三十二話です。話の展開が思いつかず、こんなに時間が空いてしまいました…
話は変わりますが、三十二話といえば、オリオンでいえばアメリカ戦最後の話ですかね。
もう次回で、皆さんトラウマの明日人誘拐の話ですよ。もうここまで行ったんですね…
ちなみに、今日私の誕生日です(余計すぎる)
みなさん、お待たせいたしました。
三十二話です。話の展開が思いつかず、こんなに時間が空いてしまいました…
話は変わりますが、三十二話といえば、オリオンでいえばアメリカ戦最後の話ですかね。
もう次回で、皆さんトラウマの明日人誘拐の話ですよ。もうここまで行ったんですね…
***
嘘だ。
嘘に決まっている。
あいつらの言うことなんて、デタラメに決まっている。
そんな悪魔染みた声が、フロイの頭に響いた。
確か、この声の名は、根憎蔓って言ったっけ。そんな気がする。どうやら根憎蔓は、ずっと昔からフロイの家の花瓶の花に化けて過ごしてきたらしい。それで、自分がどれだけあの家で傷ついたのかを見てきたというのだ。それで、自分の絶望が、人並みよりも一定基準以上に溜まった時に、自分に憑りついたというのだ。知らないけど。
…ねぇ、信じられるわけないよね?
だって、君も見ただろう? 君のお兄さんがさ、君のお母さんによって虐待されているところをさ。
それがなに? 神に脅されてやったなんて、信じられるわけが無いよね?
僕達を助けてくれる神が居ないように、君のお母さんを脅した神も居ないんだよ?
……あ、僕の言うことも信じられない? んじゃあさ、僕たちで、信じられないものを全部壊そうよ。
フォルセティも、ユースティティアの天使も、サッカー協会の大人たちも、親友も、仲間も、全部壊しちゃいなよ。
あいつらはどうせ、君を裏切るに決まってる。
裏切られる前に、裏切っちゃいなよ。
***
「ねぇミラお姉さま、この子どうするの?」
目が覚めると、メリーの顔が見えた。メリーは、無垢な表情と声色で、ミラに話しかけている。まだ、この世界が裏切るか裏切られるかの世界、もしくは、殺されるか殺すかの世界だということに気づいていない。あの目は、母親と父親が良い、恵まれた環境に立っている子供の表情だ。
羨ましい。
妬ましい。
「もう考えてありますわ。フロイさんは元々被害者。愚かな大人たちによって大好きなものを穢されて、家族にも愛されずに育ってきたんですもの。そんなフロイさんを助けたとなれば、私たちやお父様を信仰する人間が増えますわ」
「良かったね! ミラお姉様!」
「えぇ、信仰者の多くは、この腐れた地上で生きることを嫌がってますの。私たち天使が地上の民を助ければ、地上の民は私たちを信じ、信仰することを選び、それで私たちは信仰者が増えてもっと強くなりますの。ふふっ、私たちにとっては、良き循環ですわね」
フロイは、怒りが湧いてきた。それと同時に、意味もわからなかった。
なんでこいつらが自分の過去を知っているのか。いや、それはどうでもいい。ただ、自分が辛かった記憶を、なぜそこまで客観的に言うのかがわからなかった。
あの過去は、もはや文字で言い表せられるものではない。生まれたときから母親に愛されなくて、兄の虐待を目にして、父親が原因で大好きだったサッカーが穢されたのだ。文字だけ見ると簡単だが、そこに感情が入ると、もはや文字では表せられない。
もう、自分に信じられるものなんてない。
大人も、子供も、いつかは自分を裏切るんだ。
それは、神も天使も同じだ。
信じられるのは、自分しかいない。
「…目覚めたようですわよ」
「え?」
ミラが横目でフロイを見た瞬間、フロイの背中から漆黒色の蔓が現れ、それはステンドガラスや床、ましてや壁や天井までを壊していく。そして、その蔓はミラはメリーたちにも牙をむき、雨のように蔓がミラたちに向かって降ってくる。
「まぁ…元気がおありでよろしいわね」
降ってくる蔓を避けながら、ミラは銃弾を発射し、蔓を切っていく。しかし、その一部が外れ、フロイの後ろのステンドグラスが割れ、ガラスの破片がフロイの体の付近に落ちていく。それにはさすがのフロイも、目を瞑る。
その瞬間だった。
心臓が貫かれたのは。
***
フロイがユースティティアの天使に囚われたという、不穏な空気を漂わせながら、明日人たちはスタジアムのフィールドで、ユースティティアの天使が来るのを待つ。観客席には世界選抜が、ラストプロテクターが解散してしまうということを聞いて、駆けつけていた。
「来るぞ!」
風丸が向こう側の昇降口に向けて発語したその直後、昇降口からゾロゾロと執事の格好とメイドの恰好をした、同い年くらいの身長をした天使達が現れ、グラウンドに赤い絨毯を敷いていった。その上を歩くのは、勿論メリーにミラ。そして、黒いフードを被った人間だった。
「ごきげんよう、人間の皆さま」
ドレスの裾を持ってお辞儀するミラとメリー。
「ミラ、フロイを返せ!」
それが終わった直後に、明日人はミラに向かって踏み込んだ。明日人は歯を食いしばって、目を燃やしている。フロイのことだろうと、ミラは不敵に笑う。
「まぁ、いきなりですの? ですが、明日人さんの思うようにはいきませんわね」
「どういうこと?」
「これを見てください」
疑問視する明日人に、ミラは黒いフードを被っている人間のフードを、ゆっくりと外した。その隙間から見える顔、髪に、明日人たちは青ざめた。
「___フロイ!?」
フロイは、ユースティティアのユニホームを着て、光の無い眼で明日人たちを見ていたのだ。
目を見開きながら、その場にフロイの前に立つ明日人は、動けなかった。その代わりに、フロイがなんとか体を動かして、フロイの肩を両手で掴んだ。
「フロイ! 何でお前がッ…」
一星がフロイに訴えかけるも、フロイは何も言わずに一星の手を払いのけた。それに、一星は驚愕する。
「まさか、洗脳されているのか…!?」
「酷い…」
タツヤが、一星にしたフロイの行動から、フロイがどうなっているのかをすぐに見抜いた。これはタツヤの推測にしたないが、フロイはもしかしたら、洗脳されているのではないかと明日人たちに伝える。それを聞いて、夜舞は胸が痛くなった。
「ミラ…」
フロイが洗脳されたかもしれないと聞いた直後、明日人はミラを睨みつける。
「そんなに睨まないでほしいですわ、明日人さん。本当でしたら、貴方をこのような風にするつもりでしたのよ? 自分がこうならなくてよかった。それだけでも、幸せだと思うべきですわ」
「ッ………」
だが、ミラの言うことに、明日人は自分がもしフロイと同じ立場になったらと考える。もしかしたら、人質にされて、皆に試合を出来なくさせるかもしれない。というより、まず先に救済されてしまう。
「うーむ、戦うしかありませんねぇ…ベルナルドくん?」
「…あぁ。戦って、フロイを取り返すしかない。敵に回ったとしても、フロイは俺の弟だ」
そうベルナルドは、拳を握りしめた。今回のスタメン発表は、覚悟がかなり必要なそうだ。
「ベルナルドさん、僕を試合に出させてください!」
試合の準備をしようと、ベルナルドがスタメン発表をしようとした時、マリクの声が響いた。
「僕、フロイさんを助けたいんです! ちゃんと試合に出るための特訓もしていました! だから、今回の試合だけでも、出させてください!」
と、マリクは必死に頭を下げた。すると、マリクの頭に手が乗せられた。
「僕もだ」
「私も、フロイにはお世話になったから」
マリクの頭に手を乗せたのは、ルースとユリカだ。ユリカとルースが私服を脱ぎ捨てると、その下にはラストプロテクターのユニホームを着ていた。
「……わかった。どの代わり、必ずこの試合に勝つんだ」
「「「はい!」」」
ベルナルドの許可を得て、マリクはMF、ルースはDF、ユリカはFWとしてフィールドに帰ってきた。
「では、スタメンを発表しよう。GKは円堂。DFは水神矢、ルース、坂野上、風丸。MFは一星、マリク、明日人、鬼道。FW、ユリカ、豪炎寺。以上だ」
それぞれが返事をして、発表されたメンバーはフィールドに立った。
「準備が出来たみたいね! じゃあ行くよ?」
するとメリーは、六角形の粒状のクリスタルを、九個フィールドに投げた。宙に浮かぶクリスタルが地面に着くと、クリスタルは魔法陣となり、そこから銀色の体色をした、一つ目の人型化け物となってフィールドに立ったのだ。
「なっ、」
「人が出来た!?」
砂木沼やアフロディだけではなく、誰もがメリーの投げたクリスタルから、人型化け物が出来たということに驚いていた。
「これは、私たち天使が兵士用に作り上げた、ティティなんだよー? 今日は皆忙しいしー誰も私と遊んでくれないから、この子達ティティを呼んだんだー」
メリーを守るかのように配置されているティティは、ポジションに合わせて体型が変わっている。GKとDFは筋肉が引き締まった形に、MFは小柄な形に、FWは標準な形に創りあげていた。
『ど、どういうことでしょうか、メリーが人型の化物を召喚しました! 情報によると、これはティティというものだそうですが、今日はこのティティを使って戦うんでしょうか…おっと忘れていました、キックオフです!』
試合開始のホイッスルが鳴り響くと、豪炎寺はまずユリカにパスを回した。
「(絶対に、フロイを助ける!)」
「イカセナイ」
ユリカがドリブルしていると、ロボットのような声の高さで、ティティが前を遮る。しかし、それをユリカは右に左とフェイントで避ける。だが、本来なら少しだけでも着いていけるはずだというのに、ティティの動きはまるで初心者のようで、ボールの動きがよく見えていないようにも見えた。それを証明するかのように、ユリカは次々にティティを抜いていく。
「豪炎寺、様子がおかしい」
「あぁ、まるで初心者の動きだな」
豪炎寺とユリカは、まるで初心者のようなティティの動きに、困惑を見せていた。だが、今は試合中だと、深く考えないことにした。
「おっ、これなら勝てそうだな! ユースティティアも大したことねぇな!」
「そうかな…? 私にはどうも何か不穏な空気がするんだけどなぁ…」
剛陣が勝てそうだと、余裕そうに腕を組む中、夜舞は何かを感じたのか、やけにキョロキョロしていた。すると、夜舞の予感が的中したのか、フロイはユリカの前に立ち塞がる。それを見計らって、ユリカはフロイの洗脳を解こうと、大声で言葉を発した。
「フロイ!」
いきなり名前を呼ばれ、フロイは一瞬立ち止まる。
「貴方は、いつでも私を信じてくれていた! シャドウ・オブ・オリオンとして貴方の敵になったとしても、貴方は私と正々堂々戦ってくれた! それなのに、なんで貴方が敵なの!? 私達は、お互いに同じ目的をもって戦う、仲間でしょ!?」
フロイが一瞬身じろいだような気がしたが、フロイにユリカの言葉は届いていなかったのか、何事もなかったかにょうにユリカからボールを奪おうと動く。それを察知し、ユリカは後方にいたマリクにボールをパスする。
「マリク!」
「はい! フロイさん、目を覚ましてください! 僕は、フロイさんの家族のこととか、サッカー協会のこととかはよくわかりませんけど、それでも僕は、フロイさんがどれだけ苦しんでいたのか、全部ではないけど感じることはできます!」
マリクが特訓をしてきたというのは本当で、マリクのさらに洗礼されたドリブルに、フロイは上手く動くことが出来ない。
「これを見て下さい! 俺の必殺技で、あの時正々堂々とサッカーをしたことを思い出してください! ダブルヘッド・イーグル、V3!』
マリクの後ろに、二つ頭の鷲が現れる。鷲は、フロイを睨みつけたあと、マリクの為にボールを作り、シュートさせた。そのシュートの風に、フロイの髪が揺れる。
「………」
だが、マリクのシュートに何も感じなかったフロイは、マリクのシュートを止めようと、行動に出た。
「いけ、ティティ」
フロイはまず、背中に生えている触手を、今いるティティたちの足元に芽が出るように地中に潜らせ、触手を通じてティティたちに力を分け与えた。分け与えられたティたちは、以前の鈍い動きとはうってかわって、素早くなった。それに明日人たちが驚く中、ティティたちはゴール前に立つ。そして、背中から体色と同じ色の手を出現させ、マリクのシュートを止めた。
『なんとーっ! ティティ、マリクのシュートを止めましたーっ!』
「そんな…」
マリクが動揺している中、フロイはティティに合図をすると、フロイはすぐに前線へと走った。フロイにされた合図通りに、ティティはフロイにループパスでボールを送る。すると、それはフロイの足元に落ちる。
「…生憎だけど、僕は君たちの言葉を信じる事なんて、出来ないッッ!」
すると、フロイの周りに紫色のオーラが漂い始める。
「___皆さん見て下さい! この警告…何かが来ます!」
杏奈は、スペクトルハーツの画面に現れる、Caution!! Caution!!の赤い表示に、何かが来ると注意を呼びかけた。すると、杏奈の言う通り、フロイは右手をゆっくりと空に掲げた。
「…ダークアンロック・リライズ」
その直後、紫色の雷がスタジアムに落ち、大地が波のように揺れた。
「ダークアンロック!?」
「まさか、これもハーツアンロックなのか!?」
鬼道は、フロイの言ったダークアンロックがハーツアンロックの一つなのかと推測する。しかし、それにしては通常のハーツアンロックよりも禍々しい。明日人たちも、ベンチの夜舞たちも、ダークアンロックに驚いている中、フロイは変身を開始する。
黒と赤の花を咲かせるための蔓を自身の体に纏わせ、腕や足、体に服を着せていく。黒と紫を主にして、体にはミディブラウスと短いパンプキンパンツ。その上に前が開いているバッスルスカートとハイブーツを、蔓から作って、変身は終わる。
「フロイ…」
「必殺タクティクス、絶望の花。……行っておいで、植物たち」
黒のハーツアンロックを身に纏ったフロイに、一星は度肝を抜く。その間に、フロイは背中に生えている蔓を撫で、行くように指示する。すると、黒くて太い蔓が地面から現れ、地面に割れ目を作っていく。しかし、それだけに終わらなかったのだ。明日人たちが目の前の蔓に驚いている間に、地面の割れ目から出た細い蔓は、明日人たち十一人の体に巻きつき、動きを封じたのだ。そしてそれは、少しずつ明日人たちの体を締め上げていく。
「うぐッ!?」
『_____!?』
突然皆が謎の蔓によって苦しめられているため、夜舞たちもベルナルドも、目を見開いて明日人たちとフロイを見つめる。
「みんな!」
『おーっと! フロイ、自身の蔓で稲森たちラストプロテクターを巻きつけ、動きを封じました!!』
明日人たちが苦しんでいる間にも、フロイは今のうちにと、ラストプロテクターのゴールへと進んでいく。それを危機に思った円堂は、自分を巻き付けている蔓の、生え際を踏んで、蔓が怯んだうちに蔓を千切って解放する。
『イノセント・ドライブ』
いつもの白と青のシュートは、ダークアンロックの影響か黒と赤に染まっており、それを見た円堂は、こちらも同じようにハーツアンロックをする。
「ハーツアンロック、リライズ!」
拳と拳を合わせ、離したときのエネルギーをハーツアンロックの力に変換させると、円堂の服装はユニホームから柔道着のような服に変わる。そして円堂は、手の平と手の平の間に、虹色のオーロラのような物を出現させ、握りしめた。すると、拳が橙色に染まり、それを円堂は両手を前方に突き出した。
『ゴッドヴァジュラ!』
神のような大きさの赤い両手の平で、フロイのシュートを止めようとする。しかし、突然現れた引きちぎられるような痛みに、円堂は痛みに顔を歪ませる。だが、それはフロイのタクティクスの影響では無く、円堂のハーツアンロックにあった。なのだが、その痛みの理由に気づけぬまま、円堂はゴールを許してしまった。
『ゴールっ! フロイ、必殺タクティクスで動きを封じたのちに、必殺シュートで得点を決めましたーっ!』
「…嘘、だろ?」
いつものフロイなら、絶対にこんなサッカーを望んでいないことに、剛陣は額から汗をかく。その間に、明日人たちは黒い蔓から解放され、胸を抑えながら必死に息を取りこんでいる。
「明日人くん!」
「キャプテン!」
すぐにベンチに居た夜舞たちが駆けつけ、苦しんでいる明日人たちを二人一組でベンチまで運ぶ。
「大丈夫!?」
マネージャーだけでなく、残りの選手も、明日人たちの治療に励んでいる。
「皆、骨折はしていないようだけど…」
「フロイの奴…ひでぇ真似を…」
折谷は、明日人たちの様態を見て、試合には出られそうだと分析する。そんな中、灰崎はフロイを横目に見て苛立ちながら呟く。
「(…どうしよう…俺、ちゃんとフロイのことを取り戻せるのかな…)」
キャプテンマークを掴みながら、明日人は心を張りつめる。
「皆! まだ試合はこれからだ! まだまだ大丈夫だ!」
円堂は皆を元気づける為に、大声で皆の士気を鼓舞させる。それを見て、明日人は自分のキャプテンとしての劣等感に苛まれる。
「円堂さん…」
明日人が円堂の名を呼んだ時だった。赤いリングが明日人の後ろから迫っていき、明日人の上半身を腕まとめて拘束したのだ。
「えっ」
明日人が異変に気づくももう遅く、明日人は宙に釣り上げられる。
「明日人!」
灰崎が明日人に巻きついている赤いリングを取ろうと走るも、灰崎が明日人本人のところ来る前に、ミラに止められてしまった。
「…元々この試合なんて、どうでもいいんですの」
「どういうことですか!?」
ミラの言っていることの意味が解らず、坂野上はどういうことかと責めいる。
「ロシアをまた日本と同じようにするんじゃなかったのかよ!」
「ごめんくださいませ。ですが、それは皆さまの勘違い。私は初めから、明日人さんを誘うためにこの
剛陣は、ミラがなぜこの試合を用意した目的を考えており、それを口にする。しかし、ミラはそんなことをするつもりなどなく、全ては明日人を救済するための踏み台だったのだ。
「あ、悪魔…」
「悪魔なのは、貴方達人間です。人間は、悪意に満ちた、卑しき民ですの。まぁ…悪意はおありにならないのでしょうけど」
まさか、守るべき明日人を誘うために、自分達が利用されたことに腹が立ち、風丸が思わず口にすると、ミラは悪魔を人間に例えて言いだした。
「だからって、明日人くんを救済していい理由になんかならない!」
それでも夜舞は、明日人を救済させたくないと言い放つ。
「よほど自身がお有りなようですわね。でも、明日人さんもこんな世界が嫌に決まってますわ。救済された方が、楽になれますわ。そうですよね?」
と、ミラは明日人に答弁をするようにと申す。それに明日人が「はい」と答えるわけが無い! とその場に居る全員が思っていたその時だった。
「私の
ミラは、とんでもないことを吐いたのだ。
明日人が、ミラと友人? そんなことを信じられない灰崎たちは、口の中が渇くのを感じた。
「ど、どういうことだよ」
「明日人くんが、ミラと友達ってことだよね…」
「説明してください!」
怒りとも、悲しいともいえない複雑な感情の中、ヒロト、夜舞、坂野上はミラに、説明するようにと頼み込む。だが、ミラは一切答える素振りを見せない。それに、説明は明日人さんにしてほしいと、言っているような表情が、明日人には、見えていた。
「やめろ」
その言葉を発したのは、明日人じゃなかった。フロイだ。フロイは、背中に生えている蔓で、ミラの心臓を突き刺していたのだ。心臓を突き刺されたミラはその場に倒れ、明日人を拘束している赤いリングが壊れる。
「これ以上…アストの過去を口にするなっ!」
「__フロイ!?」
すると、フロイの背中から紫色のオーラが溢れだした。スタジアムを囲むように芽が生え、それは勢いよく成長し、観客席の席にや実況席の窓にも絡みつく蔓と入り混じりながら蔓のドームを作りあげる。日の光を閉ざしたスタジアムは、蔓のドームの所々に咲く、花のランタンで照らされている。
「なんてことだ…スタジアムが花で埋め尽くされたぞ…」
鬼道はこの状況に驚いており、それはティティ達もそうだった。
『み、皆さん緊急事態です! 避難してください!』
実況の角馬王将は、観客席に居る人たちに、逃げるよう指示したが、出口は蔓で閉ざされており、押しても引いても開くことはなかった。その中で、世界選抜、そして三人の少女は、ここから避難することはなかった。それよりも、急いで明日人たちのところに向かおうと、走ったのだ。
「フロイ…お前は、なんで俺の過去を…?」
拘束から解放され、起き上がった明日人は、目の前で蔓を操るフロイを見ていた。フロイは、明日人ににっこりと笑いかけたかと思えば、すぐに昇降口から、スタジアムを出て行ってしまう。その遠くでは、ミラお姉さまと、メリーがミラを呼ぶ声が響いていた。
「円堂くん!」
「秋ちゃん!? 春奈ちゃん!?」
「夏美さん!?」
すると昇降口から、今までよく聞いてきた声が響き、円堂は昇降口の方へと顔を向ける。そこには、黒に近い緑色の髪をした木野秋の他にも、音無春奈、雷門夏美が揃っており、息を切らしている。その近くでは、秋たち以前の雷門マネージャーのことを知っている大谷と、夏美から生徒会長を任された杏奈は、三人の突然の来訪に驚いていた。
「秋!? それに二人も…ここは危ないぞ!?」
円堂は、スタジアムが謎の茎によって包まれているこの状況に、危ないと秋たちを避難させようとするが、秋たちはそれを断固として拒否するような素振りを見せる。
「うん…でも私達、円堂くんたちに伝えたいことがあってきたの」
「伝えたい事?」
夜舞が首をかしげると、夏美がカバンからスマホを取り出し、アプリを起動した。スマホの画面に映し出された、スタジアムに絡みつく蔓に、スマホは生誕型と表示した。
「秋さん、それはこの事態を解決してからにしましょう。……夜舞さんだったわよね、あの怪異のこと、わかる?」
「え? よく似たようなものは巻物で見たけど、これみたいなものは無かったよ…?」
夜舞は突然年上(一年違うだけだが)に声をかけられ、夜舞は少し自信な下げに答えた。それに、夏美はやっぱりね、と顎に手を当てた。
「やっぱりそうだったのね。いい? あれは怪異の中でも、『生誕型』に位置する怪異よ」
「生誕型…?」
明日人たちも夜舞も聞き慣れていない、誕生型という言葉に、その場にいる全員が驚いてきょとんとしていた。
「夜舞さんの巻物に書かれていない、いわば新種の怪異よ。もっとも、あれはフロイくん自身が生み出したものだけどね」
「怪異は、一星やヒロトのようなものだけではないのか?」
砂木沼が不信そうに一星とヒロトを指さす。
「いいえ、これを見て下さい。これは、私達でまとめた怪異の資料です。私達で怪異のことを調べていく中で、怪異には二つの種類があることがわかったんです。一つは原生型。一星くんやヒロトさんのような、人間に干渉されず、環境によるもので生まれたものです。そして、夏美さんが言った生誕型ですが、あれはフロイさん自身が生み出したもの…ということでいいんですよね。夏美さん」
春奈が鞄から出した資料には、夜舞の持っている巻物の古文とは違い、現代文で構成された文章と、おまけにイメ―ジ画像として動物の写真が貼られていた資料だった。
「えぇ、生誕型は、その人間の負の感情を吸い取って生まれる存在…貴方達は、フロイくんがどうして怪異を産むことになったのか、知っているかしら」
「………それは、」
「きゃあっ!」
と、ベルナルドが口を開こうとしたときだった。スタジアムの天井部分の一部が、グラウンドに勢いよく落ちてきたのだ。女性群が驚いている間にも、スタジアムにはヒビが入っていく。
「まずい…あの蔓のせいか!?」
ベルナルドは、周りを見てあの蔓が原因だと推測する。
『警察です! 皆さん早くここから避難してください! もうすぐこのスタジアムが崩れます!』
ぞろぞろと警察庁の人達が現れ、観客たちに避難を呼びかけている。
「皆! 逃げるわよ!」
夏美にそう言われ、全員がスタジアムから避難した。
***
一体、誰が味方なんだろう。
ユースティティアの天使は、勿論味方じゃないとしても、明日人たちラストプロテクター、そして家族でもある兄さんも、信じる事なんて出来なかった。
というよりも、この世のもの全てが嘘のように思えてきて、何も信じられない。
このままでいいはずだ。
だけど、このままじゃいけないと、自分が自分を邪魔してくる。
胸糞悪い。どうにかしてこのもやもやを取り除きたい。
…いっそのこと、『信じないからこそ、信じてみる』というのもありか。
…とりあえず僕の家に向かおう。何かがあるはずだ。
信じられるのは、絶望という名の孤独だ。
***
後書きの花畑
もうね、次回で三十三話ですよ。三十三話といったら、明日人くんが誘拐された日に決まってますよね。え、決まってない?
でも、二期では明日人くんが闇堕ちしないけど、三期では二期のラスボスであるフロイくんが闇堕ちしていたっていうの、なんかよくないですか?え、よくない?怒られろ?すみません
そういえば、誕生日を決めたんですよ。テミスに出てくるオリキャラたちの。ぜひ参考にしてくださーい。
夜舞 3月1日
レン 9月26日
メリー 6月1日
ミラ 9月2日
エレン 8月31日
え?これだとメリーちゃんが年上になっちゃう? …生まれた年の違いじゃない?
この小説の中でどのコンビが好きですか?
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜