さて、このたびは大変お待たせいたしてしまい、大変申し訳ございませんでした。この小説を見てくださる皆様には、とても感謝いたしております。
このたびもこの小説を宜しくお願い致します。
訳 梅雨なんて嘘じゃね?
また待たせてしまいごめんなさい。いつも見てくださる皆様に感謝です。
このたびも宜しくお願い致します。
闇のように真っ暗な空は、その雨を窓に叩きつけている。まるで、神様が大粒の涙を流しているかのように。
こんな雨の日は、大人しく各自でやらなければならないことの処理をしていこう。課題とか、趣味とか。変に特訓なんかしても、風邪にかかって試合どころでは無いから。なので、明日人たちはそれぞれの部屋で、夕食までの間に用事を済ませていた。
「…いいかい、月夜。ファイブフォースは、この世界に存在する五つの力を借りて、己の物にする、夜舞家に伝わる秘伝だ。だけど、その五つが何なのかを探っていなくちゃいけない。私も今は五感の力を借りているけど、それまでの間、とても長かったよ」
無論。夜舞も自分の部屋で、祖母から話を聞いていた。
「そうなんだ…」
「まぁ見つかって、習得ができたからといっても、実際に使うのはほとんどないさ。もし月夜がユースティティアの天使を倒したくて、ファイブフォースを習得しようとしているとしても、私は一切止めるつもりはないよ。月夜は、月夜のやりたいようにすればいい」
夜舞の祖母、夜舞緋華里は、孫である夜舞月夜の意志を尊重し、好きにやらせるつもりだ。そうした方が習得しやすいだろうとわかっているから。
一方で夜舞は、自分の五つの力はなんだろうかと考えていた。夜舞の叔父である(と祖母から聞いた)夜舞奏多は、空間を作る五つの力を持っているからこそ、仙人のようなことが出来ている。彼がどのようにしてその力を持ったのかはわからないが___。
「まぁ、私からは以上だよ。ファイブフォースはそんな簡単に習得はできないから、さ。気長に気長に、心を暖めながらやっていくんだよ」
その頃、大谷達マネージャーは、夕食の準備を奏多と一緒に行っていた。奏多はとても手先が器用で、自分達がまだ知らない料理のことも教えてくれた。
「それにしても、このチームが解散にならなくてよかったね」
大谷は、このチームが解散にならなくてよかったと喜んでいる。その表情は、本当に心が嬉しさで弾んでいるんだなと周りにもわかるほどだ。
「はい、本当によかったです」
大谷が笑顔になるのにつられて、杏奈も嬉しそうに微笑んだ。
「これも、神様が私達を見ていたからなのかな」
この幸運は、神様のおかげだと、大谷は主張する。
「神様……ではないかもしれませんが、円堂さんが言っていたように、勝利の女神さまが微笑んでくださったのかもしれませんね」
「神様、か」
杏奈は、大谷の言う神様を勝利の女神だと考え、口にする。すると、茜の手が止まった。
「……どうしたのじゃ? 茜」
「あ、奏多さん……なんでもないです」
奏多が茜の肩に手を置くと、茜は奏多の存在に気づき、慌てて手を動かした。なんで神様という言葉に反応したのかがわからず、茜は困惑したが、まずは料理を完成させようと心に決めた。
明日人たちは夕食を食べ終え、今度は就寝の為の準備を進めていた。そのときに、明日人は二人の監督から今後の予定などを伝えられ、その内容をメッセージアプリを通じて皆に伝えるようにと言われたのだ。趙監督によると、ここしばらくはタイで雨が続く為、特訓はこの宿所の室内グラウンドになることを知らされたのだ。この雨がしばらく続くことに、明日人は少し残念な気持ちになったが、仕方ないだろう。自然には逆らえない。
『しばらくは室内グラウンドで特訓』
メッセージアプリを開き、明日人はチームのグループラインにメッセージを書きこむ。それを送信すると、次々にメッセージの内容に気づいたメンバーから、『OK』のスタンプや、『そっか、じゃあトレーニングメインになるね』という文字も送られてきた。それらを見終えた明日人はスマホを閉じ、ひとまず部屋に戻ろうとしたときだ。
エレンの姿が見えたのだ。外に通じる玄関のドアの向こうで、歩いている。彼女の姿は遠く、表情はわからない。だけど、明日人は日傘を指している時のシルエットで、彼女がいることに気づいたのだ。
「……エレン?」
エレンを一目見たことはとても喜ばしいことなのだが、こんな夜中に何をしているのだろうか。どこかに出かけるのだろうか? それとも、地上に何か用があるのか? それを知りたかった明日人は、外に飛び出した。
エレンとの戦いから、明日人はエレンと会うことがなくなっていた。だから、彼女に会えただけでも嬉しかったのだ。
明日人は、大雨のなか彼女を探していた。すると、目の前に彼女を見つけた。だけど、その時にはもう雨の冷たさを感じなくなっていた。というよりも、目の前で起きていることにショックで何も感じていなかったのだ。エレンは、雨に打たれていたのだ。傘も刺さないで、公園のベンチに黙って座っている。
「…エレン」
明日人は、エレンに声をかける。だが、彼女は何も言わなかった。
「こんなところで何をしているんだよ。風邪ひくよ」
明日人は雨に打たれるエレンを心配して、ジャージを頭にかけた。もしかしたら、彼女は天使だから風邪なんかひかないのかもしれない。だけど、雨に髪も服も濡れていて、何も言わないから、誰だって心配してしまうだろう。たとえ敵だとしても____。
「…構わないで、私は人間ではないもの。風邪は引かないわよ」
エレンは声をやっと出したかと思えば、明日人がかけたジャージを取って、それを本人に返した。以前の柔らかかった声とは裏腹に、今の彼女は低音で、声の強さも感じられない。
一体、しばらく会ってない間に、何があったのだろうか。それを知りたくて、明日人はエレンに手を伸ばす。
「来ないで、
「___!?」
明日人は、自分を突き放すようなエレンの声に、伸ばしかけた手を引っ込めた。人間と呼ぶ彼女の声に、明日人は自分の耳を疑い、そしてエレンを疑った。
彼女は今、自分を人間だと呼んだ。
まるで___あのユースティティアの天使のように___。
「仲間のところに戻らなくていいの? 一人だと、何が起きても誰も助けてくれないわよ。今回は見逃してあげるから、ここから去りなさい。今すぐに」
去れとエレンに言われても、明日人はその場から動くことは出来なかった。ここから去りたくなかったのかとか、それともなんて、考えられなかった。
明日人がそうやって考えている間にも、エレンはその場から居なくなってしまっていた。
***
「ミラ。エレンはどこだ」
ユースティティアの天使たちが住まう天界の教会で、レンは廊下に通りかかったミラに話しかける。
「エレンですか? エレンなら、今お部屋にいらっしゃいますわ。何か用事ですか? レンさん。用事なら私がお聞きします」
ミラはちょうど魔界から天界に帰ってきたようで、どこか機嫌がいい。そしてついでに、治療も終わったメリーもミラの後ろについている。彼女は軽くお辞儀をすると、レンに微笑みかけた。ミラはエレンの友人ということもあり、レンはミラに用事の内容を話すことにした。
「エレンには問い詰めたいことがある。稲森明日人についてだ。あれはフォルセティ様が直々に救済してほしいと私達に頼んだことだ。なのにどういうことだ。エレンが稲森明日人と出会っていた形跡がある」
レンは悩ましげにため息をつくと、腰に手を当てて考え始める。レンにとってフォルセティは父親で、父から頼まれたことは速急にこなしたいのだと、ミラはレンの心情に勘づいた。
「あら…レンさん。確かに私達のお父様から命じられたことは即急にこなしたいのもわかりますわ。だから、エレンに問い詰めて、なぜ明日人さんに会っていたのかをお聞きになりたいのですね」
ミラはこう言えばレンが喜ぶのだとわかって、言葉にする。
「あぁ。だが、他にも聞きたいことがある」
確かにレンは、ミラが自分の思いを汲み取ってくれたことに喜ぶような仕草を見せる。しかし、レンはすぐにいつもの不機嫌そうな表情に戻る。
「アンシャルの剣についてだ」
「アンシャルの剣……?」
ミラは、レンの口からその言葉が出てくるとは思っておらず、扇子で口元を隠した。
「どうしてレンさんがそれを? ……いいえ、エレンとアンシャルの剣に、なんの関係があると仰りますの?」
「……ミラ。君は私がまだアンシャルの剣の存在を知らないと思っていたようだな。アンシャルの剣については、フォルセティ様が教えてくれた。私の部下の天使が見回りで天界の祠を確認したところ、アンシャルの剣がなかったそうだ。それで、エレンにこのことを報告したくてだな」
ミラは、扇子で口元を隠しながら、顔を背ける。
アンシャルの剣は、持ち主の願いによってその剣の能力と効力が変わるという性質を持つ。その剣が他の天使によって悪用されていたとしたら、天界が危機に陥る。そのため、レンのような大天使には知られていない情報だ。メリーも、おそらくは知らない。
「そう、ですの」
一度ミラは、心を落ち着かせる。アンシャルの剣のことは、きっとエレンがレンの報告を受けて、何とかしてくれるだろう。エレンはあぁ見えても責任感は強い。アンシャルの剣が無くなったと聞けば、きっとすぐに事態を解決してくれるに違いない。
「あ、エレンお姉さま……」
すると、メリーはこちらに歩いてくるエレンの存在に気がついたようだ。ミラの横から顔を覗かせている。
「エレンか、ちょうどいい。エレン」
レンは、その場を通り過ぎようとするエレンに声をかける。
「……あら、何かしら」
「エレン、稲森明日人についてだが、なぜ君は救済人の稲森明日人といるんだ」
単刀直入に、レンはエレンに伝えたかったことを話す。それにエレンが黙りこんだかと思えば、すぐに口を開いた。
「明日人のことを気にする必要は無いわよ、レン。貴方はお父様に言われたとおり、明日人の救済のための準備を進めていなさい」
それだけを微笑んでいうと、エレンはその場を去ろうと歩き出す。
「待て。アンシャルの剣についても話がある。今さっき、天界の祠にてアンシャルの剣が無くなっていたとの報告を受けた。知っていることがあったら話してくれ」
すると、エレンはその足を止めた。レンからアンシャルの剣という単語が出たことに、驚いているのだろう。
「……レン。貴方からその言葉が出てくるなんてね……ふふふ、貴方は悪い子ね。上層部にしか知りえない事実を知ってしまったんだから。これは、おしおき確定かしら?」
「始末書は既に出している。罰は、アンシャルの剣についてを調べることだ。……エレン、教えろ。アンシャルの剣は今どこにある。君なら知っているはずだ」
今にも相手を殺しかねないほどの鋭い目で、レンはエレンを睨みつける。
「………………」
その行動に、エレンは口角をあげる。
「ふふふ……貴方にヒントをあげるわ」
「なに?」
「いい? 大事なものはいつも、近くにあるものよ? 灯台もと暗し……というものかしら?」
***
明日人と出会った翌日にも、雨は世界を濡らしていた。空は曇天で、今にも人はこの雨で気が滅入りそうだ。
その日、エレンはタイの総合病院を訪れていた。この病院は、自分達天使によって日本が支配され、元居た病院に居られなくなった患者達がここに流れてきたことがきっかけで、今日も今日とで忙しくしている。なんでも__これから流行るであろう、インフルエンザのワクチンを打つ人も集まっているのだ。賑わって当然だ。
人を隠すなら人の中。ワクチンを打つ人によって出来た人ごみにまぎれながら、エレンは目的地にへと歩く。今日は都合悪く、明日人たちのいるラストプロテクターもいる。別の日にでもよかったが、それではダメなのだ。明日か今日にでも、死んでしまうかもしれないし。
だから、もし見つかってしまったら面倒なことになってしまうだろう。それだけはどうしても避けたかった。
「おはよう、よく眠れた?」
彼らに居場所を悟られぬように、静かに病室のドアを開けて中に入る。そこには小学生くらいの男児が、ベッドで眠っていた。呼吸器をつけて、眠っている。だから、眠れたかなんて聞いても意味はないのだが、とりあえず挨拶として話しておく。
「今日は、何をお話ししましょうか。人類の救世主の話? それとも、天使たちが導き出す世界の話?」
エレンはベッド近くの椅子に座って、少年に話しかける。そのついでに、少年が抱きかかえている白い十字架に手を伸ばし、しっかりとその弱い手に握らせる。
「
エレンは虚ろな目で、少年を見つめている。
「……いいえ、今日は愛について話しましょう。良い? 愛と好きは違うものなのよ。好きは一瞬だけど、愛は長い事時間をかけて育むものなのよ。己が作った子供のように、永遠に。そして、愛とは、自分と相手が異なる人間だということを理解すること。親と子供は確かに血がつながっているのだけれど、違う人間でしょう? それと同じ。親が子供を支配するなんて、あってはならないことなのよ」
話し相手もいないこの部屋で、エレンは長々と話し続ける。
「そうね…もし、貴方が神様の元で生まれていたとしたらどうなっていたのかしら。幸せに暮らしていたとしたら? ………いいえ、神様の元で生まれても、幸せになれないことだってあるのよ。どんな神話においても。でも、子供は親を選べない____。残酷よね。幸せになれた傍らで、不幸に死んでいった人がいるなんてね」
現に、目の前の彼は、その波に巻き込まれてしまった。人として幸せに生きる事すら許されず、ましてや看取ってくれる家族もいない。それなら、生きるよりは死んだ方がましだと考える人がいるのも納得する。
そして、この世界には、神なんていない。神は、自分で産んだ生き物たちに対する責任を持たない、いわば毒親のようなものだ。だから、今はこうやってフォルセティという神の元で世界を変えようと動いているのだが___。神と天使の力をもってしても、目の前の少年を助けられないんじゃ、世界を変える意味なんてないじゃないか。エレンは拳を握りしめる。
なんでこんな簡単に、一つの尊くて、今にも消えそうな命は、簡単に…。
どうせ……天使たちも、役目が終わったら捨てられるだろう。
なんで、そんなことに他の天使たちは気がつかないのだ?
この世界は、偽物の神が作った世界だというのに___!!
「エレン…?」
その時だ。懐かしい声が聞こえる。
だけど、その声に振り向いてはいけないのだとエレンは感じとった。
今彼の目を見てしまったら、自分が自分でいられなくなるような恐怖に襲われてしまう気がしたから。
***
明日人は、エレンをその病室で見つけた。お手洗いの帰りに聞き覚えのある声が聞こえて、その声を辿ったら、彼女を見つけたのだ。
だけど___彼女は昨日も、今日も、かつての試合ように、明日人に見向きもしない。
「…………」
ベッドで眠っているのは、少年だろうか。その子とエレンの関係性は、明日人にはわからなかったが、明日人はエレンに近づいた。
今度は、去れとエレンに言われなかった。
「…その子、君の友達?」
少年の見た目からして、この子は天使ではなく人間なのだろう。だからこんな質問をすること自体、おかしいのだが、エレンのこの少年の関係性を知らない明日人は、そう聞くことしかできなかった。
「……違うわ。この子が血だらけで校庭に倒れていたのを見つけて、ここに運んできたのよ。今は、私のエンジェルクロスでなんとか、その命を取り止めているわ」
なんの感情もないままに、二人は話し続ける。そこに、好きという感情も、愛もない。ただ、敵同士という関係だけがそこにあった。
「私のエンジェルクロスは、人を星力という力を持って癒す能力。星力は、人の魂の原動力みたいなものよ。私が名づけたの」
星力は、人の魂の原動力みたいなものだと、エレンは言った。適合率が人の精神だというなら、星力は魂の核ともいえるだろう。
エレンのエンジェルクロスは、その星力を人間の魂に干渉しない程度に吸い上げて、他者に生命を分け与えるという力を持っているというのだ。
「…でも、こんな能力持っても仕方ないわよね。こんな能力があったところで、目の前の子供一人救えないんじゃあ_____神の力なんて、その程度のものよ」
隣にいる彼女は、涙を流していた。顔は見えなかったが、そう明日人は感じた。
だけど、彼女の説明を聞いて、明日人は彼女がいかに優しい天使なのかを改めて理解した。人の核である星力を、人体に干渉しない程度に吸い取るのであれば___それはその気になれば、もっと吸い取れるものだと捉えることもできる。
目の前の子を助けるために、他の人の命を脅かせたりはしない。そんな天使なのだ。彼女は。
「…でも、君は優しいよ。知らない子を、ここまで運んでくれるんだから。それに、君はその気になれば、星力をもっと吸い上げて、その子に渡すこともできるはずなのに、それをしない。君は、どこかの誰かに危害を加えることもなく、この子を救おうとしているんだ。だから、誰よりも傷ついているんだよ___」
エレンは優しいと言う彼を改めて見ると、彼の表情は自分に同情して出来ているわけではないようだ。そう理解したエレンは、鼻から息を吐き出す。
「……でもね、そんな考えじゃいけないのよ。何かを得るためには、その何かを犠牲にしなければならない。この子を救うとなれば、他の人を犠牲にしなきゃいけないのよね__。私ね、あの子たちのような少しだけ残虐な感情が、時折羨ましいと思えるのよ。目的のためなら、他を顧みない。私だったら、他のことを考えて、全然仕事にならないわ」
乾いた笑いで、エレンは__。
「……あぁ、迷ってしまったせいで、この子も星力が尽きてしまったわ。こうなってしまえば、いくら星力をつぎ込んでも無駄ね」
エレンは諦めたように、ため息をつきながら席を立つと、壁に立てかけていた日傘に手を伸ばした。
「……
日傘を持った右手を横に突き出すと、日傘はみるみるうちに二つの刃を持った緋色の剣へと変わり、剣の周りには赤色の石が回っている。
「目の前の魂を浄化しなさい」
刃先を少年に向け、願いをその剣に伝えると、少年は光を放ちながら粒となって消えていく。その中にあった光の玉は、剣に吸い込まれていった。
「……エレン」
明日人は、目の前に起きた出来事にぽかんと口を開いていた。
「魂は、悪霊となる前に浄化してしまった方がいいわ。その方が、この子のためになるわね。まぁ、罪滅ぼしってわけでもないけれど……明日人。ついてきてくれるかしら? 教えたいことがあるのよ」
目の前の少年の魂を浄化したエレンは、どこか嬉しそうに、そして聖女のように微笑んでいた。
***
明日人はエレンによって病院の外に連れていかれ、エレンに抱きかかえられたまま、その六枚の翼でどこかへ向かった。
向かった先はタイの首都、ベトナムのハノイ最大の湖、西湖。エレンたちがそこに着いても、雨は降っていた。そのため、エレンは明日人に日傘を渡すと、湖に足をつけた。
「この世界は、神様に狂わされているわ」
悲し気に踊りながら、彼女はこの世界に対する冒涜の語を言う。夏でもなく、秋も終わろうとしている変わり目で、雨が降っている中エレンは踊り出す。
「そして、サッカーに狂わされている。サッカーは本来、スポーツであるべきもの。お金稼ぎとか、戦争に使われるべきではない。だからこそ、あの人はサッカーを穢している人を消そうとしている。そして、本当に消えたら、サッカーを返す。あの人は皆が本当に楽しいサッカーが出来るようにと思っているようだけど、そんなことじゃあ、また次の悪い人がくるわ。世の中は色んな人が死んでも、その色んな人が補充されて、生きる。残酷な世界よ」
くるくる、ぴょーん、パチャパチャ、そんな擬音が明日人の耳に響く。エレンはドレスと髪が水と雨で濡れても、気にもしない。
「そんな残酷な世界だからこそ、私には世界を変える義務がある。お父様とは違ってね。悪い人が利益を得る世界じゃなくて、色んな痛みを知って、それでいて人に優しくできる人がいっぱいいる世界の方が……理想郷だと、私は思うわ。でも、なんで世界は……こんなに、残酷で、弱肉強食な世界なんでしょうね……」
散々雨の中を踊るエレン。それは、他の人から見れば美しいのだろうか。
とうの彼女は、こんなにも悲しい表情をしているのに。
「明日人……私は思ってしまった。こう結論付けてしまったわ。もう、記憶なんて戻らなくていいの。記憶が戻ったところで、それが世界に何か影響が起きるわけでもない。だからって、アニメみたいに私に何かの力が戻るわけでもない。だから、もう戻らなくていいのよ。探す必要もないのよ。だから私____世界を救うことに専念するわ」
踊るのをやめたエレンは、水面を歩きながら明日人に近づいた。
「…俺、そのままの君でいいと思う。記憶が戻っても、戻らなくても、俺はエレンはエレンだって思ってる。記憶が戻った時の君も見たかったけど___エレンがそういうなら」
近づいてきたと同時に、明日人は自分の意見を言う。
「…ふふふ、貴方は優しいのね____」
すると、エレンは笑う。いつもの彼女のように。
***
エレンは明日人を元いた病院に帰らせると、天界に戻った。今は部屋にいる。エレンは服を変え、気持ちを切り替えた。ケープをモコモコの冬仕様にし、服はいつもの前が短い白いドレスにした。そして、エレンは父親であるフォルセティから貰った仮面を、机の上に置いた。
「エレン」
廊下を歩いていると、後ろからレンに声をかけられた。
「アンシャルの剣…君が持っていたんだな」
「……あら、それが貴方となんの関係があるのかしら?」
エレンはレンに、新しいおもちゃを見せびらかすかのように日傘を持ち直す。
「アンシャルの剣が君を選んだとでも言いたいのか」
「……この剣が、私を選んだ、ね…。まぁ、いい剣だとは思うわ。日傘にもなるし、槍にもなる」
普段は傘にしか使っていないくせにと、この秘宝はそれよりももっと重要な役目があるのにぞんざいに扱っているエレンに対し、レンは眉をしかめる。
「……欲しいのなら、いつでも私に言いなさい。大丈夫よ、お父様からは私が言っておくから」
優しい君に、会いに行きたい。
この小説の中でどのコンビが好きですか?
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜