一羽のトゥレが、目を覚ました。
盆地の斜面に掘られた穴から顔を出すと、もう日は高く上っていた。
昨日の吹雪で積もった雪に日の光が反射して目がくらむ。
いつものように、美味しい草を探しに行こうと足を一歩踏み出すと、ぴちゃり、という音がした。
てっきりふかふかの雪を踏むだろうと思っていた彼は、不思議に思い、足元を見た。彼の真っ白な毛で覆われた足は、黒く染まっていた。
驚いて顔を上げた彼の目に映ったのは、盆地の半分まで満ちた、黒いm
10月29日 雪
朝起きると吹雪は収まっていた。
食堂に行くと、テーブルの上に朝食が用意されていた。
メニューは、パン、目玉焼き、トゥレのベーコン、そして、焦げ茶色の見たことのない飲み物だった。
老人によると、異国の飲み物らしい。
粉々にした豆から作られているそうだ。
飲んでみると、とてつもなく苦かった。
老人は悶える私に、
「砂糖を入れて飲むと美味しいですよ」
と笑いながら言った。
出来れば飲む前に教えて欲しかった。
朝食を全て頂いた後、宿泊費を払い、宿屋
「ザクザク、ザクザク」
静かな雪原に、私の足音だけが響く。
この静けさが私は好きだ。
かつて南国に暮らしていた私は、旅行で訪れたこの土地のこの静けさに惚れて、そのままここに住み着いた。
雪の作る静寂は、森や山のそれと異なる。
雪が音を吸い込むことで、完全な静けさができるからだ。
このことを友達に話すと、訳が分からないという顔をされた。
彼らは、生まれたときからずっとこの静寂のなかを生きてきたのだ。
きっと、よそからきた私とは感じ方が違うのだろう。
静寂の中を、歩く、歩く、歩く──────────
だんだん辺りが暗くなってきた。そろそろ日が沈む。
おかしい、いつもならもう交易所に着いているはずなのだが、、、
そうか、雪か。
昨日の吹雪でいつも以上に積もった雪が、歩く邪魔になっているのか。
夜はとても冷える。何としてでも夜が来るまでに交易所に着かなければ───────────
「奇遇ですね。」
突然声を掛けられたことに驚いて振り返ると、そこにいたのは、宿屋
ドー(現実世界のトナカイのような生物)二頭に牽かれたそりに乗っている。
辺りはこんなに静かなのに、そりの接近に全く気が付かなかった。気配もしなかった。
何というか、まるで突然降って湧いたかのようだった。
「どうしてここにいるんだ。」
そう尋ねると、老人は
「交易所までお送りしましょう。」
といった。
質問に答えるつもりはないようだ。
「歩いて向かっていては日暮れまでに到着できませんよ。」
と言いながら、老人は手を差し伸べてきた。
私はその手を借りることなく、そりに乗り込んだ。
「それでは出発いたします。」
老人は微笑みながらそういい、軽く手綱を引いた。そりは雪の上を滑るように走り出した。
お粗末さまでした
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