イナズマイレブン テミスの正義   作:暁月の太陽

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この小説を書いてて思いましたが、これって一応二次創作なんですよね。でも自分はよく妄想を吐き出してしまいがちなので、もしかしたら今まで二次創作を作る上で大事な原作リスペクトができていなかったかもしれません。
以後、気をつけたいと思います。


第四十二話 血塗られし過去

 今からちょうど150年前だ。自分は、彼らと同じくらいの年齢の時に、兵士として戦場に駆り出された。昔は意味がわからず、ただ家族を守るためだけに戦っていたが、現代のハーツアンロックを見た今じゃ、なんで自分たち子供が兵士に選ばれた理由がわかる気がする。

 大人たち__主に国の上層部は、子供達の中に潜む焔のような感情、そして潜在能力に固執していたからだ。人工的なハーツアンロックの解放には、子供の方が絶望の刷り込みをしやすい。

「…………」

 この世界におけるハーツアンロックの解放方法は、主に二つ存在する。

 一つは、彼らのように絶望に抗う心による解放。

 もう一つは、無理やり絶望を味合わせ、恐怖感によって解放させるかだ。

 彼らは()()()()()()()前者の方で良かったと奏多は思った。後者の方は、明らかに悪意のある解放の仕方だから。

 

 彼らは、いくら力があろうとも、結局はただの少年少女。

 だが、それでもこの世界の偉い人間は、彼らを利用して、己の利益のために動かすのだろう。

 例えば、実験によって無理やり解放させて、ユースティティアの天使に対抗する希望にしたり。だがそれも、用が無くなればただの兵器だ。

 結局、何も変わらないのだ__。

 150年経った今でも。

 

「奏多さん」

 先程までしていたハーツアンロックを解除し、腕輪を付け直す奏多を見つめながら、一星は尋ねた。

「……なんだ」

 もう、口調を直すつもりはなかった。

 自分が最凶のハーツアンロックを持つ人間だと知られてしまった今、こうやって繕う必要もなくなったのだから。

「最凶のハーツアンロックって、なんですか。どうして奏多さんのハーツアンロックで、多くの人が死んでいったんですか。一体、第三次世界大戦に何が起きたんですか」

 一星は、ミラたち天使が去る以前に言った言葉が気になっていた。

 破壊の道具。

 最凶のハーツアンロックの存在。

 そして、それによる大量の死亡者。

 一星にとって第三次世界大戦のことは、社会の課題で改めて知った。海外の大規模戦争であり、日本はこの戦争とは無関係であったこと。そのため、第二次世界大戦とは違って、あまり印象には残らなかったこと。

 その第三次世界大戦に、何が起こったのだ?

「質問は一つにまとめておけ、光。まぁ、子供一人守れなかった俺が言うことではないだろうが……」

 だが、奏多は一星を冷たく突き放した。

 まるで、人間兵器である自分から、罪のない人を遠さげるかのように。

 だが、人には何かしらの罪があるのだ。

 ただ、それがあの者たちとは違って、純粋で無垢な罪だっただけだ。

「……全くだ」

 彼、灰崎は拳を震わせながら、想いを零した。

「なぁ、アンタが本当に人間なのかは関係ない。ただ、なんでアンタがその最凶のハーツアンロックっていうもので沢山の人を殺したのかが疑問なんだよ。それと、今までハーツアンロックが秘匿されてきた事と、何か関係があるんじゃねぇのかよ」

 奏多の後ろで拳を震わせている灰崎は、怒りで頭がいっぱいになろうとも、今はただ奏多から何があったのかを聞き出さねばならないと感じていたのだ。

「……あぁ。俺はこの最凶のハーツアンロックで、多くの人を殺してきた。そして、世界はこのハーツアンロックの存在を秘匿し、最初からなかったことにした。これが、ハーツアンロックが破壊の道具と言われる所以だ。音無という少女が言っていた、闇の力の意味も、これにあるだろうな」

 多くの人を殺してきた奏多は、人の目をしていなかった。漆黒のような闇を閉じ込めた、青い目で、灰崎達を見つめていた。

「……全て話そう。俺の過去を含めて、今何が起きているのかを」

 

 

 

 

 咲の代わりにユースティティアに捕まった明日人は、天界のどこかにある一室に飛ばされた。白を基調としたインテリアと、小さな窓がひとつと___窓全体は大きいものの、どこか開放感がない部屋だ。

「さぁ、今日からはこの部屋でお過ごしください。その前に……」

 ミラが指をならすと、どこからか部下の神父が現れ、明日人の服をギリシャの民族衣装のような服装に変えた。

「この天界は神聖な場所ですから、この服はお預かりしますわ。それでは、救済の時間までゆっくりしていってください」

 ミラが明日人の私服を持ちつつ、にこやかに笑った後、部屋のドアが固く閉じられる。おそらくスマホも着替えさせられるときに取り上げられただろう。どこにもスマホがない。今のところ連絡手段がないため、仕方なく明日人はベッドに横たわった。

「(救済って一体どんなことをするんだ……? 洗脳って感じじゃなかったし、何か儀式でもするのかな……)」

 明日人は小さな頭を巡らせて、ユースティティアの天使がいう救済がどんなものかを推測する。しかし、野坂のように会話の一つ一つを覚えている訳では無いため、救済したら人は救われるということしかわからなかった。

 頭をかき、とりあえず紙にまとめようと起き上がった時だ。ドアが勢いよく開かれ、そこから現れた人物によって、明日人はベッドに押し倒される。

「アストーー!!」

 赤い髪にかけられたオレンジ色のグラデーション。メリーだ。先程まで奏多によって倒されていたはずなのに、いつの間にか元気になっている。いや、そんなことを考えている暇はない。

「やっと救済を受ける気になったんだね! 良かったぁー!」

 メリーは笑顔で、ただただ、救済を受ける気になってくれて良かったとばかり言っている。

「ね、ねぇ……」

 とメリーに言いかけたところで、明日人は前に趙監督に言われたことを思い出す。

『もしユースティティアの天使に捕まったら、なるべくユースティティアの天使やらフォルセティなどの情報を聞き出してくださいね? まぁ、捕まった場合ですが』

 趙金雲からは冗談くらいに言われていたことだが、まさかこういうところで役に立つとは思わなかった。仮にも自分は救済人であるということを考慮しつつも、明日人はメリーに聞き出した。

「……メリー」

「なに〜?」

「救済って、どんな感じなの?」

「えっとねぇ」

 明日人から救済のことを問われるとは思わなかったのか、メリーは必死に頭を巡らせて、救済の内容をどうにか思い出そうとする。

「救済はね、お父様の加護の中、天使同士で行われるの。私は、あまり救済の儀式に呼ばれないからよく分からないけど、とにかく凄いんだよ! 今度貴方も救済されるから、楽しみにしててね!」

「う、うん……」

 楽しみにしろと言われても、楽しみにできるわけが無い。どんなことされるのか分からないから。

「救済された人はどうなるの?」

「えっと、その人自身が抱えていた本心と基質、そして性格が清められて、魂の中に溜まりこんでいた真っ黒いものが取れるの。とっても清々した顔をしていたんだって」

 真っ黒いもの__。

 負の感情だろうか? と明日人は推測するも、それが何なのかは未だに分からないため、真っ黒いものの正体は次に考えることにしよう。

「じゃあさ、メリーは……」

『メリー』

 明日人が次の質問に行こうとしたその時、開きっぱなしだったドアの方から、レンの声が響いた。

「レンお兄様?」

「今の時間帯だと、君はまだ対話の時の担当ではないだろう。今は怪我の治療を最優先にすべきだ」

 レンから、対話の時という単語が出てくる。

「えっと、対話の時って?」

 それが気になった明日人は、メリーに聞く。

「対話の時は、天使が救済人と話をする時間だ。救済人が必要であるものは、可能な限り用意し、救済までの快適な時間を送らせるものだ」

 だが、メリーの代わりにレンが答えてしまった。レンだと、妙に圧があるため、メリーのようにすらすらとは話しにくい。

「そうなんだ……」

「次の担当は私だ。二時間の休憩後、そちらに向かう」

 レンはそれだけを言い残して、その場を去った。

「……私、まだアストと話したりなかったけど、ごめんね。これも掟だから」

 メリーは明日人から離れると、ドアの前に向かう。

「バイバイ、アスト!」

 友達と別れる時のように手を振るメリーに、明日人も手を振っていると、ドアは閉められた。

「えっと、確か救済は__」

 ドアが閉められたことを確認した明日人は、情報をまとめるため、紙とペンを探そうと部屋を歩く。

 その時だ。

『明日人』

 声が響いた。レンのでも、メリーのでも、ミラのでも、エレンのでもない声だ。

 その声に明日人が振り向くと、そこには白い狼が立っていた。

 

 

 

 

「日本奪還計画……?」

 奏多の口から、まず最初に出てきた言葉。日本奪還計画。

「あぁ。今日この日、ユースティティアの天使と人類が戦い、天使に支配された日本を取り戻すというものだ。もちろん……その主戦力として、お前たちのハーツアンロックも、本来ならば戦場の東京へ使われる予定だった」

 奏多曰く、この計画は日本がユースティティアの天使に支配された日以来、長い年月をかけて計画されたものであり、一度実行してしまえば、二度とユースティティアの天使には通じないだろうということで、失敗が許されなかった計画だ。

 だが、日本にいるはずのユースティティアの天使がこのタイにいるということは、計画は失敗してしまったのだろう。

「どうしてこのことを俺たちに話さなかったんですか? 日本を取り戻したいのは、俺達も同じです」

「そうだ! 話してくれれば、俺達もその計画に協力するつもりだ!」

 坂野上が前に出ると同時に、剛陣も前に出る。

「確かに、失敗が許されなかったというのなら、尚更俺たちをその計画に参加して、成功する確率を上げた方が確実だ」

 戦術を考える野坂ほどではないが、西蔭も計画に参加した方が良かったのではないかと、意見を述べる。

「…………これを見れば、嫌でもわかるだろう」

 奏多が袴の裾からスマホを取り出すと、画面を操作して、とある動画を彼らに見せた。

「こ、これはっ……」

「杏奈ちゃんっ……!」

 大谷たちは、動画内で起きていることに驚愕する。

 動画内では、多くの戦闘技術を扱った軍たちが、ユースティティアの天使たちによって完封されていたのだ。

 それも、ミラ一人の手によって。

「これにより、ハーツアンロックがユースティティアの天使を倒せる唯一の方法であり、ハーツアンロックがいかに使い方によって薬にも毒にもなる存在であることがわかっただろう」

「で、でもそれなら尚更俺たちが日本に行ってれば__」

「駄目だッ!」

 奏多の目が見開かれ、氷浦の行動を制限させるかのように声の圧をかける。

「いいか、俺はお前たちの手を汚させたくはない!」

 奏多の怒鳴り声により、辺りが静まり返る。その空気を破ったのが、夜舞だった。

「奏多叔父さん……私知りたいよ。ハーツアンロックの本当の意味も、第三次世界大戦に何が起こったのか。そして、どうして貴方がそこまでして私達を守りたいのかを」

 夜舞は自身の赤い目で、必死に奏多の目を見つめる。

「だが、この真実を知ってしまえば、お前たちはハーツアンロックを手放したくなるかもしれない」

「それなら大丈夫だよ。ここにいる皆が証明してくれる。そうですよね、円堂先輩」

「あぁ……奏多さん。俺たちはたとえハーツアンロックがどんな力だろうと、絶対に扱い方を間違えない。だから、話してください。奏多さんの過去を」

 円堂が頭を下げる。それは周りも同じで、奏多はそれをただ見つめていた。

「……わかった、話そう。少し長くなるが、いいか?」

「構いません」

 

 

 

 

 もう二度と語ることは無い。

 そう思っていたのに。

 あの記憶は、自分自身の血塗られた記憶であり、自分がなぜ最凶(奏多)と呼ばれたのかの、始まりの物語でもあった。

 だからこそ、この記憶は胸に閉じ込めておくべきであった。

 どうせ__話したところで誰も信じてもらえないんだから。

 だが、目の前の子供たちは、この話を聞きたがっている。

 それは、単なる好奇心ではないようで、奏多は少し、戸惑う。

 彼らは、全てを受け入れるつもりなのだ。

 自分の、血塗られた物語(過去)を。

 まぁ、一星から話は聞かせてもらってはいたが、彼らはどんなことがあろうと、仲間だと、何もかもを受け入れる。受け入れるにしても、必ず受け入れられない事実とかはあるはずなのに、彼らはそれらを一切感じさせない。本当に、自分を仲間だと思っているようで、少し嫌な気持ちになった。

 自分を含めた大人たちは皆____己の目的のために、彼らを利用しているだけに過ぎないというのに。

 どうして彼らが、そこまで人を信じられるのか。

 ずっと、不思議で仕方なかった。

 

 ***

 

「お前たちは生まれていないし、お前たちの祖父母もまた、生まれてはいない、そんな昔の話だ。

 この時の俺はまだ、人間だった。だから、50年前の時点で、とっくに亡くなっているはずだった。だが、これから話すハーツアンロックの実験によって、俺は人としての尊厳と権利を失うことになってしまった。もちろん、これは誇張ではないし、これから話すことは、全てが本当だ。それでも聞きたいというのなら、俺は続きを話そう。

 150年前、俺は人間として、夜舞奏多として、花伽羅村で育ってきた。当時の花伽羅村は、まだ疫病の感染者を隔離するための村だと政府から認知されていたからな。あまり外との交流はなかった。それでも、俺は幸せだったんだよ。自分と同年代の友達と遊んで、家族と食事をする。そんな当たり前のことが、幸せだったんだ。それは、今でも恋しい。

 そんな中、俺に一通の手紙が届いた。

 当時起こっていた、戦争の兵士として、俺は選ばれたんだ。それは友達もそうだった。皆、驚いていたよ。

 外との交流が少ないから、今日本でなにが起きているのかもわからなかったし、戦争が起きているだなんてことすら知らなかった。やけに飛行機が多いなとは思ったが。

 外で戦争が起きている。そのことを、俺は手紙で知った。

 まだ年端もいかない中学の頃に任命されるということは、よほど危険な状態に追い込まれているのだろうか。と思って、俺は家族を守るために戦争に行くことにした。俺はちょうど子供達のリーダー的な存在だったから、友達も、同級生も、俺の説得によって、家族を守ろうと意気込んでいたよ。

 俺たちは家族から見送られながら、日本の軍事施設へと向かった。日本を守る軍だから、きっと銃を持って戦うのかな。って思っていた。

 だが、実際は違った。

 士官らしき人は言ったんだ。ハーツアンロックのことを。

 ハーツアンロックは、神と同等の力を手に入れることのできる、日本だけにしか許された能力。その能力を利用して、この戦争に勝とうと言った。

 だが、ハーツアンロックの所持者は日に日に減少していっている。そこで軍と政府がとった行動はなんだと思うか?

 …………そう。人工的に、解放することだ。まぁこの話は後ですることにしよう。

 それでサッカーの話になるんだが……どうしてサッカーの話になったかと? それはだな。150年より少し前に、サッカーは必殺技というものを見つけた。普通じゃありえないことを、普通にできる。これを、国は()()()と名付け、このサッカーを受け入れた。

 だが、その必殺技は、ハーツアンロックと同じく、兵器に使われることになった。

 当時はまだサッカー協会が必殺技の規定を定めていなかったからな。なんでもありだったんだろう。だから、戦争の道具としても扱えたんだ。そして、今みたいに必殺技も、手加減などできなかった。

 炎さえ出せば、街は火事にもできた時代だったからな。

 そして、日本はハーツアンロックと、必殺技を組み合わせた最強の軍隊を作り、この戦争に勝とうとしていた。

 先程も言ったが、当時のハーツアンロックは、お前たちのように心による解放ではなく、人工的に、機械による強制解放でしか、解放はできなかったんだ。

 だが、それは非道そのものだった。

 ハーツアンロックは闇の力。

 それを何と勘違いしたのか、軍は人としての感情、そして尊厳を無くすことによって、闇の力を手にすることが出来るものだと思ったんだ。

 そこからは、非道の毎日だった。

 感情の希薄を進行させるために、上層部からの暴力は当たり前だった。中には、本人の目の前で、家族を殺したりもしたらしい。これ以上は私の口からは言えないな。お前たちの教育も悪いしな。

 まぁそんなことをされても、俺たちはお互いを支え合って生きてきた。

 それでも、せっかく解放したハーツアンロックも、絶望と闇の力が許容範囲を超えて、ダークアンロックとして解放されたこともあった。その度に、また軍は新しい実験体を用意しての繰り返しで、仲間は消えていった。

 家族も殺され、友達も殺された。

 俺は、友達をここに連れてくるのは間違いだったのではないかと後悔したよ。

 あの時、俺が説得しなかったら、友達が殺されることもなかったんじゃないか?

 もっと強くなりたかった。

 もっと、強くなりたい。

 そんな考えがいつまでも浮かんで、俺は絶望に飲まれて___。

 ハーツアンロックを解放した。

 最凶のハーツアンロックとして。

 一人だけ、俺は生き残れたんだ。

 ダークアンロックでもない、正当のハーツアンロックとしてな。

 それで、ハーツアンロックを解放した俺は、兵士として、人間兵器として、多くの人を殺していった。どんなことをしたのかはあまり俺の口からは言えないが、普通に人を殺すことは当たり前だったんだ。当時はな。

 何人を殺しただろうかも、考えられなくなっていたんだ。

 それだけ、俺は感情が希薄になってしまっていた。

 だけど、ハーツアンロックを解放しても、俺への実験は続けられた。今度は、兵器としてどこまで強くなれるかを、俺の体を使って散々に実験させられた。

 四肢を人間兵器用に交換させられて、何かも分からない薬を飲まされて、心臓を二つに増やされて、俺は、俺は……。

 ……すまないな。少し乱れてしまった。

 実験に実験を重ねた俺だが……それからの記憶はないんだ。

 もう、人として考えることを無くしてしまったからな。

 ここからは、俺をほんの少しだけ人間に戻してくれた()使()から聞いた話になる。

 俺は、一瞬のうちに千人の人を殺せるほどに強くなった。

 だが、強くなりすぎたんだよ。

 もう体は、人を殺すことに快感を覚えて、殺すのをやめられなかった。戦争が終わった後でもな。

 それを軍と政府は想定していなかったかのか、俺を殺そうとした。だが、俺はどんな兵器も通じなかった。強くなりすぎたんだからな。

 もう、守るべき人もいないのに。

 そして、天使が俺を人に戻してくれるまでに、俺は5000万人の人を殺していたんだ。

 ……もう、後悔することもなかった。

 あぁ、自分は人間じゃなくて、兵器なんだって思ったよ。

 それから俺は、逃げる……いや、無感情のまま、この日本を去った。自分はもう日本の人間だという資格はないと思っていたわけじゃない。ただ、もう兵器となった自分に、居場所なんてないんだってな。

 そして___俺は軍によって殺されたということで、この大量惨殺戦争は終わった。そして、自分たちがこの兵器を生み出したということを知られなくなった世界の偉い人達は、ハーツアンロックのことを秘匿した。

 メディアに根回しして、ハーツアンロックは、最初から存在しなかったことにしたんだ。あんなに、多用していた癖に。

 それから俺は、何とか天使からもらった人間としての心を持って、今を生きている。

 5000万人の人への償いもあったが、俺は俺のために生きることにした。

 サッカーを教え、その気になれば騒動を解決する仲介役となってな。

 まぁ、それも、結局はただの兵器である俺の自己満足なのだがな__」

 

 

 

 

 奏多の予想通り、彼らは驚いていた。

 目の前の人が人間ではないこと。約5000万人の人を殺したこと。第三次世界大戦とハーツアンロックの関係など、彼らの脳内はそれらのことで埋め尽くされていた。

「今のが150前の全てだ。といっても、まだ解明されていないことはある。何せ第三次世界大戦は、多くの謎を残して終戦したからな。まぁそれも、メディアの根回しだが……」

「……奏多さん」

 円堂は奏多に声をかけようとする。しかし、あまり声が出なかった。それもそうだ。恐怖、怯えなど、負の感情が脳内を埋めつくしていたんだから。

「どこかの国の政府は言った。ラストプロテクターのハーツアンロックを使えばいいとな……そして、最凶と呼ばれた俺のハーツアンロックを主軸に、ユースティティアの天使を駆逐するとな……」

 冷静に言う奏多に反して、彼らは困惑と同時に、恐怖も感じていた。文字通りこの場が戦慄したのだ。自分たちが生まれていない間、そんな非道的なことが起きていたのかという恐怖感もあったが、何よりそんなことを密かにやっていたなんてという国に対する不信感もあった。

 だが、最も動揺したのは円堂だろう。

 力のあるハーツアンロックが闇の力だということを聞き、円堂はその闇の力を上手に扱えるよう、危険のないように豪炎寺と鬼道と共にルールを作り出したのだ。だが、そのルールもこの世界では、通用などしなかった。

「俺は、お前たちを兵器にしたくない。もう、あのようなことをさせたくない。お前たちの手を汚させたくない。お前たちには、自由にサッカーをしてもらいたい。それだけだ………」

 奏多が眼を瞑ったその時、向こうから声が聞こえた。

「奏多さん、ですよね?」

 声をかけた人物は、黒服を身に纏っており、いかにも偉い人の部下と言う感じの風貌だった。

「そうだが……?」

「少し来てもらいます。そこの皆さんも」

 

 

 

 

「えっと、君は?」

 部屋の中は、明日人と狼以外いなかった。そのため、静寂が部屋を包んだ。

『僕は暁月。といっても、この怪異の名前じゃない』

「どういうこと?」

『この狼を通じて、僕の意識と君はこうして、話ができているんだ。だから、僕は暁月という人間の魂。この狼は、僕の体みたいなものだよ』

 明日人はとりあえず、この狼の体は、暁月の体のようなものであり、暁月は怪異本人ではないということを頭に入れ、話を続ける。

『……君は、稲森明日人。ラストプロテクターのキャプテンで、エレンに恋してる』

「こ、恋はしてないと思うけど……」

 顔が真っ赤な明日人は誤魔化そうとするも、暁月にはバレバレだった。

『そんな君に、こんなことを頼むのは気が引けるし、君を傷つけてしまうかもしれない。でも、聞いて欲しいんだ。とても大事なことだから』

 暁月は言い放った。

 

『エレンを、止めて欲しい』

 

「えっ……」

 明日人は、頭が真っ白になる。

『エレンは今、この世界にある光と闇を集めている。それを集めて何をしようとしているかは、だいたい予想ができる。エレンは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ』

「エレンが……?」

 確かに、エレンは言っていた。

 父親とは別の形で、世界を救うと。

 だが、それが彼女が望む世界を救う方法なのかと聞かれたら、すぐには答えられない。

「……エレンは、この世界のことを愛しているんだよ。だから、この世界を捨てるなんてことはしない。もし世界を再構築しようとするなら、きっとなにか理由があるんだよ」

『……そうだよね。やっぱり、君は、君だ。エレンのことが、大好きなんだね。………うん、説明するよ。僕は………』

 

『君の、前世なんだよ』

 

 

 嗚呼__止まらない。

 闇が、血が。

 

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  • 不知火と月夜
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