イナズマイレブン テミスの正義   作:暁月の太陽

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第三話 神に使える天使_だがそれは、本当に天使か? 悪魔の間違いだろう。

 その頃、灰崎の居る星章学園では、サッカー禁止令とサッカー部廃部の話題で持ち切りになっていた。

 水神矢が皆に隠れて泣いているのを見たやら、政府から派遣された人たちが部室を調べ上げて、サッカー部の備品などを全て持ち去っていったやら、後々部室が壊されて空き地になるやら、デマか本当かもわからない話題が飛び交っていた。

 その教室の雰囲気がなんとなく嫌で、灰崎は教室から抜け出し、校舎近くのベンチに座って居た。自分に懐いてくる野良猫を撫でながら。

 いつものように購買で買ってきたパンを猫に食べさせていると、猫は灰崎の膝の上から飛び下り、向こうへ行ってしまった。

「お、おい!」

 しかしその猫は、灰崎と同じ理由で教室を出た人物の足に止まった。

 最近新しくサッカー部のマネージャーとなった宮野茜だ。片手には弁当箱の入った袋を持っている。

「凌兵? この猫…」

「あ、いや、これはその…たまたまそこに猫が居たから…」

「ふふっ」

 先ほどまで猫を撫でていたことを誤魔化すために言葉を探す灰崎を見つめ、茜は微笑ながら自分に懐いてきた猫を抱え、灰崎の隣に座る。

「凌兵…サッカー部のこと…残念だったね…」

「…残念? 残念の一言じゃ片づけられねぇよ…なんで国は、サッカーを…」

 自らの長い髪を掻きながら、灰崎は悔やみ、そして怒りを感じていた。

 なぜサッカーが禁止にならなくてはならないのかと。

 そして考えた。なぜサッカーが禁止になったのかを。

 オリオン財団の件。それも考えたが、それでなぜ日本だけがサッカーを禁止にすることになるのかという決定打にならない。実際禁止になるなら、全世界で禁止になっている筈だ。

 サッカー選手が事件を起こした等のニュースは、最近目にしない。

 もしや、他に何かがあるのだろうか。

「凌兵? さっきから髪を掻きながら考えてるけど…もしかして、なんでサッカーが禁止にされたか考えてる?」

「__な、なんでわかったんだよ…」

「凌兵の顔見てると、何考えているかわかるから。かな?」

 幼馴染みだからか、灰崎の考えていることを当てた。図星を突かれた為に、灰崎はきょとんとした顔になる。

 その時、灰崎のスマホの着信音が、制服のポケットから鳴り響いた。

 

 ***

 

「__っ、これは…」

「…酷い…」

 ユースティティアと名乗る天使たちに襲撃されたと聞いた明日人達は、東京から急いで伊那国島へと戻り、試合があったとされる伊那国中まで急いだ。しかし、そこで見た光景に、明日人たちは目を疑った。

 火花は伊那国中を包むかのように赤く舞っており、サッカーコートの地面は何か強い力で抉られ、岩盤が剥き出しになっていた。ここが戦場、いやサッカーコートであったことを意味するかのように、サッカーコートの上には伊那国島サッカー部のメンバーが全員傷だらけで倒れていた。

「皆!!」

「フロイ。君達は救急車を!」

「はい!」

 フロイ達が救急車を呼んでいる中、明日人はすぐさま氷浦たちに駆け寄った。

「__明日人…か?」

「氷浦! …これは一体…」

 今の状況に切羽詰まった明日人が皆を揺さぶっている中、氷浦だけ反応を示した。それに気づいた明日人は、何が起こったのかを氷浦に聞きだす。

「…天使だ。天使の皮を被った、「悪魔」が…俺達に…」

「天使…!?」

 天使という言葉を聞き、明日人は昨日の夕方に自分が見た天使を思い出した。

 昨日見たことは、どんなに素晴らしい物でもすぐに忘れてしまうのか、姿が一枚の写真のようには思い出せないが、確かにあの時に見た天使は、この世の物とは思えない程美しく、とても人を傷つけるような感じはしなかった。

 なのに、今ここで氷浦たちがその天使に酷い目に遭わされていた。

 いや、氷浦の言葉通り天使の皮を被った悪魔かもしれない。

「そ、それがどうしたの? 氷浦!」

 せめて、あの時に見た天使じゃなくて欲しいと思いながら、明日人は氷浦にもう一度聞きだそうと思ったが、すでに氷浦は体力の限界で意識を無くしており、代わりに機械的な男の声が響いた。

「悪魔などではない。我々は、この地上を支配する人々を救済する天使…『ユースティティア』の__天使だ」

「……お前は! 市役所に居た…」

 その声のした方に明日人は顔を向けると、すぐに気づいた。市役所で、サッカーが禁止されたことを告白した、あの少年と、他十人が居たのだ。

「いかにも、私があの時市役所に居た者だ。改めて、私は蓮だ。この世の[[rb:禍 > まが]]を治す神、直毘神の力を持つ天使だ。稲森明日人、来たようだな」

「来たって…なんだよ! もしかして、氷浦たちをこんな目に遭わせたのって、お前なのか!?」

 真偽は不明だが、明日人が蓮のしたことに怒りを露わにしている。氷浦たちを傷つけては居ないのかも知れない。だが、この怒りを抑えることは伊那も明日人には不可能だった。

 そんな明日人を目にしながら、蓮は明日人の元に近づき、顎を持ち上げた。蓮の方が明日人より身長が高いが為に、目線を無理やり合わせたのだ。

「なっ…! 明日人に何を…!!」

 蓮の馴れ馴れしい行動に、明日人の父である琢磨が狼狽える。だが蓮は、琢磨に一切触れずに話を続けた。

「…その点に関しては申し分ない。しかし、彼らが君を渡すつもりはないと言い張っていた為、少しだが救助と制裁をさせてもらった。そして、稲森明日人、お前には来て貰おう」

「来てもらうって、別に俺は___」

「我々を産んだ神、『フォルセティ』様はお前を救いたいらしい…何をお考えなのかは知らぬが、私はフォルセティ様の指示に従うのみ。…何、救助も救済も変わらん。痛いのは最初だけだ」

 本来ならば、逃げるところだろう。だが明日人には、蓮の言葉には何か引き込まれるものがあった。それは仮にも天使からのお告げでもあるからなのか、なんなのかは知らないが、明日人は少しずつ蓮の言葉に心を動かされていた。自分でも気がつかないくらいに。

「明日人!」

 だが、琢磨の自分を呼ぶ声によって、明日人は現実に引き戻された。

「…俺を救いたいってどういうことなんだよ…そんな勝手、許されるって言うのかよ! 救助されたいかなんて、そんなのは俺の意志で決める! 人の心を勝手に決めるな!」

「………」

 予想だにしていなかった明日人の行動に、蓮は無言のまま明日人を見つめていると、突如蓮は側頭部に人差し指と中指を当てた。

 何をするかと思い、明日人は身じろいだ。

「はい。……わかりました。稲森明日人。今回の所はここで失礼する」

「え? ちょっと待っ…!?」

 しかし、それは蓮達のその場からの退却であり、先ほどの行動も天から通信が入った時に応答する仕草だったのだ。

「え? ちょっと待っ…!?」

 それを告げられた明日人は、思わず蓮に手を伸ばした。だが、その瞬間目に謎の光が入ってきた。

 その時明日人は、一瞬だが直毘が飛び去る時の瞬間を見た。

 白き両翼が羽を広げる時のその姿は、昨日に見たあの天使のようだった。

 

 ***

 

「レン・ナオビ、ただいま戻りました」

 蓮が辿りついたのは、教会のような場所だった。神、天使、女神の書かれたステンドグラス。頭上にある巨大なシャンデリア。聖獣の彫刻。だが、一つだけ違う所を上げるとすれば、教会には必ずといってある筈の、大量の横長椅子が存在しない。

 蓮は自身の翼を閉じ、教会の床に立膝を着き、頭を下げた。目の前に居る『神』にひれ伏しているのだ。

『よく戻ったな、レン。それで、稲森明日人は?』

「その件ですが、故郷である島には居ませんでした。そこで私は、伊那国島の者たちに彼を引き渡せと言いましたが、承諾はしてくれなかった為、戦うことにしました」

『……結果は?』

 教会に神の声が響く。

 姿の無い神に、蓮は返答する。

「圧勝でございます。いくら地上最強のサッカーチームであった人間が居ようと、我ら天使には成すすべもなく崩れ去りました」

『……そうか。では、いつものように行動せよ。いいか、周りに危害を加えず、確実に稲森明日人を展開に連れて行くのだ。ついでだが、この世界の秩序を乱す者を発見した場合は、即刻救助を開始せよ』

「はい、フォルセティ様の仰せのままに」

 

 ***

 

 ユースティティアの天使たちが伊那国島に舞い降り、そして天に帰ったその直後に、趙金雲から連絡があった。

 明日、出来る限り軽い荷物を纏めて、雷門中に来てほしいとのこと。

 その時に雷門中に連れて行くメンバーは、伊那国中サッカー部から選ばれた、元イナズマジャパンのメンバーを全員連れてこいとのことだった。

 急に趙金雲から頼まれることは度々ある為、明日人は軽く要件を聞いた。

『では、翌日お願いしますね~』

「はい、監督」

 氷浦たちを運んだ病院の外で、明日人が通話を終了したその時、フロイが病院から明日人に向かってきた。

「アスト、少し電話を貸してくれないか?」

「ん? いいけど…どうして?」

「兄さんが僕のスマホをアップロードしたいからって、今使えないんだ」

 なんでも、これからのことに役立つだろうって兄さんが言ってたからね、とフロイは付け加えながら、明日人のスマホ内部にある連絡先一覧から、趙金雲のアイコンを押して、趙金雲からの応答を待つ。

「な、なんか大事な話しっぽいから、俺、皆の所行ってくるね」

「アスト? 別にこれといって…って、行っちゃった」

 大事な話をすると察したのか、明日人は病院内に戻っていってしまった。

 これといって大事な話ではないとフロイは思い、ここで待ってもいいと言おうとしたが、明日人の姿はすぐに見えなくなってしまった。

 とその瞬間、趙金雲と繋がった為、会話を始める。

「もしも」

『おや、その声はフロイくんですか~てっきり明日人くんからかと思いましたよ~』

 なんと趙金雲は、フロイが発した三文字だけで、誰と通話しているのかがわかったのである。

「ところで、趙金雲。伊那国島のことは知ってる?」

『はいはい、そのことなら稲森くんお父さんから聞きましたよ~。なんせ、稲森くんがユースティティアの天使と名乗る天使に狙われているということでしょう』

「そのことなんだけど…彼らには秘密にした方がいいと思う」

 フロイが発した提案に、趙金雲は疑問府が頭の中で咲いた。

『はて、それはどういうことでしょう』

「万が一の時の為の保険__それに、無理にアストや彼らを刺激したら、どうなると思う?」

 明日人の性格と彼らが今までしてきた行動とフロイの提案を混ぜ合わせ、趙金雲はすぐにフロイの言いたいことが分かった。

『…なるほど、フロイくんの言ってることはわかりましたよ。このことを言ってしまうと、彼ら、いやイナズマジャパンは無理にでも稲森くんを保護しようとしてしまい、稲森くんの気持ちを無視してしまうことになってしまうから___ということですかね』

「そう思っててくれていいよ。それに、アストのことは……」

『何か言いましたかぁ?』

 フロイがぼそぼそと呟いたその内容を知っているというのに、趙金雲はいかにも知らないふりをした。

「いや、何でもないよ。じゃあ、切るね」

 自身が何かを呟いたことを誤魔化しながら、フロイは通話を終了する。

 聞いてない振りしてたけど、趙金雲のことだから聞いていただろうなと、フロイはすぐに趙金雲の発言の意味を感じ取った。

 

 

 

 その頃、明日人は屋上まで来ていた。

「つまり、明日俺達を連れて雷門中に来いということなんだな、明日人」

「うん。氷浦に万作、剛陣先輩に岩戸、小僧丸にのりかを連れて、雷門中に来てって」

 屋上に居るのは、氷浦たち五人だった。

 氷浦たちは幸い、他のメンバーからの庇いもあってか軽傷で済んだらしく、軽い処置で終わった。

「だけど、岩戸は重傷だぜ?」

「その時は、今いるメンバーだけでも連れて来てって言ってました。剛陣先輩」

 しかし、足の鈍い岩戸だけは重症からは逃れられなかったらしく、雷門中に連れて行くのは無理そうだ。

「くそっ…あんな奴らに負けちまうとは…」

「小僧丸…それって、ユースティティアのこと?」

「そうだが…何で知ってるんだ?」

「実は、ユースティティアの蓮くんって人に電話がかかってきたんだ。俺の救助がしたいって、それで伊那国島に来たんだよ」

 明日人の発言に氷浦の脳裏に衝撃が走り、氷浦はいつの間にか明日人の肩を掴んでいた。

 その時の氷浦の表情は、いつもの爽やかな表情と違って、何か焦っているようだ。

「明日人。その電話で、お前はここに来たのか?」

「そうだけど…どうしたの? 氷浦」

「いいか明日人。もしユースティティアの奴らが、お前を救助したいって言っても、絶対に応じるな! すぐに逃げろ! あの天使のいうことは少しずつだが、人を洗脳する。そして、あいつらの言う救助は絶対に受けるな! あいつらのつけているペンダントの光に触れた人は、人格を変えられる。この目で見たんだ。コーチが、人格を変えられる姿を…」

 氷浦の緊迫とした低い声に、明日人は身震いをする。

 なぜなら、氷浦のこんなに必死になることは今までにないからだ。確かにちょっと必死になったことは度々あったが、ここまでになることはなかった。

「それに、あの天使の野郎に言われたぞ。明日人を引き渡せってな」

「あの天使たちは、確実に明日人を狙ってる。気を付けてね」

 のりかや剛陣に言われ、自分は本格的にユースティティアから狙われていることを実感した。

 

 ***

 

「え…ええええええええ!?」

 その翌日、荷物を纏めて雷門中についた明日人達は、グラウンドに集まっている人たちを見て、驚愕する。

 雷門中に居たのは、なんと明日人と同じようにして趙金雲に呼ばれた、二か月前イナズマジャパンとして活躍したメンバー全員、そしてマネージャー達が揃っていたのだ。

 荷物を纏めているのは共通だが、ここに居るイナズマジャパンのメンバー達は、どこか楽しそうだった。

 強化委員という制度がまだあった時期に知り合った仲間と話している者もいれば、これからのことを話しあっている者も居た。

 二か月前に別れを言ったのが嘘みたいだと、明日人は感受する。

 明日人が感傷に浸っている中、氷浦たちも他のメンバーと同じように久しぶりに会えた仲間達との再会を楽しんでいた。

 小僧丸は豪炎寺と。のりかは大谷や神門と。

「久しぶりだね。明日人くん」

「あ、野坂!」

「お久しぶりです。明日人くん」

「一星も! そっちはどうだった?」

 元同じメンバーだった野坂に声をかけられ、明日人は野坂の方を向く。そこには、王帝月ノ宮のバッグを持った、私服姿の野坂と一星が居た。

「はい、王帝月ノ宮中での生活も慣れてきました! 明日人くんの方こそどうですか?」

「こっちも伊那国島サッカー部が廃部から免れて、それで!」

 二か月ぶりの一星と明日人が、当時の様に楽しそうに会話をしているのを見て、野坂は思わず顔がほころんだ。

 まるで同窓会にでも行ったようだ。

「あ、そういえば一星! 俺さ、見ちゃったんだ!」

「何をですか?」

「天使! すっごく綺麗だったんだ!」

 明日人の口から出た天使という言葉に、野坂は食らいついた。

「明日人くん。その天使は、昨日の伊那国島でのあの天使かい?」

「え…? 多分違うと思う…俺が見たのは、一昨日てっぺん崖で見た天使の女の子のことだよ。仮面を付けていたから、誰だったのかはわからないけど、綺麗だったのは確かだよ。でも、なんで知ってるの?」

 ユースティティアのことは、あの時チームに居た氷浦達とフロイ達しか知らないはずなのにと、明日人はフロイ達から秘密にしていおいたことがバレてしまったのかと焦る。

「実はね、一星くんにフロイくんからの電話があってね。その時に教えて貰ったんだ」

「フロイから、このことがなるべく皆やユースティティアに伝わらないようにと、俺に話したことは秘密にしておいてほしいと言われてたんですけどね…」

 一星が側頭部を掻きながら苦笑いする。見た感じからして、野坂の圧に負けて教えてしまったのだろう。

「話によると、明日人くん。君はユースティティアに狙われていると聞いたけど、それは本当かい?」

「…そうみたい…でも、なんで俺を狙うのかがわからないんだ。救助…って言ってたけど…」

 あの天使とユースティティアとは、関係が…ないよね。と、明日人はあの時の天使とユースティティアとは関係無いことを祈った。

「そういえば、僕達も昨日天使に会いましたよ。俺達に忠告を残してどこかに行ってしまいましたが…」

「え、一星も会ったのか!?」

 まさか自分以外にも天使と会った人が居たことに驚愕しながらも、明日人は疑問に思った。

 その天使は、自分が一昨日会った天使のことなのではないかと。

「特徴は!? 一応聞きたい!」

「わ、わかったよ明日人くん。俺が見た限りでは、『仮面』を付けてて、『黒のセミロングに青いグラデーションかかった髪』をしていました。それに、服装は白の肩掛けにワンピースでした」

「それだ! 俺が一昨日会った天使の特徴と同じだった!」

 仮面と青のグラデーションがかかった黒い髪というのを聞き、明日人はすぐに野坂たちが会った天使があの時見た天使と同じだと、明日人の頭の中にあるアンテナが察知した。

「でも、その明日人くんが会ったとされる天使さんは、何をしたいのでしょうか…」

「忠告といっても、本当のことかはわからないものばかりだったしね」

 確かに、天使は明日人たちに何をしたいのだろう。

 明日人には何もしてこなかったというのに、野坂たちには忠告を残した。

「もしかしたら、僕達が会った天使とユースティティアの天使とは、全くの無関係なのかもしれないね」

「うん。そうだといいけど…あ、そうだ。灰崎はどうしたの? イナズマジャパン全員がここに来ているんだったら、灰崎も…」

 明日人は、これ以上あの 天使とユースティティアの天使との共通点を探したく無く、灰崎は居ないのかと話を反らした。

「灰崎くんなら、水神矢さんからの伝言で、少し遅く来るって言ってました」

「…あの灰崎くんが、時間に遅れてくるなんて、少し怪しいと思わないかい?」

「それってどういう…」

 野坂の考えていることに、明日人はなぜだろうと感じた。

 時間に遅れてくることだってあるじゃないかと言おうとしたその時、どこからか金の音が鳴った。

「は~い、皆さんちゃんといますか~?」

 それは趙金雲のスマホからの音であり、グラウンドに居た全員は一斉に趙金雲の方へと顔を向ける。

「う~む、一人居ないような気もしますが、話を進めていきましょ~! 実は、皆さんがここに来る前の昨日の昼頃、伊那国島サッカー部が突然謎のチームに襲われました。そのチームの名は、ユースティティア。そしてなんと、天から舞い降りた天使のチームで~す!」

 て、天使…?

 漫画やアニメでしか馴染みのない言葉に、メンバー全員は混乱した。

 そりゃそうだろう。天使のチームが伊那国島を襲っただなんて、ここに居るメンバーの中では明日人と野坂と一星しか知らないのだから。

「天使…ということは、天使もサッカーをするのか?」

「円堂。まず天使は神話上の生物だ。なぜその天使が地上に降りて、伊那国島を責めたか…」

 円堂と鬼道が考えを述べるも、先に趙金雲が答えを出した。

「皆さんも知っている通り、昨日この国の政府がサッカー禁止令を告知したのは知ってますよね? 実は、そのサッカー禁止令と天使は、関係があったことがわかりました!」

『__!?』

「…嘘…」

 ユースティティアのことはあまりよくわかってはいなかった為、国のサッカー禁止令とユースティティアの天使が関連していたことは、今さっき初めて聞いた為、明日人の額に汗が流れる。

 人々を救済するユースティティアの天使、そして政府のサッカー禁止令。まず関連しているとは思わないだろう。

「そのことに関しては、この子達に調べて貰いました~!」

 すると、趙金雲の助手である李子分が荷台を使って、高さ一メートルはある一つの大きなダンボール箱を運んできた。そして李子分がダンボール箱の角を叩くと、蓋と思わしき面が開かれた。と思いきや、そこからルースとマリク、そしてフロイがコントのようにダンボール箱から勢いよく出てきた。

 これには一星も苦笑い。

「だ、大丈夫かい? 二人とも…」

「…プッハァ…く、苦しかった…」

「あの人、俺達をこの箱に詰め込んだかと思えば、こんなことを…」

 あとの二人が口々に趙金雲の文句を言っているのを聞き流しながら、フロイはズボンについた汚れを払いながら立ち上がった。

「…登場がこんな風になっちゃったけど、とにかく僕達は、数日前オリオン財団の情報網を使って入手した情報、つまり昨日の朝に日本がサッカー禁止令を告知するという事前情報を元に、僕達は一昨日この日本に上陸したんだ。そこで僕達は、琢磨と共にそのユースティティアについて調べたんだ。そこでわかったのが、ユースティティアの天使が国を脅したこと。そして「そのことが原因でサッカーを禁止にせざるを得なくなった」ということが明らかになったんだ」

「ええ!?」

「本当なんですか!?」フロイの言っていることを受け止めきれていない大谷と神門。

「まさか、そんなことが…」

 サッカー部が廃部になったのは、ユースティティアの天使のせいなのか? と考える豪炎寺。

 実際、国家秘密ということでその出来事が写っている画像があるしね。と、フロイが付け加えた。

 だが、それでもイナズマジャパンの半分が、フロイの言葉に疑心暗鬼になっていた。 

 それもそうだろう。昨日に国からサッカー禁止令を告知されたかと思えば、国によってサッカー部を廃部にさせられたのだから。それも全部天使が国を脅して実行したとは考えられない。

「円堂、俺はフロイの言っていること、未だに信じられない。だって、天使がサッカーを禁止にするなんて、考えられないだろう」

「風丸、俺はフロイの話を信じている。確かに俺達は、オリオン財団の奴らに散々な目にあったかもしれないけど、それはそれ、今は今だろ!」

 風丸がフロイの言っていることを信じられないと円堂に告げるものの、それでも円堂はフロイの話を信じていた。

「相手が大事な話をしているときは、信じなきゃ駄目だろ」

「それはそうなんだけどな…」

 確証はないんだぞ。

 と風丸が口に出そうとした瞬間、突如空から白い何かが雨のように降り注ぎ、明日人たちイナズマジャパンの周りを囲むように刺さった。幸い先ほどの白い何かが降り注いだことで怪我をしてしまった人は居なかったが、それでも囲まれてしまった。

 それも、出られぬように何枚も層を作っている。

『皆(さん)!!』

「来ちゃだめだ!」

「何かが来る! 離れててくれ!」

 偶然イナズマジャパンを囲っている輪に入らなかった大谷と神門が、謎の何かによって囲まれた皆を心配し、輪に近づこうとする。しかし、何かが来ることを予測した基山と水神矢が止めたことによって、大谷たちは思案に余りながらも輪から離れた。

 しかしそれでも、今置かれた状況に全員が落ち着いてはいられなかった。

 その中で、鬼道は恐る恐る自分達の足元に降り注いだ何かを拾い上げる。

 四角い形をした白い物。そして独特の感触で瞬時にこれがなんなのかが気づく。

「これは…紙?」

 自分が手に持っているのが紙だということに鬼道が気づいた瞬間、自分達の頭上にある曇天の空の真上から、眩い光が降り注いだ。

 太陽らしからぬそのケガレのない光に嫌悪感を抱きながらも、鬼道はその光を見る。自身のゴーグル越しから見たその光は、太陽ではなく、今まさにこちらに向かってくる十一人の天使の姿だった。

「皆っ! 今すぐその場から離れろーっ!!」

 その光がなんなのかを誰よりも早く知った鬼道が、今すぐその場から離れるようにと仲間に伝えようと叫んだ。

 しかし、その思いが届くわけもなく、叫んだその直後に天使たちが地面に着地してしまった。その衝撃によって竜巻が発生し、メンバーの多くが吹き飛ばされ、数多くの悲鳴が不愉快な合唱を奏でる。

「皆!!」

 竜巻に円堂は手を伸ばした。

 鬼道と豪炎寺が、円堂を竜巻から逃がした為、何とか自分は竜巻から逃れたのだ。

 なんとか皆を助けるすべはないかと、考えを巡らせる。

 そして、円堂は思いついた。皆を助ける方法を。

「風神・雷神・ゴーストッ!!」

 円堂の背中から、風神と雷神、そしてゴーストが現れ、円堂の動きに作用するように三つの魔神も動く。

「ハァッ!!」

 それを利用し、円堂は三つの魔神たちの大きな手でメンバー達を掬うようにして、竜巻から脱出させた。

 そして、全員を脱出させたその直後に、魔神は消えた。

「大丈夫か! 皆!」

「は、はい…」

「ありがとう、円堂」

 いつもの仲間の声を聞き、円堂は安堵する。

 しかし。

「円堂さん! 実は…」

 基山と水神矢に止められたお陰で無事だった大谷が、円堂にかけよってきた。

「え…皆が…」

 大谷から告発されたのは、総勢二十四名のうち、八名がさっきの竜巻によって怪我を負ってしまったのだという。

 それもなんと、誰かを先に竜巻から脱出させたために、自分だけ逃げ遅れてしまったのだという。

 怪我をしたのは、氷浦、アフロディ、岩戸、万作、小僧丸、吹雪アツヤ、海原、水神矢とのこと。

「円堂…」

「円堂、俺にも要因はある。お前だけのせいじゃない」

 風丸と鬼道が、ショックを受けている円堂を慰める。

「…あぁ。そう、だよな」

 その時の円堂の声はかすかに震えており、それを見た蓮は、かすかだが笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 人を救う天使は、その日、悪魔になった。

 

 

 

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