設定の整理と新たなジャンルにはまったせいで、次回の投稿が大幅に遅れてしまいました。
このようにつたない文章と投稿頻度ですが、何卒宜しくお願い致します。
狼の怪異アカツキが明日人に力を与えたおかげで、円堂たちラストプロテクターの選手は明日人のハーツアンロックによって国からの理不尽な刑から逃れることができた。しかし、ハーツアンロックの真実を知ってしまった彼らを逃したくはないのか、タイの王は試合をもちかけた。だがその親衛隊が明日人たちに見せたのは、国が人工的に造ったハーツアンロックの偽物、ブリキロックであった。
ブリキロックはハーツアンロックの偽物というだけはあり、ハーツアンロック所持者からすれば「悪意だけで造られたハーツアンロック」と感じていたのだ。
おまけに、アイドルでありマネージャーでもあり咲の知り合いでもあるアーロン・クロノスピュライが親衛隊の中にいたのだ。だが彼は、王からの命令に逆らったことで他のメンバーからの攻撃を受け、棄権することになってしまったのだ。咲が心配して駆けつけたが、アーロンは先に一言だけつぶやいて去ってしまったのだ。
「アーロン……」
「咲さん、少し聞いちゃったんだけど、そのアーロンっていう人は誰なの?」
「昇くん……うん、アーロンとは友達なの。アーロンは、中学生ながら世界と渡り合えるほどの技術の高い演奏をするヴァイオリニストとして有名で、何度もアーロンとペアを組んだことがあるんだ」
地下宮廷を脱出した坂野上たちは、監督たちが用意したバスの中に乗り込んでおり、坂野上は咲からアーロンという少年について聞いていた。
「でも、俺からしたらそのアーロンっていう男の子、ちょっとしか見えなかったけどとてもサッカーが上手く見えたよ。咲さんはアーロンがサッカー上手いってこと知ってる?」
「ううん、私があそこでサッカーをしているところを見るまで知らなかった。アーロンはね、あまり自分のことを話してくれないから」
アーロンのことを尋ねようとしても、語るほどのものはありませんよ、ってはぐらかしてくるの。と付け加えながら、咲は言った。
「自分のことを人に話してくれないだね……そりゃあ、話したくないことだってあるのかもしれないし、無理に聞けないね」
「そうなの」
それを区切りに、咲と坂野上はアーロンの話をすることをやめた。
「明日人くん、大丈夫かい?」
「あいつらに何かされたか?」
試合が終わり、改めて明日人が無事だということに安心しきった夜舞たちは、バスの中で明日人に話しかけた。
「ちょっと怖かったけど、アカツキがいたから大丈夫だよ」
ほら、と明日人は灰崎達の前にアカツキをを見せる。今まで一瞬しか見えなかった明日人の怪異。白い毛並みに赤い目。そして、顔にはペイントが塗られている。そのため、四人はアカツキをまるで神様みたいだと思った。
「そのアカツキっていうの、ときどき明日人くんを守っていたよね。遊園地のときみたいに、ユースティティアの天使に連れていかれそうになったときとか、大体現れていた。それで今になって明日人くんにハーツアンロックの力を貸したってことだね。ありがとう、明日人くんを守ってくれて」
夜舞は自分たちの前に現れた狼の怪異を見て、お礼を言った。
「実はさ夜舞、俺もあまり実感がわかないけど、アカツキは俺の前世みたいなんだ」
その明日人の一言に、四人は驚愕した。
「ぜ、前世!? でも今はこうして明日人くんも、その前世のアカツキって人も生きてますし……」
「まぁ、実は……」
明日人は灰崎達四人に、『アカツキ』という明日人の前世の魂が、今ここにいる狼の怪異の中に入っているということを彼らに説明した。
「そうだったんだね。よく『前世の性別がわかる行動』というのがあるけど、あれは科学的根拠がないからね。でも、明日人くんがそう言っているということは、前世というのは本当のことなのかもね」
「あんまり実感がわかないよね、野坂」
そう明日人が言った直後に、シートベルトを締めるようにという折谷の声が聞こえ、明日人たちはシートベルトを締めに行った。
***
「皆さん、この度は私たちの勝手な判断によって皆さんを巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。ですが、奏多くんがいったように日本奪還計画から辞退したというその行動には皆さんを守るためであったことは本当です。」
バスが宿所に向かって走る中、趙金雲は明日人たちの前に立って頭を下げた。同じくして日本奪還計画に関わったベルナルドたちも、明日人たちに申し訳ないという表情で頭を下げていた。
「お主たちに何も言わずに、儂ら大人だけで勝手な判断をしてしまったことを許してほしいとは言わぬ。だが、遊園地の中でも話したように、今この世界は力を欲しておる。世界を揺るがし、歴史のターニングポイントになるほどの力をな」
「ハーツアンロック……ですね」
明日人は自身の胸の中にある強大な力に胸をあて、奏多の説明に答えた。
「そうじゃ。今回儂らが辞退した今回の日本奪還計画は、完全にお主たちのハーツアンロックだけが頼りの、自分たちの軍力で解決を求めようという姿勢が見られないような計画だったからこそ、儂らは辞めたんじゃよ。その計画に協力することを」
奏多が静かに目を閉じると、身体の中にある力を集中させ、背中からゆっくりと機械仕掛けの翼を生やした。
「その結果____人は天使から日本を取り戻すことはできなかった。だがな、確かにあれはお主たちの善意、いわば同情心を完全に血擁している。だがな、仮にお主たちがその計画に協力するといっても、儂らは止めるつもりじゃったよ。お主たちは戦争からかけ離れた生活を送っていたから、あまりこういうことは想像しにくいのかもしれない。だがこれだけは言っておく。戦争は、人が簡単に死ぬ世界じゃ」
その翼は、彼の持つハーツアンロックが150年前の第三次世界大戦で最凶と呼ばれたハーツアンロック、『ロゴス』であることを明らかにしていた。奏多は右手に持っていた扇子を操ると、バスの中に新たな空間をその場に創り出した。この空間はまるで映画のスクリーンのように風景が動き、この映像が実際に起こった出来事であるということを示していた。
「お主たちの家族、友人、果ては大切な人____それらが戦争というもので簡単に平和という壁を壊されて、死ぬか生きるかの瀬戸際をたどることになる。たとえお主たちがハーツアンロックで日本奪還に成功したとしても、お主たちは所詮ただの子供。その傷はいずれお主たちの未来をダメにしてしまうことになるかもしれん。それが戦争というものじゃよ」
空間の映像では、多くの人が武器や兵器、食糧難で簡単に死んでいき、それは無残そのものであった。それを見ていた明日人たちはその残酷さに息を飲んでおり、それを見た奏多はもう十分だろうと空間を消した。
「ひとまずは皆、部屋で考えておくようにじゃ。儂らは明後日、イタリアの方に向かう。また儂らを狙ってくる奴らもいるからな」
荷物はまとめておくように。
その言葉を最後に、バスの中は宿所につくまで静まり返っていた。
***
宿所内で仲間たちと過ごすうちに少し多くなった荷物を一通りまとめた夜舞は、少しベッドで休憩を行っていた。まだ夕食までの時間はある。少し走りに行ってこようかと考えていたその時、スマホの通知がなった。
スマホには『急にごめんね。月夜ちゃんが何か危ない目にあっているんじゃないかって予感がして』や、『大丈夫だったかい?』などの、心配のメールが寄せられていた。
「不知火さんからだ……えっと、『心配してくださりありがとうございます。私は元気です』っと」
『それはよかった。実は今日の仕事が一通り片付いたから、君の顔を見に来てもいいかな?』
『う~ん、今は皆忙しいので、中には入れないと思いますが玄関で待ってます』
メール内で冷静に返信するなか、夜舞の顔は緩んでいた。とにかくメールの通り宿所の玄関繰りで不知火をまとう。そう思い夜舞は玄関口の方へ歩いた。
「……不知火さん!?」
しかし夜舞が玄関口に着くと、外で不知火が倒れていたのだ。
「不知火さん! 不知火さん!」
夜舞はすぐに宿所を出て不知火が倒れている場所まで走り、うつぶせに倒れている不知火の身体を揺らした。だが、長い髪の隙間から見える額の汗と顔色の悪さから、夜舞は不知火が危険な状態であることに気づく。
「……月夜、ちゃん」
「不知火さん!?」
「鞄の中から……白いカプセルを取ってくれ……。ポーチの中にあるから……」
「カプセル……薬ですか?」
夜舞は不知火がいう白いカプセルが薬であることを理解し、すぐに不知火が右手に持っている鞄の中から薬を取り出そうとする。
すると鞄の中にあるポーチの中身を明けた瞬間、風が吹いて一枚の写真が飛びそうになった。幸いすぐにポーチから飛び出しそうになったものを抑えたため、物は飛ばなかった。だが、その時に自分の指の間に挟まった写真の光景に、夜舞は目を見開いた。写真には今と違って髪が短い、不知火らしき人物と、その不知火に似て黒い髪に白い服を着た小さな女の子が写っており、夜舞はつい見とれてしまった。
妹? 娘? と考えてしまっていると、視界の隅で半透明の物体が見えたのだ。
それは倒れている不知火の背中から生えており、それは奏多の機械仕掛けの翼とは違って、黒い半透明の両翼が夜舞の目に映っていた。
「……えっ」
羽は先がボロボロになっており、夜舞はその神々しさの中に悲しさを抱えたような美しい翼に息を飲んでしまっていた。
「夜舞!? って不知火さん!?」
すると事態に気づいた明日人たちが玄関から夜舞の元に駆け寄ったため、彼女は現実に引き戻された。
「明日人くん! 実は不知火さんが……待ってて、今薬を飲ませます!」
鞄から薬を手にした夜舞は、その薬を口の中に放り込み、不知火が右手に持っているペットボトルの水で薬を飲ませた。すると、不知火から生えていた翼はスゥ……と消えていき、不知火の顔色も少し良くなった。
「すまない、君のところに行こうとしたら、突然発作が始まってね……」
「大丈夫ですか? とりあえず、医務室に行きましょう。皆もそれでいいよね?」
夜舞が皆に不知火を医務室で応急処置をしてほしいと求めると、皆はそれを了承し、不知火を医務室へと折谷が運んだ。
不知火が発作で倒れた時にできた擦り傷を大谷が消毒する中、折谷は不知火に問いかけた。
「……
折谷は不知火を名前ではなく、名字で呼んだ。折谷は普段名前で明日人たちを呼ぶので、そのことに驚いたが、さらに折谷が前にミラージュ社団法人で働いていたことにも驚愕することになる。
「そうか……、君は二年前まで社団で働いていた折谷共有だね。医者ではなく、フィジカルトレーナー……兼データ分析担当兼料理長兼データセキュリティー担当兼気功マッサージ師の道を選んだってことか……」
「……はい、あの時貴方が拾ってくれたおかげで。話を戻しますよ、あの翼はどういうことなんですか」
折谷の過去についてを聞こうとした一星だったが、それは野坂によって止められ、そのまま不知火の口が開いた。
「……幼少期から、あの発作は続いている。子供の頃はまだ胸に痛みを覚えるだけだったが、今となっては背中から翼が生え、発作もたびたび起きるようになった。昔はこの病状を知っている医者もいたが、今ではもうこの病状を知る者はあまりいないだろうな……確か、これは
「ハーツアンロック!?」
なんと、不知火の発作の正体はハーツアンロックにあるということを聞き、明日人たちはその事実に目を見開いた。
「あぁ……対処法がわからなくてな。今はこうして抗てんかん薬を飲んで過ごしている。月夜ちゃん、見苦しいところを見せてしまったね」
「そ、そんなことありません! むしろ心配で……」
次の言の葉を言おうとしたが、ハーツアンロックという自分たちにもあまり正体がつかめない存在に、自分が好意に思っている人が苦しんでいるということに夜舞は言葉を詰まらせていた。
未知なる病気に苛まれ、不知火だって心も不安定だろうに、単に「大丈夫ですか?」の言葉だけでいいのだろうかと考えていたのだ。
「君たちも、突然お邪魔して悪かったね。じゃあ、私はこれで失礼するよ」
「あっ……はい、さようなら」
宿所から自分の社団に帰ろうとする不知火に、夜舞は思わず手を伸ばした。
しかし不知火の仕事の邪魔をしてはいけないと、その手はゆっくりと下ろされた。
***
Interlude
……あぁ、ルアシェル様。
貴方様のお考えが、間違いであったと仰るつもりはございません。
ですが、もし貴方がこの星の天からご様子を眺められているのでしたら、この地獄のような景色をご覧になってください。……どうですか? 人は今、秩序を失い、力を行使するだけの知能を失った肉の塊にすぎません。間違いを何度も何度も繰り返し、貴方様がこの星に来られた時のあの美しさはござりません。
確かに私は、ルアシェル様のご命令通りに、この世界を黎明期から見てまいりました。この星に逃げ込んだ時のあの美しさには、私も目を見張り、驚きました。ですが、もうルアシェル様の願いとは関係なしに、哀れな人間が好き勝手にこの星で生きるのはもう嫌なのです。
貴方はきっとそれを望まないでしょう。
構いません。かつてルアシェル様に一身をささげた怪異の面汚しだと馬鹿にされようとも。
私は、この世界のやり直しをします。
***
不知火が医務室に世話になっている時、趙金雲は憑坐柑奈、本名七光咲が所属している事務所に連絡を入れていた。
『はい、わかりましたぁ。それでは、柑奈さんは引き続き私のチームの方で保護をするという方針で、よろしくお願いしますねぇ。では』
明後日にはイタリアに向かうため、その連絡と保護の引き継ぎについて話していたのだ。
「監督さん、どうしたの?」
宿所の公衆電話の受話器を元に戻すと、後ろに咲が立っていた。咲はお手洗いに行っていたようで、右手にはハンカチを持っている。
「あぁ咲さん、実は貴方の事務所に連絡してですねぇ、一緒に来てもらうことになりました」
「うん、それはマネージャーから連絡が来たから知ってるよ。明日行くイタリアに一緒に来てもらうんだよね。あっ、それよりも大事なことがあるの」
すると、咲は一枚の封筒を趙金雲に差し出した。
「イタリアでっていうのが完成して、その式典の開会式で私が一曲歌うことになったんだって。その開催日は明後日の夜なんだけど、行っていいかな? もちろんちゃんと危ない目に合わないように武器持っていくよー ……監督さん?」
差し出された封筒の宛名を見て、趙金雲は目を見張った。
「……咲さん、やはり貴方をイタリアに行かせることはできませんね」
「え、どうして?」
咲が趙金雲の言葉に疑問を抱いたその時だった。
宿所の玄関が突然開き、黒いスーツを着た男たちが現れ、咲と趙金雲を取り囲んだのだ。
『動くな!』
彼らはなんと銃を持っており、危険な目にあっているということは天然な咲でもわかっていた。
「あ、貴方たちは!?」
「とにかく来てもらう!」
「いや! 離して!」
咲は男の一人に腕を捕まれており、今にも連れていかれそうな雰囲気であった。
「貴方たち、咲さんを離さないと、私の鉄拳が……」
「ふん!」
「あげっ!」
趙金雲も咲を助けようと構えを取るも、後ろから手刀で趙金雲の首を叩いたのだ。そのため、趙金雲は目をぐるぐる回してうつぶせに倒れる。
「監督さ……むぐっ……」
それに続いて、咲の抵抗むなしく睡眠薬をかがされ、眠ってしまった。
「よし、この娘を連れて行くぞ」
「ハッ」
***
「咲さんが攫われた!?」
不知火を送り出した後すぐ、明日人たちは、趙金雲から咲が攫われてしまったという事実を知った。
「すみません……私の力が及ばないばかりに……」
「いえ、咲さんが攫われた場所はわかりますか?」
野坂に場所を聞かれ、趙金雲はゆっくりと口を開いた。
「……イタリアの、天戴無窮という兵器の完成式典が行われる場所です」
「天戴無窮?」
「天戴無窮……それは、ユースティティアの天使たちが集う天界を探し当て、見つけ出した天界を破壊する兵器です……。その前に、咲さんには自身でも気づかない新たな力があることを説明しなくてはなりませんね……」
***
人は、力を求める生き物。
だからこそ、神の力ともいえるハーツアンロックが人工的に作れるというあの実験に、全てをかけたのだろう。
しかし、結果的に成功したのは……ただひとり。
しかも、その一人のハーツアンロックが暴走した結果、これまでの戦争以上の被害者を出してしまった。
だから人は、闇の力のハーツアンロックを秘匿したのだ。
もう二度と、かの悲劇を起こさぬよう。
___だが。
人はまた、同じことを繰り返そうとしている。
ハーツアンロックの存在が改めて判明されたせいで、人は新たに、その強大な力を利用しようとしている。
そしてまた、ハーツアンロック習得者を増やそうと、第三次世界大戦のようなことが起きるかもしれない。いや、それ以上の被害者が出てしまうだろう。
確かにハーツアンロックは、我ら天使にとっては脅威の存在だ。
その力故に、打ち砕かれてしまう。
だが、今度はその天使の野望を打ち砕いた力に、人は更に群がる。
ほんとうに人は、なんと業の深い生き物であろうか。
「____レン、メリー……?」
そのことに気づけさえいれば、私は仲間を失わずに済んだのに。
ここから一気に話が進みますので、次回からは新章となります。
この小説の中でどのコンビが好きですか?
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜