「は?さっき言っただろう。不死身の化け物だって。」
私がそう言うと、少年は、
「ああ、いや、今のは答えてほしくて聞いたんじゃねぇ、あんたが、あんまりえげつない魔法かけられてるもんだから、あんたが、一体何についての記憶を消されてんだろうなって思ってさ。」
と言った。
「私にかけられてる魔法って、そんなにやばいものなのなのか?」
「ああ、ヤバいね。超ヤバいね。」
「具体的にはどの位やばいんだ?」
「その魔法をかけるには、生贄が10人は必要だって言えば、伝わるかな?」
「え」
「わぁ~お。すごいね~。おじさんのために~、たくさんの命が~、ギセイになったんだね~。」
今まで全くしゃべらなかった女の子が、突然口を挟んだ。
「その魔法を~、かけた人は~、よっぽどおじさんに~忘れてほしいことが~、あったんだね~。」
「少年、この魔法は、どうやったら解ける?」
私は、少年に尋ねた。
「ああ、解くのは無理だぜ。」
「え?何でだ。」
「それ解いたら、おっさんが死んじまうから。」
「何だと。」
「その魔法、かけられちまった時点で、おっさんが忘れてる何かを、思い出すのは不可能ってこった。諦めな。」
「・・・・・・わかった。」
私は、一体、なにを忘れているんだ?
「ところで、おっさん。あんた、自分がここに来た理由、忘れてねぇか。」
「え?理由なんてあったっけ?」
「黒い液体、だろ。」
「あ、そうだった。」
「おっさん。ぼけてんじゃねえのか?」
「失礼な。私はまだ825才だぞ。ぼけるわけがない。」
「まあいいや。で、その黒い液体だけど、ちょっと直接見ないことには判断できなさそうだから、その液体のとこまで、案内してくんねえか。」
「ああ、かまわんぞ。」
「おっさん、今すぐ出発できるか?」
「え、まあ、出来はできるが」
「よし、じゃあいくか。」
「いってらっしゃ~い」
女の子がのんきな声でそう言うと
「おう、いってくるぜ。」
と少年が返した。
「おっさん、宿まで後どれぐらいだ。」
「この吹雪の中で、私にそれが分かると思うか。」
「思わねえ。」
「わかっているなら聞くな。」
街を出てからかなり経つが、宿屋白梟に全然着かない。
こんなに遠かったか?
もしかしたら、この吹雪のせいで、方向を間違えたのかも知れない。
だとしたら、かなりまずい。
私の住んでいるあの盆地までの間に、宿はあそこしかないのだ。
「兎に角、今は歩くしかあるまい。」
「あ~~寒っむ!」
少年がくしゃみをする。
ん?あれ?我々は不死身だったよな?
あ、じゃあ別に休まなくったって、死にはしないのか。
「少年、盆地まで歩き通すぞ。」
「はぁ?」
「我々は不死身だから、多少無理は効くはずだ。だから、歩くぞ。」
「え?やだ。」
「え?いやなの?」
「あったり前だろ。これ以上歩いたら、疲れちまうじゃねえか。」
「いや、でも死なないんだし、もう少し根性出してさ。」
「うわっ、出た、根性論。これだから昔の人間はいやなんだ。」
「お前だって、最近の人間ではないだろう。」
「800年生きてるおっさんに比べりゃ、十分最近の人間だろ?」
「いや、お前、人間じゃないじゃん。」
「・・・・・・おっさん。」
あ、いかん。怒らせてしまったかな。
「なんだ。」
「確かにそうだな。」
良かった。怒ってないっぽい。
「でも、俺が人間かどうかは今重要なことじゃあねえ、だろ?」
「ああ、その通りだ。」
「今重要なのは、おっさんは古い、俺は新しいってことだろ。」
「ああ、その通りだ。」
「で、おっさんは古くせぇ奴だ、だろ?」
「・・・ああ、その通りだ。」
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