王城の広場ともいえる中庭では、円堂たちが捕まっており、これから来るであろう処刑を待っていた。逃げようにも縄で腕を拘束されており、一人でも逃げれば一人殺すと脅されていたため、逃げることは許されなかった。
「では、一番前に出ろ」
「……はい」
一番と呼ばれた夜舞が立ち上がると、後ろから目隠しを施され、兵に連れられて処刑台へと歩く。方法は絞首刑であり、昔の処刑に使われていそうな木造の台に吊り下げられた輪っかに、夜舞の首が通される。
今自分が立っている地面がなくなったら、自分はどうなってしまうのだろうか?
そう考えるほど、目の前にある死について考えさせられる。
考えるな。
死を考えては怯えるだけだ。
そう自分を制するも、死への恐怖を中学生が拭えるはずもなく、ただ刻を待っていた。
「……明日人くん」
ぽつりと零した言葉を兵が気にする訳もなく、足場が動き始めた刹那。
「夜舞!」
明日人の声が脳内で響く。その瞬間、兵の悲鳴と共に、木造の建造物が崩れる音がした。夜舞は目隠しをされて見えていなかったが、円堂たちにとっては、それはまるで閃光のようだった。
若干明日人の面影がある銀髪の少年のの姿が見えた一瞬、少年はすぐに稲妻のような素早さで兵を気絶させ、おまけに絞首台を壊して夜舞を助けたのだから。
「明日人くん!」
目隠しと縄を外された夜舞は、現在自分を抱き上げている人物を見て、すぐに彼に抱きついた。
「助けにきてくれたんだ……!」
抱きつかれるとは思っていなかったが、明日人は「大丈夫だよ」と夜舞の背中を撫でながら、彼女を地面に降ろした。
『明日人!』
円堂たちの目から、希望の光が見える。
「今助けるよ、皆!」
明日人は刀の
『
稲光のような速さで円堂達を走り抜けると、一瞬にして彼らを捕らえていた縄は解け、地面には斬られたであろう縄の切れ端が落ちていた。
「凄いじゃないか明日人!」
「明日人くんもハーツアンロックしたんですね!」
円堂と一星は、明日人が助けに来てくれたということに嬉しさを感じており、目からは涙が滲んでいた。
「あれが明日人のハーツアンロックか!」
圧倒的な素早さと、力強い攻撃力を持つ明日人のハーツアンロックに、剛陣は心が驚きと好奇心に跳ねる。
「凄いな……まるで、誰かの為を思って解放したみたいで、心が暖かいよ」
氷浦は明日人のハーツアンロックを、誰かを守りたい、この手で受け止めたいという想いが伝わってくると表現する。
「稲森……お前なら、チームを任せられる」
鬼道は、ハーツアンロックをした明日人を見てこう考えた。
どこで自分たちが危ないと理解したのかは分からないが、それでも、来てくれて嬉しかったという思いがあった。
ユースティティアに捕まって、怖かったはずだろう。
だがそれでも、明日人は来てくれた。
そして、自分たちを守った。
ハーツアンロックが何であるかというのを理解している明日人なら、このチームのキャプテンは任せられる。
今の明日人には、彼らを引っ張るリーダーとしての気高さを感じていたのだから。
「な、なぜだ……? ラストプロテクターのキャプテンがここに来ることも、ハーツアンロックをしてくることも予測していなかったぞ!」
処刑現場を見ようと椅子に座っていた王は、動揺のあまり立ち上がり、明日人に向かって歩き出す。
だが明日人は、仲間を危ない目にあわせたはずの王に剣を向けることはせず、ただ目で訴えかける。
「……王様。俺は先程のように、ハーツアンロックを兵器としてではなく、仲間を守る為に使いました。貴方にどんな境遇があるかは存じませんが、このように強大な力をちゃんと理解し、誰かのために使う人も居ることも知ってください。お願いします」
「戯言を……行け! 我が親衛隊よ!」
しかし、王は明日人の説得に聞く耳をもたず、護衛の人間たちを呼び出し、明日人たちの周りを囲みだした。
それは一歩一歩と歩んでいき、明日人たちはその度に後ずさりし、次第に体が密着していく。
「まぁ、このまま倒してもいいが、ハンデをやろう。ここはひとつ、サッカーで勝負だ。お前たちが勝てば、今回のところは見逃してやろう。だがお前たちが負ければ、ハーツアンロックのエネルギーを我がものとさせてもらうぞ」
王の考えは、明日人のハーツアンロックを見ても変わらないようで、相変わらず傲慢な態度でハーツアンロックを自分のものにしようとしてくる。
「そう……ならば、儂らが勝ったら見逃してくれるかのぉ」
老人語で話す青年の方を向くと、そこには奏多が立っており、いつものように扇子で口を隠していた。
「奏多さん!」
「明日人……ハーツアンロックを習得した以上、お主は絶対的にその力の制御をしなくてはならん。そして、使い方を誤らぬよう、この試合で修行をつけるといい」
「____はいっ!」
***
試合は王城の地下にあるサッカーコートにて行われた。そこには実況の角馬王将はいるものの、観客はおらず、試合は秘匿に行われた。
試合形式は三十分の前後半なしだ。しかし、負ければハーツアンロックの技術、そしてエネルギーが王たちのものとなってしまう。もし王たちのものになってしまえば、きっとよからぬことにエネルギーを使われるに違いない。それだけは避けるため、明日人たちは目の前の試合の準備を行っていた。
『皆、気をつけて欲しい。明日人の体はまだ、ハーツアンロックに対する浸透が上手くいっていない。だから、今の状況で明日人がハーツアンロックできる時間としては、累計で
ハーツアンロックを一度解いた明日人が試合の準備をしていると、暁月は狼の姿を纏ってラストプロテクター全員の前に現れ、明日人のハーツアンロックの説明を行った。
「五分、随分短いんだな……」
砂木沼は五分という文字に対して、顎に手を当てた。
「まぁ、急じゃったのだろうな。光&ヒロトなどのハーツアンロックは、基本的には怪異を通して擬似的に行われるものじゃ。どうやら明日人のハーツアンロックは、怪異を通してではなく、その明日人が持っているデバイスによるものじゃろうな。明日人、少しポケットの中身を見せてはくれんかの」
「わかりました」
ユニホームに着替えるために畳んだ私服のポケットから、明日人はひとつのキーホルダーを取りだした。
「……ふむ」
それを見て、奏多は興味深そうに目を細める。
「そのデバイスには、先程の怪異の力が込められておるな。地上の秩序を保つ怪異が、そのような変化を行った例は見たことがないが、恐らく明日人の怪異は特別なのじゃろうな。じゃからこそ、少ししか変身できないのじゃよ」
「そうなんですか……」
明日人はチラリと暁月の方を見つめる。
『僕もなるべく変身時間を伸ばせるよう頑張ってみるよ。だから、明日人は試合に集中して欲しい』
「分かった。でももし危険になったら、その時はお願い」
明日人はキーホルダーをユニホームのポケットに入れると、試合を始める.
GK 円堂守
DF フロイ・ギリカナン
夜舞月夜
坂野上昇
MF 稲森明日人
野坂悠馬
一星光
鬼道有人
FW 豪炎寺修也
吉良ヒロト
灰崎凌兵
ラストプロテクターのチーム編成が決まったのを確認した審判は、試合開始のホイッスルを口に咥え、明日人たちに緊張感を与える。
敵の親衛隊は、それぞれが普通の少年少女の姿をしており、とても王を守る親衛隊のようには見えなかった。その中でも特筆すべきが、長くて白い髪に、白にも近い水色の目をしたキャプテンの少年だ。
「……あの子」
そのキャプテンの容姿を見た咲は、思わずベンチから立ち上がった。
「どうしたんですか? 咲さん」
「杏奈さん……大丈夫。ちょっとあの子が私の知り合いに似ていたから、まさかと思ったの。でも、ちょっと違ったみたい」
咲が杏奈に向けてチロッと舌を出すと、試合は始まった。
試合開始からしばらくの間、親衛隊は明日人たちのプレイングに手も足も出ない様子だった。フェイントも甘く、パスの軌道も読みやすい。まさか、サッカー初心者なのかとも疑った程だ。しかし、そんな彼らの中でも唯一ラストプロテクターに対等で戦えたのが、先ほど咲が知り合いに似ていると言ったキャプテンの少年だ。
「あの子、中々やりますね! 豪炎寺先輩!」
「あぁ、油断ならない相手だ」
ボールを運んでいた豪炎寺がボールを奪われたのだから、実力は高い方だろう。彼は確実に前方へと進んでいる。
『おおっと! 親衛隊のキャプテンの
だが、実況は彼をアーロンと呼んだ。それに、咲は心臓が跳ねる。
「(……あの実況の言っていたとおりなら、なんでアーロンはあの親衛隊にいるんだろ……)」
どうか同姓同名の別の人物であって欲しいと咲が願う中、試合は進んでいった。
その時、親衛隊のイレブンバンドに通知が届いた。
『ハーツアンロックを使え』と。
「……断る」
しかし、彼___アーロンはその指示に逆らい、シュートの体勢に入った。
『刹那的クロック』
ボールを軽く蹴って宙に浮かせたアーロンは、そのボールが地面に落ちる刹那に、刃のように鋭い蹴りで、何度も何度もボールに力を込めた。そして、いい具合になったアーロンは、ボールに背を向けて指を鳴らし、シュートする。
彼の髪が一瞬にして後ろに靡くほどの速さを持つシュートを前にして、坂野上がブロックする。
「させるか! 旋風のトルネード!!」
巨大な竜巻にアーロンのシュートは巻きこまれ、勢いを殺していく。すると、ボールは竜巻の頂点に打ち上げられ、地面に落ちたボールを坂野上の足で止める。
『止めたァーーー!! 坂野上、アーロンのシュートを止めましたっ!』
「やった!」
坂野上がガッツポーズをする中、アーロンはベンチにいる咲を横目で見ていた。
「……咲さん、すみません」
一人でアーロンは咲に謝罪すると、またイレブンバンドに通知音が鳴る。
『ハーツアンロックを行え』
しかし、その命令にアーロンはまた無視を行う。
「あれは人工……人工は本物のハーツアンロックには勝てません。ましてやそれを、貴方の勝利に貢献するような道具に使うとは、いくぶん無謀です」
イレブンバンドの通知をミュートにした彼は、持ち場に戻る中、右手で少し指を鳴らしていた。何者かに合図を送るかのように。それが何を意味しているのかはわからないが、明日人たちは気にせず試合を進めることにした。
「……アーロン」
咲たちが試合を見守る中、親衛隊の空気は変わっていた。まるで、キャプテンの彼を排除しろと、王に言われているかのような。
『明日人、敵の空気が変わったみたいだ。気をつけて』
「あぁ!」
ボールをドリブルして走る明日人に、アーロンがボールを取ろうと迫ってくる。負けじと明日人が走り去ろうとしたその時だ。
「オラァッ!」
何者かのスライディングによって、彼が転倒した。明日人が驚いて周りを見ると、どうやらスライディングをしたのは親衛隊の中では巨体の少年であり、アーロンは自分と間違われてスライディングされ、転倒したのかと明日人は察した。
「だ、大丈夫!?」
「……はい。どうやら僕は、少し相手を見誤ったようです」
明日人は一度ボールをコートの外にやり、試合を一旦止め、彼に付き添った。
コートの外に出された彼は、マネージャーがいない中、一人で足の怪我の応急処置を行おうとしていた。
「手伝うよ」
すると、咲が彼の前に現れ、彼の代わりに応急処置を行った。マネージャーになってから少ししか経っていなかったが、それでも習ったことを活かして、彼女は彼の看病をした。
「ねぇアーロン。君は、あの親衛隊のキャプテンなの? 私からは、君がなんでここにいるのかはわからないけど……どうしてなの?」
「……今はとある事情でここにいます。貴方に迷惑をかけてしまったことはお詫びします。ですが、今は少しだけ、待っててください」
すると、アーロンはまだ処置が終わっていないというのに、その場に立ち上がったのだ。
「僕の恩師のため、今は黙って試合をするわけにはいきませんから」
そして、ゲートへと歩いていった。
「……アーロン?」
『なんとぉ! ここでキャプテンのアーロン、試合を辞退すると監督に申し出ました! これは一体どういうことでしょうか!?』
なんと、アーロンは試合を辞退し、試合から退場してしまったのだ。それを見た王は、仕方なく代わりを用意し、十一人で試合を再開させた。
試合再開後は、ラストプロテクターがボールを支配していた。だが、親衛隊の方で王からの通知が届いた瞬間、彼らの動きが変わった。
『……ハーツアンロック、起動』
親衛隊がユニホームに隠された宝石を起動した直後、親衛隊全員が、簡易的な鎧に包まれた。しかし、それは明日人たちが使うハーツアンロックとは違うもので、全員を黒い鎧で纏っている。そのため、敵のハーツアンロックはまさに、闇の力という面を大きく表現していたのだ。
「相手もハーツアンロックを!?」
「でも、少し不気味だね……」
灰崎と野坂の脳内が相手のハーツアンロックに対する警戒で埋め尽くされ、体の緊張が高まる。
「……違うよ、野坂」
「明日人くん?」
明日人の様子のおかしさに、野坂は思わずどうしたのかと声をかける。
「あれは、ハーツアンロックなんかじゃないよ……」
「あぁ……ハーツアンロックをした時に見える光がねぇ」
「フロイのダークアンロックの時でも、光は少なからずありましたけど、あのハーツアンロックにはそんなものがありません!」
明日人、ヒロト、一星は敵のハーツアンロックを見てから、何か衝撃を受けているようで、それは周りから見たら、動揺と受け取られただろう。
「光……?」
「光に闇があるように、闇にも必ず光はあるものなんだよ。そして、その闇の力であるハーツアンロックにも、光は存在する。絶望という力に対して、対抗する心によって生まれる力__それこそが、闇の力であるハーツアンロック唯一の光だ。だけど、あのハーツアンロックには、光なんてもの存在しない……あるいは、『悪意』だけで作られたようなハーツアンロックなんだよ……」
「ええっ!?」
フロイの説明に、坂野上も明日人たちと同じく動揺する。
「簡単に言えば灰崎、あれは人工のハーツアンロック、
「ブリキ……」
灰崎が何かを察すると、王は笑いだした。
「ブリキロック……それもいいかもしれないな。まぁ、そのブリキロックこそ、お前たちが眠っている間に搾取したハーツアンロックの光を利用したものだがね」
眠っている間___という言葉に、彼らはあの時かとココアに入れられた睡眠薬で眠らされた時のことを思い出す。その間に搾取されたのかと考えたものの、今は試合に集中しなければならない。詳しいことは、勝った後に王から聞き出せばいい。
しかし、相手がハーツアンロックしてから、動きが鋭くなった。先程までの初心者のような動きとは打って変わり、ラストプロテクターと同等に戦えるアーロン程の実力を手に入れたのだ。しかしそれでも、円堂達は何とかボールを繋ぎ、それは明日人の元に渡った。
「(俺もわかる……あの人たちからは、確かに光を感じない……でも)」
敵をドリブルで抜ける中、明日人は考え込む。
「(あの人たち、とても苦しそうだ……)」
まるで、ハーツアンロックによって心を締め付けられているかのような。そんな苦しみを明日人は感じていた。
それは目に見えてわかることで、彼らは今にも倒れそうになっているほど、体力が奪われている。やはり、あの人工ハーツアンロック、ブリキロックのせいなのだろうか。
すると、いつの間にかか明日人は四人の相手に取り囲まれており、パスをしようにもルートは遮られていた。
「……やるしかない、ハーツアンロック・リライズ!!」
明日人は右手から、白い刃と赤い布の刀を実体化させると、刀に力を込め、ハーツアンロックを行った。月と太陽をイメージした和服の衣装。狼の耳。そして、銀色の髪はまるで神様のようだ。
「ハーツアンロックの結果が出ました。稲森くんのハーツアンロックは、天照大神のようです」
杏奈はスペクトルハーツという端末を通して明日人のハーツアンロックを調べており、その結果内容を報告する。
「天照?」
「天照大神は、日本神話の神様にして、高天原という神様の住む世界の最高神を務めているんだ」
「太陽の神様で、女神とも言われていたけど、ちまたでは男神ではないかとも言われているね」
剛陣の問いに、水神矢とアフロディは、天照大神の解説を挟んだ。
「行くぞ! 雷光ノ煌キ!!」
ボールを運ぶと同時に、四人の相手を閃光の刃で斬ると、彼らの体に変化が訪れた。彼らのハーツアンロックの要となっていた宝石が壊れ、彼らのハーツアンロックが解かれる。
「ブ、ブリキロックが解除された!?」
風丸は、明日人に斬られたことでブリキロックが解除されたその光景に驚いており、そして誰もが新たな新機能に仰天していた。
「……今すぐハーツアンロックを解くんだ!」
すると、明日人は親衛隊の選手達に向けて、ダークアンロックの解除を要請した。
「そのハーツアンロックは、君たちの心を蝕んでいる! 解かないと……君たちの心が壊れちゃうんだ!」
明日人は、先程敵を斬ってブリキロックを解除した際に、その敵の心がブリキロックによって蝕まれていることを刀を通して改めて知ることが出来た。そのため、早いうちに解除して欲しいと明日人は考え、敵に要請したのだ。
「なるほどのぅ……あのブリキロックは、本物に劣る上に、精神を蝕むものなんじゃな」
「精神を蝕むって……それって、心が壊れちゃうってことですか!?」
奏多の言うことに、大谷は精神が蝕まれることを、心が壊れると解釈する。
「
「そんな……」
奏多の説明を聞いて、大谷は明日人の方を見る。
「戯言を……」
明日人の警告を無視した敵は、明日人に向かって走っていく。
『ダークスラッシュ』
敵は右に蹴り出す足を鎌の刃に変えると、その遠心力で明日人を斬った。
「ぐわああぁっ!」
その瞬間、明日人は大きく吹き飛ばされると共に心臓が急激に痛みだし、明日人は地面に倒れた。そして、ハーツアンロックが解けてしまった。
「明日人くん!」
「明日人!!」
一星と灰崎がすぐに明日人に駆けつけると、うつ伏せに倒れる明日人を仰向けにする。
「これはっ……光が奪われている?」
「なんだって?」
「フロイが言った通り、ハーツアンロックの光は、いわばパワーのようなものです。恐らく明日人くんは、さっき斬られた拍子に、その光を奪われたんでしょう……」
「じゃあ、むやみにハーツアンロックは出来ねぇってことか……」
灰崎と一星が明日人を起こす中、敵はボールをゴールへと運んでいく。
『ダークスラッシュ!』
光を奪うのはどうやらハーツアンロックだけではなく、普通の状態でも通用するようだった。光を奪われると、精神が闇の心、負の感情に支配されかける。そんな状態で、試合は難しかった。
『ダークボール!』
『虹弓のゴッドヴァジュラ!!』
円堂がなんとかボールを止めたものの、通常より体力の消耗が激しすぎる。これではいつか体力をなくした所を狙われるだろう。
「まずいな……」
円堂が膝に手をついていた時だ。
横に、明日人の刀があった。先程ダークスラッシュで斬られた時に吹き飛ばされてしまったのだろうか。そう円堂は考えた。
「……これは、明日人の刀? ……よし」
明日人はボールを遠くに蹴ると同時に、刀を風丸にパスする。
「風丸! それを明日人の所にまで届けてくれ!」
「円堂……あぁ!」
円堂の行動の意図を読み取った風丸は、ボールが宙に飛んでいる間に、どうにか刀を届けようとする。
「フロイ!」
「あぁ! ツクヨ!」
「わかった!」
『なんとぉ! 明日人のデバイスを、次々に仲間が繋いでいきます!』
ボールはまだ空の上。
「明日人!!」
灰崎が明日人へと刀を投げる。すると、明日人はそれを右手でキャッチする。
「ありがとう、皆」
それと同時に、明日人の元にボールが落ちる。
そのため、親衛隊は自分たちのゴールががら空きの状態となり、いつでも明日人がシュートできる状態になった。
「ハーツアンロック、リライズ!!」
刀を脇に構えながら、明日人はボールをドリブルする。その間に明日人はハーツアンロックを行い、瞬時に姿を変える。
『
サンライズブリッツのようにボールを宙に浮かせた明日人は、刀を宙に投げ、ボールを何度も蹴る。そして、五回のキックの後に投げていた刀をキャッチし、最後に炎の刃でボールを斬ってシュートした。
『ダークナイト!!』
それに対し、敵は闇の力を持つ騎士を召喚し、その鋼の盾でゴールを守る。しかし、そのボールには太陽のような炎をまとっていたため、盾は溶け始め、ナイトは消えていく。
『ゴーールッ! 明日人、一点を決めました!』
その直後に、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
明日人達は試合の勝利を喜びあっており、歓喜に包まれていた。
「さぁて……問い詰めるとするか」
「そうだな、灰崎」
ヒロトと灰崎は、王にジリジリと近づき、訳を問い詰めようとする。
「グッ、ここは一旦退却だ!」
しかし、王が閃光弾を投げると、スタジアムは光に包まれ、王と親衛隊はいなくなってしまった。
「チッ、逃げられちまった!」
「でも灰崎くん。あの王様はもう玉座に座ることはもうないよ。ほら」
悔しがる灰崎に野坂が取りだしたのは、ボイスレコーダーと録画を終えたスマホだった。
「王城なんて中々見れるものじゃないから、録音と録画共に配信していたら、いっぱい反応が来ちゃった」
「お前……中々やることがゲスいな」
「そうかな?」
まぁ確かに、これでもうあの王様は二度と玉座に座ることは無いだろう。あんな王がこの国にいるのは御免だ。
『皆、無事か!?』
すると、ベルナルド達がこちらに向かって走ってくる。急いできたのか、額には汗が滲んでいる。
「ベルナルド監督!」
「明日人、君がユースティティアの天使に連れてかれたと聞いて、心配でこちらに来てしまった」
「すみません監督……」
「まぁまぁベルナルドよ。今回は儂の責任じゃよ。怒るなら、儂にしてくれ」
奏多は明日人の頭をポンっと撫で、明日人を許すようベルナルドに目線で訴える。それに、ベルナルドはため息をついた。
光のように速く、
炎のように強く。
久方ぶりのあとがき
正直なところ、戦神で新要素を追加して欲しかった。なんと言いますか、GOで言う化身アームドとか、この小説で言うハーツアンロックとか、追加して欲しかったですね。
まぁこの小説自体明日人たちの化身アームドみたいなーって感じで書いたようなものなので、あまりストーリーとかは気にしないで見てください。
この小説の中でどのコンビが好きですか?
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜