芸術の国、イタリアの首都ローマから様々な美しい都市へと繋ぐ、ローマ・サン・ピエトロ駅周辺では、毎日のように通勤や観光客などの人々で賑わっていた。といっても、今は太陽が天頂を通過したあとであり、昼下がりの食事を楽しもうとする者が増えてきたが。
『ねぇ聞いた!? 天戴無窮完成の式典途中で、天戴無窮が大爆発を起こしたんだって!』
『しかも、皆無事だったのよね!?』
天戴無窮の式典は昨日の出来事であり、さらにそこで起きた大爆発の光景をほとんどの人が見ていたからなのか、この国では今その話題で持ち切りだった。その声はどこからでも耳に入り込んでいき、ここに来ていた世界選抜の選手全員に届いていた。
「天戴無窮、か。あの爆発にはきっと、あいつらが関わっているだろうな」
そのためか、クラリオは頑固たる響きで仲間たちに尋ねた。あの天戴無窮の式典には、ラストプロテクター・アースが関わっていると。
「それってどういう意味だ? アストたちが関わるようなことじゃないだろう?」
第一あれは式典だ。と言いたげに、ペクは右手を少し上に上げ、肩を竦めた。
確かに、
「式典が開催された時、私たちはテレビを見てその様子を見ていただろう。その時に、一瞬だけあいつらの姿が見えた。おそらくだが、あいつらはあの天戴無窮の秘密を知っていたのだろうな。あいつらは、やると決めたからには絶対に事を曲げないチームだからな」
「そうだね……彼らなら、きっと何かに気づいたはずさ」
そう一ノ瀬は、空を見上げた。自分たちの宿所に向かう途中の空は、透き通るような青をしており、それはまるでラストプロテクターのサッカーに対する純粋な気持ちを表していた。
そんな時、彼らの後ろに目立つようにそびえるお菓子屋から、一人の少女が大量のお菓子を抱えて店を出た。
「ふんふんふふ~ん」
薄紫の藤色よりも赤みがかった紫髪を二つ結びにし、まるで目を瞑っているかのように細い目をした女の子は、早速先ほどのお菓子屋で買ったスイーツを食べ歩きしていた。甘いお菓子を食べて限りない満足感に包まれていた少女であったが、街の広場にいる人込みを見つけ、何かあるのかなという小さな好奇心からか、少女は立ち止まった。
しかし、その好奇心はとある男性たちの話し声の内容から打ち砕かれた。この人ごみはなんと、ユースティティアの天使の部下である神父たちの演説によるものであり、人々はやるかたない気持ちでそれを聞いていたのだ。
『この世界は今、闇に覆われています。しかし、我らユースティティアの天使による、テミス改革が実行されれば、世界は新たに生まれ変わるのです。さぁ、天使による統治を願うのです。もう、人が世界を支配する時代は終わりました。これからは、天使による平和的な日常を送れるのですよ』
お菓子を食べ歩きしていた少女は、その演説に真っすぐと向かった。しかし、神父たちの意見に同意したわけではなかった。
「ねぇ、ここは宗教関係の演説禁止だよ~」
すると、少女は広場に設置されている注意書きの看板を指さした。その看板は確かに宗教団体の演説は禁止されているという注意がされており、そのほかにも暴力団関係者による使用も禁止されていた。
『……貴方は、天使による統治を認めない。そう仰るのですね』
「うん、サッカーは楽しいものだから。それよりおじさんたち~、演説をやめなきゃ、注意されちゃうよ?」
その優しい声とは裏腹に、少女の表情にはいたずらそうな目をしていた。
「こっちです! ここで神父を見かけたと!」
「くそっ、あいつら今度は一体何をしようってんだよ!」
「とにかく、その神父に連れ去られたっていう女の子を助けないと!」
ユースティティアの天使の部下、神父がローマ・サン・ピエトロ駅の広場に現れた。その話を大谷から聞いた明日人たちは、その緊急を要する事態に急いで駅に向かっていた。先ほどまで神父たちが演説していた場所に向かうと、明日人と同じように事態に気づいた世界選抜も、ここでその神父についての聞き込みを行っていたのだ。
「って、クラリオ!?」
「エンドウマモルか、お前たちもこのことを知ってここに来たのだな」
「あぁ、その女の子を助けるためにな」
ユースティティアの天使からサッカーを取り戻し、世界を救うことを決意している明日人たちには、「神父によって女の子が攫われた」という事例は、見過ごすわけにはいかなかった。その明日人たちの強固な意志に、クラリオは睨みつけるほどの真剣な顔つきで自分たちが手に入れた情報を彼らに提供した。
「そうか、私たちが手に入れた情報によれば、その少女は攫われたわけでないらしい」
「そうなんですか? で、でも街の人は皆大騒ぎになってますし……」
「それもそうだろうな。少女はその神父たちに勝負を挑んだのだからな」
勝負というクラリオの言葉に、明日人たちは思わず聞き返した。サッカー選手のクラリオが言うのだから、おそらくサッカーで勝負なのだろうが、その前に神父たちとサッカーで勝負してまともに言うことを聞いてくれるのか? という疑問が泡のように浮かび上がってくる。
「勝負……ちょっといい? クラリオ」
クラリオに声をかけたのは、明日人たちの中の一人ではなく、世界選抜の一人アリーチェだった。
「もしかしたらその子、『リベリオン・クリーガァ』の一員かもしれない」
「リベリオン・クリーガァだと? 勝負をしかけたその少女が、神父や低級の天使にまともに対抗できるあのチームの一員だというのか?」
「可能性は低いけど……もしそうなら、私たちを鍛えてくれるかも」
先ほどからクラリオとアリーチェから交わされる、リベリオン・クリーガァという単語を明日人たちは気になり、何なのかと尋ねることにした。
「なぁ、そのリベリオン・クリーガァって何なんだ?」
「実はだが……」
すると、クラリオは話し始めた。リベリオン・クリーガァは、この国イタリアの大統領、ロレンツォ・セレーナ・エレオノーラが世界中の屈強な少年少女たちを集めて作り上げたチームであり、その戦闘能力の高さで数多のテロリズムを防いだことから、警察よりも権力が高く、また今ではユースティティアの天使や神父などに戦闘で対抗しているとのことだ。
「それが、リベリオン・クリーガァ……」
「なんでも、そのチームを取り締まっているキャプテンは、チームの中でも最年少って噂よ。あくまで噂だけど……」
「最年少!?」
仮にそうだとしたら、おそらく野坂以上の頭の良さと戦闘能力の高さを有しているに違いない。しかし、その噂のキャプテンとあの少女が同一人物である可能性は考えられなかった。
「ともかくだ、神父たちを追おう」
「場所は、ここから近いサッカーグラウンドだ……」
「さて、始めましょうか」
ローマ・サン・ピエトロ駅近くのサッカーグラウンドでは、それぞれのゴールを自分の陣地に、中央の白い輪の中にはボールが置かれていた。そのボールを軸足じゃない方の足裏で支える少女はタイツを履いており、裾が膝上しかない白いワンピースの上にトレンチのロングコートを羽織っていた。一見動きやすそうだが、サッカーをする服装ではないことはわかる。しかも少女は、試合前だと言うのに菓子のエクレアを食べていた。
「絶対勝つから〜」
唇についたエクレアのクリームを少女が舐めていると、クラリオから場所を聞いた明日人達が到着した。
「あ、あの女の子ですよ野坂さん!」
一星が胸をつかれたような表情で少女の方を指さす中、試合は行われようとしていた。
「…………」
「目が変わった!?」
吹雪は目を閉じていた少女の目が開き、その目の色が赤みがかった茶色、つまり血の色であることを目撃する。
「あ、あの目は……!!」
「何か知っているんですか!?」
「『ブラッディ・アイ』だよノボル……リベリオン・クリーガァのメンバーが持つといわれている目の色の名称……」
血の色に近いその少女の目に、アリーチェは驚愕した。それも、彼女がリベリオン・クリーガァであるという証拠のブラッディ・アイを持っているということにだ。
『……ヘッドショット・オーバーアンダー!!』
少女が指を鳴らしたその直後、ボールは二つに分かれ、宙に浮く。しかしボールが球体になっているわけではなく、その形は銃でいうところの弾の形状に似ていた。
すると、少女の目が光る。
少女がボールに足の甲を当てようとする瞬間、視界にはターゲットとしてゴールが映る。
そのターゲットに向けて、彼女はボールを二回に分けて打ち込んだ。
それは空に閃く雷鳴、いや銃口から放たれた弾のように早く、一瞬にしてゴールの中へとボールは入った。
「す、すげぇ……」
「あいつ、ただもんじゃねぇ……」
その気持ちいほどの一瞬は、天使と戦ってきた円堂とヒロトでもその刹那のボールを視界に入れることはできなかった。そんな彼女の強さに、クラリオは笑っていた。
「……今日のところはこのくらいにしますよ」
一点を奪った時点で勝敗を決める形だったのか、負けた神父たちはどこかへと消えて行ってしまった。
「ね、ねぇ大丈夫だった!?」
仮にもユースティティアの天使の一員である神父三人に、一人の少女が勝った。その光景に感情が追いつかなかったが、明日人たちは一斉に少女の元へと駆け寄った。
「……あ~、もしかしてラストプロテクターの人? ちょうどよかった~」
しかし、少女の目はとっくに閉じており、またしてもエクレアを食べていた。
「神父たちを一瞬で蹴散らすなんて、凄いね」
「お前、名前はなんだよ」
「ん~、わたしはノエル。ノエル・ビアンカだよ~。もしかして、わたしの試合見てくれたの~?」
先ほどまで神父を倒した人とは思えないほど、少女ノエルはのんびりとしていた。
「ま、まるで二重人格みてぇだな……」
「アツヤくん、失礼なこと言っちゃだめだよ」
「二重人格かぁ~かっこいいねぇ~。でも、これは元々なんだぁ~」
夜舞がアツヤを諭す中、ノエルは自身の目のことを明日人たちに説明した。
「リベリオン・クリーガァって知ってる? ほら、最近神父さんとか天使さんを倒しているっていう戦闘員チームのこと。わたしはそこの一員なんだけど、リベリオン・クリーガァはね、幼少期から国から特殊な訓練を受けて育つの。もちろん皆が思っているようなものじゃないよ〜ちゃんと医療関係者の方もOKしているものだから〜。それで、その特殊な訓練を受けたという印として、目が赤くなるんだ~」
すると、ノエルは自身の目を開ける。しかし、先ほどのような緊迫なオーラは感じられなかった。
「あとね、さっきみたいな勝負事には、いろんなことに対応ができるように意識を集中させるための訓練を行っているから、そう見えただけかも~」
と、ここでノエルの目の秘密がわかった。彼女は別に二重人格というわけではないらしい。
「ノエル!」
すると、サッカーグラウンドの外から、彼女の名を呼ぶ少年の声が響いた。
「あっ、ぺトちゃ~ん」
その少年は、イタリア代表のキャプテン、ペトロニオだった。突然のペトロニオの登場に明日人たちは驚いたが、ノエルはペトロニオとは知り合いなのか、あだ名で彼を呼んで手を振っている。
「そのペトちゃんっていうのはやめてくれないか……?」
だが、ペトロニオはやめてほしそうにため息をついた。
「ん? アスト、その子は?」
するとペトロニオは、どうやらチームに新しく入った夜舞の存在に気づいたようで、彼はキャプテンである明日人に尋ねることにした。
「あぁ、夜舞っていうんだ。ユースティティアの天使を倒すために、花伽羅村からスカウトしたんだ」
「夜舞月夜だよ! それより、ペトロニオくんの試合、見てたよ!」
「そうなんだ、ありがとうツクヨ」
「うん!」
夜舞は、ペトロニオと握手を交わした。だが、その間フロイとベルナルドは気まずそうにしていた。それもそうだ、FFIでオリオン財団によって最も被害にあったのは、彼らなのだから。しかし、フロイはFFIでのことを謝罪しなくてはならないと、フロイは前に出た。
「……ペトロニオ。僕たちのせいで危険な目にあわせちゃって、ごめん!」
フロイがペトロニオに頭を下げると、彼はとても驚いた。
「そ、そんな! 顔をあげてくれ!」
「いいや! 僕の母さんがやったことだとしても、君たちの選手生命を無くさせるようなことをさせて……」
ペトロニオがフロイに頭をあげるように諭したが、フロイは一切あげる様子を見せなかった。ベルナルドも隣で頭を下げており、その二人の様子にペトロニオは困っていた。しかしそんな中、ノエルがペトロニオに声をあげた。
「……ペトちゃん、決めるのはあなただよ」
「えっ、ノエル?」
ペトロニオは、一瞬ノエルに耳元で囁かれたと思ったが、後ろを振り返っても、ノエルはまたしてもお菓子を食べており、耳打ちをしたとは考えられなかった。
確かにノエルの言うことは本当だ。許す許さないは自分が決めることだ。おそらくフロイは、決めてほしいのだろう。許さないと。
「………………」
しかし、ペトロニオはそんなことを言うつもりはなかった。だが、許すというのも何かが違う気がしたのだ。そこで、彼は別の言葉を口に開いた。
「……フロイ。確かに私は、一度は選手生命を失った」
ペトロニオの言い放った言葉は、とても冷たいものだった。それにフロイは、やっぱり許してはくれないだろうなと、自分で自分を嗤った。
「しかし、それは本当のサッカーがなんなのかを教えてくれるきっかけにもなった。あの時アストが教えてくれたように。そこで私は、病院内で仲間と共に、本当のサッカーが何なのかを話し合ったんだ。それで、私たちはやっぱりサッカーがしたいと結論を出し、辛いリハビリを何度も行ったんだ。お互いに励まし合い、支え合ったあの時は、私たちに仲間というものを教えてくれた」
続けて、ペトロニオは言う。
「むしろ、私の方こそ謝らせてくれ。君をここまで追い詰めてしまっていたことを。世界選抜にいるアリーチェから大体のことは聞いていた。フロイは、オリオン財団の今までしてきたことを後悔していると。しかし、私は君たちのおかげで、学ぶことが多くあったんだ。挫折しても構わない、それでも自分の好きな物に向き合いたいという想いがあるということを教えてくれたんだ。あの時、アストから運命に抗う勇気をくれたように、フロイは、
すると、ペトロニオはフロイの肩に手を置き、ハンカチを差し出した。
「だから、謝罪なんて必要ない。そこに、許す許さないはない。私は、君という存在を心から尊敬しているんだ」
「ペトロニオ……」
フロイの瞼から、涙が流れる。それを、ペトロニオはハンカチで優しく拭った。
「さぁ、私とサッカーをしてくれ! あの頃よりも、私は強くなっているからな!」
「……そうだね! 僕も負けないよ!」
後悔の気持ちが晴れたのか、フロイはペトロニオと共にボールを蹴り出した。
「フロイ……」
「ベルナルド監督、きっとあれが、本当のサッカーなんですね」
爽やかにボールを奪い合い、運ぶ二人の姿に、ベルナルドの顔は柔らかくなっていた。
***
イタリアより遠く離れたアメリカでは、鉛の張ったような雲が空を覆っていた。その雲の隙間から複数の天使たちを連れて地上に降りてきたのは、エレンだった。その足はアメリカ国議会議事堂という日本でいう国会の正門に着き、エレンは同行してくれた天使たちに、「ここからは一人で構わない」と告げた。
「エレン様。今回の会議ですが、なぜ我々は同席してはならないのですか」
もちろん、その命令に異議を唱える天使もいた。しかし、エレンは次にこうも言った。異議を唱える部下を黙らせる台詞だ。
「じゃあ言うけれど、貴方たちはこの世界の転換点を決めてしまうような決断ができるかしら? これは私一人だからこそ決められるのよ。それに、ここから先は人間のリーダーたちが集う場所なのよ。どんなものがあるかもわからないの。だからこそ、貴方たちを危険な目に合わせたくないの。わかってくれるかしら?」
そうほほ笑むエレンの目は、優しくも、氷のように冷たく感じた。
今のエレンは、大事な部下二人も重症だということが起きて、少しでも衝撃を与えれば壊れてしまうようなクッキーに違いなかった。しかし、部下たちは何も言えなかったのだ。まるで、『私に触れるな』と言われているような、気配を感じたからだ。
「あ、あのエレン様」
しかし、勇気を振り絞ったのか、一人の天使がエレンに声をあげた。
「お言葉ですが、貴方は少し、無理をなされているのでは……?」
その問いに、エレンは笑った。
『大丈夫よ。少しお話してくるだけだから』
廊下を歩く中、エレンは考えていた。
かつて自分に、『人と人は分かり合える』と教えてくれた人物のことを。
「(貴方はかつて、私に教えてくれた。記憶をなくして、何もわからないままお父様の娘となり、そして初めてのお仕事をしたときに、私は貴女に会った。右も左もわからなかった私に、貴女は教えてくれた。
「(ずっと、今までずっと、貴女の言葉を信じて、人間と天使が共存する道を探してきた。今日だって、本来なら人との共存についての話をするつもりだったのよ。でも、それはもうできないみたいね。
「(レンとメリーが重傷を追ってしまった原因は、人間の策略によるもので、私になんの落ち度もないと片付けられてしまったけれど、嫌なのよ。そんなことで責任を逃れるなんて。それに、私が人間との共存を夢見ている間にも、他の天使は他の神遺物の生贄にされてしまっていた。
「(全ては、私の責任。今まで人と共存できると甘えていた自分へのツケよ)」
その人間の名を、エレンは知っていた。
今も生きているのだろうか。生きていたなら、話したい。
しかし、きっと生きてはいないだろう。なぜか、そんな気がしたからだ。
気が付くと、エレンは会議室の扉の前に立っていた。門番らしき警備員は、エレンの姿を見ると、すぐに扉の前から離れ、一礼する。それをエレンは冷ややかな目で見ると、彼女は会議室の扉をノックした。扉の奥からの返事が聞こえると、彼女は扉を開いた。
会議室には、既にアメリカ、中国、ロシア、ドイツと、その国の大統領や総理大臣などが揃っていた。そして、その一席には、自分たちを傷つけたタイの王もいる。
「ごきげんよう。早速なのだけれど、人間と天使との共存、考えてはくれましたか?」
遅れての着席となったが、エレンは早速本題に入ろうとした。
「答えは、否だ。やはり我々は相容れぬ存在。天使が空を飛ぶならば、人が地を張って生きても良いのでは無いのか?」
しかし、アメリカの大統領は、この前の会議でのエレンの提案を飲むことはなかった。
「まあ、人による統治を求むというわけですの」
「それに、我々人間でこそ解決しなければならないことだってあるのだ。天使の力はかりん」
そう言い放つ彼に、エレンは笑いながら指をさした。
「……そうですか。ではそこのタイの王が、我々天使に重症を負わせたことは、どう説明してくださるの? 人と天使が相容れぬというのなら、お互い関わらなければ良い問題でしょうに」
エレンの一声に、大勢がタイの王へと向いた。まさか、と思ったのだろう。
「これは、私の仲間であり友の、大天使レンとメリーの傷害報告書のコピーですわ。それに、貴方がウルティムス・ステラ、いいえイルミナーレ・ステラの無限大な力を手にするために、我々天使を今まで屠ってきた証拠もありますわ。あらどうしてかしら、天使と人は相容れぬ存在ではなかったのかしら」
アメリカの大統領は、無言で俯く。人と天使は相容れない存在なのだとエレンに先ほど言ったのだから。
「し、しかし、貴方たち天使は、我々から多くのものを……」
「奪ったのは確かに私たちだけれど、奪わせたのは誰?」
冷たいことを吐いている。というのは自覚していた。しかし、もう嫌だったのだ。
「……私は、貴方達人間を信じていたわ。私のことを愛してくれる人もいれば、人は元から良き心を持っているのだと教えてくれた人もいたわ」
エレンは、脳内でとある人物の顔を思い浮かべていた。しかし、その顔は明日人の母親にそっくり、いや全く同じであった。
「でも、それを信じすぎて、私は多くの天使を葬ってしまった。だから、私は責任を取ることにしたわ」
すると、エレンは席を外し、日傘を槍に変えた。そしてその槍を右に振るうと、国議室の装飾品や貴重品が次々に壊れた。
「貴方達を葬り、貴方たちの国を私たち天使が支配することにする」
ねぇ、こんなわたしでも、元から良き心を持っていたと言えるのかしら。
百合子。
天使に反逆する。
『人』に反逆する。
この小説の中でどのコンビが好きですか?
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明日人とエレン
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不知火と月夜
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エレンとレン
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エレンとメリー
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エレンとミラ
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不知火とベルナルド
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明日人と月夜