。………大丈夫かい?」

 追おうとする一星を止めると、野坂は女性に怪我はないかと優しく質問した。

「はい……助けて下さり、ありがたく存じます」

 女性がローブのフードを取ると、そこには金髪の髪をポニーテールにした、美しい眼と雪のように白い肌をした顔がそこにあった。まるでお姫様のような容姿に、一星が思わず頬を染めた。

「とにかく、僕たちの宿所に行こう。そこなら安全さ」

「…はい」

 女性の手を繋ぎ、野坂はひとまず彼女を宿所に保護することにした。

「ただいま」

「野坂さん、お帰り__って、その女性は…」

 野坂が買い出しから戻り、西蔭が野坂の帰りを出迎える。しかし西蔭は、隣に居る女性のことを野坂に聞いた。野坂が女性を連れて帰ってくるなんてありえなかったからだ。

「あぁ、この子はユースティティアの天使の神父たちに追いかけられていたそうなんだ。だから、僕たちの宿所に匿ってあげようと思ってね」

「お初にお目にかかります」

「はぁ…」

 普段女性たちから怖がられそうな顔つきをしている西蔭に対しても、女性は怯えもせずに挨拶をしたため、西蔭はそうですかと言わんばかりに口を開けた。

「西蔭、マネージャーたちを呼んではもらえないかい? この子の為にココアを入れてもらいたいんだ」

 外は雨だったしね。と野坂は西蔭に頼んだ。

 

 

 午前の練習が終わり、明日人たちはシャワーで汗を流してからジャージに着替え、ウキウキと昼食を食べようと食堂に向かっていた。

「今日の昼ごはんなんだろうなー!」

「なぁ、たまにはマサドナルドのバーガー食べたいと思わないか?」

「私は餅つきがしたいです、剛陣先輩!」

 と、昼食の予想をしながら食堂のドアを開ける。しかしテーブルに居たのは、おしとやかにココアを飲む女の子だった。その横顔に、明日人たちは思わず見惚れてしまっていた。ボロボロの赤いドレスが、逆に女の子の美貌を引き立てるかようになっているほどに。

「き、綺麗です…」

 と、坂野上が口をこぼした。その声に気づいたのか、女性は明日人達の方に顔を向けた。

「はじめまして」

 その声もまた美しく、明日人の隣にいた夜舞の顔がへのへのもへじになるくらいに明日人たちは見蕩れていた。(まぁ、見蕩れていない人もいたが)

「貴方たちが、野坂さんが仰られていた、ラストプロテクターの人達ですね」

「お、おう! 俺がその一人、剛陣鉄之助だ!」

 野坂、という名前に明日人たちは我に返り、野坂が呼んだのか? と話し合っている中、剛陣は女性に近づき、自分のアピールをした。

「剛陣くん、それは少し失礼だとは思うよ?」

 アフロディが、剛陣のやり方に思わず口をこぼした。

「…ヒロト、この女性についてお前は何か知らないか?」

「知らねぇな。パーティでこいつは見たことがねぇ」

 砂木沼が女性をヒロトのような財閥の人間かと思ったのか、同じ立場の人間であるヒロトに問いかけてみたが、ヒロトも知らないようだった。

「え、えっと…こんにちはー!」

 ヒロトも知らない人となり、夜舞は思わずこの女の子のわからぬ正体に身じろいだ。しかし、こんなに綺麗な人は初めて見たと、夜舞は女性に手を振った。すると、女性も手を振り返した。お姫様のような笑顔でおしとやかに。それに、夜舞も射抜かれた。

「夜舞?」

 円堂が話しかけるも、夜舞は反応しない。

「あ、『ミラ』さん」

「ココア、美味しかったですか?」

 女性がココアを飲み終わったのを見て、大谷たちが「ミラ」と言う女性に近づいた。しかし二人は、この女性にときめいたりしていないようだ。むしろ、知り合いなのだろうか。普通に話すことも出来ている。

「大谷さん、この人は…?」

 水神矢が大谷に話しかける。

「あぁ、この人は野坂くんが助けた、ミラ…」

「・ツェシェルです」

 ミラがカバーしたのに、大谷はそれそれ! と手を叩く。

「ミラさん。服を持ってきたよ」

 すると当人の野坂、そして一星と西蔭が服を持って食堂に入ってきた。

「野坂、この人、お前が助けたのか?」

「あぁ、ユースティティアの神父たちに追われていた所を買い出し中に助けたんだ」

 明日人が野坂にミラのことを問いかけると、野坂はこの女性のことを話し始めた。

 

 

「申し遅れました、私はミラ・U・ツェシェルと申します」

 以後、お見知り置きを。といったミラの服は、先程のボロボロのドレスなどではなく、可愛らしい花の刺繍がされた長袖の白い服と、黒のチェックスカートに変わっていた。

「ツェシェル、お前はなぜ…」

「ミラでいいですわ。その方が呼びやすいでしょう」

 鬼道が質問しようとしたところを、ミラは自身の呼び名を訂正した。

「わかった。ではミラ、お前はなぜ追われていた?」

 鬼道の問いに、ミラは持っていたカバンから、天秤を取り出した。

「こちらですわ」

 ふちに金の塗装がされ、黒い皿を支える為にあるような黒い鎖に十字。その重なりには、獅子の顔が掘られていた。

「この天秤には秘密がありまして、私の国の王の証でもあり、そして真実を見抜く力を持っていますの。それは、実際にやってみた方が早いでしょう。誰か手伝ってくださる者は…あ、そちらの人に頼みましょう」

 ミラが指名したのは、剛陣だ。

「お、いいぜ!」

「はい、よろしくて?」

 剛陣がうきうきとテーブルの近くに座ると、ミラはどこからか一枚の白い羽根を、片方の皿に落とした。

「では、これからあなた質問をします。二つの選択肢ですので、『正直に』答えてください」

「おう!」

「はい。では、貴方は井戸にいました。中には女性が溺れていましたが、貴方の足元にはあの女性がしていたであろうダイヤモンドの指輪が落ちていました。貴方は指輪を拾いますか? 女性を助けますか?」

「あぁ、勿論女の人を助けるぜ!」

 剛陣がそう言うと、羽根を置いた皿の、もう片方の何もない皿が動いたかと思えば、動きを止めた。

「ふむ…貴方は正直な方なんですね」

 剛陣がよっしゃとガッツポーズをする。

「これでおわかりになったでしょう。この天秤は、真実を測る天秤なのです」

 この天秤の効果を知った明日人たちだが、一つ疑問に思ったことがあった。なぜ、ミラはユースティティアの天使に追われているかだ。

「でも、なんでそれがお前が狙われる理由に?」

「それは、私がユースティティアの天使によって滅ぼされた国の、女王だからです」

『ええ!?』

 ユースティティアがまさか国を滅ぼしたことと、明日人と同じくらいの年の子が国の女王だということを知り、明日人たちは目を見開いた。

「私の国は、ユースティティアの天使によって滅ぼされたのです。理由はわかりませんが、おそらくお父様が何かを隠していたからでしょう。それで、私はなんとか襲撃から逃れることが出来ましたが、そのでいで国は滅ぼされてしまいましたの…」

「そ、そんなことが…」

 そんな年で自分の国が滅ぼされたら、気がおかしくなっても仕方ないというのに、さらに追い打ちをかけるかのように、ミラはユースティティアの天使に狙われていた。

「よし! ミラの国の敵を取る為にも、絶対にユースティティアの天使を倒そう!」

「…ありがたく存じます。ラストプロテクターの皆さん」

 

 ***

 

「ああ…盗み聞きなんて私らしくない…」

 その夜。部屋に戻った杏奈は、すぐにクッションを抱え、ため息をついた。

「どうしたの?」

 杏奈のため息に、大谷が反応する。夜舞は自身の修行中で、茜はその付き添いだ。そのため、この部屋には大谷と杏奈しかいない。

「実は、野坂くんとミラさんが話しているのを、盗み聞きしちゃって…」

 どうやら杏奈は、廊下でミラと野坂が仲良さそうに話しているのを聞いてしまったらしい。杏奈の話を聞くと、大谷はなるほど、と手をポンと叩いた。

「もしかして杏奈ちゃん、ミラちゃんに嫉妬しているんじゃない?」

 嫉妬、と聞いて、杏奈はそれっていけないことだよね、とクッションを抱きしめる力が強くなった。

「嫉妬…私嫉妬なんか」

「でも、嫌だったんでしょ? なら、それは嫉妬だよ。つまり、杏奈ちゃんはミラちゃんが野坂くんとは仲良く話しているのを見て、やきもちを焼いちゃったってわけ」

「そう…」

 野坂のことが好きなのは確かだ。それは大谷も知っている。だから大谷を信用して今話しているのだ。自分が野坂に恋していることは、なるべく外部に漏らしたくないからだ。別にばらされて困るものはないが、(まずここにいる女の子は四人しかいない)それでも知られたくないというプライドはあった。

「ただいまー!」

 修行から戻ってきた夜舞が、すぐに濡れた髪のままベッドに転がり込む。それに続いて茜も、夜舞の修行の手伝いに疲れたのか、ベッドに座る。

「ふわぁ~…ん?杏奈ちゃんどうしたの? お腹でも痛いの?」

 夜舞が杏奈の異常に気づく。夜舞は杏奈がクッションを抱えていたため、お腹でも痛いのかと解釈したみたいだった。

「いえ、これは…」

 夜舞の優しさは正直なものだと杏奈は知っていた(そもそも夜舞は優しい性格だ)為、杏奈は自分の恋を夜舞に言いそうになったが、ここはグッと堪えた。夜舞はラストプロテクターに入ってから日が浅い。話しても大丈夫なのかと思ったからだ。

 だが、ここで明日人に言われたことを思い出した。それは自分たちが花伽羅村にいた時のことだ。

『稲森くん。夜舞さんのことなんだけど…』

『ん? 夜舞がどうしたの?』

『私、夜舞さんがこれからこのチームの第三者になれるか心配で…あ、夜舞さんが第三者になって、大丈夫なのかなって意味だから…』

 勿論、これは夜舞が第三者になるなんて嫌だとか、そういうのではない。杏奈は、夜舞が第三者というチームを引っ張っていく存在となる為、それが出来るような精神があるのかと心配していたのだ。もし、疲れて病んでしまったら、どうしようとか。その為、杏奈は最近夜舞の隣にいる明日人に相談したのだ。

『うーん、俺も、夜舞のことはよくわかってないけど、大丈夫だと思うよ? ほら、夜舞は強いし!』

 強い。それが身体的、もしくは精神的なのかはわからなかったが、明日人曰く、大丈夫だということらしかった。

「(夜舞さんは、強い。か…)」

 強いのなら、一か八か、試してみよう。と杏奈は決心し、話し始めた。

「あのね、実は…」

 

 

「えっ、杏奈ちゃん野坂くんに恋してるの!?」

 案外小さい声で、夜舞は驚いた。それもそうだろう。もう夜なのだ。

「私、恋とかよく分からないけど、応援してるよ! あと、私に話してくれてありがとう!」

 えっ、と杏奈は心の声を漏らした。お礼を言われるようなことはしていないはずだ。

「だって杏奈ちゃん、あまり自分のことを話したがらない気質してるから…」

 気質が何なのかはわからなかったが、おそらくその人自身のオーラなのだろう。

「だから、話してくれて嬉しいなって思ったんだ。あ、このことは秘密にする。約束するよ!」

「夜舞さん…」

 夜舞の言葉に、杏奈は確かに夜舞はこのチームの第三者だと感づいた。誰かが少しでも違った行動をすれば、すぐに話を聞いてくれ、秘密にして欲しかったら秘密にする。確かに、明日人の言う通り夜舞は強かった。

「あ、夜舞さんはダメ! せっかく仲良くなったんだから、ちゃん付けで呼んでよ!」

 大谷先輩みたいに! と夜舞は杏奈に呼び方の改変を進める。

「じ、じゃあ、『月夜ちゃん』?」

「えっ」

「え?」

 夜舞も、まさか名前で呼ばれるとは思ってなかったらしい。

 

 

 

 杏奈との仲がさらに深まったその夜、円堂は自分の部屋のベッドの上で考え事をしていた。

「(メリーのシュート…あれは、俺の最終奥義でも止められなかった…)」

 メリーの秩序の光に包まれた時のことを思い出し、円堂は自分の力の無さを悔やんだ。

「(そうだ、じいちゃんの特訓ノートを見れば、何か見つかるかも…)」

 悩んでばかりじゃいられないと、円堂は自身のカバンの中から、おっそろしく汚い字(この汚い字は祖父のもので、円堂にしか解読できない)で書かれた表紙のノートを取り出した。

「怒りの鉄槌、イジゲン・ザ・ハンド………ん? ジ・アース?」

 円堂の祖父、円堂大介が作った必殺技の中に、ジ・アースと書かれた必殺技を目にする。

「十一人の想いが一つになる時に生まれる、必殺技……わっ!」

 ジ・アースの内容を見てみても、ダン、ドン、バキューン、ドカーンしかわからなかった。するとその時、円堂のスマホの着信音が突然鳴り響き、円堂はノートを落としそうになった。ノートを机に置き、スマホの画面を見てみると、そこには円堂の母の名前があった。

「もしもし母ちゃん、どうしたんだ?」

「守、死んだと思ってたあんたの大介さん、実は生きてて陽花戸中に居るって秋ちゃんから連絡を貰ったのよ!」

「え、秋が!?」

 秋からの電話が自分の母親に届いたことに、円堂は驚いている様子だった。

「秋ちゃん、あんたの為にって友達と一緒に大介さんのこと調べてたっていうのよ」

「そうか…秋、夏美、音無…」

 自分たちの為に調べてくれたというのを聞き、円堂は頑張ってくれた秋たちの為にも、自分も頑張らなくちゃなと意気込んだ。

 

 ***

 

「こ、これが船…!」

 坂野上が客船の中をちらほらと歩き回る。明日人たちは、円堂の提案で福岡の陽花戸中に行くことになったのだ。

「ヒロト、てめぇは慣れてんのか」

「そりゃあ船に乗ることなんて日常茶飯事だったしなぁ」

 飛行機の時のヒロトはまさかに過去のトラウマ以上のものを抱えていたんじゃないかっていうくらい苦手意識を持っていた筈が、船ではそうでもないのを見て、灰崎は気になった。

「う、うぇっぷ…」

 しかし、夜舞はそうでもないようだ。甲板のフェンスに体を預けているのを見ても、かなり気持ち悪いことがわかる。

「あの、夜舞さん。この船の水所でご一緒に泳ぎになられませんか?」

 ミラに、夜舞は呼ばれた。一瞬なんのことかわからなかったが、プールで一緒に泳ごうと言っていると夜舞は解釈した。

「プール!? 行く行く!」

 すると先ほどまでの気持ち悪さはどこえやら、急いで甲板の階段をかけあがり、プールのあるところに夜舞は向かって行ってしまった。船の甲板ではそれぞれが好きなことをしていた。なお、甲板には温水プールが設けられていた為、そこで水着に着替えて泳いでいる仲間の姿もあった。それもかなり広いため、半分の仕切られたプールで水泳選手みたいに泳いでいる人もいれば、学校のプールの自由時間みたいに遊んでいる人もいた。

「円堂さんは、陽花戸中にじいちゃんがいるのを、木野さんから聞いたんですよね」

「あぁ、俺、じいちゃんに会って特訓し直してももらうんだ。こんなこと俺らしくないけどさ、やっぱ俺力不足だなぁってさ」

 円堂と明日人は水着姿で、肩にマントみたいなタオルをかけている。甲板作られた温水プールで遊んでいたそうだ。そして今は足をプールにつけながら、足でパシャパシャと遊んでいる。

「わぁ~! 杏奈ちゃん可愛い!」

 大谷の声がしたので、明日人たち男子たちは泳ぐのを止めて大谷の方を見た。なんと大谷たちは、可愛らしい水着を着ていたのだ。普段見えない女の子の体が見えて、明日人たちはまるで中学生(中学生だが)のようにあまり女の子の方を見ないようにした。なぜなら大谷と茜は普通のワンピースだったりスクール水着のような容姿をしていたが、杏奈はもはや紐ビキニだった。明日人たちからすれば、取れるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。

「そ、そう…?」

 本当は茜と同じくワンピースにしてみたかったが、プールに野坂が居た為、杏奈は思い切ってビキニにすることにした。だが、やはり男子たちを見て恥ずかしくなったのだろうか。顔を赤らめている。

「……灰崎、お前なに宮野をそんなバッチリと見てんだよ…」

「み、見てねぇよ!」

 灰崎が見ていないと否定している中、いやバッチリ宮野の水着姿見ていただろ。と、ヒロトは思ったのであった。

 ヒロトが灰崎をからかっている中、杏奈はプールから上がり、タオルで頭を拭いている野坂を見ていた。すると、自然と野坂がかっこいいなと思うようになっており、そして自分のこの姿を見て野坂はなんていうのかなと想像も膨らんだ。

 だが、杏奈が楽しくなったのもつかの間、杏奈のビキニの紐が、ほどけ始めていたのだ!

「あっ」

「「あっ!!」」

 杏奈が紐ビキニが解かれてしまう瞬間を刹那的に眺めている中、明日人たち男子は状況に気づいたようで、顔を赤らめていた。

「あ、あそこにUFOが!!」

 一番先に感づいた坂野上が、めちゃくちゃな誘導によって明日人たちの目を杏奈から反らした。坂野上くんナイス! と大谷が思いながら、杏奈の紐ビキニの紐を固く結び直した。

「あれ? なんで皆顔を赤らめているの?」

 水着に着替えた夜舞が外に出ると、そこには明日人たちが顔を赤めながら一斉に海を眺めている姿があり、夜舞は状況に困惑した。

 その頃野坂は言うと、杏奈の肩にタオルをかけていた。

 

 ***

 

 船でのラッキースケベがありながらも、明日人たちはなんとか福岡の陽花戸中に着いた。

 そこは花伽羅村よりかはそこまで田舎では無かったが、(むしろあそこが幻想的過ぎた)どこか懐かしさを覚える校舎だった。「おぉ、守様ですか」

 明日人たちがこの陽花戸中の校長に会おうと、日曜日の校舎の中を歩いているその時だった。陽花戸中の校長が、円堂に寄ってきたのだ。

「校長室で貴方様のおじいさまがお待ちです。ささ」

「本当か!」

「円堂、行って来いよ」

 幼馴染みの風丸の計らいによって、円堂と祖父との時間を作ってくれた。風丸に感謝しながら、円堂は校長室に向かった。

「じいちゃん!」

 校長室のドアを勢いよく開けると、そこには円堂守の祖父、円堂大介が居た。「守、久しぶりだな」「じいちゃん!」

 円堂が、大介に抱きつく。亡くなったと思われた祖父に会えたことに、円堂は嬉しく思っていた。しかしそれと同時に、とある疑問が浮かび上がった。

「じいちゃん、なんで、俺に亡くなったって」

 大介の服を自分の涙で濡らしながら、円堂は大介に理由を聞いた。

「すまんな。実は、とある島で影山の復讐に手を貸した人物のことを探っていたじゃよ。じゃが、影山の復讐に手を貸した人物までは突き止めることが出来たんだが、謎の事故によって亡くなってしまってな。ひとまず儂はここに戻って孫に会おうとしたんじゃよ」

 影山。現在帝国学園の監督。そして、円堂大介を殺そうとした人物。実は彼のしたことが父への復讐の為であり、そのために当時雷門中の監督だった円堂大介を殺そうとしたのだ。自分が生きていることを知られたは家族が今度は標的にされるかもしれないと、今後生まれてくる孫のことを考えながら、大介はとある島に身を隠していたのだ。そして、影山の復讐に手を貸した人物のことを調べていた。

 だが、ここでその人物は、謎の事故によって亡くなってしまった。

 そのため、もはや隠れる必要はないなと、テレビで孫が活躍している姿を見て、ここに戻ってきたのだ。

 

 

 

「そうか…今はユースティティアの天使と戦っているんだな」

「うん…でも、俺ユースティティアのボール、全然止められないんだ。この前だって、止められなくて…」

 世界を守る為に戦っているというのに、自分はハーツアンロックもスペクトルフォーメーションも解放していない。これでは当時最強のイレブンを作ったじいちゃんに申し訳がたたないと、円堂は自分の力の無さを悔やんでいるようだった。

「…守。ハーツアンロック、スペクトルフォーメーションだけが天使への対抗手段ではない。努力もまた、天使への対抗手段だ!」

 大介に喝を入れられ、円堂は思い出した。自分は強くなりたいということばかり考えていた為、その強くなるのに必要な、「努力」をすることを忘れてしまっていた。

 そうだ、自分は今まで努力してきたじゃないか。

 何もハーツアンロックだけがサッカーではないだろう。「じいちゃん…あぁ、そうだよな!」

「じゃあ、早速特訓といくか!」

「あぁ!」

 

 

 

「おまたせー!」

 円堂が仲間にお待たせと言った時には、もう明日人たちは特訓の準備をしていた。ユニホームに着替え、それぞれ個人練習を行っていた。

「じいさんとの話はもういいのか?」

「まぁ、色んなことはこれから話すさ!」

「まぁ、せっかく会えたんだ。ゆっくり話をしたらいい」

 風丸と豪炎寺が、円堂の肩に手を置きながら話し始める。

「じゃあ、早速特訓じゃ! まずは二人組を作って、儂の用意したコースを二十五週してもらおう! ただ走るだけだ!」

 特訓好きの円堂のおじいちゃんとなれば、凄くヤバい特訓をさせられると明日人たちは思っていた。しかし、簡単そうな特訓内容に、なんだ、案外簡単そうじゃん、と明日人たちは胸をなでおろした。

「よーい、スタート!」

 コースの中は、森林公園みたいなところで、ランニングコースを歩くというものだった。

「これなら簡単ですね! 不動せ……」

 緩やかな坂はあるにしろ、夜舞の祖母の出す修行よりは簡単そうだと夜舞は言おうとした。

「わっ!」

 だがその時、右にタイヤが夜舞の前を通り過ぎたのだ。

「な、なんだこりゃ…」

 最初の難関は、遠心力によるタイヤを避けながら進むという特訓だった。しかし、量が多い。全てを避けるのは難しそうだ。

 

 

 

「どわあああああああああああぁぁぁ!!」

 その頃、大きな角の生やした凶暴な牛から、剛陣は逃げていた。

「あっすみません! ロープ取っちゃいました!」

 坂野上の右手には、今まで牛を繋ぎ止めていたものであり、坂野上がロープによってコケた時にとってしまったのだろう。

 

 

「大介さん、本当にこれ、特訓なんですか?」

 コースのカメラを通した動画のモニターを見て、杏奈は大介に申し出た。牛に追いかけられているモニター、熊と戦っているモニターなど、色々と特訓としてはど肝を抜いていた。

「ワシに任せろ! きっと効果が出る!」

「そうかな……凌兵…」

 茜はゴール地点の近くで特訓の終わりを待っていた。

「けど、内容はともかくとして、効果はありそうだね。視野の向上、危機管理能力、感受性の向上など、サッカーをするに大切なことをしているよ」

 折谷も思わず感心してしまうほど、円堂大介は凄かった。

 しかし、日が暮れているというのに、明日人達は帰ってこなかった。大谷たちも心配のあまりゴール地点で膝を抱えて待っている。

「ぜぇーぜぇー……遅くなってごめん…」

 円堂の声が聞こえ、大谷たちが顔を上げる。円堂達は、ハード過ぎる特訓にも負けずに、やっとゴールに着いた。だが、あの夜舞でさえ砂木沼におぶられていた為、明日人達は一斉にその場で倒れた。

「皆さん、大丈夫ですか!?」

「今救急箱と担架を持ってきます!」

 明日人達が倒れたのに伴い、大谷たちは急いで怪我の手当をしようと医務室にある救急箱を取りに行っていた。

 

 ***

 

「うう…死ぬかと思ったよぉ…」

 手当を終え、はバス近くのベンチに座った明日人。

「明日人くん…私のおばあちゃんの修行と肩を並ぶくらい、いやそれ以上に辛かったよ…」

 夜舞はもはやベンチに座ることなく、校庭の砂浜にうつ伏せで横になっている。「あと、お腹が空いて力が出ない…」

「確かに…朝食は食べたけど、昼食は食べてないね…」

 まず、特訓に夢中で空腹も昼食を食べることすらも忘れてしまっていたのだ。そりゃあ、お腹もすくだろう。

「みなさーん! カレー作りますよー!」

 とその時に響いた大谷の声は、まさに天からの救いだった。

「カレー!?」 明日人は立ち上がり、夜舞は起き上がる。

「カレー!!?」

 円堂は特訓をやめ、鬼道と野坂は明日人たちみたいに表情を表に出さなかったが、嬉しそうだ。

「カレー!!??」

 そう、キャンプと言ったら、カレーだ。

「はい! 今から皆さんで作りましょう!」

『よっしゃあああ!!』

 明日人達が一斉にバスの近くに駆け寄る。そして、陽花戸中のキャンプ場を使ってカレーを作ることにした。野菜を刻み、炒め、煮込む。これでカレーライスのカレーの部分は出来上がった。しかし。

「あ、しまった!」

「どうしたの!?」

 杏奈の危機迫った声に、夜舞たち女の子が駆け寄る。

「お米じゃなくて…もち米を間違えて買っちゃいました…」

「そ、それはとんだケアレスミスだね…」

 茜は思った。いくらなんでも間違えはしないのではないかと。

「どうしよう…今買っても間に合いませんよ!?」

 大谷の言う通り、とっくにカレーは出来てしまっている。今スーパーで米を買って炊いても間に合わないだろう。それに、ライスのないカレーなんて、明日人たちも嫌だろう。

「どうしたんだ!?」

「円堂さん…実は杏奈ちゃん、間違えてもち米を買ってきてしまって…」

『ええ!?』

 目を見開いて驚く明日人たちに、杏奈は申し訳なさそうに縮こまってしまった。

「あ、杏奈ちゃん。ほら、お餅のカレーとかも美味しいと思うよ? ほら…」

 大谷が慰めようとすると、杏奈は自分の間違いを責めるばかりだった。

「…………そうだ」

 いいことを思いついた。今からでも間に合って、楽しく『餅』を作れる方法を。

「みんな! 今から餅つき大会しない!?」 明日人は、宣言した。

 

 

「凄いな…短時間で簡単に…」

「伊那国島の古くて奥深い技巧…気になりますね…」

 鬼道と一星が、明日人の持っている炊いたもち米を見ながら、伊那国島の独特な餅の作り方に興味を示す。

「やるではないか稲森!」

 砂木沼が明日人の肩を叩きながら賞賛の声を浴びせる。あまりに勢いよく叩くため、明日人は米をこぼしそうになる。

「杵と臼持って来たよ!」

 校長に言ったら貸してくれたんだと、タツヤが荷台を使って杵と臼を運び、それを明日人の近くにヒロトと一緒に置いた。

「じゃあ、皆で交代しながらやろうぜ!」

 餅つき大会、スタート!

 円堂から順に、想いを込めた餅を作っていく。

「結構力が入るものなんだね…」

 杵を持ち上げる時が重いと、アフロディは思った。

「青春、してますねぇ」

「そうですねぇ」

 いつの間にか帰っていた趙金雲が餅をつく明日人達を見ながら、夜の空を見上げていると、いよいよ明日人の番となった。

「じゃあ、仕上げは言い出しっぺの明日人くんだね」

「あぁ! 行こう夜舞!」

「うん! 餅付くんのところで鍛えた餅つき、見よ!」

 明日人と夜舞がジャージを脱ぎ、夜舞は臼にある餅に対し、明日人は杵で構えを取った。

「「必殺! 超高速伊那国・花伽羅式餅つきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」

 うりゃりゃりゃりゃりゃりゃと言う声と共に、明日人と夜舞は名前通り餅を高速でついていく。

「あれだけ高速で動いているのに!」

「杵は臼に当たらず餅に当たる!」

「残像で二つ持っているように見えるな…」

「まるで奥義だな…」

「というか、速くない!?」

「凄い!」

「あれだけ杵が高速でついている餅を」

「怯えもせずに手を入れていく!」

「そしてちゃんと水もつけてます!」

「夜舞さん…すごいです!」

「やべぇな…」

 明日人たちの餅つきに、円堂達は状況を説明しながら驚いていた。

「神門さん!」

「杏奈ちゃん!」

 餅つきが終わったのか、夜舞と明日人は餅の熱さが杵と手の高速移動によって熱が十分に冷めた餅を杏奈に差し出した。

「あとは神門さんがやって」

「えっ…」

「だって、料理得意でしょ?」

「……うん」

 明日人たちに見守られる中、杏奈は餅を同じ大きさに手でちぎり、餅とり粉で餅を包んでいく。そしてチョコペンで餅に顔を描き、最後に皿に入れた餅にカレーをかけて、餅カレーの出来上がりだ。

 それを、明日人達は口に入れる。

『うまぁああああああああぁぁいいい!』

 それぞれ、お餅が柔らかくて美味しい、ルーも美味しい、餅もいいなと、美味しい美味しいと口にした。

 それを見て、杏奈は自分のミスによる罪悪感が、消えていった。

「杏奈ちゃん。これが、チームっていうのかな。誰かが失敗しても、責めないで何か改善策を見出してくれる。今日だって、明日人くんと夜舞ちゃんが大活躍だったでしょ?」

「………そう、ですね」

 これから先も、餅みたいに伸びゆく関係でありますように。

 たまには、焼き餅もいいな。と、杏奈は思った。

 

 ***

 

「ミラ、と言ったか?」

「はい。なんですか。大介さん」

 その頃ミラは、大介に呼ばれていた。なにやら大介はミラと話がしたいらしく、ミラを屋上に呼んだのだ。

「お前さん…何か隠していないか?」

 円堂大介が、威圧をかけながらミラに問いかける。

「…お生憎ですが、私には隠すものなどおありにならなくて…」

 優しそうに、自分には隠すものなどないと大介に言う。

「そういえば大介さん。これは例えなのですが、どんなに罪を犯された人でも、必ずいい人になれると思いますでしょうか?」

「………ワシは、サッカーのことしか考えてなかったからな。そういうことはわからん。だが、どんな人にも、他人から許される権利くらいはあるとは思うぞ?」

 そう大介は言いながら、屋上を去った。

 

 

 

 青春らしいこと、してもいいじゃないか。

 中学生なんだし。

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