「おっさん、朝だぜ」
「・・・ああ、そうか」
「そうか、じゃねえよ。起きろよ」
「そうだ・・・な・・・zzz」
「起きろ!」
「わかったわかった、起きればいいんだろ?」
私は渋々、寝袋から這い出す。
吐いた息が白い。
今朝も寒い。
「おっさん、火ぃ起こしてくんねえか」
そう言われて少年の方を見れば、昨日焚火があった場所を、木の枝で突いている。
「よし、木の枝集めてこい」
私がそう言うと、少年は近くの林へ歩いて行った。
さっきまで少年がつついていた場所を見やる。
燃えかすがぽつんと残っている。
少年が戻ってくるのを待つ間に、リュックの中から、交易所で手に入れておいた、乾物を取り出す。
ん?あ!斧買い忘れた!
「おっさん、どうした?」
木の枝を抱えて戻ってきた少年が、天を仰ぐ私を見てそう言った。
「・・・いや、何でもない」
多分私の顔は大丈夫じゃないと言っているが、私はそう言った。
「あっそ。木の枝持ってきたから、火、つけてくれよ。もう寒くて仕方ねぇ」
「ああ、わかった」
昨日の燃えかすの上に、木の枝を組む。そして、枝を一本とって、燃えかすをほじくり返す。
すると、灰の下から火種が出てくる。
そこに息を吹き込んでもいいが、面倒くさいので、着火材を放り込む。
組み上げた木の枝があっという間に火だるまになる。
「ああ~あったけ~」
少年が手のひらを温めている間に、私はリュックからパンとチーズを取り出す。
それぞれいい感じの大きさに切って、少年にそれぞれ一切れずつ渡す。
「ありがと」
「私も一切れ頂いてもよろしいですかな?」
そう声をかけてきた、老人にもパンとチーズを一切れずつ渡す。
「それにしても、今朝は冷えますね」
老人がパンの上でチーズを溶かしながら言う。
「ほんと、神様はなに考えて、世界をこんなにも寒くしたのかね」
少年も、パンを焼きながらそう言う。
「世界全体が寒いわけではない。ここがたまたま寒いだけだ。」
私は、鍋にミルクを注ぎながら言う。
ところで、一人増えたな。
物凄い自然に入ってきたので、受け入れることにしたが、何故老人がここにいるんだ。
「ところでじいさん、あんた誰だ?」
「私は、白梟という宿の主です。」
老人がパンを齧りながら言う。白い髭に何故チーズが付かないのか気になる。
「あんた、黒い液体を知ってるか?」
少年が、チーズを伸ばしながら言う。
私はミルクの入った鍋を火にかける。
鍋を吊すためのスタンドは、私の右手だ。
やるんじゃなかった。
「ええ、存じ上げておりますよ」
言いながら、老人は、背負っていた袋から、棒の束を取り出した。
「そこの盆地にたまっている、あの忌々しい液体のことは、よく知っています」
老人は、取り出した棒の束を引き伸ばした。
そして、その束は、三本足のスタンドになった。
老人は、私から鍋を受け取り、スタンドにかけた。
助かった。二の腕が悲鳴をあげている。
「あれは一体何なんだ?」
少年は、そう言って、パンの最後の一口を、口に放り込んだ。
老人は語る
「あれは『黒の水』。過去を歪めてそこにあり続ける物です」
自分で作った伏線が、既にキャパオーバー