イナズマイレブン テミスの正義   作:暁月の太陽

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今回も過去捏造ありやんね

というか、トラウマって消したいですよね。
記憶処理なんていう某財団のがありますけど、それでも消したいですか?

第三波、やってきましたね~
今回も私は、三連休用事がないときは家にいることにします。
皆も気を付けようね!


第二十六話 記憶は逃げてしまうもの

「な、なんだよこれ…」

 ミーティングルームのディスプレイを見て、剛陣が言の葉をこぼした。

「こ、こんなことって、ありませんよ…」

 大谷はディスプレイに写る状況に涙を流しており、茜も杏奈も涙をためている。

「なんで、だよ…」

「ユースティティアの天使は、こんなこともするのか…」

 円堂も涙を流しており、豪炎寺もあまりの惨さに目を瞑っていた。

 宿所のミーティングルームのディスプレイに写っているのは、多くの悪人が国民の目の前で大量公開処刑されているというビデオだった。勿論送り主はミラで、従わなければお前達もこのようにするぞという強迫なのだろう。その翌日に全国民に送られたメールには、『今日から三日以内にこの国から脱出すること。ミラ・マアトは危険だ。航空費と宿はこちらで用意する。』という政府からのメールだった。

「これってつまり、三日以内にここから逃げなければいけないんだよね…」

 明日人は、伊那国島に残してきた島民たちのことを少し心配していた。

「…あまり考えたくはないが、もしかしたら逃げ遅れる人も出てくるだろうな…」

 鬼道の予想に、明日人たちは鬼道の方を向いた。

「どういうことだよ」

「つまり、家の経済状況によっては、国の航空費があっても日本から逃げることはできない…そういうことだね」

「あぁ、吹雪の言う通り、この日本の多くの人が、この日本から出ることはできないだろうな…」

「そんな、せっかく逃げてっていうメールが来たというのに…」

 一星が鬼道の予想に、本当だったらどうしようと青ざめる。確かに、この国の経済状況は、サッカーが禁止されたのも相まって悪い方に向かっている。そのため、多くの人が国からの航空費や援助金があっても、この国から逃げられないという状況に陥ることになってしまうだろう。

「俺としても、なるべく多くの人が逃げられるようオリオン財団の資金を貧困層に送ってみる」

「待ってください。オリオン財団はユースティティアの天使に破壊されたのでは?」

 ベルナルドの出した方法の仕方に疑問に思った水神矢が、ベルナルドに自分の意を発した。

「オリオン財団事態は破壊されてしまったが、まだこちらの資金が残っている。今は日本の国民が逃げれるよう、資金を回す予定だ。国の政治家たちと話を付けてくる。だから、今日は練習なしだ。家族と話をしてくるといい」

 ジャージからいつものスーツ姿に着替えていたベルナルドは、明日人たちに今後の予定を話すと、一人で宿所の外に止まっていた車に乗り込んだ。

 

 

「じゃあ、私は花伽羅村に行ってくるね。茜ちゃんも、気を付けるんだよ?」

「うん! 夜舞さんも気を付けてくださいね!」

 ミーティングが終了すると、明日人たちは三日以内に家族を話をつけてこようと、散り散りになって実家に帰っていく。夜舞も、袴に着替えて花伽羅村にいくつもりだ。

「ほら、行くぞ」

「うん!」

 灰崎も、幼馴染みの茜と一緒に田舎の実家に行ってしまう。

 それを見た明日人は、自分も伊那国島に帰ろうとジャージから秋用の私服に着替えていた。

「明日人」

 すると、同じように私服に着替えた剛陣が明日人に話しかけてきた。

「小僧丸たちはどうやら、このメールが来た直後にオリオン財団の医療施設に転院となったらしいぞ」

「そうですか…よかったですね」

「明日人…もしかしたら、伊那国島の奴らが心配なのか?」

「心配ですよ…()()()()()()()()()()()()()

 明日人は、伊那国島の人達が心配だった。もし逃げられなかったらと思うと、居てもたっても居られなかった。しかし、明日人は最後の方だけ、剛陣に聞こえないように小声で言った。

「ん? 何か言ったか?」

「なんでもないです! ほら、伊那国島に行きましょう!」

 明日人は剛陣を置いて、宿所の外へと走って行ってしまった。それを見て剛陣は、明日人を追いかける。

 

 

 

 

「…この国も、とうとうユースティティアの天使の支配下に置かれてしまいましたね…」

「あぁ、そうだね…」

 明日人たちが実家に帰っていく中、野坂たち一星に西蔭は、宿所近くのカフェテラスにお邪魔して、軽い食事をしていた。

 野坂がシーフードグラタンを一口スプーンで掬い、飲み込む中、一星は野坂が日本を守れなかったことを悔やんでいるように見えていた。野坂は自分達参謀にも色々隠す気質な為、一星はおそらくそうなのだろうと、行動から分析した。

 野坂たちが食事をしている中、街の人は突然の国外逃亡の要請に、大混乱に陥っていた。食料や必需品を求めてスーパーやコンビニなどに押し寄せる人の姿。飼い主に置いて行かれたのか、裏路地のゴミを漁る猫などのペット。ユースティティアの天使の件で国全体が混乱していたというのに、さらに国からこの日本から逃げるように指示されたのだ。混乱するのも無理はなかった。

「おや、三人ともどうしたんだい? こんなところに」

 すると野坂が、大きい荷物を持って街を歩くルースにマリク、そしてユリカに気づき、声をかける。

「僕たちは、とりあえずロシアに戻ることにするよ」

「それはどうしてなんだい?」

「これから泊まる宿所の準備をするの。あ、これから泊まる宿所は、FFIに使っていたロシアのに決まったから」

 ユリカは淡々と、日本を離れたあとの宿所の場所を野坂に教えると、一星が次に質問した。

「ロシアですか…フロイはどうしたんですか?」

「フロイさんなら、先にロシアに行っちゃったよ」

「どうやら、フロイの家であるものが見つかったらしいんだ。詳しくはわからないけど…」

 ルースからの答えに、一星はフロイの家に何があるのだろうかと考えた。

 あるとしてもサッカー関連のものだろうかと、一星は思っていた。

「あ、そうだ一星さん、西蔭さん。実は君に手伝ってほしいことがあるんだ」

「俺に手伝ってほしいことですか?」

「俺か?」

「一星くん、行ってみたら?」

 野坂が居るため、行こうかと一星と西蔭は悩んだが、野坂に行っていいよのサインをもらった為、一星たちはマリクからの頼みを承諾することにした。

「わかりました。どんなものですか?」

「あのさ…現地についたら『宿所の冷蔵庫を埋めるために買い出しをしてほしいんだ』」

 なんとマリクからの頼みはルースによって代弁され、一星と西蔭は辛い戦いになるだろうなと察した。

 

 ***

 

 フロイは、自家用ヘリコプターで自分の家についた。

 いつもと変わらない風景の家のヘリコプター停留所に降りたフロイは、まずスマホで執事から送られたメールを確認した。

『フロイ様へ。実はイリーナさまの部屋からあるものが見つかりました。ベルナルド様に見てもらいたいのですが、ベルナルド様はラストプロテクター・アースの監督をしていると仰っているので、よろしければ、フロイ様が取りにいかれますか?』

 勿論自分の母の部屋から見つかったものが知りたかった為、フロイはこの件を承諾し、自分の家に帰ってきたのだ。

「あるものって…なんだろう…」

 長い事戻っていなかった我が家に戻り、フロイはまずイリーナの部屋に行くことにした。そこなら、例の執事もいるだろうと思ったのだ。

「お待ちしておりました、フロイ様」

 すると、フロイの予想通りメールを送った執事が部屋の前で立っていた。

「うん、お待たせ。それがあるものなのかい?」

 フロイが執事の右手に持っている紙の束を指さす。

「はい。後のことは、フロイ様の目で確かめた方が…」

「わかった」

 フロイは執事から書類を受け取ると、それを自分の部屋のベットの上で見た。久しぶりの実家のベットに、思わず眠りたくなったが、眠気を抑えて書類を見ることにした。

「これがあるものか…」

 書類には、オリオン財団の機密情報、パーフェクトワールドの計画書など、わかりやすいものばかりで、ここはフロイの目にあまり止まらなかった。しかし、オリオンに保護されている子供の概要などの報告には目を止め、写真と経歴を見る。保護された子供達はどれもこれも元オリオンの使徒の子供達だった。その報告書の名前の欄に、一星充の名も乗っている。充には悪いことをしてしまったなと、思っているその時だった。一星充の報告書の後ろに、もう二枚紙が重なっていた。

「……え」

 フロイが、自分の膝の上から書類を落とす。その中には、本来報告書に乗っていた子供達が保護されるはずだった団体の、()()()()()()()()()との契約をイリーナが無断で解約したという証拠を表す、破れた契約書。

「み、ミラージュ社団法人って…あの、不知火おじさんがいた社団だよね…なんでその名前が、この報告書に乗っているんだい…? それに、この報告書に乗っている子達が本来あの社団に保護されるはずだったって…」

 震える指先を抑えながら、フロイは次の書類を見る。

「____!?」

 もはや、言葉も出なかった。

 なぜならそこには、イリーナが自分の夫であるヴァレンティン・ギリカナンの暗殺を依頼した、殺し屋との取引内容が明確に記されていた契約書があったからだ。

「と、父さんは、病気で死んだんじゃないの…? なんで母さんが父さんを殺さなきゃいけないのさ」

 フロイの部屋に置かれた、花瓶の中から黄色の茎が現れる。それは、銀色のオーラを纏っていた。

「そんな、僕は、母さんを信じていたのに、こんなの、ありえないよ」

 フロイが絶望したその時だった。

「__カハッ」

 茎の一本がフロイの首に突き刺さったのだ。

 そしてそのまま、フロイはベットに倒れ込んだ。

 

 ***

 

 紫の長襦袢に赤黒の袴、そして桜色の上着を着た夜舞は、花伽羅村に向かおうとしていた。花伽羅村に通ずる森の木の枝や、葉っぱが袴に着いているのを気にもせず、夜舞は急いで花伽羅村の安全を確認しにいった。

「おばあちゃん! おじいちゃん!」

 トンネル近くには夜舞の祖母、夜舞緋華里を筆頭に、この村にいる大人たちに子供たちが、全員荷物を纏めてトンネル前に整列していた。

「月夜! どうしたんだい!?」

「国からこの日本から逃げてってメールが来たから、おばあちゃんたち大丈夫かなって…」

「月夜…私たちは無事だよ。それに、これから空港に行こうとしたつもりなんだ」

「良かった…」

 全員無事ということがわかり、夜舞は安堵すると、夜舞緋華里が夜舞に話しかけてきたのだ。

「そうだ、フロイくんは来ていないのかい?」

「フロイくん? フロイくんがどうかしたの?」

 夜舞緋華里がフロイに用があると知り、夜舞は少し気になった。

「いやね…陽花戸中でフロイくんを見たとき、あの子に何か『不吉な匂い』がしたんだよ…綺麗に蕾を咲かす花のようだけど、その花の養分を喰らう虫のような、そんな匂いなんだよ…」

「もしかして、怪異なのかな」

 夜舞は、夜舞緋華里の言い方から、怪異なのかと予想する。

「いや、一眼に怪異とは決めつけられないよ。ただの気のせいかもしれないしね」

「そうなんだ…」

 夜舞緋華里から注意するように言われ、夜舞は宿所に帰ったら、花に関する怪異を調べようと思った。

 

 

 

 いよいよ、明日は日本から脱出するためにロシアに向かう日だ。宿所の食堂には荷物をまとめた明日人たちが揃っており、全員の着席を待っていた。(一星と西蔭は先にロシアに行った)

「ごめん! 遅くなっちゃって!」

「夜舞、花伽羅村の皆とはもういいのか?」

「うん、皆ちゃんと避難したよ」

 明日人が夜舞に花伽羅村のことを聞くと、夜舞は嬉しそうに返す。とにかく、これで全員集まった。

「明日は、ロシアに発つんだな」

「うん、ユースティティアの天使の支配が進んでいる。僕らも気を引き締めないとね」

 豪炎寺とアフロディの言う通り、ユースティティアの天使の猛攻は進んでいっている。人間にとって、もう後は残っていないだろう。

「皆、明日はこの国を脱出するために、ロシアに発つ。日本が支配されてしまった以上、他の国もあぁならないように気を引き締めて戦おう」

「あの、趙金雲監督はどうしたんですか?」

 前の監督である趙金雲のことが心配になった大谷は、ベルナルドに状況を聞く。

「趙金雲なら、今ハワイでバカンスに来ているようだな」

「こんな時に何してんだよ…」

 灰崎の想いは、ここにいる全員がそう思っていた。

「心残りと言えば、私の師匠に会えなかったことだな…」

 ベルナルドのつぶやきに、風丸が気づく。師匠って、サッカー関連の師匠なのかと気になった風丸は、ベルナルドにその師匠は誰なのかと聞いてみることにした。

「ベルナルド監督の師匠って、誰なんですか?」

「あぁ、()()()()()だ」

「え…」

 ベルナルドの師匠、それはなんと不知火一誠であり、これまで不知火に関わってきた夜舞は、目を見開いた。

「その師匠って…この日本にいるんですか?」

「あぁ、私が幼い時にあった、日本人だ」

「…その話、聞かせてください」

 夜舞は、不知火がベルナルドの師匠だということが信じられなかったが、それでも不知火の事が知りたいと、ベルナルドに話をしてほしいと頼み込んだ。

「あぁ…」

 

 

 

「師匠との出会いは、俺がちょうど十二歳のことだったかな。子供の時の記憶は薄れるものだとよく言うが、俺にとっては出会ったことは、まるで紙が擦り切れるほどに脳裏に浮かんでくる。印刷機のようにな。

「俺が師匠と出会ってなかったら、俺は永遠に呪縛に囚われていただろうし、社会的に暮らせない程の障害を負っていただろうな」

 明日人たちは、これからベルナルドの過去の話を聞こうとしている。

 記憶が薄れないほどの、

 彼らとの出会いを。

 

 ***

 

 あれは、まだ自分が十二歳の頃。

 まだイリーナ・ギリカナンが生きていて、人口の一人として数えられていた頃の話である。当時のベルナルドは、イリーナから虐待を受けており、今日も罰として家の外に追い出されいた。勿論父であるヴァレンティン・ギリカナンは何も知らない。虐待のことも、ベルナルドのことも。

「…お腹空いた…」

 小さく、そしてやせ細った腹に手を当て、空想の中で豪華な食事を想像する。マッチ売りの少女のように。しかし彼女は、マッチを使って自分を温めていたが、自分には何も持っていない。ごはんも、飲み物も、マッチも。ロシアの夜はとても寒い。そのためベルナルドは、マッチも持たないままの終わりを待っていた。

 すると、ポーン、ポーンと、ボールの蹴る音が聞こえる。それも門の外だ。こんな遅くにボール遊びをしているなんてと、ベルナルドは少し好奇心が湧いた。

 門の外に行き、そこでやっているボール遊びの詳細を、リフティングをしている少年から察した。

「あれ…サッカーボール…?」

 これはサッカーだ。自分が授業でやったのと同じだ。しかし、ベルナルドはサッカーに興味など持っていなかった。今は、イリーナ・ギリカナンのご機嫌取りに身体を削られていたからだ。

 その瞬間、少年がリフティングに失敗する。そのボールは少年の後ろ、ベルナルドに転がり、ベルナルドはそれを手に取った。

「おっと…ん? お前、ここの家の子か?」

 少年の顔が、自分の目に写る。黒い毛を肩まで伸ばした、癖毛のある髪。灰色のパーカーと、容姿からして高校生のようだった。高校生。いわゆる大人だ。それに気づき、ベルナルドはすぐに門を通りぬけ、庭の植木の陰に隠れる。

「おいおい…何も隠れることはないだろ…」

 高校生が、ボールを持ったベルナルドを追いかける。

 大人が、近づいてくる。

 もうそれだけで怖かった。

 自分の母は、自分のことをよく叩くし、父も自分のことに目もくれないで仕事ばっかりしていた。

 他の大人たちも、自分のことを散々殺してきた。

 本来の自分。

 みんなの願いに答えて作った自分。

 ずっとみんなの為と思って作った自分。

 そして_______

「大丈夫か? 怖がらせてごめんな」

 これまでの自分を。

 

 

 

「よっ」

 昨夜、自分の家で出会った高校生が、ここにいる。あの時ベルナルドは、あの高校生に撫でられて、少しだけ心を開くことが出来た。しかし、その高校生が、今日も自分があの嫌な家に帰ろうとしているときに、校門前に立ってベルナルドを待っていた。

「…何をしているの」

「お前を、迎えにさ」

 右手を上げて、にっこりと笑う高校生。しかし、その笑顔には、大人のような裏はなかった。

「…マーマから?」

「違うよ、俺の社団にさ」

「…え」

 高校生のなりをして、社団を自分のものと言う高校生。それにベルナルドは純粋な驚きを見せると同時に、少しだけその社団について好奇心が湧いてきた。

「俺の社団、ミラージュ社団法人。お前の父さんもしばらくは俺の社団で過ごした方がいいって言ってたからな」

 どうやらオリオン財団とミラージュ社団法人は繋がっており、高校生は最近オリオン財団とミラージュ社団法人のパーティにお邪魔したらしい。

「んじゃ、行くか!」

「え、ちょっと…」

 ベルナルドの手を引っ張って、高校生は電車やバスなどで航空へと向かう。

「ちょ、ちょっと待って!」

「ど、どうしたんだよ!」

「いや、僕これからマーマのところに言ってテストの結果見せないといけないし…」

「そんなの、後でいいだろ? あ、俺は不知火一誠! お前の名前は?」

 高校生、いや不知火一誠が、自分の名前を問いてきた。

「…ベルナルド、僕はベルナルド・ギリカナン」

「ベルナルド、いい名前だな! そういえばベルナルドっていう名前は、強い子に育つようにっていう思いから付けられたんだそうだな!」

 強い子。でも自分はこんなにも弱い人間だ。自分の母に従順で、学校でもにっこりと笑っているだけであとは皆がやってくれたため、自分は何もしなかった。

「あとは、ギリカナンの意味としては、ギリがササック人の言葉で孤島、カナンは旧約聖書で神がイスラエルに与えたという約束の地っていう意味なんだぞ?」

「そ、そうなんだ」

 ただベルナルドは、そうなんだというしかなかった。

「あ、ごめん。俺つい話が長くなる癖があってさ…」

 それでも、ベルナルドは不知火の話を嫌だと思うことはなかった。

 

 

 

 それからベルナルドは、自立するまでの時間を、ミラージュ社団法人で過ごした。

「桜は、咲いたかと思えばすぐに散ってしまう、儚い花なんだ。そして、儚いという言葉は、「人」の「夢」は「儚」いと書いて儚いというんらしいんだ」

 日本が本部のミラージュ社団法人は、優しい彼が運営しているせいか、中の空気はとてもよかった。勿論これは空気洗浄とか、場の空気という意味で。そしてベルナルドは、外国の自分さえも受け入れたこの場所こそが、我が居場所になりそうだと思っていた。

 恐らく大人になるまではここに居られるのだろう。不知火もどうやらロシアに残してきた家族には色々言っていたのを聞いた為、しばらくあの家に帰ることはないのだろうと少し安心していた。

「そうだベルナルド、サッカーしないか?」

 そして、この不知火の一言こそが、自分がサッカーを始めるきっかけとなったのだ。

「サッカー?」

「あぁ、やったことあるだろ? あ、嫌だったら嫌っていってもいいんだぞ?」

「…うん! やる!」

 サッカーは、中々やらせて貰えなかった為、サッカーがやれるということを嬉しく思っていた。

「ははっ! ベルナルドは上手いなぁ~!」

「えっと、不知火さんだって上手じゃないですか」

「まぁな~俺はサッカー選手を目指している身でもあるからな!」

 なんと、今自分の目の前にいる人物が、サッカー選手を目指していることを知り、ベルナルドの目は輝きに満ちていた。

「え!? サッカー選手って、サッカーが一番上手い人がなれるんだよね!?」

「おう!」

「僕も、サッカー選手になれるのかな!」

「あぁ! きっとなれるさ! 俺の指導の元ならな!」

「うん!」

 ベルナルドは、不知火に頭を撫でて貰って、久しぶりの笑顔を見せていた。

「あ、ベルナルド! 今日から俺のことは、師匠とよんでくれ!」

「え、なんで?」

「師匠は、経験によって自分のものにした知識を、弟子に伝授する関係のことをいうんだ! だから、俺が師匠、お前が、弟子ってわけさ!」

「…うん! わかった!」

 ベルナルドは、師弟関係のことをよくわかっていなかったが、とにかくそういう関係であることはわかったようで、ベルナルドはこれから不知火のことを師匠と呼ぶようになった。

 それからというもの、ベルナルドは不知火に色んなことを教えて貰った。

 日本の文化、日本のスポーツ、日本の観光名所、日本の食べ物と、不知火は色んなことをベルナルドに教えていった。そのため、不知火は実際ベルナルドの人生の師匠ということにもなっていた。

「ん? なんだか騒がしいな」

 しかし、事件は起こる。

 不知火とベルナルドが入り口が騒がしいと様子を見てみると、そこにはイリーナを連れた黒服の男たちが、無理やりにでもこのミラージュ社団法人に入ろうとしていたのだ!

「ベルナルド! 居るんでしょう!?」

「マーマ!」

「なっ、こいつ!」

 不知火は部下に書類を渡すと、入り口にいるイリーナに物申した。

「おい! まさか無理やり連れて帰るわけじゃないよな? そうだとしたら、あんたは住居侵入罪、器物損害罪で起訴されることになるぜ!」

 不知火は、このままいくと裁判を起こしてやると言い放った。

「いいえ、そんなことありえないわ」

「は? っておい!」

 不知火が一瞬戸惑ったそのとき、不知火は黒服の男に腕を後ろに回され、倒された。

「ベルナルド! 帰るわよ!」

「やだ! 師匠!」

「ベルナルド!」

 結局、不知火は何も出来ぬまま、ベルナルドを連れて行かれてしまった。

 その後のベルナルドはというと、イリーナからスパルタ教育を身に付けさせられ、心を閉ざしてきた。

 しかしそれでも、ベルナルドは不知火の存在を糧に、なんとかここまで生きてきた。

 

 ***

 

「…そんなことが、あったんですね…」

 ベルナルドの話を聞いた円堂は、眉を下げた。

「なんかさぁ、ミラがイリーナを処刑した理由もわかる気がするぜ」

「まぁ確かに、同情は出来ませんよね…」

 剛陣、坂野上が、イリーナの処刑には同情できないと思っていた。

「じゃあ結果的に、ユースティティアの天使が正しいってことになんのかよ」

「悔しいけどね…」

 周りの空気が重くなる中、明日人は誰かが居ないことに気づいた。

「……夜舞!?」

 明日人が夜舞に話しかけようとしたその時、自分の隣に夜舞が居ないことに気づき、驚いた。

「どうした? 明日人」

「あ、円堂さん! 実は夜舞が居なくて…」

「まじか…もう夜中だぞ!?」

 明日人たちは、夜舞の行方がわからないでいたが、茜だけは知っていた。

「…不知火さんのところだと思う」

 茜のいうことに、明日人たちは困惑する。

「不知火って…夜舞は不知火と会ってたのかよ」

「うん…」

 不知火が夜舞の父親の友人であることを隠し、茜は夜舞のことを灰崎に話した。

 その頃、夜舞は袴姿のまま、夜の街を走っていた。

「(…不知火さんが、ベルナルドさんの師匠だったなんて…どうして話してくれなかったの!?)」

 夜舞は、不知火がベルナルド監督だということを信じられず、こうなったら直接聞こうと思い、走っているのだ。

「時刻は午後十時一分…」

 スマホの時刻を見て、まだ大丈夫だ、と夜舞は、不知火を探す。連絡先など交換していなかった(というか知らない人と連絡先を交換してはいけない)ため、自分の感で探すしかなかった。すると、宿所からそう遠く離れていない浅草寺の本堂に、不知火は居た。

「不知火さん!」

「月夜ちゃん…!? どうしてこんなところに…」

 不知火の返事を遮り、夜舞は自分の聞きたいことを話す。

「不知火さん! 貴方は、ベルナルドさんの師匠だったんですか!?」

 夜舞の問いに、不知火が驚いたような表情を見せる。

 すると不知火は、重い口を開いた。

「…すまない、ベルナルドって、『誰だ?』」

「えっ…とぼけないでください! ベルナルドさんは、貴方のことを___」

 そのとき、夜舞は最悪な過程を予想し、青ざめた。

 まさか、不知火さんはユースティティアの天使に___。

『夜舞!』

『月夜!』

 すると、折谷とベルナルドが、夜舞のところにやってくる。

「月夜、こんな時間に一人で行くなんて…」

「すみません折谷さん、でも私、どうしても不知火さんに聞きたいことがあるんです!」

「不知火、さん…?」

 折谷が不知火を見る。折谷はその特徴的な容姿を、確かに折谷は見たことがあった。

「師匠! 俺のこと、わかりませんか!? 俺です! ベルナルド・ギリカナンです!」

「……ベルナル、ド?」

 ベルナルドはその特徴をよく覚えており、不知火に問い詰める。サングラスで顔は隠れてはいるものの、確かに昔の不知火だった。それを信じて、ベルナルドは不知火に話しかける。

『夜舞ー!!』

 すると、明日人たちの声が夜舞たちの後ろで聞こえた。

「夜舞! どこに行ってて…その人は?」

 明日人が、不知火を見る。

 すると不知火は、明日人たちの前から去ろうとした。

「待ってください!」

 しかし、ベルナルドがそれを止めようとする。

「…離してくれ、私はお前を知らん…」

「えっ…」

 ベルナルドは、不知火が自分のことを知らないと言われ、思わず硬直した。

「そろそろ私もこの国から逃げなければならない。ベルナルド…と言ったな、私の記憶が曖昧でなければ、私とお前は、どこかで会ったような…」

『不知火会長! そろそろ行きますよ!』

 すると、車に乗っている職員が、不知火に声をかけた。

「おっと、今行く。月夜、これから会うことは難しくなるかもしれない。一応連絡先だけでも交換しておこうか」

「あ、はい!」

 風丸が夜舞と止めようとしたが、それはベルナルドによって遮られる。

「……よし。月夜、頑張れよ」

「…はい」

 不知火が浅草寺から去っていく中、夜舞のスマホには不知火のアイコンが電話帳に記されていた。

 

 

 

 

 記憶は、逃げちゃうもの。

  逃げない記憶なんてない。

 

 




 後書きンヌ
 いや~暑いことこの上ない。
 今回はベルナルドさんの過去話とかを攻めてみましたが、どうでしたか?
 いや、ベルナルドさんが生きていられたのって、恐らく何かがあるんじゃないかって思いましてですね…
 というか儂、最近体力がないのか、疲れた詐欺ができないんだが。
 いや、詐欺って、やろうと思って出来るようなものではないですよね。

 ああーーー!!
 イナエスが終わる!
 いや、儂始めたばっかなんだけどおおお!?
 まぁ、三期やってくれるなら許すけどなぁ!

 とにかく、ご視聴ありがとうございました!

この小説の中でどのコンビが好きですか?

  • 明日人とエレン
  • 不知火と月夜
  • エレンとレン
  • エレンとメリー
  • エレンとミラ
  • 不知火とベルナルド
  • 明日人と月夜
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