イナズマイレブン テミスの正義   作:暁月の太陽

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ところで、みなさんは「この作品の続きとかでないかなー」とか、「この作品の続きがあったら、どんな風になるんだろう」って考えたことはありませんか?
まぁ、その考えが、今のこのテミスの正義なんですが……。
私は、よく作品の続きやらオリジナル話などを妄想するので、こういった作品がよく出ます。
この前の夢恋雲神絵だって、亜空の使者の続編を考えて、なおかつ新ファイターの妄想をして、出来上がったものです。(その新ファイターは大体私得のものだけど)
あ、夢恋雲神絵のことは、私のTwitterから見れますので、よかったらどうぞ。
(三次創作は大丈夫ですが、一応私に声をかけてください)
垢はこちら(@yamaitukuyo)


第四十話 歌を唄う少女 後編

「遅くなりましたー!!」

 練習終了時間をとっくに過ぎた、夜の八時のミーティングルームに、飾り気のない声が響いた。彼女たち、夜舞たちはすっかりユニホームが汗だくになるまで練習をしており、その様子は外からも確認できた。

「遅いよ夜舞~」

「ごめんごめん!」

 明日人に遅いと言われながらも、夜舞たちは急いで指定された席に座った。

「これで、全員揃ったみたいだよ」

 全員が出席したことを確認した折谷は、監督であるベルナルドに目配せをする。そのアイコンタクトを読み取ったベルナルドは、手に持っていた資料を読み上げる。

「あぁ、ひとまず、練習をよく頑張ってくれた。ユースティティアの天使との戦いも、激しさを増している。以降も練習を怠らないように。では、早速本題に入ろう。趙金雲、頼む」

「わかりましたぁ」

 ベルナルドが趙金雲の名前を呼ぶと、本人は一歩下がり、趙金雲は前に一歩進んだ。

「実は、練習をとても頑張った皆さんに、とてもいいお知らせがあります」

 趙金雲がリモコンを操作すると、部屋の明かりが暗くなり、代わりに映写機がスクリーンに画像を映した。その画像は、とある人物の写真だったのだ。

「なんとなんと、あの大人気アイドルの憑坐柑奈(よりましかんな)ちゃんが、明日この宿所にお邪魔しまーーーすっ!」

 突然の趙金雲の報告に、明日人たちは驚きを隠せなかった。いや、この中で何よりも驚いたのは、剛陣だろう。

「か、柑奈!? 憑坐柑奈って、あの柑奈か!?」

「はい、そうですよ?」

「ほんとに、ホントだな!?」

 何度も何度も趙金雲に確認を取る剛陣に、明日人は疑問を抱き、質問した。

「剛陣先輩、何か知っているんですか?」

「知っているも何も、お前ら知らないのか!?」

 剛陣が全員に確認をとるも、全員が知らないと答えるだけだ。

「もしかして、憑坐柑奈さんって、君が入院中に見ていたあのアイドルのことかい?」

 アフロディは自分達が入院していたときのことを思い出し、そのときに剛陣が見た人物が憑坐柑奈ではないかと考察したのだ。

「そうだよアフロディ! よく覚えているな!」

「それよりも、俺達にはアイドルのことよりも大事なことがあるんじゃねぇのか?」

「まぁまぁアツヤ。好きな物があるっていいことじゃないか」

 アツヤが剛陣に呆れていると、吹雪がアツヤを落ち着かせる。

「憑坐柑奈はな、伊那国島だけじゃない、日本全国、いや最近じゃ世界にまで進出しているっていう大々々人気アイドルなんだぞ!? やべぇ……サインの準備しねぇと……」

 剛陣は早く明日にならないかとそわそわしており、もはや話が聞けるような感じでは無かった。

「確か、鬼神の弓のエンディングテーマを歌っている、アイドルの柑奈ですよね。確か……」

 すると、氷浦が思い出したように柑奈のことを話した。

「詩人系アイドル、なんだってさ」

「詩人系……アイドルってなんなの? 氷浦」

 明日人は、氷浦の言うその詩人系がよくわからないでいた。言葉の意味はわかるが。

「柑奈さんは、詩とか俳句とかを作って歌うのが好きなんだよ。明日人くん」

「野坂、そうなのか?」

 すると野坂は、動画サイトから柑奈の詩を抜粋し、ミーティングルームにそれを流す。

『月の裏側 僕たちは月と同じ、物事の裏側を知りない だけれども いつか人はきづくだろう 世界の美しさに 三千世界』

 それは、とても綺麗な声と共に紡ぎ出される幻想の世界で、明日人たちは聞きほれていた。

「凄い……とても綺麗だね」

「うん。ところで趙監督」

 すると、野坂は趙金雲の方を向く。

「柑奈さんがここにお邪魔するのって……何か別な理由がありますよね?」

 野坂の指摘に、趙金雲はニヤリと口角を上げる。

「あぁ、その人気アイドルが来るのなら、もっと事前に連絡があるはずだが……」

 鬼道も野坂と同じように、この急な報告に疑わざるを得なかった。

 そして何より、鬼道はその柑奈という人物に見覚えがあるのだ。確か、飛行機で見た、ドキュメンタリーの番組で。

「やはり野坂さんと鬼道さんは賢いですね。そうですねぇ……」

 二人の指摘を受け、趙金雲はベルナルドの方を向く。すると、ベルナルドは構わないと言わんばかりに首を縦に振る。それを見届け、趙金雲は口に出す。

「……実は、柑奈さんは、稲森くんと同じユースティティアの天使から狙われている人間なんですよ」

「ええっ!?」

 趙金雲の説明に、明日人たちは驚いた。

「正確には、ユースティティアの天使から救済を言い渡されているんですよ。柑奈さんは、手紙でそのことを伝えられたようで、私達に柑奈さんを匿って欲しいとマネージャーさんから連絡があったんですよ。もちろん、これは他の人に知られていませんし、ニュースにもなってませんよ」

「確かに……人気アイドルが救済を言い渡されていたら、皆が不安になってしまうからな……」

 豪炎寺は、人気アイドルが救済を言い渡されたことがバレた時の、市民たちの反応を予想し、なるほどと納得する。

「なので、私達で柑奈さんを守りましょう。もちろん、稲森くんもね」

 

 

 

 その翌日、明日人たちは宿所前で柑奈を出迎えた。すると、窓がカーテンによって遮られた黒塗りの車と、警備用のパトカーが並んで宿所前にやってくる。黒塗りの車の後部座席のドアが開くと、ボディガードに囲まれながらも、柑奈が明日人たちの前に姿を現す。

 黒髪の長い髪、クマの耳のようにくくったツインテール、桃色の桜のような瞳は、まさに人気アイドルを象徴とするものだった。

「柑奈さん、早く宿所に向かいましょう」

「はい」

 趙金雲たち大人に連れられて、柑奈は宿所内に入る。明日人たちも、周りに誰もいないことを確認して、宿所のドアを閉める。

 とりあえず食堂に向かう道中で、柑奈は辺りを見渡しながら、坂野上へとその視線を向ける。

「……君、どこかで会ったっけ」

「えっ!?」

 人気アイドルの柑奈から声をかけられ、坂野上はどうすればいいかわからなくなる。その時、アフロディが彼の肩に手を置いて、坂野上を安心させる。ひとまず落ち着いた坂野上は、目の前にいる女の子が、あの公園で歌っていた少女であることを前提に、話を進める。

「えっと、確か公園で会ったんだよね。久しぶり……なのかな」

「うん、すごい偶然」

 柑奈は坂野上に微笑む。しばらく歩いていると、その足は食堂に辿り着いた。

「大丈夫ですか、柑奈さん」

 食堂でホットココアを大谷から渡され、柑奈はそれに息を吹きかける。その間、明日人が柑奈を心配して声をかける。

「ううん、平気だよ」

 しかし、柑奈は平気そうな顔して笑う。それに、明日人は複雑な気持ちになったが、すぐに気持ちを切り替える。 

「ユースティティアの天使に狙われていて、平気なわけないじゃないか」

 フロイは、平気な柑奈に向けて、そのことを指摘する。すると、柑奈はやはりフロイに微笑んだ。

「私のことは問題ないよ。それに、なんだかこういうのって、まるで物語のお姫様みたいで素敵じゃない?」

 ココアをテーブルに置くと、柑奈は立ち上がる。そして、両手を広げて、物語を表現する。柑奈の言っていることは、おそらくユースティティアの天使に狙われているこの状況を、物語で攫われるお姫様として表したものなのだろう。だが、明日人達には、本当に大丈夫なのかと心配をさせる種になってしまうが。

「それと、せっかくの縁だから自己紹介するね。私は七光咲(ななみつさき)。咲って呼んでよ」

 芸名ではない彼女の名前を、明日人たちは聞く。七光咲。彼女の性格によく合う名前だなと彼らは思った。

「ところで咲さん。いつからその救済の手紙が来たんだい?」

 野坂は咲と呼ぶことに躊躇がないのか、すぐに本題に入る。

「えっとね、ちょうど昨日なの。私が公園から事務所に帰った時に、ポストに入っていたんだ」

 すると咲は、鞄から一枚の封筒を出し、その中身を明日人達に見せる。

「これがユースティティアからの手紙……」

 一星が、咲から見せられた手紙の内容を見て、驚きを隠せなかった。

「なんか、私はこれからの地球の未来に必要不可欠な存在なんだって。私の歌で、世界は救われるんだって。変な話」

 手紙の内容としては、咲が救済人として神から選ばれたこと。そして天使に協力ができるのだという内容がつづられていた。しかし、それでも咲はこの状況を楽しんでいるかのような素振りを見せる。

「七光……と言ったか?」

「ん、なに?」

 すると、鬼道が咲に近寄る。

「憑坐柑奈と聞いて、思い出したことがあるんだ。君はこの前のバラエティ番組に出ていたよな」

「うん! 見てくれたの?」

「あぁ、そこで気になったことがあるんだ。バラエティ番組で取り上げられた御伽噺……あれについて、何かほかに知っていることはないか?」

 鬼道の言う御伽噺の話に、明日人たちは首を傾げる。

「おい鬼道、御伽噺ってなんだ」

「あぁ、灰崎。この御伽噺は、もしかしたらテレビ側が作った嘘かもしれないが、実は怪異は、ルシファーという堕天使によって作られた存在と、七光の出ていたバラエティ番組で聞いたが……」

『ルシファー!?』

 あの堕天使の名を持つルシファーの名前を呼んだのは、明日人達ではなく、一星たちの持つ怪異たちであった。

『そ、その話、ルアシェル様の話じゃないんですか!?』

 ヒロトの怪異、叶え蛇は、ヒロトの髪から引きちぎらんばかりにその身を伸ばしながら、ルシファーの話に食いついていた。

「ルアシェル?」

 主のヒロトと同じく、明日人たちはルアシェルという名前に困惑していた。あの怪異を生み出した堕天使は、ルシファーという名前ではないのか? と。

『ルシファーは、ルアシェル様のあだ名だ。本当の名は、ルアシェルだ』

『ルアシェル様はとても美しく、そして知に溢れる人でした。私たち怪異を可愛がってくれましたが、とある魔女の仕業で……』

 すると、一星の怪異である悟蠍、円堂の怪異である颯馬は、泣き出してしまった。彼らの様子から、よほどルアシェルが素敵な(?)悪魔であることがわかる。

「……あ、そうそう。その、ルシファーじゃなくてルアシェル様はね」

 その時、咲は思い出したかのように話し出した。

「専門家の人が言っていたんだけど、ルアシェル様は堕天使で、人のように死後の世界に行かないから、今もこの世界にいる誰かの魂に入り込んで、再び再臨するためのエネルギーを溜めているんだって。そして、ルアシェル様が再臨する時は、その誰かの魂から解放されるんだって」

 咲の言葉に、二匹の怪異は泣き止むのをやめる。よほど主人であるルアシェルが生きていることが嬉しかったのだろう。怪異たちは動物の体を一生懸命に動かして、喜びの感情を表現していた。

『ルアシェル様が生きていらっしゃる!?』

『これはいけません! ヒロトさん、今すぐ全世界を飛び回って、ルアシェル様を探しましょう! ほらほら、ハーツアンロックとスペクトルフォーメーションをしますから!』

「いや、それより大事なことがあるでしょ!?」

 叶え蛇がヒロトに、ルアシェルを探そうと催促するなか、明日人はさすがにルアシェルを探すよりも大事なことがあるだろうと、ツッコミを入れた。

 

 

 

「ルアシェル、ですの?」

 その頃、ミラが支配する日本の国会議事堂の総理大臣室では、ミラとその部下が、ラストプロテクターからこっそり入手した情報である、ルアシェルについてをミラに報告していた。

「ルアシェル……ルシファーの本名。光をもたらす者として生まれ、そして世界から最も脅かされる者に生まれ変わった堕天使……そのルアシェルさんが、怪異という神遺物を生み出した。そういうことでよろしくて?」

「はい」

 ミラはルシファーについての記述がされている『失楽園』という小説を見ながら、部下からの話を聞く。

「うふふ、情報を提供してくださり、ありがとうございます。そろそろ怪異は、私たち天使にとって危険な存在になっていますわ。そろそろ、怪異祓いをしなくてはなりませんわね」

「しかし、怪異は適合者に取り憑いてしまえば、二度と祓うことはできないはずですが……」

 部下の天使の指摘に、ミラは目を細める。

「それなら大丈夫ですわ。怪異祓いなら、アンシャルの剣を持つエレンがいますの。友人として、天使として、エレンにお願いしてみますわ。よろしい、下がりなさい」

 ミラからの命令により、部下は早速部屋からこの場を去る。去ったことを確認したミラは、早速エンジェルクロスを通してエレンに連絡した。

「…………エレン。今はよろしくて?」

『あらあら、何かしら。ミラ』

 エレンは相変わらず元気のようだ。仕事をサボっているのは変わりないが。

「実はラストプロテクターの宿所から、ルアシェルという人物の情報を掴みましたの。なんとそのルアシェルは、堕天使ルシファーの本名で、なおかつ怪異を作り出したというらしいですわ」

『あら……これは驚いたわね。ルシファーが怪異を作り出したなんて』

 エレンが話に乗ったことを確認すると、ミラは早速要件を伝える。

「そうですの、ところでエレン。貴方の友人として、部下としてお願いしたいことがあります」

『何かしら。私に出来ることがあれば、なんでも言ってみて』

「貴方の持つアンシャルの剣で、明日人さんたちの持つ怪異たちを、祓って欲しいんですの。アンシャルの剣は、持ち主を選ぶ剣。そして、持ち主の願いを叶える剣。お父様の願いを叶えるためにも、怪異祓いは有効な手立てだとは思いますが……」

『断るわ』

 エレンの声が、部屋に響く。

 一瞬ミラは頭が真っ白になったが、すぐにどうしてかの理由を尋ねた。

「どうしてですの? 怪異を貴方の剣で殺せば、きっとお父様も喜んでくれるはずですわ。お父様の一人娘である貴方なら、きっとそれを最も望むは……」

『生憎ね。本来なら友達として叶えてあげたい願いだけれど、残念ながらそれはできないわ。怪異を祓いたいのなら、レンに頼んでみてはどうかしら』

 おかしい。とミラは思った。

 口調はいつも通りなのだが、いつもとは明らかに反応が違うのだ。いつものエレンなら、お父様の喜ぶことを積極的にやる天使だったのに。と、ミラは困惑していた。

『……いい? この剣は、持ち主の私『だけ』が望んだ結果しか起きないの。それは、貴方もわかっているはずでしょう? アンシャルの剣を最も欲しがった貴方なら』

「それは……もう私はアンシャルの剣に未練などありませんわ。だから私は、すぐに貴方にその剣を……」

『あら、譲ったというのなら、なぜ貴方にはこの剣が欲しいっていう欲望が渦巻いているのかしらね。私の剣は、そうだって震えているわよ?』

 その声で、ミラは背筋が凍った。

 明らかにおかしい。エレンは、こんな性格の天使ではなかった。義理であろうと、妹のメリーに優しく、たまに友人である自分とレンをからかう、素敵な天使だった。その姿に、少しばかり、憧れも抱いていたというのに。

「………どうしたの言うのです? エレン、貴方はもっと、他人に優しかったはずですわ」

『ふふふ、どうもしてないわ。ミラ。話は以上かしら。なら、私からも話しておくわね。私の持っているこの剣、アンシャルの剣はね、誰かを傷つけるために使うんじゃないの。大切な人を守りたい。そんな思いがあるから、私はこの剣を使えるの。貴方もこの剣が欲しかったら、大切な人のことをもう一度胸に手を当てて考えてみなさい』

 ミラは怖くなり、そのまま通話を切断した。

 

 

 

 咲はしばらくの間、臨時マネージャーとして、ラストプロテクターで活動することになった。もちろん、アイドルとしての活動があれば、そちらも優先する。という形で、ユースティティアの天使から救済を言い渡されている咲を保護することにした。

「な、なぁ七光、サインとかいいか?」

 すると早速、剛陣が咲にサインをねだっていた。

「うん! 今書くね……はい、どうぞ!」

 咲はササッと色紙に名前を書くと、それを剛陣に渡す。剛陣はもはや落ち着かない様子で色紙を眺めている。

 そんな様子を見ていた咲だが、遠くでラストプロテクターの中では知り合いの坂野上を見つけ、そちらの元に行ってしまう。

「まじでありがとな! ななみ……って七光?」

 坂野上はリフティングをしていたが、こちらに向かってくる咲を見つけると、どうしたのと声をかけた。

「あ、咲さん!」

「昇くん、今日は練習?」

「うん! ユースティティアを倒すために、毎日こうして頑張ってるんだ!」

 すると、坂野上は先程のリフティングを、咲に見せる。よっ、ほっ! と、坂野上はリベロらしき軽快な動きで、ボールを自分の意思で動かした。

「凄いね! さっきのリフティングもだけど、サッカー上手いんだ!」

「そうかな……俺だって円堂さんと比べたらまだまだだけど……」

 恥ずかしげに頭を抑える坂野上だったが、とあることを思いついた。

「そうだ! みんなでサッカーしようよ! ほら、今は禁止されてるけど、本当はとても楽しいスポーツなんだよ!」

 坂野上は足で抑えていたボールを自分の手に乗せると、咲にニカッと笑った。

 

 

 

「えっと、これでいいの?」

「うんうん! 似合ってる似合ってる!」

 咲は予備のユニホームを借りて、坂野上とサッカーをすることになった。そのユニホーム姿に、夜舞は似合ってると拍手する。

「えっとね、サッカーのことは明日人さんと円堂さんに聞いて、その後にやってみるって感じかな」

「わかった昇くん! じゃあよろしくね、稲森くん円堂くん!」

 坂野上から紹介され、咲は円堂と明日人からサッカーのルールを聞くことになる。

「俺、あまり説明が得意ってわけじゃないから、簡単に言うね。サッカーは、楽しいという思いが、ボールによって表されるスポーツなんだ」

「楽しい?」

 最初に明日人から話を聞くが、咲はよくわかっていなかったようで、首を傾げている。

 それを見ていた円堂と坂野上は、なんとか咲に伝わるような説明をしようと、目配せで合図する。

「じゃ、じゃあ俺が説明するっ! サッカーは、楽しいんだ! 負けても勝っても、楽しいスポーツなんだよ! 今はユースティティアの天使がサッカーを禁止してるけど、きっとそれが、本来のサッカーなんだよ!」

「え、えっとですね、サッカーは楽しいスポーツで、咲さんにもできます! 負けても勝っても、楽しいのがサッカーなんです!」

 円堂が熱唱するなか、坂野上はなんとか身振り手振りで咲に説明をする。

「そうなんだ! 稲森くんの言ったこと、わかった気がする。円堂くんたちは、本当のサッカーを取り戻すために戦っているんだよね」

 咲は理解出来たようで、坂野上と円堂は胸を撫で下ろす。そして、明日人に「咲さんにもわかるように説明しないと」と小声で伝えた。

「うん。たまに正義ってなんだろうなって思う時もあるけど、俺、やっぱりサッカーが大好きなんだ。大好きなものが出来ないのは、とても辛いことだってわかっているからさ。だから俺は、いや、俺たちの想いをユースティティアの天使たちに伝えるために、こうして戦っているんだ」

 穏やかな表情でボールを見つめながら、明日人はボールを地面に置く。

「じゃあ、まずは見ててね。それっ!」

 明日人は右足を大きく後ろに振りかぶると、ゴールへと地面に置いたボールを蹴った。

「すごい! 前よりもキレがよくなってる!」

 坂野上は明日人のシュートを見て、キレが良くなってると気づく。そして、そのボールはまっすぐゴールへと突き刺さった。

「すごーい!」

「咲さんもやってみて」

「わかった、やってみる!」

 咲は、円堂が新たに貰ったボールを地面に置き、明日人のを真似してボールを蹴る。

「いっけぇ!」

 しかし、ボールの勢いはよかったものの、ゴールポストの上部に当たり、ボールは跳ね返って咲の手に戻った。

「あっ」

「惜しい!」

「あとちょっとだな!」

 円堂と明日人、坂野上は、咲のシュートがゴールに入るよう指導する中、咲のサッカーの相手になる予定の風丸たちは、咲を見ながら話をしていた。

「やれやれ、今度はアイドルとサッカーか。灰崎、手加減してやれよ」

「わーってるよ」

 ストレッチしながら、風丸は灰崎に手加減するよう指示する。

「同じ女の子として、負けられないね!」

「西蔭、相手は女の子だからね。ちょっとくらいシュートさせてあげてね」

 しばらくすると、咲の練習は終わったのか、試合の準備が進められた。試合内容は、四対四のチーム戦で、咲のチームは先ほどシュートやらを教えていた明日人たち。向こうは風丸、灰崎、夜舞、西蔭でチームを作っていた。

「それじゃあ始めます!」

「スタート!」

 大谷が試合開始の合図をすると、咲は走り出した。

「稲森くん!」

「うん! パスがしっかりできてる!」

 明日人はヘタながらもパスが出来たを褒めつつ、プレイを進める。

「咲さん、初めてだけど中々キレがいいね」

「頑張れー!」

 野坂や一星の他にも、多くの選手が咲を応援していた。

「咲さん!」

「うん!」

 坂野上からボールをもらってドリブルするも、風丸が目の前にくる。

「ここから先は行かせないぞ!」

 先ほど明日人から教わったドリブルで、風丸をかわそうと動く。しかし、相手がどこにいくかまだ判断がつかない咲は、なんとなくで右に行こうとした。

 その時、咲の頭に誰かの声が響いた。

 

『ねぇ……ちょっと私に体貸してよ』

 

 その時、咲の意識は無くなり、代わりに誰かの意識が咲に乗り移った。

「えっ……」

 なんと、咲の動きは一気ににプロのものと同等になり、フェイントをかけて風丸を抜け、一気にシュートした。

「ご、ゴール!」

 大谷の声で、咲の意識は元に戻り、目の前の光景に驚いている。

「あ、あれ、私……」

「咲ちゃんすごい! あんな動きができるんだね!」

「負けたよ、七光には」

「え、ええ?」

 夜舞、風丸と順に褒められ、咲は困惑する。自分は何もしていないと言いたかったが、周りに押されて言い出すに言い出せなかった。

 その光景を遠くから見ていた奏多は、天気雨の狐の嫁入りを見て、呟いた。

「……狐が、憑いておるのぅ……」

 

 

 

 少女は狐の歌を唄う。

この小説の中でどのコンビが好きですか?

  • 明日人とエレン
  • 不知火と月夜
  • エレンとレン
  • エレンとメリー
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  • 不知火とベルナルド
  • 明日人と月夜
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