黒の水   作:matome0101

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交易所

「見えてきましたよ」

 

 と老人に言われて、私は、自分が少し眠っていたことに気が付いた。

 

 老人の指さす方を見れば、遠くに、街が見えた。

 

 交易所と、それを取り囲む建物群の作る街だ。

 

 日はまだ暮れていない。

 

 暫くして、(そり)は街の入り口である門に着いた。

 

 (そり)を降りて門の方を見やると、人の出入りの番をしている男が、こちらに歩いてきていた。

 

 老人に礼を言おうと(そり)の方を見て、、、

 

 老人は、乗っていた(そり)と共に居なくなっていた。

 

 現れたときと同様に、いつの間にか消えていた。

 

「おい、あんた街に入るのか?」

 

 はっとして振り返ると、先程こちらに歩いてきていた男だった。

 

「今ここに、(そり)とそれに乗った老人がいなかったか?」

 

 私は(そり)のあった場所を示して言った。

 

「いや、そんなものは見なかったぜ。そんな事より、入るのか、入らないのかを教えてくれ。そろそろ門を閉めるんだ。」

 

 私は男の言葉に驚いた。この街は、一日中出入り自由だったはずだ。どうして門を閉めるのか聞くと、

 

「最近、夜になるとこの辺に怪物が出るんだよ。それで、そいつが待ちに入ってこないように、最近は夜になると門を閉めることになってんだ。今日はもう閉めるから、入るならとっとと入ってくれ。あ、それと名前と街に来た理由、どのくらい滞在するつもりかを教えてもらってもいいか?」

 

 私は質問に答えながら男と門に向かって歩いた。男が門を閉めるとき門の隙間から見えた雪原は、一面真っ平らで、(そり)の走った後は全く無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────と言う訳なんだが、お前はあの黒い液体について何か知らないか?」

 

「さあ。すまねぇが、俺はそんな物のことは聞いたことがねぇ。」

 

と、トバゴは申しわけなさそうに言った。

 

 ここは酒場八咫烏(ヤタガラス)。私がこの土地に越して来た時以来の友人である、トバゴという男が経営している。

 

「そうか、すまないな、変なことを聞いて。」

 

「いいってことよ。あ、そういえば、最近近くに新しい呪術屋ができたんだ。そこの呪術師なら何か知ってるかもしれないぜ。あいつらはそういう摩訶不思議な現象に詳しいからな。」

 

「そうなのか、因みになんていう店なんだ?」

 

「ああ、その店の名前は─────」

 

 その日はトバゴの家に泊めてもらった。

 

 トバゴと酒を飲みつつ夜中まで話したあと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月30日  雪

 

 頭が痛い。二日酔いだ。昨日トバゴと飲み過ぎた。

 

 元々酒に強い方ではないのに、どうしてあんなに飲んでしまったのだろうか。

 

 布団の中で苦しげに呻いているところをトバゴに見られ、盛大に笑われた。

 

 彼は私の5倍は飲んでいたはずだ。

 

 にもかかわらず、彼はピンピンしている。

 

 少し理不尽だと思った。

 

 トバゴの奥さんの作ってくれた朝食を食べて(二日酔いのせいで殆ど食べられなかったが、)トバゴ夫妻に礼を言い、呪術屋へ出発した──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところに一つの岩があった。

 

 それといった特徴があるわけでもない、所謂普通の岩である(断じて洒落ではない)。

 

 その岩は、他の同じような岩がそうであるように、長い間そこにいて、自らの意志(岩→石→意志とかいう寒いギャグではない)で動くことは出来なかった。

 

 彼女(この岩は女です)はずっとこの盆地を上の方から見下ろしていた。

 

 一年間ずっと雪が降り続き、太陽が顔を出すことは殆どない、そんな気候だから彼女の目(の用に見えなくもない凹み)に映る景色は当然変わり映えしない。

 

 この盆地を満たしているこの黒い液体もずっと昔から変わらず、私の足下でちゃぷちゃぷいっt ─────

─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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