流血表現あり
まじですみませんでしたあああ!!
いつの間にか、FF7とスマブラにハマってしまいました!!
だって、セフィロスかっこいいですもん!クラウドかっこいいですもん!
深夜に放送される、政府の考えに対して、対話を行うというよくある番組に、ラストプロテクターの話題が沸騰していた。解散から存続に至ったこと、ハーツアンロックとスペクトルフォーメーションのこと、サッカー協会のことなど、あらゆる面が事細やかに話されていた。
「ラストプロテクターからの情報によりますと、怪異は神遺物という神が生み出したものと言いましたね」
「そして、それを国は秘匿していた____と」
どこから盗み出したのか、番組の司会者は、夏美が明日人達に言った情報のことを知っていた。夏美本人から聞き出したわけでもなさそうだ。まぁ、夏美がそんな簡単に情報を渡すつもりはないため、おそらく盗み聞きかコネで何とかしたのだろう。
「神遺物___とある御伽噺に出てくる単語ですね」
「御伽噺、ですか?」
学者の男性がいう御伽噺に、黒髪をくるくるのツインテールにした、桃色の瞳が特徴の、アイドル風の女の子が、その御伽噺がなんなのかと質問してきた。
「はい。御伽噺と言っても、人類の歴史に触れるようなものなので、国家一丸に封印されてきたものなのです。しかし、今回我々はその御伽噺を発見致しました。今回実物は持っていけないので、口頭になりますが、よろしいでしょうか」
「大丈夫です」
これから男性の話す御伽噺には、実物をなるべく『凝縮し、嘘を交えながら』の説明になった。
昔々、人々がまだこの地にいなかった地上に、一人の天使が堕ちた。その名は、ルシファー。十二枚の輝く翼を持ち、美しい容姿で多くの天使を魅了し、束ねてきた。しかし、神に反逆したことで地上に落とされ、ルシファーはこの何も無い土地を目にして、途方にくれていた。
人は神が何とかするだろう。と、ルシファーは神のすることを自分のすることではないと断定し、地上よりも遥かに下の、魔界に住み着き、悪魔たちの王となった。
それから何世紀かが流れ、人々は栄えに栄えていった。しかしそこに、どこから来たのかも分からない魔女が、世界を滅ぼそうとしていた。神も、天使も太刀打ちできない魔女に、とうとう神は根を上げ、かつての熾天使ルシファーに助けを求めることにしました。
条件を神と交わしたルシファーは、魔女の兵士に対抗するための神遺物を作り出し、戦わせ、己は魔女と戦いました。その戦いは、地が割れ、空は落ち、海は高鳴り、多くの死者を出しました。
そして、一年の時が過ぎて…やっと、ルシファーは魔女に勝ちました。しかし、先程の戦いで力を使いすぎたルシファーは、神遺物、天使、そして神に見守られながら、星に還ったのである。
***
「度し難いな」
番組の再放送を飛行機の座席に備えつけられたテレビで見ていた鬼道は、しかめっ面でテレビの電源を落とした。
「夏美さん達がまた情報を集めにここから出発した辺りから、情報が漏れ出したのでしょうか。鬼道さん」
「いや、それはない。夏美はそんな簡単に情報を簡単に渡すような人間じゃない」
明日人たちラストプロテクターは、ロシアの空港で、夏美たちとは一旦別れることになった。また役立つ情報を集めに行くらしい。夏美たちにはハーツアンロックの正体、怪異の正体と、多くの情報を提供してくれた。しかし、その情報が、どこからか盛れだした。おそらく、テレビ業界がラストプロテクターの話題に目をつけ、情報を盗み出したのだろう。そのためか、普段優しい目をしている鬼道の目には、シワがよっていた。
「ラストプロテクターの情報をハッキングされたわけじゃありませんし…」
「それもあるな。それに、御伽噺の件も気になる」
テレビで語られた御伽噺。それには嘘も交えているため、本当かどうかは分からない。だが、それは今考えなくてもいいだろう。所々、悪魔という文字に灰崎のことを思い出しはしたが。
「ねぇ明日人くん。ユースティティアがタイに来るって趙監督から言われて、私たちは今タイに向かっているけど…私たち、いつかはフォルセティっていう神様と戦うことになるのかな」
飛行機の窓から空を眺めていた明日人に、夜舞が声をかける。トイレに行ったついでに話しかけようと思ったのだろう。手ぬぐいで手を拭いている。
「うん。でも、俺たちは勝つ。エレンの言っていることが本当だとしても、俺たちはサッカーを取り戻して、日本も取り戻す。それだけだよ!」
「その意気さ!」
「おばあちゃん!」
すると、どこからか夜舞の祖母、夜舞緋華里が明日人の肩に手を回し、抱きついてきた。
「お前たちなら、そのフォルセティっていう奴にも勝てる! 私は信じているからな!」
「は、はぁ…」
相変わらず強引でフランクな夜舞緋華里に、明日人は苦笑いする。
「月夜ちゃんのおばあさん。どうやらそのフォルセティというのは、北欧神話における神様で、正義と真実を司るらしいです」
「さっきテレビでその話が出てました!」
「なるほどなぁ、んで、そのフォルセティが、あいつらユースティティアの天使を生み出したってわけだな」
杏奈、大谷達の集めた情報を耳にして、夜舞緋華里は顎に手を当てる。
「(エレン……)」
夜舞緋華里が考えている間、明日人はエレンのことを考えていた。あれから、エレンとは会っていない。エレンとのいざこざ、エレンとの試合での出来事が重なって、エレンとは会えていない。いや、元々自分とエレンとは、敵同士なものだ。同じ世界を救うもの同士として。
明日人たちが飛行機から降りてロビーに向かうと、明日人たちの存在に気づいた少年が、スマホを閉じて声をかけてきた。
「お、アスト!」
その少年はさながら日本人のような肌の色をしており、身長も高い。黒い髪をまとめて、さらに大量のピアスを耳につけていた。
「ロイド!」
久しぶり! と明日人は声をかけると、ロイドは嬉しそうに明日人と握手を交わした。
「あ、フロイ! この前の試合見たぞ! ハーツアンロック、かっこいいじゃないか!」
なんとロイドは、いきなりフロイに抱きついては、この前の試合のことを話してきた。知り合いかと明日人たちは思ったが、知り合いと言ってもそんなフランクすぎるスキンシップはしないだろうとは思うが。
「ロイド、苦しいよ」
「だってさぁ! フロイがロシアにいる時、色々あったのは監督から聞いてんたんだよ!」
あぁ、悲しかったよなぁ。すると、ロイドはいきなりボロボロと涙をこぼし始める。
「すごく感情の揺れ幅が大きいわね…」
「まぁ、気さくでいい人なんじゃないかな。杏奈さん」
明日人たちは、ロイドの気さくな雰囲気とは裏腹に、感情の昂りが大きいロイドを目にして、思わず引いていた。いや、驚いていた。
「おっと、こんなことしてる場合じゃないな。じゃあみんな、監督が呼んでるから、俺に着いてきてくれ!」
ロイドに連れられて、バンコクの森林に入ると、そこには村があった。木造で作られていて、皆元気そうに暮らしている。
「ここは、俺たちタイ代表の宿所だ! たまにこうして、親たちが店を開いて交流を深めているんだ。そして、あそこが俺たちの拠点、そして監督のいる宿所だ!」
ロイドが指を指した場所。明日人たちは、ロシアと日本にあった建造物の宿所をイメージしていたのだが、ロイドが指を指していたのは、建造物ではなく、洞窟だった。
「え、これが宿所?」
「あぁ!」
明日人が思わずロイドに聞き返したが、ロイドはただここがそうだと言うだけだった。
「どう考えても洞窟にしか思えねぇよ…」
灰崎がロイドの言う宿所の外観につっこむと、ホッホッホッ、と洞窟の中から古ぼけたローブを羽織った老人が現れた。
「ほっほっほ、どうやらお主らが、ロイドの言っておったラストプロテクターのようじゃな」
「誰だ?」
「ほっほっほ、氷浦よ、慌てることは無い」
「え、今俺の名前…」
氷浦は、目の前の老人に教えてもない名前を言われたことにとても驚いていた。
「おじいさん、貴方は僕たちの名前を全部知っているんですか?」
「まぁそうじゃな、照美よ。儂は長いこと、この洞窟で心眼を極めておった。じゃから、自然と向こうから情報が流れ込んでくるもんじゃよ」
「……まるで仙人だな」
剛陣は目の前の老人を仙人と例える。しかし、
「ほっほっほ、仙人とは。そう言われたのは久しぶりじゃのう、まぁ儂は、見ての通り人間じゃよ」
老人は人間だと言った。
「ほっ!」
すると目の前の老人は、ローブを脱ぎ捨て、己の素顔を晒した。その姿に、明日人たちは目を見開いた。
その姿は先程の老人だと思っていた姿と打って変わって、高身長の、さらにイケメンの青年へと風変わりしたのである。薄青い髪の片方の横髪を軽く結び、後ろ髪の三つ編みを前に、頭に狐のお面と同時にメガネもかけていた。そして、袖のない白い着物と黒い袴。どう見ても仙人だった。
「凄い…!」
大谷はもはや、その美しさに言葉ができていない。
「ほっほっほ、驚いたかね。これが本来の姿なんじゃが、力を見破られてしまわぬよう、変化の術で老人の姿をしておったのじゃよ」
と、目の前の青年が笑うと、夜舞緋華里が近づき、驚いた顔を見せた。
「おぉ、奏多じゃんか!」
「久しぶりじゃのぉ、義姉さん」
「一瞬誰だかわかんなかったわ!」
「ははは。義姉さん。頼みがあるんですが、これから儂、子供たちと修行をつけてきますので、監督たちを儂の指定した場所に案内して貰えますか? 既に場所は取っていますので」
すると、奏多は緋華里にメモを渡した。そこに記載されている、日本語の住所とタイ語の住所を見て、夜舞緋華里は監督たちを指定した場所に連れていくことにした。
「…おし! じゃあベルナルド! 行こうか!」
ベルナルドを押しながら、夜舞緋華里は強引に指定した場所まで連れていった。それを、明日人たちは苦笑いで見送る。
「ほっほっほ、混乱させて悪かったね。私は夜舞奏多。見てのとおり、世界中を旅して、我流の伝授を行っているんじゃよ。君たちが来ることは心眼でわかっていたから、ロイドにおつかいと同時に明日人達に会うように頼ませていたんじゃ」
奏多と呼ばれたこの青年は、明日人達を洞窟の中へと連れていった。その大部屋と呼ばれる場所に着くまでに、奏多は明日人達に自己紹介を済ませた。
「え、夜舞って…私の苗字と同じ…」
「そうじゃ、月夜。儂はお主の叔父に当たり、儂はお主の姪っ子になる」
「知らなかった…私に叔父が居たって」
夜舞が前を歩く奏多を見て、親近感を湧いている中、奏多は扇子で口元を隠した。
通された大部屋は、洞窟とは思えないほどの調度品で埋められており、和室として機能していた。明日人達が座布団の上に正座している中、奏多は向かい合うようにして座布団の上に正座し、黄金色の扇子を開いた。
「ふんふん、どうやらお主たちには、怪異の力を借りて力を増すスペクトルフォーメーション、心の闇に秘める力を引き出して、神と同等の力を手に入れるハーツアンロックを持っているようじゃのう」
「そうですけど…それがどうかしたんですか、奏多さん」
「ほっほっほ、そんな身構えなくても良いぞタツヤ。儂はお主らの力になりたい。サッカーを愛する者として、サッカー拳法を生み出した師匠としてな」
奏多は、同じくしてサッカーを愛する者として、明日人達の力になりたいと同時に、そのハーツアンロックとスペクトルフォーメーションの二つの力を試したいと考えていた。彼らには、何かが足りない。精神力、体力、どれをとっても十分だ。ただ、少しばかり正義感の強すぎる点も見られる____が。それは後に話すとしよう。
奏多は、ぬうっ、と音もせずに立ち上がると、開いていた扇子で風を作った。
「ファイブフォース」
扇子が風を起こすと、周りの風景が渦巻きとなって消え、新たに星空の空間が現れる。
「プラストラーンストヴァ」
また風を作ると、今度は竜巻にに巻き込まれたように明日人たちの体が浮いた。
***
「いったたた…」
謎の竜巻みたいなものに巻き込まれた明日人だったが、おかしなことに痛みがない。地面に叩きつけられたわけでも無さそうだ。明日人が起き上がると、下は白い花、百合の絨毯によって地面が埋め尽くされており、明日人はその上で寝ていたと思われる。
「気がついたかの」
すると、目の前に奏多がいたため、明日人は心臓がはねて飛び上がった。
「わっ! 奏多さん? それに、ここは? みんなは?」
「ほっほっほ、儂じゃ。ここは儂の仙界、先程の技でお主らを招待させたのじゃよ。そして、皆は今こことは別の仙界におる」
明日人の三つの質問に面倒がることも無く、奏多は答える。
「はぁ」
仙界という言葉に聞きなれず、明日人はただ息を吐いた。
「さて、お主にはこの仙界で、お主なりのやり方を見つけるんじゃ。欲しいものは好きなように出てくるし、何もしなくても良い。お主の好きなように、やってみるんじゃ」
「え、どういうことですか?」
「まぁ、お主のやり方に関しては、儂は一切口出ししない。これは、お主の試練じゃ。何、のびのびと、リラックスして試練に挑むといい」
自分なりのやり方を奏多に問われ、考えている間に、奏多は風と共に消えていってしまった。
「俺の、やり方……」
次に奏多が向かったのは、道場のような床が綺麗な木の板で埋め尽くされた木造の空間。そこには明日人を除いたラストプロテクターがおり、皆が皆明日人の不在に驚いていた。
「ほっほっほ、どうじゃ? 驚いたじゃろう」
奏多の声で、彼がここに来たということがわかると、ラストプロテクターの面々はすぐに奏多に走り、問い詰めた。
「お、おいアンタ! 明日人はどうしたんだよ!」
剛陣は、明日人がいないことへの心配と不安で我慢ができなくなっているのか、年上であろう奏多に敬語を忘れ、怒りを露にしている。
「おぉ鉄之助、まずは落ち着いた方が良い」
「お、落ち着いた方がいいって…」
言葉の使い方としては少しおかしい返答をされ、剛陣はそっちに気が向くことで、結果的に落ち着く事が出来た。
「明日人なら、今は別のところでレッスンを受けておる。まあ、個別指導の塾に通っていると思っても良い」
個別指導……その内容が、サッカーであるといいのだが。と野坂は思った。
「ところでなんですが、ここはどこなんですか?」
すると、茜が不思議そうに周りを見渡しながら奏多にここはどこなのかを質問する。
「儂の[[rb:5つの力 > ファイブフォース]]、空間を操る能力でこのような空間を作ったのじゃよ。まぁ、仙界とでも呼んでくれ」
「いや、空間を操るって、やばいことじゃないですか!」
「ほっほっほ、ここに来たロイドも、同じことを言いおった」
すると奏多は、空間のことを話し出した。空間とは壁の見えない、間取りのようなものだと。そしてそれが多くの間取りと繋がって、世界ができているということ。そして、己だけの空間を作り出す五つの力というのは、纏まった構造、均一化する連続性、[[rb:個々が占有するトポス > アリストテレス]]、[[rb:動かぬ構築 > ニュートン]]、[[rb:幾何学的対象 > 空間の点]]というものだ。
よく分からない構造に、野坂たちは頭にクエスチョンマークを出していた。
「まぁ、これに関してはわからなくても良いぞ。分からないというのも、一つの空間を作り出す一つなのじゃからな。さて、明日人に個別指導している間に、お主たちは儂という家庭教師の元に、お互いにお互いを高めあおうではないか」
奏多が扇で周りを扇ぐと、奏多の右手にサッカーボールが現れる。それも、何の変哲もないボールだ。
「あぁ、そこのマリク、ルース、ユリカとやらも、一緒に修行に付き合おうではないか」
「僕も、ですか?」
「うむ」
マリクとルース、そしてユリカに向かって、奏多は扇子で口を隠しながら微笑む。
「して、ハーツアンロックあり、スペクトルフォーメーションあり、必殺技ありの、サッカーに基づいたルールで、儂からボールを奪ってみせよ。そしたら、明日人に会わせてやるぞ?」
まるで敵の幹部のようなことを言うため、彼らは調子が狂う。別にユースティティアの天使と戦っているわけじゃないし、何より相手は人間だ。夜舞家の大人たちは、みんなこんなものなのだろうか。いや、祖母とこの人が少しおかしいだけだ。そう思っている間にも、奏多は裸足でボールを上から押さえつける。
「つくしとやら、ホイッスルを頼むよ。それでは、始めようか」
大谷のホイッスルで、修行が始まった。
「(相手はどんな実力を持っているのだろうか…身なりと体つきからして、サッカーをやっているようには見えないが…)」
まず最初に鬼道が行ったことは、情報収集だ。目の前の仙人のような青年は、あまり筋肉がついていない。細マッチョという部類には入りそうだが…。
「ほっほっほ、そんなに固くならなくても良いぞ?」
すると、鬼道の肩に手が置かれる。鬼道が後ろを向くと、そこには鬼道の様子を見て楽しむような笑顔をした、奏多が立っていた。
「いつの間に___!?」
だが、ボールをとってしまえば終わり。鬼道は急いで奏多の足元にあるボールに足を伸ばす。しかしボールは奏多のヒールで持ち上げられ、鬼道は奏多に抱きつくような形になってしまった。
「はああっ!」
するとそこに灰崎がマフラーをなびかせながら、奏多に走っていく。
「おっと」
まず鬼道を追い払い、ひらりと灰崎をかわした奏多。ついでのようにボールを持って。しかし、灰崎は獲物に食らいつく鮫のように奏多に食いつき、奏多がいくら避けても追ってくる。
「その根性は認めるがのぅ…」
灰崎のディフェンスの穴。いわゆる股にボールを通し、奏多が後でそれを拾う。
「叔父さんだからって、容赦しないよ!
ライトチェーン・ダークロープ!」
奏多の元に、夜舞の魔法陣から現れた鎖と縄が襲いかかる。
「早速叔父と呼んでくれるのか。嬉しいのぉ」
嬉しさに口角があがりながら、奏多は右手に持っている扇子と同じ扇子を取り出し、扇を開く。右手で鎖、左手で縄の起動を変えながら、そして自然に、舞を踊った。
「ま、舞で起動を変えた!?」
「ほっほっほ。まだまだ、じゃのう」
奏多が左手の扇子を仕舞うと、その直後に竜、五芒星の空間が襲いかかったが、竜をまた扇子で起動を変え、五芒星の空間を壊した。
「こんなもの、かのぅ」
強い。技を、いとも簡単に受け止め、突破するなんて。これじゃあまるで、エレンを相手にしているようなものじゃないか。
「今度はこっちじゃ」
奏多が、右手の扇子を円堂達に向けて、扇ぐ。すると、扇いだ扇子から、竜巻のような強風を生み出し、円堂達を吹き飛ばした。
『うわあああっ!』
「おっと」
風が止み、円堂達が地面に叩きつけられる前に、奏多は扇子をもう一度扇いで、風のクッションを作り上げた。
「どうしたのじゃ? もう体力もないかの」
彼らは体力の消費で膝をついており、立ち上がれる者はいなかった。それを見た奏多は、修行を終わりにしようかと思った。しかし、
「まだ、終わってないっ!」
なんと、全員が立ち上がったのだ。
「(なんと……儂の風を受けて立ち上がれるとは。なかなか見どころのある奴らじゃのう)」
彼らなら、きっと世界を救える。変えられる。
きっと、大きな真実で、人を救う。
「終わりじゃよ」
奏多が扇子を閉じる。
「え、終わり…?」
立ち上がった円堂は、突然の終わりに口を開けていた。道場のような空間は、三角の破片を花のように散らせながら崩れ、元の洞窟の和室に戻った。
「お主ら、なかなかやるのぉ。お主らなら、きっと世界を救えるじゃろう」
今度は扇子で口を隠さず、そのままに笑顔で奏多は笑う。その表情は、とても満足そうだ。だが、これで終わりじゃない。彼らには、もっと強くなってもらわないとならない。特に、ハーツアンロックを所得している者。彼らはきっと、風、翼、雪、手をもっと極められる。
「ま、明日に備えて休むといい。儂は監督たちと話をしてくるから、お主らはこの素晴らしい国、タイを観光しているといいぞ? 集合場所は、監督が教えてくれるじゃろう」
「して___どうじゃったかの。明日人」
奏多がベルナルド達のいる場所に向かっている途中、裏路地で明日人を仙界から出した。
目の前の明日人は、突然仙界から地上に出されたことに驚いていたが、奏多の話を聞いて、明日人は答える。
「___俺、やっぱりサッカーが好きです。サッカーは、俺の居場所のようなものでしたし、何より、走ってて『自由』になれるんです。だから、たまに休みつつ、サッカーをしてました」
明日人の返答を聞いて、奏多は、そうか。と微笑む。
「………やはり、お主はお主じゃな。何事にも縛られない、風のようじゃ。ところで明日人。お主は自由をなんと心得る?」
「自由、ですか?」
「あぁ。スピリチュアルによれば、自由とは、地球上では好きに何でも選べること[[rb:× > かける]]環境じゃ。選べる選択がお主自身。そして、環境がお主を縛る鎖。それが、自由なんじゃよ」
明日とにとっては、スピリチュアルというのはよくわからなかったが、自由は鎖と自分だということはわかった。それと同時に、気になったことがあった。奏多は今、自由なのかと。
「奏多さんは、今が自由だと思っていますか?」
明日人の質問に、奏多は戸惑いながらも、明日人に背を向ける。
「まぁ、自由を超えたなにかじゃろうな。儂にはもう環境もないし、選択もない。ただそこにあるのは、虚無。お主が儂を仙人だと思うなら、そうじゃろうな」
「そうですか…」
「まぁ、縛られるのは儂も嫌じゃ。最も…儂にはもう昔の思い出も、記憶もない。ただただ虚無に、この俗世を見守るだけじゃよ」
それだけを言うと、奏多は歩き出した。ここからは、大人の会話。子供たちが知るべきことではない。
***
ベルナルド達大人は、奏多が用意してくれたホテルの一室で、彼らの修行の終わりを待っていた。その不安をそのままに、ベルナルドはブラックコーヒーを飲み干す。すると、ベルナルドの目線の横に、白いまんじゅうが小さな皿に乗って置かれた。
「邪魔するぞ?」
ドアが開いた音がしないことに驚きつつも、ベルナルドは平常心で奏多に話した。
「確かお前は……」
「奏多。夜舞奏多じゃよ。といっても、儂にはもう名前なんてないようなものじゃが」
おかしな発言をする奏多に、ベルナルドは不信感を抱く。
「子供たちは?」
「子供たちの修行は終わりました。まぁ、明日も続ける予定ですが」
「なんか、喋り方が変わってますねぇ」
「子供たちの保護者。なのでしょう? 保護者なのでしたら、礼儀は大事じゃからの」
趙監督は、奏多の喋り方がいつもと違うことを指摘したが、それを奏多は、華麗に切り返した。
「して_____貴方達に聞きますが、貴方たちは、本当にサッカーを愛してますか?」
まんじゅうを三人に配り終えた奏多は、三人に向かい合うようにソファに座り、話し始めた。
「____え」
ベルナルドは奏多の質問に、困惑した顔をしているが、二人は無表情で奏多を見つめる。
「どういう意味ですかねぇ」
「そのままの意味ですよ…趙金雲、貴方は元サッカー協会の人間。なら、なぜサッカー協会が行っていたことを知らなかったのか。もっとも、サッカーはとっくの昔に廃れてますから、愛してないのも当然でしょう」
「だから、お前は何が言いたい」
「ベルナルド、僕に話をさせてくれ」
ベルナルドが、『おかしなことばかり言う』奏多に、その質問の意図はなんだと立ち上がり、問い詰めようとしたところを、折谷が止める。それに、ベルナルドは落ち着きながらも席に座る。
「……奏多くん。君は僕達大人と、子供たちを分けるために、わざわざ修行なんてことをして、何が目的なんだい? もしかしたら、サッカー協会がしてきたことを忘れさせる。そういうことじゃないのかな」
折谷は、奏多のした行動に疑問を持っていたようで、仮説を奏多に提示する。それに、ハズレだと言いたいかのように、奏多は笑い出す。
「いや、子供たちは永遠に、あのサッカー協会のことを忘れない。それに、忘れさせるなら、とっくにやってますよ。記憶の空間をいじることによって、記憶を消したり、植え付けたりできますからね」
そう、奏多は右手でキューブを作り出す。それが、記憶の空間だとでも言いたいのだろうか。
「………君は、何がしたい。子供たちを使って、何かをしようとしているんじゃないのかな」
「何かをするも何も、子供たちを利用して何かをしようとしているのは貴方たちでは?」
子供たちを利用。その言葉に、ベルナルドはかつてオリオン財団がしてきたことへの記憶が蘇ってくる。かつて、オリオン財団は子供たちを利用して、世界の経済を活性化させようとしていた。だが、それは打ち砕かれ、利用された子供たちはそれぞれの里親に引き取られている。
「………奏多。お前は」
「あぁ、ベルナルドは子供たちのことを本当に愛してますもんね。だから、この二人が何をしているのかにも気がつかない。ある意味、無垢とも馬鹿ともいえるね」
奏多の最後の発言に、ベルナルドの中に怒りが込み上げてくる。しかし、それを出したって、何も変わらない。そう理性的な面で、何とか心を落ち着かせる。
「何が言いたい」
「趙金雲…貴方は貴方の、その独りよがりな復讐のために、子供たちを利用した。そうでしょう?」
そんなわけない。趙金雲は、とベルナルドが言おうとしたところに、趙金雲が立ち上がって言った。
「……そうですね」
「まさか、貴方も廃れていたとは。あの子たちの監督をやるくらいだから、まともだと思っていましたが…」
くつくつと笑う奏多の額に、何か固いものが当てられた。
「……ん?」
「趙金雲のことを悪くいうな」
奏多は、目の前のベルナルドの顔を見て、すぐに察した。自分の額にあるのは、銃。おそらく護身用だろう。にしては大袈裟な。と奏多は思ったが。
「何も、私は事実を言ったのみですが?」
「それが本当だとは限らない」
「随分固定概念に縛られた方なんですね」
奏多の発言に、ベルナルドは引き金を引きそうになる。
「まぁまぁ、そんな危ないものを突きつけないで、こちらに渡してください。それとも、子供たちに本当のことを知らせますか?」
すると、奏多から提案を提示された。本当のことを言わない代わりに、銃を渡せと。ベルナルドは、自分たちが利用されていることを知られては、子供たちがどうなるかわからないと、大人しくその提案に従うことにした。銃をテーブルに置き、手を膝に置いた。
しかし、奏多は素早くそれを手に持った。
やはりか! とベルナルドがスーツの中に忍ばせた銃に手をかけようとしたその時。
銃声が聞こえた。
それも、自分の銃からじゃない。
奏多の持っている銃からだ。
なんで、なんで、こいつは。
自分で自分の脳を銃で貫いているのだろう。
「……ほっほっほ。儂には武器も何も通じない。こんな成りじゃが、儂も人間じゃよ。お前たちも、すぐに受け入れられる。あと、子供たちに真実を話すというのは嘘じゃよ」
「………」
確実に死んでいるはずなのに、奏多は生きている。いや、打った箇所が、どんどん修復されている。そして、打つ前の元の薄青色の髪に戻った。
「何も言えんか。そうか。まぁ、こんなの見たら、絶句するじゃろうな」
「……お前は、何がしたい」
目の前の人間に対する恐怖、不安を抑えながら、ベルナルドは奏多に問う。
「……いいか。子供たちは人間だ。戦争に使う兵士ではないことをその身で自覚しろ」
確かに、とベルナルドは感づいた。
あの時脳を貫いたのは、戦争で言う、自決を意味している。沖縄では、手榴弾で自決するとはあるが、意味は同じだ。
………もし、子供たちが天使との戦いに負けて、自決せざるを得なくなった時には?
戦争が、起こらないわけでもない。
だが、彼らは確実にこう言うだろう。
死にたくないと。
仙人には、何でもおみとおし。
後書き
まじでお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
今回のオリキャラのキャラ設定を乗せますね
夜舞奏多
『悠々自適の孤高の人』
プロフィール
性別 一応は男性だが、性別がないと言った方が正しい(月夜談)
年齢 本人曰く教えられない。知らない。数えたことも無い。
一人称 儂
二人称 お主
関係性 月夜の父の弟の、緋華里の義弟。月夜とは叔父に当たるが、月夜は知らない
能力 東方風に言うなら、『空と間を結ぶ程度の能力』
仙人まがいな人間で、掴みどころがない。
本人でも自分が誰なのかわかっておらず、このような仙人紛いな性格になっている。
この小説の中でどのコンビが好きですか?
-
明日人とエレン
-
不知火と月夜
-
エレンとレン
-
エレンとメリー
-
エレンとミラ
-
不知火とベルナルド
-
明日人と月夜