これからもコツコツと続けて参りますので、なにとぞご容赦を。
「少年、盆地が見えたぞ」
「ああ、俺にも見えてるぜ」
あの吹雪は、思ったよりも早く終わった。加えて、我々の向かっていた方向も、間違っていなかったらしく、街を出発してから丸一日と少し、盆地が見えてきた。
日はもう暮れかかっている。
「少年、見えこそしたが、まだ盆地は遠い。どうだ、今夜はここで野宿しようじゃないか」
「わかったぜ。明日は、おっさんの家で休めるんだよな?」
「もちろんだ。私の家の布団はフカフカだし、食料も沢山ある。」
喋りながら、私は、地面に積もった雪の上に、断熱耐火シートを敷き、その上に、街で買っておいた薪を、燃えやすい形に組み上げ、着火材を下に潜り込ませ、マッチで火をつける。
「おっさん、手際がいいな」
「こういうのは、数をこなせば自然と覚えられる」
「へぇ」
「家には火種があるから、この作業の大半はいらない」
「そうなのか。ところで、ここからおっさんの家までって、どのくらいかかる?」
燃え始めた火が、パチパチと歌いながら踊る。
「私の家は、盆地の中心にある。ここからなら、半日ほどだろう」
「そうか。じゃあ、おっさんが見た、黒い液体について、いつ存在に気付いたのかから、話して貰っていいか?」
「ん?まだ話してなかったか?」
「ああ。話してない」
「じゃあ話すか。
私が、あの黒い液体の存在に気付いたのは、今から4日前の事だ。
盆地一杯に溜まった黒い液体を、私はその日にみた。」
「おい、おっさん」
「何だ、まだ話は始まったばかりだぞ」
「おっさん、どこに住んでんだ」
「?さっきも言ったろう。盆地の中心だ。」
「盆地の中心って事は、周りより標高は低いんだよな?」
「当たり前だろう」
「んで、黒い液体は、おっさんが気付いた時点で、盆地一杯に溜まってたんだよな?」
「そう言ったろう。全く、なにが言いたいんだ。」
「四日前のその時点で、おっさんの家、黒い液体の中に沈んでるよな?」
「・・・あ」
確かにそうだ。
私は、4日前の朝も、普通に家で起きたんだ。あのときすでに、私の家が沈んでいないと、話の辻褄が合わない。
「・・・だが、私は、あの液体の中を泳いだ覚えはないぞ。」
「・・・こりゃあ、思ったよりヤバいもんが相手かもしれねえな。」
「どういう事だ?」
「さあな。取り敢えず、今日はもう寝ようぜ。」
「そうだな」
「そういえばおっさん、この辺に猛獣っていないのか?」
「いや、いないと思うぞ。」
「というか、そもそも、この辺に俺たち以外の動物っているのか?」
「そりゃあ、当然、いるだろう。」
「でもおっさん、ちょっと耳を澄ましてみてくれよ。」
少年の言葉に従って、私は耳を澄ませる。
…静かだ。音がしない。
動物の気配を、感じない。
お粗末様でした。
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