「さて、記憶探しの為に近づいてきたはいいものの、本当にここは綺麗ね…」
天使が花伽羅村の道を歩く。
村人たちは道を歩く天使に関心を示していないのか、少しお辞儀して去っていくだけだった。
まぁ、明日人たちが来たその後に来たものだから、明日人のような村の外の人間と思われても仕方ないだろうけど。
「昭和の村みたいというか……もはやそうよね。結構栄えているみたいだし…_____あら?」
天使が一通り村を歩いていると、木造で出来た学校のグラウンドで、見たことのある人物が見知らぬチームと試合をしているのが見えた。黒髪のツンツン頭の少年、ピンク色の髪の少年、メンダコのような青い髪をした少年。あれは、自分がこの村に来る前に出遭った人間だ。何をしているのだろう。そう気になった天使は、人盛りのあるギャラリーの中に紛れ、グラウンドの近くにある木の木陰に座って今ある試合を観戦しようと思った。とその時、天使のしている白い十字架のペンダントから声が聞こえた。
小さな光を輝かせながら。
『『エレン』、聞こえるか?』
彼女の名は「エレン」なのだろうか、声をかけてきた天使とペンダント越しで会話をする。
「ええ、聞こえているとも。でも、なぜわざわざこれを通して会話をしているの? 貴方からしたら私に見えないように隠れているつもりでしょうけど、私からしたら貴方の居所なんて丸わかりよ、こっちに来てお話ししたらいいじゃない。今の私はあの…稲森明日人たちと一緒に来た観光客として、人間に認知されているから。あ、あとここの大福、結構美味しいわよ。食べる? 貴方好きでしょ?」
エレンが片手に持っていたのは、木の模様が表面に貼られた長方形の紙の箱。いびつながらも中身のつぶあん大福は非常に美味しく、見えないにも関わらずエレンは大福を持って十字架の前でひらひらさせる。
『地上の食べ物は好きではない』
「あらあら…貴方ならてっきり、この大福に誘われてくると思っていたのに…」
相手から「要らない」と解釈してもよい返事が聞こえ、エレンは仕方なしに手に持っている大福を口にする。
『私をなんだと思っているんだ…。それと、いい加減地上のものを食べるのはやめたらどうだ?』
大福を口にしていると、相手から何か注意されたらしく、大福を食べるのに進んでいた手を止めながら、話を聞いた。
「生憎、しばらくはその要求は受け入れられないわね。だって食べ物はいつの時代も美味しいものなんだから。それに、食べたら何か思い出す気がするもの。それは、貴方も知っていることでしょう? ねぇ……」
「『レン』?」
***
風は、いつの時代も身近な存在だった。そよ風も、嵐も。
もしその風が、自由自在に操れるとしたら、人はどうするだろうか。
私利私欲、もしくは社会貢献の為に使うだろう。しかし、その魔法がかなり熟練された者にしか使えないとなれば、捨てるか、努力して熟練度を上げるしかないだろう。
しかし、この月光の魔女は違った。
魔法を捨てずに日々努力し、いつしかその魔法は、一つ一つの強さの違う風を一か所に纏め、一つの大きな嵐にしてしまう程の魔法にしていまうのだから。
「まさか、これほどまでの速さを持っているとは、驚きでしたよ。皆さんが体験した、あのかくれんぼの時の速さ以上だったんですよね?」
明日人たちの前半終了間近の出来事を聞かされ、監督の趙金雲は顎に手を当てて考えた。
「風だけかと思いきや、炎までもっていたとは。」
「それって、どういう意味ですか?」
タツヤが訪ねる。
「私は彼女の速さを見て、素早さに特化した月と「風」の魔女かと思っていました。しかし、現状は違いました。彼女はチームの先頭に立って、十人の選手たちを指揮する強さ、『炎』を持っていました。まぁ簡単に言えば、最初は小さな灯火だったものが、風や燃料などでいつしか山火事程の炎をもつほどの炎を持っていましたってことですかね」
確かに火は、空気という風を呑み込んで、やがては苦手なはずの水すらも飲み込むほどの燃焼力を持っている。危険だが、人にとっては無くてはならないもの。
「ですが、この調子だと、夜舞さんと花伽羅中の選手との風と炎はどんどん大きくなって、そのうち全てを巻きこむ竜巻か山火事になりかねませんよ」
いや、竜巻どころか、宇宙のごみ箱ブラックホールにすらなりえるだろう。
しかし、ブラックホールに風も炎も無い。むしろ、魔女らしい『無』だ。
「ですが、なぜ夜舞ちゃんは、あんなに速く動けて、尚且つ瞬発力も高いんでしょうか…」
「環境だね」
大谷がなぜだろうと首をかしげていると、隣で折谷の声が聞こえた。
「村を見ていたところ、外でスマホやゲームをする子供はいなかった。むしろ、積極的に森の中や家の外などで遊んでいるようにも見えたんだ。スマホの電波がここじゃ壊滅的に悪いの事も考えると、花伽羅村のような自然の村では、子供達は外で遊ぶしかなくなるから、そうやって力がついたんだと思うよ」
確かに、ここにはスマホはあっても、他の遊びとして流れ着くものは某携帯ゲームでもファミリーゲームにも携帯ゲームにもなるゲーム本体などの最新のゲームではなく、昭和のスマートボールか今よりかなり前のファミリーゲーム等の昔の遊びしか流れつかない。
そりゃあ、外で遊ぶしかなくなるだろう。
「そういえば、昭和の子供と現代の子供とでは、速さや力が全然違うというのを本で見たことがあります!」
「ええ! でも、同じ同年代の子ですよ!?」
大谷の言う通り、見た感じは同じ年代に生まれた子供だ。それなのになぜ、これほどまで差が出てしまうのだろうか。
「監督、夜舞のあの走りには、独特な何かを感じました。村の入り口にあった看板とここに来るまでの夜舞の話を見る限りだと、つい最近まで外部との交流を始めたそうだけど…」
「近年、スマホの普及による子供達の運動離れもあるだろうし、逆に考えれば、『夜舞たちの速さが普通』だとも考えられるよね」
タツヤと野坂が現代の運動不足についてを話す。
スマホやゲーム機等の遊び道具があまりなかった昔では、子供達は外か家にある将棋やオセロ等で遊ぶしかなかった。そのため、日々の遊びから体力と瞬発力と正しいフォームが備わったのだ。しかし、現代では外で遊ぶ子供たちは減ってきており、そのせいで小学生に入る頃には運動が苦手となってしまうケースもよくあるのだ。
その原因は色々あるが、やはり、『家で出来る遊び』の高性能化だろう。ある意味、『効率化と高性能と便利さ』に固執し過ぎて、人が生きる上で大事なものである筈の運動をおろそかにしてしまった現代人への皮肉ともとれるだろう。
「(いや待て…ということは……___うむ、なるほど)」
夜舞のスピードの対策法がわかったのか、鬼道はその口角を少し尖らせる。
「円堂、豪炎寺、夜舞のスピードを攻略できる方法が見つかった」
「本当か? 鬼道」
「あぁ、その方法だが…まずは確かめてもらいたいことがあってな…」
左手で情報が漏洩しないように口と円堂との耳の間に壁をしながら、鬼道はその攻略法を円堂に伝える。そして、豪炎寺にも同じ内容、そして豪炎寺にしか出来ない作戦を伝えた。
「出来るか? 豪炎寺」
「あぁ、任せろ」
豪炎寺が承諾すると、すぐに鬼道は作戦会議をしている趙金雲の元へと向かった。
「監督、俺に提案があります」
「なんでしょう鬼道くん」
鬼道といえば、「ピッチの絶対指導者」の二つ名をもつ選手だ。何か良い案が思いついたのかと、明日人たちは胸を高鳴らせていた。
「豪炎寺修也を、『DF』にしてもらえませんか?」
『!?』
MFならまだしも、DFだって!? と、明日人たちはその提案に驚きを隠せなかった。
「おや~? 防戦だなんて、鬼道くんらしくありませんねぇ~」
「そ、そうですよ! これでは攻撃陣が…」
チョウキンウンズにとって、豪炎寺はもはや攻撃の要ともいえるだろう。それなのにDFにさげるということは、攻撃陣が少なくなって点が入れにくくなるという欠点もあった為、坂野上の言うことは正しかった。
「攻撃なら、稲森と野坂がいる。豪炎寺には、「確認してもらいたいこと」があるからな」
***
「キャプテン。イナズマジャパン、FW陣の一人を減らして、MFの一人を前に上げましたね」
「名前は…豪炎寺修也と、稲森明日人だね」
試合は1:0。後半戦で豪炎寺をDFに下げ、代わりに明日人を前面に上げたフォーメーションにしてきたチョウキンウンズを見て、翠嵐は警戒態勢に入ろうとしていた。
「でも、頑張ることには変わりないよ! 行こう!」
「はい!」
花伽羅中お得意の速さを用いて、夜舞がボールを持って前線に上がってくる。この速さでは、仮にボールを奪って前線を走ったとしても、すぐに夜舞はディフェンダーとして後攻になってしまうだろう。途中ヒロトやフロイ達がパスコートを消すなどのディフェンスをしてきたが、それでも夜舞は前線を突っ切り、花伽羅中のスピードにヒロトたちは突破されてしまう。
「なんてドリブルだよ、あいつFWか!?」
「アスト!」
「まかせて! うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
夜舞の目の前を走る明日人に、夜舞は思わず足を止めたが、足の速い明日人を見て闘牙心が湧いたのか、かかってこいと言わんばかりにスピードを上げた。
しかし。
「『イナビカリ・ダッシュ!!』」
夜舞は明日人のイナビカリ・ダッシュによってボールを取られた上に、抜かされてしまった。
夜舞がすぐに戻ろうとするも、一星が進行方向を遮ってくる。
「明日人くん! ここからは一人で行くんだ!」
野坂たちが敵の進行を遮っている間に、明日人に攻撃を促した。
「わかった! うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
真っすぐ輝く稲妻の様に、明日人はFFIのスペイン戦で見せたドリブル技術で花伽羅中サッカー部の選手たちを追い越していく。
夜舞はどこまでも進行方向を遮ってくる野坂たちに苦戦しながらも、確実に明日人からボールを取り返そうと前を走っていた。
しかし、野坂たちの頑張りもあってか、チョウキンウンズはやっと攻撃のチャンスをつかめた。
「『サンライズ・ブリッヅ!!』」
「シルバー・ザ・ペェスル!」
FFI以降も特訓を続け、FFIよりも強くなった明日人の必殺技に餅付が対抗するも、銀の杵は折れ、攻撃の手は通ってしまった。
『ゴールッッ! チョウキンウンズ、一点を取り返したー!!』
一点を取り返し、明日人は攻撃に協力してくれた野坂たち、そして灰崎にもハイタッチを交わした。
「豪炎寺さんがDFになって、一時はどうなることかと思いましたよ~」
「でも、これで同点ですね!」
明日人たちが喜びあっている中、夜舞はそれを遠くで見ていた。
「…イナズマジャパンって…すごいね!!」
「夜舞先輩?」
「凄い根性だった! 私が何度も何度も追い抜いても、必ずといって私を遮って、明日人くんに攻撃のチャンスを渡されるその精神が、凄かったよ。鋼の根性過ぎて、恐ろしさも感じたよ」
悔しがることもなく、夜舞はイナズマジャパンの凄さに感服しているようにも見えた。
顔についた泥を拭いながら、夜舞は風に長い髪を靡かせる。ひんやりとしていて、熱くなった選手たちの体を涼しくしてくれるそよ風が。
「蛍くん。私がなんでイナズマジャパンの第三者に選ばれたか、知ってる?」
突然、先輩の夜舞から質問され、蛍は驚きながらも返答した。
「そりゃあ…夜舞さんが必要だからじゃないですか?」
「…イナズマジャパンの監督は、私に鋭さと強さ、そして優しさと美しさがあるから、私を第三者として選んだ。最初は、よくわからなかったけど…試合をして、やっとわかったよ」
強風のようなシュート、空にまでそびえたつようなゴールキーパーとディフェンダーの圧、槍を突くかのように前線へと上がるフォワードとミッドフィルダー。
しかし、どんなものには必ず穴があるように、何かしらの欠点がある筈だ。地上最強のチームが、あのユースティティアの天使に負けたのだから。
「私はこれから、イナズマジャパンに入って、ユースティティアの天使と戦うイナズマジャパンを、もっと強くしていかなきゃならない義務がある。これは、私の思い込みかもしれないけど…イナズマジャパンの監督は、私の強さを見る為に試合をすると言ってきた。つまりこれは、私にイナズマジャパンを強くする程の覚悟があるかどうかを計っているんだと思う。あんな風だけど…あの監督は、多分それくらいのことは考えていると思う。多分だけどね………」
そう仮定する夜舞。
趙金雲は、自分にイナズマジャパンを強くする覚悟と実力があるかを計る為に、試合を申し込んできたと、夜舞は言った。
「ほいほいほ~い♪」
まぁ、その監督、趙金雲は今呑気にドラゴンストライクというスマホゲームをしているのだが…
「それに、これは私だけじゃなく、私たち花伽羅中もそれに該当すると思う。あの監督は、私に覚悟を求めているだけじゃなく、イナズマジャパンに私たちというチームと戦って、経験と実力を上げる為に行っているんだと、私は思うんだ。つまり、勝っても負けても、私達は全力で戦わないといけない」
後半戦の準備が終わったイナズマジャパンを向きながら、夜舞は大きく息を吸った。
「この試合が、貴方達イナズマジャパンの実力を上げる通過点になるのなら…私は…いや私たちはそれに、全力で答えるだけだッ!!」
夜舞の言葉の圧に、明日人たちは夏の嵐の強風を感じた。夏でもないのに。
「みんなッ! これまでの為に修行をしてきた成果を見せるよ! 花伽羅第一式、『鳳凰乱舞』を!」
力の出せる限り地面を蹴り、靡く長い髪が体に追いつかないくらいの速さで夜舞は走り、一気にDFからMF、FWへとポジションを変え、夜舞を先頭にイナズマジャパンの区域へと走り込んだ。
勿論阻止するわけだが、そんな夜舞をフォローするかのように、蛍たちも夜舞と全く『同じ速さ』でフィールドを駆け回っており、まるで何もないフィールドの線をそこにある壁として見立てているかのように方向を変え、さらにその領域は地上だけでなく、お互いの長所を生かしたフォローで天空をも支配した。
「(なるほど…これが花伽羅中の必殺タクティクスというわけか…全員のスピードが夜舞以上になっている……)」
普通ならそんな速さをコントロールなんて中々出来ず、止まろうとしてもその位置から大きく離れた位置で止まってしまうだろうし、そして反動も大きいはずだ。実質かくれんぼの時で見た為、そんなスピードは夜舞でしか扱えないはずなのだ。それなのに、夜舞程とはいかないものの、夜舞のスピードを軽々と使いこなせている。
これは、夜舞の指揮か?
だとしたら、強い。
強すぎる。
小さな灯火からやがて全てを燃やし尽くす山火事以上の大きさになる炎のようだ。
「豪炎寺!」
前に進む春咲の動きを止め、出すであろうパス先を見切ったうえで豪炎寺は走った。予感は見事に当たり、豪炎寺は春咲が他の人物にパスをやる前にカット出来た。
「豪炎寺さん!」
坂野上が賞賛の声を上げるも、豪炎寺は攻撃はせず、フリーの野坂にパスを回した。
「野坂さん!」
「あぁ! ザ・ジェネラル!」
状況、そして相手の情報を確認し、そこから戦略を導きだそうと、野坂と一星はザ・ジャネラルという必殺タクティクスを発動する。
かつてその必殺タクティクスでチームを勝利に導いたとされるものに、夜舞は一時身じろぐも、すぐに元の表情へと顔を戻した。
「皆! イナズマジャパンの必殺技や必殺タクティクスなんて怖くないよ! 私たちは、私達の全力を見せればいいんだから!」
夜舞がチームを先導するように、勢いよく右手を前に伸ばすと、各場所で待機・進行していた選手たちは、一気にその戦意を上昇させ、戦場に切り込んだ。
「ザ・ジェネラルも恐れずに前に進んだ!?」
野坂が構えを取るも、先に先陣を切りこんだ蛍はその構えに対して物ともせずに突っ込んだ。そして、侍が刹那の瞬間に刀を抜刀し、相手を刹那とい短い時間の中で斬るかのような速さで、蛍はボールを取っていた。
野坂がボールを取られたことに気づかないくらいの速さで。
「夜舞先輩は、この花伽羅村と花伽羅中サッカー部の凄さを外の人達にも知らしめることが出来る、無名サッカー部だった自分達があのイナズマジャパンと戦えることを凄いと言ってました。そして、勝っても負けても全力のプレイをすると言ってました。だから、もう貴方たちのことを怖いとも思ってません! 情報だとかなんだかよくわかりませんが、それで俺たちを止められると思わないでください!」
小さな光を放つ蛍が集まって大きな光を放つかのように、蛍は大きな光を放ちながら先陣を突っ切る。
「閃光のファイアフライ・ナイトライト!!」
始めて成功した蛍の必殺技は、夜舞の指揮によって威力がパワーアップしており、さらに蛍たちの光を増しながらシュートした。
「ダイヤモンドアーム!!」
光の増した蛍たちのシュートは、もはや小さな右手には収まらず、大きなダイヤの手で止めるすべはなかった。
「ッ___でりゃあ!!」
腕を痛めながらも、なんとかシュートを弾いた円堂だったが、その零れ玉は、宙を浮いていた翠嵐の元へ。
「どんなに強い必殺技でも、弱点を見つけ、それ集中して当てれば、必ず道は開くッ!」
確かにそうだ。相手がどんなに強かろうと、どんなに強い必殺技を出そうが、弱点を突かれれば持たない。夜舞の喝からなのか、蛍だけでなく、翠嵐も、そしてチーム全員がポジティブな考えで試合を進めていた。
「翠嵐先輩!」
「いけー! 翠嵐くん!」
『!!』
翠嵐が指を鳴らすと、翠嵐の予想着地地点から曇天色の竜巻が噴き出し、同時に霧を出す。そして月の力である水と白の光が竜巻に集まると、ボールが勢いよく竜巻から吹き出し、それは竜の形を持ってゴールに襲い掛かった!
「ダイヤモンド・ハンド!!」
イナズマジャパンの守護神である円堂は、GKではあるが華奢で小さな体と小さな手な為、グラウンドの面積よりも全長が大きいドラゴンをこの手に収めることは難しかった。
『__どりゃあ!!』
が、さすがは円堂。ダイヤモンドの手でドラゴンを『抑える』のではなく、ドラゴンを空高い天空へと『弾いた』のであった!
そのため、ドラゴンの力を失ったボールは、雲を突き抜けた後、真っ逆さまに地面に落ちる。
だが、蛍の『閃光のファイアフライ・ナイトライト』の時よりも高い攻撃力と威力に、円堂は思わず膝をついてしまった。
「円堂さん! 大丈夫ですか!?」
「あぁ、なんとか…」
心配する坂野上にそう誤魔化し、円堂は痛む手を確認しようとグローブを外した。
「(手がヒリヒリしてきた…スピードだけじゃなく、攻撃力も上がってるのか…)」
着ける前は普通の肌色をした手が、今ではすっかり赤くなっており、それに円堂は花伽羅中の強さと夜舞の強さを実感する。
「(さすがに厄介になってきたな…だが)」
『(見つけた!)』
しかし、悪いことばかりではない。
なぜなら、円堂と豪炎寺は、試合の間に見つけたのだから。
「鬼道ー!! 俺、見つけたぞ!」
「鬼道、こっちもだ。確かにあったぞ」
「よくやった。こっちもそろそろ取り掛かるとしよう…」
***
一方その頃___東京に残ったルース達は___
「ベルナルドさん、検出したデータができました。今送ります」
「こっちもです。どうですか?」
オリオン財団日本支部の情報管理室で、ルースとマリクは琢磨と共同してユースティティアが雷門中以外に出現した地点を調べ、そのデータをロシアにいるベルナルドに渡しているところだった。
「なるほど…今確認したが、ユースティティアの主な出現位置は、『FFに出場したことのある学校』と、『強力な軍事兵器を持つ軍事施設』と言ったところだな…」
「ユースティティアは、サッカーに関連する施設と、兵器を持つ軍隊施設の他に、高層ビルが建て並ぶ街にも現れたという目撃情報も出ています。一体、ユースティティアの天使たちは何を…」
「それはまだわからない。とにかく、今は情報を集めることが最優先だ」
琢磨の問いに、ベルナルドは淡々と返す中、ベルナルドは脳内である人物の名と顔を思い浮かべていた。
あの人は今___何をしているのかと。
『[[邪念在りし人形代の陰陽玉]]』
しかしその時、部屋の壁がいきなり吹き飛び、とっさにルースたちは頭を守りながらしゃがんだ。壁が吹き飛んだ瞬間、部屋の外から人形代によく似た半紙たちが大量に部屋の中へと吹き出し、部屋の床一面を人形代で埋め尽くす。数千枚もあるその人形代の中には、半分だけ黒かったり、全身が黒かったりとした人形代もあった。
「人形代とは、己の三つの罪によって出来た穢れを、自分に見立てた形代に移して自分自身を払う神具。式神のように、己の欲の為だけに使う依代ではない」
光が差し込んだ部屋に、部屋の外の光による逆光によって出来た影が、部屋の中に入ってくる。
その影の白い両翼をみて、マリクは絶句する。
「そして___この人形代は全て、ここまで来るまでに救済してきた、そして倒してきた、人間たちの罪の結晶だ。全身が黒かったり、半分だけ黒かったりしたものがあっただろう。あれこそが罪であり、人の穢れだ」
翼を閉じたレンの後ろには、警備員たちが大勢倒れている。
そしてレンの左手には、人間のものであろう血がその手から水滴としてぽたぽたと落ちている。
「………フロイさん…」
「すまないが、こちらの素性を探られると困るのでな、少し手荒になってしまうが…」
右手に七枚のお札、そして血塗られた左手に、この部屋に居る人数分の白い人形代を出しながら、レンは言った。
***
何かを見つけ出し、それを鬼道へと報告した円堂と豪炎寺は、皆を集めて作戦会議へと乗り出した。
その内容は、明日人たちにもわかるもので、なおかつ簡単なものだった。
それと同時に、花伽羅中サッカー部と本気で戦いたいという気持ちが湧き、全員が同じ気持ちだった。
「………ということだ。出来るか?」
鬼道の質問に、一同は一斉に頷いた。
相手が自分達の実力を高める為に本気で戦っているんだ。
こっちも、それに答えなければならない。
たとえそれが、山の木々を燃やす山火事に向かって消防服も着ないで突っ込むような無謀過ぎるものだとしても。
「鬼道さん、本当にこれで大丈夫なんですか?」
「安心しろ。俺が言うんだ」
「本当に安心できんのかはどうかは知らんけどな…」
鬼道が形取ったのは、頂点の線が交差するように出来た四角形の陣営で、その交差する一点には、作戦を提案した鬼道が立っている。
イナズマジャパンによる謎の陣形に、蛍たちは頭にクエスチョンマークを浮かばせた。
「何をしているんでしょうか…」
「何かの作戦だとは思うけど、怖気ずに行こ!」
夜舞たちが、鳳凰乱舞でボールを取ろうとする瞬間に、鬼道はフェーズを開始するかのように、指を鳴らした。
「今だ!」
その瞬間、ボールを形作る五人の中で、不規則に回していった。
「な、なにこれ!?」
イナズマジャパンのことを良く知る夜舞も、これには少しばかり驚いていた。
「ま、まるで火山岩のようです…」
蛍は、これを火山岩と称した。なぜなら、ボールを回していくスピードは少しずつ速くなっていき、最初はなんの変哲もないパス回しが、いつの間にか火山が噴火したかのような火山岩のようになっていた。
しかし、火山岩のようなパス回しを見ても怖気づかない心を持つ夜舞と蛍は、お互いに意を決して火山岩の中へと飛び込んだ___!!
「火山岩は__『おとり』だ!!」
その時_豪炎寺がボールを上空高く打ち上げたかと思えば、前線で待機していたフロイに向かってボールを撃ち飛ばした!
「「おっ、おとり~~!!!??」」
思わず拍子抜けしてしまった夜舞たちは、上手く着地できず、そのまま地面に尻餅をついてしまった。
「いったたたたた…ま、まさかおとりだなんて…」
ヒリヒリと痛む尻に手を当てながら、夜舞は立ち上がった。
「俺達は最初に、お前の速さを見て、まず最初に『方向転換がしづらくなる』という弱点を見つけた。だが、お前には一人で突っ切る風ではなく、仲間と共に勝利へと向かう炎があることを知った俺は、まず最初に豪炎寺をDFに回した」
「ま、まさか!」
「そうだ! 豪炎寺には動く範囲の少ないDFの位置で、お前達の強さ、『心の強さ』を見切ってもらい、あとは俺達が、その心の強さを突いたんだ!」
そう、鬼道と円堂は気づいていたのだ。
夜舞たちのスピードが上がる度に、『方向を変えるための足が、強くなっている』ことに。しかし、それでは難しかった。だから、豪炎寺にはDFとして夜舞たちの速さとコートを確認してもらった上で、先ほどの作戦(タクティクス)が出来たのである!
「なるほどな。DFならMFと違って動くことが少なくなるから、コートと夜舞たちのスピードを見極められるってわけか!」
「さすがだね。鬼道くんは」
「(こ、これがイナズマジャパン…凄い機転能力…でも__)」
想定していなかったことを見事に自分達の目の前で繰り出され、膝をついていた夜舞だったが、すぐに立ち上がった。
「…さっきは一歩掴まされちゃったけど、試合はまだ終わってない! 美しき花を咲かせる花の如く、私達は前の一秒よりも、強くなるよ!」
「フッ…楽しみにしている」
試合は一気に変貌を遂げた。
先ほどまで花伽羅中サッカー部が有利だったのを、イナズマジャパンが一気に同じところにまで追い上げたのだから。
『イナズマジャパン、花伽羅中サッカー部の必殺タクティクス、『鳳凰乱舞』を見事にクリアしました!!』
実況の声と共に、盛り上がるギャラリーたち。
「まだまだ行けるよね! 皆!!」
「皆!俺たちも頑張るぞ!!」
『はい!!』
『おおーっ!!』
円堂の号令と夜舞の指揮が、グラウンド中に壮大なオーケストラを奏でる。
「全速前進で行くよッ!! 皆!」
「行けーッ!! みんなー―ッ!!」
DFでありながらFWのようにフィールドを駆け回る夜舞の指揮に、蛍たちはそれに答えるようにスピードを上げる。
GKでその場に鎮座するものの、その安心感は常にチームの士気を安定させる円堂の号令に、イナズマジャパンの熱気はとんでもないものとなる。
「いくぞ! 必殺タクティクス、『静と動』だ!!」
かつてのタクティクス『柔と剛』を進化させた『静と動』は、さらに遠くの選手にも届くように進化されていた。
「させない! 鳳凰乱舞!!」
夜舞を筆頭に蛍たちは縦横無尽に駆け回る為、必殺タクティクスに必要な陣形が上手く立てられず、夜舞にボールが渡ってしまった。
しかし、夜舞は防戦でいることを確定し、前線にパスをしたと同時に元のポジションへと戻る。
それは、これから起こるイナズマジャパンの新必殺技の鼓動を感じたからだ。
「特訓していたこの技を、使う羽目になるとはな」
「しかも、相手は花伽羅村__負けていられないな」
『プライム__レジェンドォォォォォォォオオオオオ!!!』
豪炎寺と鬼道のプライムレジェンドは、一気に花伽羅中サッカー部のゴールへと突き刺ろうとしている。
「『ライトチェーン・ダークロープ』!!」
爆熱スクリューの時に見たDF技でシュートブロックするも、ボールを防ぎきれず、ゴールへと突き刺さった。
これで[[rb:1 > 花伽羅中]]-[[rb:2 > チョウキンウンズ]]だ。おまけに残り時間も少ない、花伽羅村サッカー部にはもう後がなかった。
しかし、花伽羅村のボールで試合が再開すると、夜舞は即座に前線へと走り、シュートの体制となった。しかしそれは、ムーンライト・メテオなどではなく、『花伽羅村サッカー部の最終奥義』とも呼べるものだった。
「この技を使うことになるとは…しかも、その初の相手は、イナズマジャパン!!」
「そうだね…これがッ…花伽羅中サッカー部最後の[[rb:砲撃 > シュート]]ッ__蛍くん!」
「はい!」
月の光をバックに、夜舞が魔法陣によって出現させた百合の形をした淡いピンク色の花たちは、ゆうに蛍の身長を越えていた。その直後に、蛍と夜舞が同時に両手を叩くと、蛍の周りには月の満ち欠けを意味するようなサッカーボールくらいの大きさをした八つの月、夜舞の周りには先ほどの花の小さな花びら。
『花伽羅四季最終奥義ッ・月華花吹雪!!』
蛍が月を一つずつ体制を変えながら蹴っている後ろで、夜舞は右の手のひらをゴールに向けた上で、花びらを大量に放っていた。それも、花びらでフィールドが埋め尽くされてしまうほどに。
八つのボール(月)と大量の花びらにも負けずに、円堂は渾身のダイヤモンドハンドを繰り出した!
「うおおおおおおおおおっ! ダイヤモンドッ・ハンド!!」
八つの月ダイヤの手で跳ね返せたものの、蛍の後ろで、月の光の前で月光の魔女のように鎮座する夜舞の出す花びらがやっかいだった。
目くらましにもなる花びらは、なんと威力も強烈だった。ただの花びらなのに。
さすが、花伽羅中サッカー部の最後の砲撃だ。
「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
なんと円堂は、拳を閉じて、花びらの砲撃に向かって___
『正義のッ……鉄拳!!』
金色のダイヤモンドの拳が、花びらを押し返す!!
その瞬間、砂埃と必殺技による花びらが混じり、チョウキンウンズ側のゴールが見えない。
風が吹いて、砂埃が晴れると、そこには息を荒く吸ったり吐いたりしている円堂の姿。
しかし、円堂の傍には__ボールがゴールの外に転がっていた。
『ここで試合終了!! 勝者は_チョウキンウンズだぁああああ!!』
実況の声が響くグラウンド。
チョウキンウンズの勝利に、明日人たちは自分達の勝利への喜びを実感していた。
「(なるほど…ツクヨ達の指揮を、逆に物にする戦法をよく、試合中に思いついたものだ…。ほんと、改めて感心させられるよ)」
フロイの傍で勝利を喜び合う明日人たちを見て、フロイは二か月前のイナズマジャパンの活躍を、この身に奮い立たせながら感心していた。
「円堂さん凄いです! まさか、雷門中に帰った時に習得した技なんですか!?」
坂野上が何やら興奮していた。そりゃあ、自分の憧れる人が突然新必殺技を出したら、誰だって興奮するだろう。
「まぁな。ユースティティアの天使が来る前、福岡の陽花戸中の校長から俺にってじいちゃんの裏ノートが送られて来たんだ。それを見て、特訓してみたんだ! パッと開かず、グッと握ってダン!ギューン!ドカーン!!ってな!」
「だ、ダン、ギューン、ドカーン…?」
「ますますわけがわかんねぇよ…」
ジェスチャーをつけてその壊滅的な語彙力を表現するも、明日人と灰崎にはそれはわからなかった。
「最近やたら特訓していたのはそのせいなんだな」
「はは! でも、ドカーンだけはわからなくて、途方に暮れていたんだけどな~」
「え、円堂さんも途方にくれる時ってあるんですね…」
「だけど、父ちゃんと一緒に海に行って、サーフィンをした時にそのドカーンの感覚がつかめたんだ!」
なぜサーフィンで掴めるのか。というツッコミは、明日人はしなかった。
「あちゃ~負けちゃったか~」
負けてしまったとはいえ、何やら満足そうな顔で笑う夜舞。
「と、とても試合に負けてしまった時の顔とは思えないですね…」
「夜舞先輩は、ああいう人なんですよ。えっと…坂野上くん」
「そ、そういう人なんですか…蛍くん…な、なんだかとても魔女の風格が見えませんね…」
「そうですね…実は、僕も月光の魔女っていう二つ名からして、怖い人なんだろうなと思っていた時期があったんですよ」
「そうなんですか?」
「あれ? 坂野上くんもそう考えていたんですか!?」
「そ、そう! 俺もこの村に着く前は、夜舞さんのことを拳法や日本刀などで戦う人だと思ってて…」
「ちょ! ふふっ、あはは! 夜舞さんは日本刀で戦ったりしませんよ~! 思わず笑っちゃったじゃないですかぁ~!」
「しょ、しょうがないじゃないですか! 俺もそうだと思ってたんだから!」
「ま、まぁ実際夜舞さんは拳法を習ってますけどね…」
「え!? それ本当なんですか!? ぜひその話を聞かせてください!」
坂野上は蛍からの夜舞の武勇伝を聞き、その内容に驚いていた。
その頃明日人たちは、チョウキンウンズに入る夜舞にお互いに自己紹介をしていた。
「俺、キャプテンの円堂守だ! こっちは豪炎寺修也で、そっちは鬼道有人だ。よろしくな! 夜舞!」
「よろしくな」
「よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします! 円堂『先輩』! 豪炎寺『先輩』! 鬼道『先輩』!」
「え?」
『えええええええええええええ!?』
今まで、円堂などの年上の人間には、苗字のあとに「さん」をつけて呼ぶものだったが為に、夜舞の先輩呼びに、明日人たちは驚きを隠せなかった。
「そ、そんなに驚く? 年上の人に先輩呼びは普通だと思うけど…ほら、蛍くんだって私を呼ぶときいつも夜舞先輩って言ってるし」
「や、夜舞さんの中では、これが普通なんですね…」
「うん! よろしくね、一星くん!」
一星の右手を両手で包みながら、夜舞はよろしくの握手する。
その時傍にフロイが居た為、彼にも自己紹介を進めた。
「えっと、君は確かロシア代表のキャプテン、フロイくんだよね?」
「僕のこと、知っていたんだね」
「うん! FFIの時から知ってたよ! わぁ~さすがイケメンだね! あとで女の子たちを呼ばないと! それにしても、かのイナズマジャパンのユニホームを着ているのを見ていると、なんだか新鮮だね!」
女の子たちは二か月前、フロイ・ギリカナンという選手に夢中だったのだろうか、子供達にあとで見せると言っていたあたり、そうなのだろうか。
「夜舞さん、実は俺達のチーム名は、イナズマジャパンじゃなくて、チョウキンウンズという名前なんですよ…」
「え!? イナズマジャパンじゃないの!? それになんだか…名前がダサいね…」
しょぼんとしょげる素振りを見せる夜舞。彼女のアホ毛も下がっている辺りから、どれだけ彼女がイナズマジャパンの勇姿を見てきたかがわかる。
「うん…ダサいよね…」
あの明日人がそういうあたり、やっぱりダサいのだろうか。でもまぁ、あのユニホームじゃないだけましだが。
「あ、そうだ! じゃあチーム名を一緒に決めるというのはどうかな? 出来るだけ、かっこいいので!」
すると夜舞は、すぐにしゃんとしたかと思えば、チームの名前を皆で決めようという話を持ち掛けた。
「おーそれいいな! みんなも、いいよな!」
キャプテンの円堂が賛同すると、ここにいる全員が異口同音に賛成と言い、案を出し合った。
「じゃあ、言い出しっぺの私から…『ロンギヌスの槍』!」
『おおー!!』
言い出しっぺにしては中々いいチーム名で、夜舞を除いた全員が大いに感心していた。
神を殺す槍_おそらく、天使にも響くだろう。
「次は俺だな、えーっと…『天使殺しのイナズマジャパン』とかは?」
「名前的にアツヤを意識したんだとは思うけど…少し物騒すぎるよ、円堂くん」
吹雪にそう言われ、円堂はあっ! と驚いた仕草を見せる。
「『天使を殺す者達』は?」
「お前もだ明日人」
思いついたように明日人はチーム名候補を言うも、円堂さんと同じだと灰崎に突っ込まれた。
「じゃあ灰崎くんは何か良い案があるとでもいうのかい?」
「あぁ? お前はどうなんだよ野坂」
「『悪滅・正義の天秤』かな?」
「な、なんだか監督までとはいかないけど、ダサいような…」
「そうかな? 僕はかっこいいとは思うよ、明日人くん。さ、次は灰崎くんだよ」
「俺かよ…まぁいいぜ。……『アース・プロテクター』…はどうだ?」
「「えっ」」
自信満々に言った灰崎のチーム名候補は、意外にもかっこよくて、明日人と野坂は思わず絶句する。それに関して灰崎が突っ込んだ。
「んだよその反応」
「いや…灰崎にしては凄くいい名前だなって…」
「しては、が余計なんだよ」
そう灰崎が言った時、遠くでチョウキンウンズを見ていた蛍が明日人たちに話しかけてきた。
「俺もいいですか?」
「構わないよ、蛍くんも何か思いついたのかい?」
「『七色星色(シューティングスター)』なんてどうですか?」
『(中二臭い……)』
さすがに蛍の出した案は中二臭く、(彼は中一だが)明日人たち三人は同じして中二臭いと思った。
「『スパーク・ブラスター』とかは?」
「その名前は、必殺技の方が似合うと思いますよ。砂木沼さん。今度新必殺技を作る時に使ってみてはいかがですか?」
それぞれが案を出すも、中々いい案は見つからない。今のところ夜舞と灰崎がチーム名にしては相応しいが…
「一星くんは、どうだい?」
「お、俺ですか…!? えっと…」
野坂にチーム名のことで話しかけられ、一星は思わず身じろいだ。
そうですね…と、一星はしばらく棒で砂に文字を書いていた。
すると、一星は思いついたのか、立ち上がってこう言った。
「『人類最後のラスト・トランプ』…いや、『ラストワード』なんてどうですか…?」
一星のシンプルかつ素敵なチーム名に、明日人たちは思わずその場に静まり返った。
「お、それいいな!」
「でも少し寂しいですね…」
「じゃあそれを土台に、皆の意見を組み合わせてみようよ!」
皆の想いを一つに___
そして。
「出来た…」
「今日からチーム名は…
『ラストプロテクター・アースだ!!』」
『おおーっ!!』
様々な組み合わせを考えた結果、灰崎と一星の意見を組み合わせた、「ラストプロテクター・アース」というチーム名になった。
「凄いです! かっこいいです!!」
「もしかしてこれも、チームを強くする為の策略だったんですか? 夜舞さん」
夜舞は、チームを強くする為に選ばれたのだと確信していた。その為杏奈は、先ほどのチーム名決めも、チーム全体の士気と信頼度を上げさせるための作戦だったのではないかと思っていた。
「うん。チーム名がダサかったから、チームの士気と信頼度を上げさせる為に皆でチーム名を考えようってことになったんだ。………でも、それをしなくても元々信頼度も士気も最大限だったね! 杏奈ちゃん!」
グッ! と拳を握りながら、感心していた夜舞を見て、杏奈は微笑んだ。
「そーいう目論見だったんだなぁ、夜舞」
「あ、不動先輩。聞いてたんですね」
頬を緩ませながら言う夜舞。
「なんとか、チームの第三者としての初仕事が終わったな」
「そうですね。あと大丈夫ですよ、不動先輩。私はこれからも、チームの第三者としてしっかり働きますから!」
「まー頑張れよ」
「はい! 頑張ります!」
右手を額に当て、頑張るのポーズを夜舞はする。
「(ツクヨ・ヤマイ…さすがは、チョウキンウンに選ばれた、第三者だね…)」
遠くで夜舞を見つめていたフロイ。すると、彼のポケットからスマホの着信音が鳴りだした。
「はい。……うん、マリクがどうしたの? ……え!? オリオン財団がユースティティアの天使の襲撃に遭った!?」
オリオン財団がユースティティアの天使の襲撃にあったというフロイの大声で、明日人たちの視線は一気にそれに集まる。
『一応、マリク様、ルース様、タクマ様は無事でしたが…オリオン財団支部の一角である日本支部の建物が壊されてしまいまして…』
「わかった。危なそうだから、マリクたちをここまで連れて来てはくれないかな。場所は、花伽羅村だ」
オリオン財団の職員たちからの電話に受け答えをし、職員はマリクたちをここまで連れてきてほしいという願いを聞き、職員から電話を切った。
「フロイ、どうしたの?」
「アスト…実は、マリクたちの居る日本支部のオリオン財団が、ユースティティアに襲撃されたみたいなんだ…」
『ええ!?』
ユースティティアは外部の人間にまでそこまでするのかと、明日人たちは驚いた。
「マリクもルースも、君の父さんも無事だよ。このままあそこに居たら危険そうだから、三人にはここまで来てもらうことを取り立てたから…」
フロイが自分達が試合をしている間に何が起きたのかと説明している中、一星はオリオン財団という言葉を耳にして、急激に頭が痛くなるのを感じた。
「ッ____!!」
それも、試合前に起きたのとは比べ物にならないくらい酷く、そして吐き気や倦怠感(けんたいかん)も感じていた。
まるで、『化物』が体の中で暴れ回っているように__
『オリオン財団ガ__憎イ。俺の家族ヲよくモ奪ッテクレタナ___!!!』
自分の頭の中に響いたその声は、一体誰だったのだろうか。自分の心の中の叫びか、それとも、『化け物』か___。
しかし、意識を失う一星には、それが何なのかを知る由もなかった。
炎はいつだって、神と動物と人間と『化け物』を呼ぶものだ。
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