いつかのメギドラル。
休戦季のマグナ・レギオ中央議会。
議場の片隅にて、議席持ちのメギドが大あくびしている。
退屈なメギド
「ふあ~ぁ……ったく、いつまで引っ張るんでぃ、この議題?」
おざなりなメギド
「ま、これも今後に必要な事さ。俺らの軍団にゃちっとも関係ないがな」
退屈なメギド
「興味無ぇ話の間くらい、ダラダラ横にならせてくれねえもんかねぇ」
おざなりなメギド
「同感。今朝まで『中央』の報告だの書類まとめだので、かれこれ2週間は寝ずの働き詰めだ」
退屈なメギド
「オリなんぞ1ヶ月よ。へなちょこのヴィータ体でこいつぁ堪ったもんじゃねぇ」
「あーあ、オリもハックみてぇにフケりゃ良かったかね?」
おざなりなメギド
「サボりゃ良かったのは全くだが、ハックはちょっと事情が違うだろ」
「部下の幾らかが休戦季のどさくさに紛れて奇襲かけようとしてたって聞いてるぞ?」
退屈なメギド
「あ~なるほどな。大メギド様らしいスットコドッコイなこって」
おざなりなメギド
「そりゃ休戦季にカチ込もうなんざ一大事だが、そこまで貶すほどか?」
「計画してた部下には、ちゃんと軍団総出で『鍛え直し』入れてる最中らしいぞ」
退屈なメギド
「で、議会は後回しか。どの道、『処刑』で無く『仕置』の時点で、おめでてぇバカ大将さ」
「そういう所があの古株の欠点よ。今にあのバカ、部下絡みで自滅するぜ」
おざなりなメギド
「へへっ、そこまで言うかぁ?」
退屈なメギド
「アホってのはな、本当に『思いも寄らねぇアホ』だからアホだってんだい」
「ハックの部下ども、どうせ『思いも寄らねぇ奇策』とでも思ってやがったのさ」
「そういう本物のアホがシバかれて学ぶのは1つ……虫の良すぎる反省だけだ」
「『バレないようにすりゃ、軍団長だって出し抜ける』ってな。これっぽっちよ」
おざなりなメギド
「あー、居る居る。そういう『何で誰もやらないのか』に気付かないバカ」
退屈なメギド
「おうよ。ハックはテメェが出来すぎてるから、クズのアホっぷりなんぞ分かりゃせんのだろ」
おざなりなメギド
「ふへっへへへ……それ言ったら『分かる』お前は何だってんだよ」
退屈なメギド
「へっへっへ。しがないアホとクソどもの王様でござーい♪」
「何を隠そう、アホの下っ端の不手際でアホの軍団長を引責処分『させた』のは、この──」
???
「『反対』とはどういう事だ!!!」
暇なメギド2体
「おうっ?」
怒号が轟き、ざわめく議会。
声の主が席を立ち上がり、ほぼ対岸に座るメギドを指差していた。
張り上げた怒声の割に、伸ばした指から背筋まで冷静にピッと伸び、線の細い顔立ちは冷静そのものだった。
指差した先の反対者を悪目立ちさせ、孤立させるために、如何にも確固たる信念と理論があるかのように振る舞っているのだろう事は明白だった。
考えるだけなら得意そうなメギド
「開口一番に否定から入るとは、よほど自信があるようじゃあ無いか?」
「今すぐオレに説明してみろ! この計画のどこが……」
「『傀儡のソロモン計画』のどこに落ち度があるのかをなあ!!」
議長メギド
「待たんか、若いの。議会の進行は儂が担っておるのじゃぞ」
「おぬしの異議を認める。発言が終わったなら、ひとまず座れ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ふん……」
突きつけた指を引っ込め、わざとらしく不服そうに座り直すメギド。素人目に見ても、口ぶりに反して態度は落ち着き払っている。
退屈なメギド
「何を騒いでんでぃ、あいつら?」
おざなりなメギド
「俺も全然聞いてなかった……ただまぁ、見りゃ何となく分かるな」
退屈なメギド
「だな。文句言ってた方の、あの自信満々っぷり……」
「『反対』出したやつがよっぽどトンチンカン抜かしやがったんだろうさ」
おざなりなメギド
「こりゃ続き聞く必要も無さそうだなぁ」
暇そうなメギド達が再び背景に溶け込んでいく。
「文句言ってた方」の思惑通り、議題に持論を持たない議席持ち達の心象が一気に偏り始めた。
議長メギド
「では、反対派の答弁を……む?」
「見ない顔じゃな。議会に参加するのは初めてかの?」
ザガン
「まあね。ちょっとした気まぐれのつもりだったけど、来て正解だったかも」
指差されていた反対派こと、ザガンがスックと席から立ち上がった。
以前までとは口調から面持ちまで違う、ソロモン達のよく知るザガンの姿だった。
副長が丹念に泥を落とした、若干明度の落ちたドレスを纏っている。
議長メギド
「ふむ、大した度胸じゃが……くれぐれも、乱闘沙汰はご法度じゃからな」
ザガン
「分かってるって。まずは真正面からぶつかってみるから、ちゃあんと見ててよ?」
卓の上に片手を突いて、軽く身を乗り出すザガン。
その目は先の抗議者でもなく、議長でもなく、見渡せる限りの議席持ち全員を見ていた。
ザガン
「(私を叩きのめしたいヤツ、真面目に聞こうとしてるヤツ、とにかく嘲笑いたいヤツ……)」
「(どんな感情でも、皆が……ここに居る皆が、私に『期待』してる……!)」
「(ほんの少し、分かってきたよ、セルケト。ここからが大活躍の大舞台……)」
「(オレは……私は、今、この場で、どうしようも無く『個』なんだ!)」
軽く深呼吸を一回挟んで、凛々しく抗議者を見つめ直すザガン。
ザガン
「まずは、お互いのために確認しよっか? 君らが掲げてる計画について──」
「ヴァイガルドには『ソロモンの指輪』のレプリカが現存してる可能性がある」
「万が一、何かの偶然でこれを扱えるヴィータが現れた時、こっちが何かと面倒な事になる」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ふんっ、新参の小物にしては、少しは聞く耳があるようで何よりだ」
「ヴィータが取るに足らないフォトン袋でも、指輪は侮れん。そのくらいオマエも分かるだろう」
ザガン
「私達メギドを無理やり服従させる事も出来る、だっけ?」
「だから君らは、先にメギドラル側でヴィータを用意して、ソロモン王に据えようとしている」
「メギドラルには本物の指輪があるから……合ってる?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「そこまで理解できてて、どこに反対する謂れがある」
「オマエはヴィータに跪いて靴を舐め回してみたいとでも?」
そこかしこで小さく笑い声が湧く議場。
ザガンは不敵な笑みを浮かべ、背をピッと伸ばして手を突き出し、指を振って見せた。
ザガン
「チッチッチ……君の方は、ちゃんと聞いてくれなかったみたいだねぇ」
「私はちゃんと『反対だ』って言ったよ? 『傀儡の』、ソロモン王計画に」
考えるだけなら得意そうなメギド
「言葉尻いじくって言い訳か。とんだ小物だな」
「オマエは『計画』に反対したんだ。この場の全員がそう聞いているぞ」
ザガン
「良いね良いね、そうやって『話』を有利な方に引っ張ってくの。嫌いじゃないよ?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「……ちっ」
「(何なんだこいつ……見透かした気になって、のらりくらりと!)」
ザガン
「でも私だって、無理やり誰かの思い通りにされるなんて、流石に楽しめる気になれないよ」
「そもそもメギド的にさ、『指輪の強制力対策』自体に反対なんてしなくない?」
「『全部反対と言った』って思うメギド、少ないと思うよ。それで『誘う』のは無茶──」
「……あ、それとも、実は君がちょっぴり『舐めたがってた』とか?」
「だったら……何か、ゴメンね……」
普通に気まずそうに、頭をポリポリ掻いて謝って見せるザガン。
考えるだけなら得意そうなメギド
「なっ……侮辱したなオマエ! オレを誰だと思ってる!?」
ザガン
「そんな、してないしてない! 趣味も『個』もメギドそれぞれだよ」
「それに君の事も全然知らないって。今度、戦場で会ったら、改めてよろしくね」
そこかしこで露骨に噴き出す声が相次ぐ議場。
人懐っこそうな笑顔でヒラヒラ手を振って、本当に「ただの挨拶」を送るザガン。
すまし顔だった抗議者の鼻筋に深いシワが刻まれていく。
考えるだけなら得意そうなメギド
「こっの……!」
席を蹴飛ばさんばかりに立ち上がる抗議者。
議長メギド
「よさぬか! ここをどこじゃと思うとる! 『上役』の顔に泥を塗る気か?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ぐっ……ふんっ!」
喉から鼻へ唸りを絞り、極めて不服そうに座り直す抗議者。素人目に見ても余裕の欠片もなかった。
議長メギド
「やれやれ……」
ザガン
「話、続けちゃって良いよね?」
「さっきから言ってるけど、『傀儡の』って所が気に入らない。だから反対なんだ」
「要するに、指輪を使えそうなヴィータを洗脳して手駒にしようってんだろ?」
「そんなのより私は、事情をまっすぐ話して、ソロモン王の合意を得る方がお互いに得だと思う」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ハァンッ!! 問題外だなあ!」
議場の四方八方でドッと笑いの渦が巻き起こった。
考えるだけなら得意そうなメギド
「オマエは道端の虫けらや汚物に、メギドラルの未来を託して『お伺い』立てるのか?」
「相手はヴィータだぞ? こっちの想定を果てしなく下回る愚鈍で脆弱な種族だ」
「説明した所で我々の次元など理解できず、指輪の権限以外に何一つ渡り合えるものも無い」
「分かるか? 『対等』という概念の持ち込みようが無いんだ。獣に言葉が通じないようにな」
ザガン
「ヴィータには言葉は通じるよ。その例え、『偏ってる』と思う」
「理解が難しいのは、種族の生き方──価値観が違うんだから仕方ないんじゃないかな?」
「私達だって、個々で『無理』な事くらい幾らでもある」
「それをどうにか『気にしない』ようにして今のメギドラルがあるんだ。やる事は変わらない」
考えるだけなら得意そうなメギド
「都合の良い部分だけ答えて誤魔化そうとするなよ。ヴィータの『無力』が残っているぞ」
「奴らは弱い故に、卑しい習性として一個軍団相当の群れを形成しようとする」
「それでも奴らは、たった一匹の幻獣に攻められれば大した反撃も出来ず逃げ惑うばかり」
「ただただ滅ぼされるだけの『どうしようも無い』存在だ。この落差をどう埋めるつもりだ?」
「奴らの弱さは『正常な』判断さえ不可能にする。もはや罪と言っていい」
「生き永らえるので精一杯の弱小メギドに、上級メギドの『戦略』が理解できないのと同じだ」
ザガン
「けど、さっきまでの眠たい話の途中で、半分寝てたけど確かに聞こえたよ」
「『幻獣の存在に気付いて、武器を取って自衛を考えるヴィータも珍しく無くなってきた』って」
「ヴィータが戦おうとして、今も諦めてないなら、少しくらい『成果』があるって事だよね?」
「送り込んだ幻獣の幾らか……本当はヴィータに倒されてるんじゃないの?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「!?」
ざわつく議場。
ザガン
「『弱い』とか『バカだ』とか『傷一つ受けなかった』とか、そういうので慢心してない?」
「ヴィータだって生き残りたい。生き残りたいなら戦う。ヴィータにも力や意地はある」
「君らは少しずつ強くなっていくヴィータに、『例外』とか言い訳して目を背けてるだけだ」
「それって、つまりさ……ヴィータが『対等』って事を、『怖がってる』って事じゃない?」
一斉にザガンに罵声が浴びせられる。一つ一つの言葉が聞き取れないほど矢継ぎ早に。
議長メギド
「静粛に! 静粛に! ええい、おぬしら議席持ちなら少しは弁えんか!」
議長と議席持ち達の喧騒を縫って、講義者がザガンに激昂する。
考えるだけなら得意そうなメギド
「ほざけ小物! その話は全部、『ヴィータが自力で幻獣を倒した』という妄想が前提だ」
「幻獣の損害など、精々がハルマによって鎮圧された程度! 残るはただの誤差──」
???
「そういう事なら、『こっち』でも記録があるねぇ」
仮面を着けたふてぶてしい雰囲気のメギドが割り込んだ。
第三者の介入に、喧騒を忘れる議席持ち達。
殺しても死ななそうなメギド
「『ウチ』じゃあ、貸与した幻獣の足取りも、ちゃあんと追ってるんだがね」
「主に全長がヴィータ未満──小型の幻獣を勝手にロストしやがる軍団が多い」
「まあ低能どもに寄越す幻獣なんざ元から消耗品だ。ハナから割り切ってるが……」
「確かに損害報告にあるよ。武装したヴィータの群れに撃破されたって事例が」
「中には『巣』が潰されてたとか、大型幻獣が『武器で狩られた』死体で見つかったとかもね」
騒然となる議場。
退屈なメギド
「おい待てよ、オリの幻獣はヨソん軍団の幻獣にヴァイガルドで食われちまっただけだぞ!」
おざなりなメギド
「いや、誰も今そんな話してねえって」
「しかしマジか……? フォトンも使えねえゴミ生物が幻獣を倒しちまったってのか?」
「追放メギドにしたってアレだろ? 奴らはヴィータと同じ力しか無いって聞くのに……」
優美なメギド
「(ふふっ……)」
議場の目立つ所で、金髪の女性メギドが何やら密かにほくそ笑んでいたが、誰も気付いていない。
ドガンッと、仮面のメギドが卓に拳を振り下ろし、更にその場の誰よりもけたたましい声で吠えた。
殺しても死ななそうなメギド
「あ゛ぁーーーっウルセエんだよ無能ども!! ハエみてえにブンブンブンブンよお!!」
野次馬メギド達
「!?!?」
思わず静まり返る議場。
殺しても死ななそうなメギド
「ふぅ……話の見えんバカどもは黙っててくれ。バカの寄り合いが長引くだけなんでね」
議長メギド
「む、むぅ……? おぬしは、以前に会ったような会わなんだような……」
殺しても死ななそうなメギド
「クソ無能上司の代理だよ。たま~にね、別件で遅れる時のツナギで出席させられるのさ」
「つまり、そこの『舐めたがり』の同類って事だねぇ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「っ! おい取り消せ! 『院』もろとも潰されたいか!?」
殺しても死ななそうなメギド
「おぉおぉ怖い怖い。取り消して差し上げましょうとも」
「あだ名1つでウダウダ抜かしやがって、可哀想な坊やだねぇ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「オマエぇっ!!」
殺しても死ななそうなメギド
「取り消しましたよ? 『言われた通り』に。何か不服でも。偉大なお代理様?」
「それともお宅様の大軍団、言って無い事まで『やらかして』当然の『お察し』軍団か何かで?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ぐ、ぎ……!」
「今、議会名簿を照会した……オマエの顔と名前、覚えたからな……!」
殺しても死ななそうなメギド
「そいつは光栄ですな。じゃ、私は『議会』に戻るんで」
冷笑と溜息を添えながら、つまらなそうに視線をザガンに戻す仮面のメギド。
考えるだけなら得意そうなメギド
「オレが議会を私物化してるとでも言いたいのか! ……おい答えろ!」
喚く抗議者をよそに、ザガンが仮面のメギドに笑顔を投げ、仮面のメギドは臭い物に直面したような身振りで応じた。
ザガン
「フォローサンキュー♪」
殺しても死ななそうなメギド
「こっちもこっちで奇跡みたいなアホタレだねぇ。毒にも薬にもなっちゃないんだが?」
思い出したように、再び私語が飛び交い始める議場。
嘲笑と罵声とその他諸々の向く先が、ザガンと抗議者おおよそ半々になっているのを空気で読み取るメギド達。
抗議者が仮面のメギドへの追求を諦めてザガンに向き直った。
ザガン
「だーいじょーぶ、『効き目』は私が決める事だからさ」
「さてと……確かにさ、ヴィータが弱いって事は私も同感だよ」
「多分、どんなに手加減して、撫でただけのつもりでも死んじゃうかもしれないくらい」
「けど、その優劣の差を付けてるのは……敢えて言うけど、『所詮』フォトンだけだ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「決定的な差を『所詮』と来たか。どうやらそのフォトンが、頭に足りてないようだな」
ザガン
「足りてても足りなくても、私は構わないよ。どっちでも変わりゃしないし」
考えるだけなら得意そうなメギド
「は……?」
ザガン
「君はどうか知らないけど、私にはフォトン使って頭よくするみたいな『技』は無いもの」
「そんでもって私達、ヴィータの構造を真似してるじゃない?」
「だったら、フォトン抜きなら体の強さも脳みその回転もお互い、『同レベル』って事だよ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「い……言うに事欠いて、『同レベル』だと!?」
「フォトンを欠いたという、それだけで、ヴィータ如きと!?」
ザガン
「え〜? 『決定的な差』なのか『それだけ』なのかハッキリしてくれない?」
「フォトンがヴィータとメギドの違いってんなら、無くしたらそういう事になると思うけど?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ぬぅっ……!!」
ザガン
「返事が無いなら私、ガンガン出しゃばっちゃうよ?」
「さっきも言ったけど、まず、今は弱いからって目もくれないのは『逃げ』だと思う」
「一度は見下した相手が『まとも』だったなんて思いたくない。そんな意固地と臆病風だ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ふざ──!」
殺しても死ななそうなメギド
「異議あり。……ああいや、私達がヴィータを過度にナメてるって可能性は一理あるけどね」
考えるだけなら得意そうなメギド
「掠め取るな! 今はオレが話しているんだ!」
議長メギド
「おぬしは少し頭を冷やせ……異議を認める。続けよ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「くっ……どいつもこいつも……!」
殺しても死ななそうなメギド
「全く、無能が全体の質を落とすって典型だねぇ……」
「改めて……『ナメてる』のはともかく、それを『臆病』だので括られるのは気に食わない」
「報告では、ヴィータが幻獣を撃破した例の大半は、ヴィータの生息地周辺だ」
「奴らの幻獣殺しは漏れなく『専守防衛』の結果だ。『狩り』はしてないんだよ」
ザガン
「えっと、つまり……ヴィータが倒せてる幻獣は、巣から侵略に来た一部だけで──」
「ヴィータは、『反撃しかできない』……それが今の限界?」
殺しても死ななそうなメギド
「よく分かったねー。偉い偉い」
適当に拍手を贈る仮面のメギド。周囲の議席持ちもその場の雰囲気で嘲笑を浴びせる。
ザガン
「えへへヤッタ。何か手間取らせちゃって悪いね」
投げかけられる声が聞こえているのかいないのか、素直に照れ笑いするザガン。
殺しても死ななそうなメギド
「(何か気色悪ぃなこいつ)」
「ついでに、さっきの巣や大型幻獣が潰された報告は、あくまで『例外』とされてる」
「『純粋なヴィータの武力で戦った』という証拠が全く出てないのでね」
「第三の『何か』の可能性は有っても、結論、『ヴィータの力』は関係ない」
優美なメギド
「(……)」
ザガン
「そっか。じゃあ、ヴィータの殆どは、無理して何匹かの幻獣倒すのがやっとなのか……」
顎に指を当てて考えるような仕草をするザガン。
退屈なメギド
「なぁんでぇ、結局、ヴィータは幻獣相手に渡り合えないも同然でねぇかよ」
おざなりなメギド
「身の丈で勝てる相手にどうにか……じゃあ、倒せてるったって話にならねえなあ」
議場のあちらこちらで、呆れ、冷笑、安堵に似た声が上がる。
殺しても死ななそうなメギド
「余りにも涙ぐましい努力だよ。『実力が迫ってる』なんて『ヨイショ』しちゃあ心が痛む」
「『ナメる』にもそれ相応の理由と実態がある。『ナメた決め付け』は勘弁願いたいね」
ザガン
「……うん。ヴィータの弱さは、私も実物を知らない。だから多分、そっちが正しい」
「君達にとって『認めようが無い』のは少し分かった。決め付けた事は謝るよ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「(オレが同じこと言っても聞く耳持たなかったクセに、何をしたり顔で……!!)」
「謝る」の単語に飛びつき、無関係の議席持ち達まで思いつくままにザガンを罵る。
議長メギド
「(この新顔……本当にメギドか?)」
「(無闇に我を通そうとせず、しかも己の不利と分かっておろうに非を易々と認めよる……)」
ザガン
「それなら、今度はこっちの番だね」
殺しても死ななそうなメギド
「はいぃ?」
ザガン
「君らを『臆病風』なんて決め付けちゃったお詫びも兼ねて……って感じかな」
「『弱さ』を詳しく教えてもらえた。けど、それでもヴィータは『強い』って話だよ」
殺しても死ななそうなメギド
「くくっ……ヴィータに『強い』って矛盾しちゃいないかね?」
ザガン
「ヴィータ同士の間でも力の優劣は有るし、『強いヴィータ』は矛盾してないと思うよ?」
殺しても死ななそうなメギド
「……ハァ。皮肉にバカ正直に返す薄らボケが、私は一番ムカつくんだよ」
ザガン
「あ、冗談だった? ゴメンゴメン、皆ヴィータの弱さをそれくらい強く信じてそうだったし」
考えるだけなら得意そうなメギド
「いつまでもトボケ倒してるんじゃない!」
「そもそも話が脱線してるだろう! 『傀儡のソロモン計画』に反対する理由はどうした!」
ザガン
「少しもズレてないよ。君らに届けるには、思ったより『道のり』が遠いみたいだけど」
「君らは、『対等』に向き合うにはヴィータが弱く愚かすぎるからって言ってたろ?」
「なら、こっちから『対等』に考えたくなる『強さ』があれば話は変わるはずだ」
「『強さ』はメギドにおいても絶対に価値観だ。何より──」
「私達には暴力以外を『個』と尊重する『理念』だってある。ヴィータに教わった……ね」
一瞬どよめき、ヒソヒソと私語が交わされる。
退屈なメギド
「ヴィータに……?」
おざなりなメギド
「教わった……?」
議長メギド
「(ふむ……)」
ザガンと渡り合う構図になっている、抗議者と仮面のメギドは失笑している。
考えるだけなら得意そうなメギド
「ハンッ、本当にどうかしているみたいだな。これが議席持ちだとは」
殺しても死ななそうなメギド
「くっ、ははははは……声を上げて笑ったのなんて、いつぶりだろうね」
ザガン
「ふっふっふ……♪」
何故かザガン本人まで不敵に笑んでいる。
ザガン
「また私が『決め付け』ちゃってないか、順番に確かめてみようか」
「100年くらい前から広まったよね。熱した油や溶けた鉄を敵に投げ込む『戦術』が」
「『道具』を使ってるのに、今でも採用する軍団も居るのは、何でかなあ?」
議場の片隅で無意味なやり取りが交わされた。
退屈なメギド
「あっ、オリの軍団も使ってるヤツだ。確かナントカ言う『渡り』が広めたような──」
「『ナンプラー』? いや、『オタンコナス』とか言ったっけ?」
おざなりなメギド
「何にしても、銃じゃあるまいし、それの何が問題なんだかなあ」
戻って、ザガンと抗議者たち。
考えるだけなら得意そうなメギド
「些末だな。広域戦術はメギドの信条に抵触しない。必要とされる『視野』から違う」
「『個』だけで領地を取得できるメギドは限られる。中央が確認している礼を挙げれば──」
「ヴィネ、サブナック、そして追放された雷将バエル……空間を占拠するメギド体が不可欠だ」
「前2者にしても、フォトン不足の今もヴィータ体を拒否してる不届き者だからやれる事だ」
「つまり、『個』と『領地』には別々の『戦争』がある。ヴィータ体の武装と次元は同じだ」
ザガン
「オッケー。まあ『普通』は、メギド1体で領地の管理なんて簡単じゃ無いもんね」
「次は、その『武装』はどうなのかな。取っ組み合って殺すだけなら素手でも出来るよね?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「肉弾戦に特化したヴィータ体が得られるとは限らないなら、当然の需要だろう」
ザガン
「その時点でもう『おかしい』と思うんだよね」
「ヴィータと違って、オス・メスで力に大差は無い。それこそフォトンがあるんだから」
「武器を『個』の象徴にしたがるヤツもいるけど、やる事は結局、斬る・殴る・突くだろ?」
「『ヴィータみたいに』、戦うために武器や防具で『差』を均して、『個』を埋めてるだけだ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「なっ……!?」
ザガン
「『銃はダメ』とか拘ってみたって、むしろ逆効果なんじゃない?」
「間接攻撃が得意だったメギドには、メギド体を『なぞる』事すら許されなくなる」
優美なメギド
「(ふふっ、ちょっぴり同感♪)」
一層ザワつく議場。
考えるだけなら得意そうなメギド
「くっ……オレを弁舌で謀ろうなんて1000年早い!」
「ヴィータ体を余儀なくされた今、この無様な体でも『個』を模索するために『武装』がある!」
「中央が公式に、武装へ制限を課した前例も無い。『銃』云々とてあくまで時代の──!」
殺しても死ななそうなメギド
「いやあ、私としちゃ何とも言えないけどねぇ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「!?」
殺しても死ななそうなメギド
「だってそうだろう? 面白いペン持ってる君も、この私も、武装には縁遠い方だ」
「別に前線でドンパチやらなくても『個』は示せる。なら武装は何かと言われれば……」
「オツムの足りない低能どもが、なけなしの『功』にありつくための『お情け』でしかない」
「ここのお歴々には関係なかろうが、『無能』という『個』は埋めなきゃ生きられんだろうね」
「共通点に乏しい、繁栄すべき種族でもないメギドは、自分で自分を救うしか無いんだから」
考えるだけなら得意そうなメギド
「オマエっ……オマエはどっちの味方だ!」
殺しても死ななそうなメギド
「議論に敵も味方も有るものかね?」
「私はただ、話の輪の外から暇潰しでケチつけて回ってるだけさ」
「所詮、議決に大した影響も無い『代理』なんだから、ねえ?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「オレはオマエのような『使いっ走り』じゃない!!」
殺しても死ななそうなメギド
「はいはい、すごいすごい」
「で、だ。確かに『ある』かも知れないがね。『戦術』も『武装』も──」
「メギドの戦争文化に今、『ヴァイガルド』がすっかり根付いてる……って事も」
一気に罵詈雑言が吹き荒れる議場。
退屈なメギド
「んだとぉコノ! オリの戦争がヴィータの真似したヘッポコだとでも言いてえのかあ!」
おざなりなメギド
「お前、自分への悪口だけは呑み込み早いのな……」
議長メギド
「静粛に! 静粛に!」
懸命に呼びかける議長が、視界の隅で『発言要求』の身振りをする者があるのを見つけた。
議長メギド
「そ、そこの! 誰でも良い! 意見があるなら認める!」
???
「誰でも良いとは、ご挨拶だが……」
指し示されたメギドは、身に付けた色眼鏡ごしに、議場の喧騒に挟まる僅かな「息継ぎ」を読み取り、音量の下がったその一瞬に一言、ねじ込んだ。
???
「俺が、『広めた』」
響き渡った意味ありげな言葉に、暫し静まり返る議場。
スーツを着こなした色眼鏡のメギドは、窮屈そうに上着を一枚脱いで肩にかけ、立ち上がった。
考えるだけなら得意そうなメギド
「っ……オ、オマエは……!」
えげつなさそうなメギド
「よし、黙ったな。『大した事じゃない』が聞いときな」
「煮えた油を使った『戦術』……発案者のガンコナーに吹き込んだのは、俺の軍団だ」
ザガン
「それってさ、『仕入れ元』があったりする?」
えげつなさそうなメギド
「まあな。夢見の者から偶然にだ」
「それで、少し『思う所』が有ってな。ガンコナーにも教えるよう依頼したのさ」
「『渡り』の大物のアイツがヴィータの戦術を漁ってたのは当時、有名だったしな」
「まあまさか、本当に実践して『功』まで立てるとは思わなかったが」
再び議場が荒れるより早く、抗議者がスーツのメギドを指差し、叩き割らんばかりに卓を叩いて外野を黙らせた。
考えるだけなら得意そうなメギド
「何故! 何故オマエがアイツの意見に乗っかる!」
「オマエがやけにヴァイガルドに詳しいのもどういう事だ! オレは聞いてないぞ!」
えげつなさそうなメギド
「事実は事実だ。派閥の威信を捨ててでも、『デタラメ』とゴリ押して黙らせたいか?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ぐっ……!」
えげつなさそうなメギド
「詳しいのも当たり前だろ。『ヴィータの煽動』が軸の侵攻作戦を任されてんだよ」
「それをテメェにいちいち『お伺い』立てなきゃならん義理なんざウチには無ぇ」
「それとも何だ? 『俺ら』がどうやってヴァイガルドを探ってるかも知らねえってか?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「オレが……オレが、どなたの『席』を預かってると……!」
えげつなさそうなメギド
「だから、ウチには、関係無え。テメェ自身は何者だってんだ」
「もう後は好きにほざいてろ。議会で内輪の話なんざやってられるか」
「さて……」
ザガンに向き直るスーツのメギド。
スーツのメギドに窘められた抗議者は、怒りに身を震わせているが、何も言えないでいる。
えげつなさそうなメギド
「聞いての通りだ。ウチは性質上、ヴィータの『習性』には詳しいもんでな」
「前の2人よか、テメェを『有効活用』してやれるだろうさ」
ザガン
「聞いてくれるのなら、誰だって嬉しいよ」
殺しても死ななそうなメギド
「(『習性』……『文化』ってやつかな。あのボケの言い分に『価値』が見えたか?)」
「(まあ、私も『生態』ばかりで疎かだった。反省、反省)」
「(いつか隙があったら、あの色眼鏡の抱えてる情報……『味見』させてもらわなくちゃね)」
胸中で舌なめずりする仮面のメギドに気付く者は無く、スーツのメギドとザガンの議論が始まる。
えげつなさそうなメギド
「つけ上がるなよ、先に言っとくぜ。俺はテメェに『反対』だ」
「さっきの『インテリ気取り』が言ってた通り、『武装問題』はあくまで下っ端どもの話だ」
「智と力で『他』を従わせ、凡百に貶める事で己の『個』を際立たせる。それが『今』だ」
ザガン
「弱いメギドにだけヴィータのやり方を押し付けて、フォトンを節約させてるって事?」
えげつなさそうなメギド
「まあ、それでいい」
「『個』が寄り集まれば、嫌でも『上手くやり合う』しかねぇ。社会は『作らざるを得ない』」
「『他』を取り込めねえ弱者に、『個』の権利は無え。社会がヴィータと似通うのは結果論だ」
ザガン
「君らが得意な『アレ』も、そうやって仕方なく生まれたって事?」
「戦争する前から勝ち負けが決まる『まつりごと』とか」
えげつなさそうなメギド
「そんなところだな。そして『それがどうした』って話だ」
「お互い無傷で済まねえ『邪魔』同士が、互いを利用して決着の場を『整備』してるだけさ」
殺しても死ななそうなメギド
「元を正せば、古代大戦以前にはヴィータと交流が有ったわけだからねえ」
「1000年を経て、多少は『名残』が残ったって仕方ないだろう」
「当時ならまだ、誰でもメギド体で活動できたろう……文化の『モデル』が無かったんだ」
えげつなさそうなメギド
「先に言っとくが、別にヴァイガルドでも珍しい事じゃねえぞ」
「ハルマから先進技術を手にした王都エルプシャフトが今、ヴァイガルドを実質統治してる」
「『進んだ』文明を取り入れて、僻地の文化が形骸化する事はよくあるようだ」
「メギドラルが文化を『利用』したからって、ヴィータの『強さ』って理屈にはならんからな」
ザガン
「『尊重』には値しないって事? メギドにも『育ての恩』くらいあるよね?」
「『個』が練り歩くメギドラルに『社会』を作った中央こそ、気にするべき所じゃないの?」
「自分の利益に取り込むための、最低限の礼儀ってやつ。上辺だけでもさあ」
殺しても死ななそうなメギド
「主語がデカすぎるよ。そのクソみたいな『慣例』はメギドの総意じゃない」
「むしろ軍団長を倒して成り上がるなんて話は日常茶飯事だろうよ」
「そういうのは、目上の『しつけ』に屈した、魂から『下の下』な個体だけだ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「……っ!!!」
えげつなさそうなメギド
「ま、『今回に限り』同感だな。何しろ、恩義を覚えろって相手がヴィータじゃあなぁ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「っっっ!!?」
「(今のは……『助け』を差し込まれたのか? ……このオレが!?)」
えげつなさそうなメギド
「(あの『インテリ気取り』……人望も無えし求めても居ないタイプか)」
「(俺みたいに部下の利点を見抜くって能が無いなら、『長生き』は出来ねえだろうなあ)」
勝手にショックを受けている抗議者に目もくれず、ザガンに対峙する2人の攻勢が続く。
えげつなさそうなメギド
「『恩義』ってものが皆無とは言わんさ。だが、それは過去のヴィータに対してだ」
「今のヴィータは武装も戦術も衰え尽くした、汚物とフォトンだけ詰まったゴミ袋だ」
「昔より数が増えて、ヴァイガルドのフォトンはヴィータの内で停滞して目減りするばかり」
「テメェで分け与える術も無く、殺して恨まれなきゃ俺らにゃ取り出しようが無え……」
「『迷惑』の塊って事さ。代替わりした事ある軍団なら誰でも納得するだろうさ」
「初代が有能だったから、今の軍団長が無能でも『尊重』する……そんなヤツぁ居ねえ」
殺しても死ななそうなメギド
「ちょっと良いかい? 『武装も戦術も衰え尽くした』って所、詳しく聞きたいね」
「そこのボケみたいに『ナメた決め付け』じゃないだろうね?」
えげつなさそうなメギド
「仕事柄、ヴァイガルドからの回収物はしっかり調査済みだ」
「王都の品でも、メギドラルの量産品と比べて『質』が悪すぎる。一点物なら分からんがな」
「ついでにメギドラルで嫌われ者の『火器』に至っちゃ消滅寸前だ」
「それも『ヴィータがつけ上がらんように』と、ハルマが生産を管理してるからと来た」
殺しても死ななそうなメギド
「ハッハッハ、皮肉だねえ。守ってあげてるハルマ様も『ナメ』ざるを得ないわけだ」
「鉄砲1つで『何でも出来る』と思い上がってハルマに反旗を翻しかねんほど、低能だと」
仮面のメギドが「さあ皆さん」とばかり声高に嘲笑うと、議場も遠慮なく爆笑で応えた。
ヴィータもハルマもまとめてコケに出来るとあって、歴史の浅いメギドほど盛大に笑った。
議長メギド
「(完全に『呑まれ』てしもうたな……)」
「(あのメギド、ただの素人では無さそうじゃが……経験の差は如何ともし難いか)」
ザガン
「……」
「(この2人……どっちも『手慣れてる』な。片方は代理で来てるらしいのに……)」
「(どっちも『すごい』なあ……やっぱり『受け手』で勝つのは、まだ難しかったかな)」
ザガンは沈黙している。
しかし、生気に満ちた笑顔は未だ、些かも曇っていない。
殺しても死ななそうなメギド
「あ、そうだ。ビルドバロックって知ってるかな? ヴィータの悪しき文化の集大成さ」
「当時、こいつをメギドラルから払拭するのに、それは大変な苦労をしたそうだ」
「それがマグナ・レギオ発足前後の頃だ……分かるかね? それからどれだけ経った?」
えげつなさそうなメギド
「それは素直に同感だな。護界憲章から1000年……向こうじゃ今、メギドなんざ『迷信』だ」
「こんだけ話し合えば少しは身に沁みてるだろ。かつて交流が有っても、今はもう断絶だ」
「互いの価値観は1000年かけて、全く独立した『別種』に成り果てた。つま──」
考えるだけなら得意そうなメギド
「つまり、常識が違う!」
「オレは言ったぞ! ヴィータは道端の虫けら! 汚物だと!」
当初の抗議者が上ずる寸前の声で割り込んだ。
殺しても死ななそうなメギド
「(あーあ、『お預け』くらったケダモノみたいに飛びついちゃって)」
えげつなさそうなメギド
「(まあ、代理はともかく『その向こう』には、最低限の顔くらい立たせてやるべきか)」
考えるだけなら得意そうなメギド
「ビルドバロック以降、メギドラルにはヴィータの悪しき風習だけが跋扈した!」
「だから中央が……8魔星が『ふるい分けて』やったんだ! 利点を! 『正しい』ものを!」
「ヴィータの薄汚い見識に『合わせてやる』事は、破滅にしか繋がらない!」
「指輪という力に酔った行動力と、勝手な勘違いが、『尊重』を理由に降り掛かってくる!」
「オマエにはあるのか! ヴィータの『卑しさ』に命も世界も捧げる覚悟が!」
ザガン
「……」
「真面目に考えるなら……」
「……ちょっと、自信ないかも?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「……」
殺しても死ななそうなメギド
「……」
えげつなさそうなメギド
「……」
議長メギド
「……」
議席持ち達
「……………………」
そして本日、最大音量が議会を揺るがした。
悪罵と嘲笑と、それを諌める声、騒音への罵倒とそれに応じる喧嘩腰の怒鳴り声……。
考えるだけなら得意そうなメギド
「な──こ──ふざ──オマエは──っ!!」
「(クソッ、黙れ小物ども……っ!)」
抗議者は、ザガンや議場に怒鳴り散らしてはかき消されてを繰り返している。
仮面のメギドは、完全に機嫌を損ねた様子で席に着き、ウンザリした顔で、もう力ずくでは収まりそうにない嵐が過ぎるのを待っている。
スーツのメギドは、静かに議場の荒れ模様を見渡すと、何かに感心したようにニヤリと笑んだ。
ザガン
「テヘヘヘ……」
投げつけられる諸々の感情に、ザガンはちょっと恥ずかしい程度の苦笑で、呑気に頭を掻いたりしながら受け流している。
考えるだけなら得意そうなメギド
「(何なんだアイツ……自分の立場が分かってないのか!?)」
ザガンは軽く一息入れて、ストレッチのような動作を挟み、リラックスしきっている。
充分に自分のペースでヴィータ体の調子を入れ直すと、ザガンは席を立った。
議長メギド
「お、おい、どうした? 離席する時は用件を告げてからにせい」
議長とザガンの動きに観衆達も徐々に気付き、音量が落ちていく。
殺しても死ななそうなメギド
「ほっぽり出して帰るつもりかな?」
「ま、私は利口な判断だと思うよ、心から。他でもない私がそうしたいところだ」
ザガン
「なーに言ってんのさ。私はまだ何にも始められてない」
余裕綽々のザガンの足取りは、誰の目にも届く場所──議会の中心へと向かっている。
殺しても死ななそうなメギド
「これだけ引っ掻き回しておいて?」
ザガン
「私は静かに話をしようとしてただけだよ。喋ってたの、ずーっと君達ばかりだったじゃん」
殺しても死ななそうなメギド
「議論に『建設的』なんてイメージあるなら、それは妄想ってやつだよ」
「会話とは戦争。『口数』と『音量』と『大義』で攻めなきゃ負ける。これは真理だよ」
「私もヴァイガルドの『社会性』には少し詳しくてね。この真理に気づいてる個体もあるらしい」
「特にヴィータのメスに顕著でね。群れという軍団から1人でも多く蹴落とすため──」
ザガン
「ほーらまた~」
少し道を逸れて、仮面のメギドの眼前に寄り道するザガン。
ザガン
「私にケリ付けさせないと、『バカの寄り合い』が長引いちゃうんじゃない?」
殺しても死ななそうなメギド
「中途半端に聞いてやがる……生きたままブチ殺してやりてえドクズだな」
ザガン
「私も一発、頭突き倒してやりたいよ。いつか戦争しようね♪」
殺しても死ななそうなメギド
「……虫酸が走るなぁ、本当に」
笑顔で手を振りつつ踵を返し、改めて議会中央に立つザガン。
視線を一身に浴びて、動じる気配は全く無い。
ザガン
「『会話とは戦争』か……良いこと聞いちゃったねえ」
「さて……誰でも良いからさ、ちょっと確認させてくれないかな?」
「ビルドバロックの事は、昔にそういう建物を潰して回ってたとは聞いた事あるよ」
「それを踏まえて聞きたいんだけど……中央は『無駄』な事を禁止してるよね? 芸術とかさ」
抗議者が卓を殴って応えた。もう議席持ち達も、この音に慣れてきていた。
考えるだけなら得意そうなメギド
「茶番も大概にしろ。もうここにオマエの味方は居ない」
「話を逸らして誤魔化そうったって、そうは──」
ザガン
「議会はどうなんだろうねえ!!」
考えるだけなら得意そうなメギド
「!?」
ザガンは抗議者に目もくれず、議会の天井近くを見上げ、この場の全員に大声で問うた。
ザガン
「マトモに答えてくれるヤツも居ないなら……そろそろ反撃と行こうかな」
「ビルドバロック以降って事だよね? 生存にも戦争にも関係ないこと禁止し始めたの」
「だったらこの議会はどういう事かな? マグナ・レギオ直轄の都市もそうだ」
考えるだけなら得意そうなメギド
「な、何を……?」
ザガン
「寄り集まって話するだけなら、洞窟か平地でも用意すれば良いだろう?」
「ヴィータ体が環境に弱いにしたって、議会に住む訳じゃない。一時の場所であれば充分」
「なのにわざわざ、議会も街もヴィータの『巣』を真似してる」
「入り組んでて警備も手間、外で騒ぎが起きても音が届かない。『無駄』でしかない」
「こんな『飾り』だらけを、メギドの代表ぶってる中央議会の連中が雁首揃えて──」
考えるだけなら得意そうなメギド
「だ……黙れっ!!」
「オマエは……オマエは! 今! マグナ・レギオを侮辱した!」
ザガン
「侮辱? 私、議会は面倒くさいけど、マグナ・レギオを嫌ってるつもりなんかないよ」
曇り無い瞳でまっすぐ、抗議者を見つめるザガン。
ザガン
「『やるべき事はやる』、『変えるべき事は変える』……議会らしい事してるつもりだよ」
「私の言葉が『どう』侮辱した事になるのか……ちゃんと説明してもらえるかな?」
考えるだけなら得意そうなメギド
「そ……!」
議会が、ほんの一瞬だけザワつき、互いが互いを諌めるようにして静まり返った。
殺しても死ななそうなメギド
「(墓穴掘ったねえ。『侮辱』って言いたいのは全くよく分かるんだがね……)」
「(『マグナ・レギオを』って口にした以上、坊やの『立場』がアダになる)」
「(迂闊な野次も媚びも『マグナ・レギオへの』言葉になる。下手打てば『侮辱仲間』だ)」
「(勇み足踏んだ坊やの『逃げ道』が読めない今、的外れな加勢して機嫌損ねりゃアウト)」
えげつなさそうなメギド
「(議席持ちが監視する場で、『侮辱した』とスジが通せる言い分は2つ……)」
「(1つは、議会も街も、ヴィータと無関係に、完璧な機能性に基づいてると証明する事)」
「(もう1つは指摘通り、中央が自ら議会という『無駄』をおっ建ててたと認める事)」
殺しても死ななそうなメギド
「(『証明』は、まず無理。坊や自ら、口八丁も『私的』反論も殺しちまったからねえ)」
「(『中央』を持ち出した以上、回答は『公式見解』しか許されない)」
「(この案件、答弁するなら議会と都市計画の資料を持ち込みが必須。用意してるわけがない)」
「(第一、『無駄』が有るから、フライナイツだのが『無駄』な仕事させられてるわけで)」
えげつなさそうなメギド
「(『認める』なんざ言うまでもねえ。自分の首まで揃って飛ばす事になる)」
「(軍団の顔に『中央』の名誉まで背負って糾弾したなら引っ込みも付かねえ……詰みだ)」
殺しても死ななそうなメギド
「(嫌だねえ。『個』が潰される『ヴィータ的』実例を目の当たりにさせられちゃったよ)」
「(ま、そこまで読み取れるほど頭の回る連中も少なかろうよ。坊やの不幸中の幸いかな)」
えげつなさそうなメギド
「(ここまでの行き当たりばったり考えれば、狙ってやったわけじゃねえだろうが……)」
考えるだけなら得意そうなメギド
「う……あ、う……!」
ザガン
「悩むような事かなあ……? まあいっか」
「言っとくけど、別に本気で議会や街に文句があるわけじゃないよ。でも、分かるかな?」
「『当たり前』だから、損はしてないからって見向きもしてない矛盾がそこら中にあるんだ」
「説明するには結局、1つしかないと思うんだよ。そこには私達を変える『強さ』が働いてる」
「ビルドバロックで『淘汰』されてもまだ、疑問も持たせず『ヴィータ』を溶け込ませてる」
「何て言うのが一番かな……ヴィータが作り出した、『可能性』みたいな?」
「それが私の知ってる、ヴィータの『技』。ヴィータの『強さ』だよ」
議会全体を見渡すようにしながら、意気揚々と主張するザガン。
議席持ち達
「……ッ!」
殺しても死ななそうなメギド
「(やれやれ。呆れた与太話だってのに、坊やのお陰で誰もあのドクズを止められない)」
「(坊やが動かなきゃ否定も肯定も出来ないのに、当の坊やが自分で首締めてりゃあね)」
えげつなさそうなメギド
「(独壇場だな。どうやら、一蓮托生で助け舟出すようなタマも居ねえらしい)」
「(上役だけ崇拝して、他所は一括りで見下すタイプか。とんだ『舐めたがり』だぜ)」
「(やっぱ表舞台に出張った所でロクな事にならねえな。議会でも戦場でも)」
スポットライトを浴びているかのようにザガンはますます気勢を増し、いつもの戦場のように、一方的に捲し立てていく。
ザガン
「さっきも言ったけど、ヴィータと『ヴィータ体』の優劣を付けてるのは殆どフォトンだ」
「なら、こうも考えられるんじゃないかな。『フォトン以外の技』があれば並び立てるって」
「互いが与える影響は違っても、見過ごせないモノなら、それを『弱い』とは言えないよね?」
「私達がヴィータの命を操れるように、ヴィータも私達の『在り方』を操れる」
「いや……先に私達がヴィータと同じ『強さ』で『並び立てる』日も来るかもしれない」
考えるだけなら得意そうなメギド
「……っ……っっっ!」
殺しても死ななそうなメギド
「(全力で肩ぁ震わせちゃってるねえ、見てる分には痛快だ)」
「(まあ、あの感じなら……『そうする』気かな。一番無難だし、私だってそうするだろう)」
ザガン
「これは絶対、飛躍した話なんかじゃない。現にフォトンを使った戦争は縮小し続けてる」
「殆どの戦場で、メギドはヴィータ体のまま、フォトンをケチりながら『技』を使ってる」
「代わりに、武器、油、鉄、それに罠や地形や陣形。どこも『ヴィータの技』頼みだ」
「私達とヴィータを決定的に隔ててるっていう『力』は失われ続けてるんだよ」
「今より本当に『どうしようも無く』なったら、メギドの戦争はどうなると思う?」
「フォトンを全く使えない、『ヴィータ戦争』の時代が来る。それくらい私でも分かる」
「このままなら私達は、肉体を変えたり長生きできるだけの『ヴィータ』に成り果てるんだ」
「そこまで行かなくても、近い内に、いつか必ず来ると私は思ってる」
「フォトンの優位が曖昧になって、『メギド体がヴィータ体に倒される日』が」
退屈なメギド
「ん、んなモンあるわけ──!」
おざなりなメギド
「(バ、バカ座れ!)」
「(お前の野次1つで、あの『イカレメギド』黙らす反論が潰れるとも限らねえんだぞ!)」
「(そうなったらお前、軍団もろとも懲罰局の『腹いせ』食らわされるぞ……!)」
退屈なメギド
「(う……)」
ザガン
「『傀儡計画』はフォトン対策の一環……フォトン不足『だから』やる作戦なんだろ?」
「『傀儡計画』を実行する必要がある限り、『フォトン優位』の崩壊もついて回る」
「なら、『どっちが早いか』の違いでしか無いんだよ」
「私達がヴィータ並に『落ちる』か、ヴィータがメギド並まで『這い上がる』か……!」
「『ヴィータだから』でソロモン王を道具にすれば、その『報い』は近く、私達に返ってくる!」
えげつなさそうなメギド
「(結果として、『受け手』に回った相手に調子こいたせいで反撃もらったわけだ)」
「(後はもう、力も知恵も出せねえこの場で、丸裸で妄言聞かされるしか無え)」
「(……『もうしばらくは』、な)」
色眼鏡の下で、議長に目をやるスーツのメギド。
議長は腕組みしてザガンの言葉を聞いているようでありながら、自身の卓上に視線を落とし、何かを凝視している。
ザガン
「私も、ヴィータが本当に『どうしようも無い』生物だったら、どう思うかは分からないさ」
「けど、だからってヴィータの考えにメギドが合わせるのが『おかしい』とは思わない」
「それが問題になるなら、『逆』だってロクな事にならないはずだ」
「メギドの考えをヴィータに押し付けて、こっちの思惑通りに転ぶ保証なんて無いだろ?」
「『支配』するだけなら、互いの利害を確認しあって、それからでも問題無いはずだ」
議長メギド
「…………」
ザガン
「ヴィータが『弱い』から『対等』は無理だって言うなら、試しに考えてみなよ」
「万一、ヴィータ相手にメギドが下手に出なきゃならない場面が一度でも有ったらどうする?」
「逆に、メギドをヴィータ並に容易く屠れる異種族の世界とゲートが繋がったらどうする?」
「ヴィータを『尊重』するくらいなら、世界と一緒に自決する方が素晴らしいと思えるか?」
「メギドを『フォトン袋』扱いされて、ヴィータみたいに使役されても受け入れられるか?」
議長メギド
「……」
ザガン
「ここに居る全員がそうとは思わないよ。けど、君らの中に確実に居るヤツらに言っとく」
「君らは『弱いから認めない』んじゃない。『強くなくなる自分が怖い』だけだ」
「弱い、汚い、悪いモノに、少しでも憧れる所があるなんて、考えるのも怖くて吠えてるだけだ」
「本当に『強い』なら、そんな『意固地』を一度は捨ててみせなよ」
「君らは『対等以上』へ這い寄る存在が怖くて、何としても認めない理由を欲してるんだ」
「君らの中にも、『心当たり』あるんじゃないの?」
「私も『思い知った』側だから、敢えてナニとは言わな──」
議長メギド
「……そこまでい!」
ザガン
「おっ……とっ、とぉ?」
議長が一喝した。
考えていなかった方向からの横槍に、思わず立ち止まるザガン。
議長は、自身の卓に置いていた懐中時計を手に取った。
議長メギド
「時間一杯……議論は終わりじゃ。議席持ち全員、これ以上の議題への言及は認められん」
ザガン
「えー、せっかく勢いノってきた所だったのに……ちょっとくらい伸ばせない?」
議長メギド
「出来ぬ。おぬしが『反対』を表明した時には、既に延長を挟んだ後だったのじゃぞ」
ザガン
「ありゃ……眠たくても、頑張って最初から話聞いときゃ良かったな……」
議長メギド
「ほれ、お主も早う自分の席に戻れ」
ザガン
「はーい……」
ふてくされながら従うザガン。
イタズラがバレてお仕置きくらった後のインプのように無邪気だった。
考えるだけなら得意そうなメギド
「……ふぅ……」
殺しても死ななそうなメギド
「(やっぱり『そうする』よねぇ。詰んでるなら盤面ごと放り出すしかない)」
「(冴えない選択だが……その冴えない選択を選べる程度にはオツムが残ってたようだ)」
えげつなさそうなメギド
「(議会は流れ作業……『時間切れ』を狙うのが最もダメージが少ない)」
「(水入りにできなきゃ、議会は今頃、メンツに狂ったメギドに叩き壊されてたろうよ)」
殺しても死ななそうなメギド
「(結果としちゃ、この『醜態』は表沙汰にならんだろうから、ギリギリ坊やの勝ちかな)」
「(坊やがポッと出のクズに翻弄されたなんて漏らせば、坊やの『背後』に睨まれる)」
「(自分達も、坊やに顔色伺って何も出来なかったなんて知られれば体裁が木っ端微塵だ)」
「(まあ、『ただの代理』の私には体裁なんて関係ないのだが、それでもねえ……ククッ)」
えげつなさそうなメギド
「(頭の回る連中なら、参加者を数人ほど適当に憶えておけば、後々『弱み』に使える)」
「(結果、アホも黙る、知恵者も黙る、議会が主戦場の大物どもは言うに及ばずってな)」
ザガンがしっくり来ない面持ちで着席したのを見届けてから、議長が口を開いた。
議長メギド
「これより議決に移る。初参加の者もおるので、形式として手短に説明するぞ」
「議長こと儂が『賛成・反対・保留』を順に問う。選択に沿う者は起立で応じよ」
「中立の儂を除く起立者を数え、最多の選択を『中央』の方針と定義する。では──」
「本議題、『傀儡のソロモン計画』……『始動の是非』を決する!」
ザガン
「え? 『始動の是非』……?」
退屈なメギド
「(あれ? 何か、足されてね?)」
おざなりなメギド
「(長えから縮めて呼んでただけだっての)」
「(計画1つにも軍団やらフォトンやら費やすから、準備にもいちいち承認が要るんだよ)」
議長メギド
「まず……『賛成』の者、起立!」
議長の指示に続いて、『賛成』派が続々と席から立ち上がる。
ザガンのすぐ隣の席からも議席持ちが起立する。
無論、ザガンは着席を保っている。足を組みながら、リラックスして成り行きを眺めていた。
ザガン
「(流石に、1戦交えただけで議席持ち全員に勝てるなんて期待しちゃいない)」
「(でも、これだけ言えば通じてるはずだ。『力』だけが『強さ』じゃない事……)」
「(ヴィータとも『強さ』を見つけ合えれば、『個』の在り方も豊かになっていくんだ)」
「(『戦争』が出来ないなら、命を賭けたくなる『場』を探せば良い。こいつらも少しは──)」
「(少、し、は……あれ?)」
見る見る表情を歪ませ、思わず身を乗り出すザガン。
ザガン
「あれ、あれ……あれぇ?」
前を見て、横を見て、躊躇いなく背後も振り返った。
全てのメギドが、ザガンを見下ろしていた。
ザガン
「わ……私以外、みんな……!?」
議長メギド
「そこまで。『賛成』過半数を確認……本議題を『可決』とする」
「時間を延長しておる故、規定に基づき、『反対』と『保留』の計上は省略じゃ」
ザガン
「そ……」
「そんなバカなっ!?」
席を蹴飛ばさんばかりに、床を踏み抜かんばかりに立ち上がって叫ぶザガン。
殺しても死ななそうなメギド
「おいおい、今から起立したって、『賛成』票には入らないよ?」
ザガン
「そんなの分かってる! 『賛成』する気なんか無いっ!」
「皆、ちゃんと聞いてくれたじゃないか、私の話!!」
殺しても死ななそうなメギド
「ハッ、こりゃあ普通にガッカリだ。まさか本当にバカ丸出しだけでやってたとは」
「たっぷり聞いたとも、『嫌になるほど』。誰がお前に『くみする』もんかってくらいに」
考えるだけなら得意そうなメギド
「オレは確かに言ったぞ? ここに、オマエの味方は、居ないと」
「まさか本気で思ってたのか? オマエの言葉1つで、メギドラルが、議会が革命できるとでも」
ザガン
「け、けど、ヴィータの『可能性』は確かに──」
えげつなさそうなメギド
「認めた所で結果は同じだ」
「『良い所』なんざ、見つけようと思えばどうとでも『繕える』もんさ」
「だが、奴らは弱く、愚かで、知性も品性も下等な、ただの喋るフォトン袋だ」
「どんなにご立派か謳った所で、見下げ果てたものが1つあれば全部台無し──」
「『当たり前』の話だ。メギドでもヴィータでもな。勝手な夢ぇ見すぎなんだよ、テメェは」
ザガン
「ぅ、ぁ……」
よろめくように席に腰を落とすザガン。
同時に、議会の四方八方から、怒りでも嘲りでもなく、ため息が相次いだ。
心の底から、「面倒なもの」に突き合わされた疲労と嫌気を拭い去らんとするように。
考えるだけなら得意そうなメギド
「(フン、自分の中だけで完結して、『個』と『他』を取り違える……)」
「(メギドなんて、大概がそんな小物ばかりだ)」
優美なメギド
「(よしんば心打たれた者が居ても……議題はサタン派の一大プロジェクトだものねぇ)」
「(この大観衆の前で8魔星に背くなんて……議席持ちなら『普通』は出来ないもの)」
「(精々、『何もしないけど心の中で応援してます』ってトコかしら……フフッ♪)」
議長メギド
「作戦の詳細は、後日の議会で話し合うものとする。皆の衆、心しておくように」
「以上。次の議題まで、30分の『休憩』とする。解散!」
議席持ち達がゾロゾロと席を離れ、議場を去っていく。
殺しても死ななそうなメギド
「ハァ~ア、やっと終わった……30分もあれば、流石にノロマの上司もご到着するだろう」
「椅子を温めるだけの仕事なんて死にたくなるね。『力』が欲しいもんだ……」
考えるだけなら得意そうなメギド
「今に見てろよ……」
「(だがアイツを潰すために、今日の事を隠蔽したまま、どこまで『動かせる』か……)」
抗議者も仮面のメギドも、思い思いに議場を出ていく。
またたく間に顔ぶれがまばらになっていった。
うなだれるザガンの元に、影が1つ歩み寄る。
えげつなさそうなメギド
「よお」
ザガン
「……やあ」
少し間を置いて応じるザガン。
ゆっくりと上げた顔は、まだ現実を受け入れきれていない様子だったが、口元だけは笑みを保っていた。
えげつなさそうなメギド
「この『休憩』はな、本質は議会の計らい……『根回し』のチャンスなんだ」
「軍団員以外のメギドと殺し合い以外で顔合わせなんざ、そうは起きねえからな」
ザガン
「へえ……」
えげつなさそうなメギド
「たった30分だ。その間に、大物どもは『反対』の議席持ちを『賛成』にひっくり返す」
「時には、数十年も癒着して意地張り続けてたメギド連中すらも、だ」
「ここは、そういう『戦場』だ」
ザガン
「そっか……ハハ、真正面からブチ抜くなら得意だったんだけどな」
えげつなさそうなメギド
「ああ、無様だ。見てるだけでムカついて嬲り殺したくなる」
「準備もなしで突っ込んだクセに、『当然』の始末に打ちひしがれる自惚れっぷりは特にだ」
「……『普通』なら、な」
ザガン
「……?」
えげつなさそうなメギド
「藪から棒だが……『衆愚』って言葉、知ってるか?」
ザガン
「聞いた覚えは、無いかな」
えげつなさそうなメギド
「平たく言えば、『群れたバカども』って意味だ。ヴァイガルドから『輸入』された言葉だ」
「何が言いたいか、分かるか?」
ザガン
「今は、ちょっと……考えるの、得意じゃないんだ」
えげつなさそうなメギド
「結構。俺は『舐めたがり』や『インテリ気取り』よりは『お優しい』からな」
「ヴィータは、自分らでも分かっちまうくらい『どうしようも無い』のさ」
「その愚かさで見落とす事も許されないほどに、愚か過ぎる。獣の体臭みてえにな」
「だから作った。『衆愚』って言葉を。作った自分が、少しでも衆愚じゃ無えと思えるように」
ザガン
「君が反対した理由が……ヴィータが『衆愚』だから?」
えげつなさそうなメギド
「まあ、それもあるがな。俺は、議会という『戦場』で勝ちを取りに行っただけだ」
「だが……んなこたどうでも良い」
親指でクイと背後を指差すスーツのメギド。
えげつなさそうなメギド
「てめえは、『よくやった』よ。皮肉抜きにだ」
ザガン
「……!?」
えげつなさそうなメギド
「ところで……ヴィータには『習性』があってな」
「群れれば群れるほど、破滅的で誰も得しねえ愚策ばかり、名案と思い込んで有難がる」
「俺が発見したと思ったら、どうやらヴィータの学者も『習性』をとっくに見つけてたらしい」
ザガン
「そういう事も分かっちゃうくらい『衆愚』だったからって、君は言いたいの?」
えげつなさそうなメギド
「まあな。そこまでどうしようも無きゃ、『尊重』したくたって出来やしねえだろ」
「で、だ……議決にもつれこむまでの『奴ら』が、まさしくその『衆愚』だったのさ」
「テメェは、議会のメギド達を、ヴィータの『衆愚』にまで蹴落としたんだ。たった1人でな」
ザガン
「……私は、議会の皆をバカにしたかったわけじゃないよ」
えげつなさそうなメギド
「テメェの思惑なんざどうでもいい。メギドが他所の『功』をタダで讃えるもんかよ」
「面白ぇモン見せてもらった。後はテメェがどこでくたばろうが知ったこっちゃねえ」
「だが、ヴィータの体を持てば、メギドも『習性』に振り回される。俺には大助かりだ」
「ヴィータの『習性』を利用して蹂躙するのが、俺の軍団の仕事だからな」
ザガン
「じゃあ、メギドも……?」
えげつなさそうなメギド
「そうさ。ガンコナーで『試した』時とは比べ物にならん大収穫だ」
「上手くいけばウチの技術は、ヴィータ体のメギドにも応用できる」
「テメェが赤っ恥晒してくれたお陰で、俺は間違いなく大出世できる。『ありがとよ』」
ザガン
「どういたしまして。……でも、そうじゃないんだ」
えげつなさそうなメギド
「?」
ザガン
「メギドも……ヴィータと同じ心を分かち合える……って事にも、ならないかな?」
えげつなさそうなメギド
「……」
「くっ……くはっはっはっは……ひゃははははははっ!!」
ひとしきり爆笑した後、スーツのメギドがザガンの元を離れていった。
えげつなさそうなメギド
「いっぺん死んどいた方が良いぜ。マジで」
「そこまでトチ狂ってちゃ、もう腹立てる気にもならねえ」
スーツのメギドが退室すると、議場に残ったのは3人だけだった。
ザガンと、議長と、金髪の女メギド。
議長がザガンに呼びかけた。
議長メギド
「何と言ったものか……」
「少し、この年寄りの話も聞いてみてくれぬかの?」
ザガン
「良いよ。別に、やる事も無いし」
議長メギド
「かたじけない」
「儂は立場上、中立でなくてはならんのじゃが──」
「おぬしのようなメギドが居った事を、嬉しく思うとる」
「先ほどおぬしを笑い飛ばした若造のような意味でなく、純粋にの」
ザガン
「ありがと」
議長メギド
「じゃから、これは儂の個人的な『お節介』じゃ」
「おぬしの今後のために、『忠告』を2つ。聞く聞かぬはお主の自由──」
ザガン
「も~、『遠回し』な建前はいいから、遠慮しないでジャンジャン来ちゃってよ」
議長メギド
「うむ……では、まず1つ」
「先の若造も言っとったが……議席持ちは、単なる『力自慢』の集まりではない」
「あやつら口で言うほど、ヴィータの『可能性』に気づいとらんわけでも無いのじゃよ」
ザガン
「その割には、皆して『どうしようも無い』ばかりだったけど?」
議長メギド
「『風潮』というものがあるからの」
「ヴィータやハルマを認める事には、多大な覚悟が要求される……そういう時代なのじゃ」
ザガン
「周りの悪口なんて、気にしたってしょうがないのになあ」
議長メギド
「悪口とて、幾千幾万と集えば、嵐となってメギドも殺せる……派閥も軍団も超えてのう」
「本当は、あやつらも分かっとる。最悪の事態、万一の『可能性』……」
「あらゆる『視点』から備えられねば、今頃とっくに議席も命も失くしておる」
「ヴィータの倫理を心得とる者も少なくないぞ。『尊重』する利点ものう。それでも──」
「おぬしが説いた『可能性』も全て踏まえて、その上で、あやつらは『傀儡計画』を選んだ」
ザガン
「……わっかんないなあ」
「『生きてる』って思えるために、メギドは命を賭けるんだ」
「操るだけの戦いも、操られる戦いも、なんか『違う』。それが『個』じゃないかな……」
議長メギド
「言わんとする事は、なんとなく分かる……」
「じゃがの……忠告その2じゃ」
「メギドは……メギドラルはな、『貧しい』んじゃ」
ザガン
「……フォトンが?」
議長メギド
「うむ。メギドの資源はフォトンのみ。ヴィータの『金銭』のような代替も無い」
「そんなフォトンが足りぬなら、それは生きるための、ありとあらゆる全てが足りぬも同然じゃ」
「ヴィータの言葉に、『貧すれば鈍す』とある。貧しい者は、脱却する術も無いという意味じゃ」
「選ぶという行為さえも、否応なく狭められてしまうのじゃよ」
ザガン
「だったら、その『術』を広げられるように皆で考えて──」
議長メギド
「それでは、まだ甘い。『術』を広げる『術』が無いのじゃ」
「ヴィータ体でも戦い抜ける武器を持とうにも、武器を着ける手足が無いようなものじゃ」
ザガン
「そ……そんなに?」
議長メギド
「この例えですら、まだ甘いほどにな」
「互いのために、未来のために望ましい選択……それが有るとは分かっておっても──」
「地道で長大な計画には、時間もフォトンもかかる。失敗すれば全ては水の泡……」
「より多くのフォトンに挑むためのフォトンが無い。ならば……」
ザガン
「とにかく『やる』しかない……か。すぐにフォトンが得られそうな計画から、手当り次第」
議長メギド
「短絡的でも、横暴でも、無茶でも、もはや本末転倒でも、じゃ。他に手が無いからの……」
ザガン
「『傀儡計画』も……?」
議長メギド
「それは、儂の口からは何とも言えん」
ザガン
「……」
議長
「おぬし……次の議題にも出るのか?」
ザガン
「そうだねぇ……」
ゆっくり立ち上がるザガン。そのまま『伸び』をした。
ザガン
「ん~~っん……ハァ」
「帰る。このままじゃ、『議会』を戦ってるメギドを困らせちゃうかもだし」
議長
「ほっほっ、もう充分、困らされとったと思うがの」
ザガン
「さっきのとは別だよ」
「私と同じ意見にだけはしたくないとかでさ、余計に考えさせちゃうかも知れないし」
「気持ちのまま突っ走るだけの私のせいで実力出せないとか、流石に悪いじゃん?」
議長
「ほう……」
「あれだけ『しっぺ返し』を食いながら、まだ議席持ちのやり方を『尊重』すると?」
ザガン
「私に向いてない戦場だからって、ケチつけちゃ『格好悪い』からね」
議長
「か、格好……? むぅ、本当に変わったやつじゃのう」
ザガン
「フフッ。その『服』、似合ってるよ」
議長
「お、おう?」
「……のう。お主、見た所、議会より戦場を好む手合じゃろう?」
「良ければ、正直に聞かせてくれんかの。本当は、今も腹に据えかねておるのでないか?」
ザガン
「……うん。出来るなら、今すぐ議会なんて更地にしてやりたいくらい」
言葉とは裏腹に、口調も表情もスッキリと、笑顔で語るザガン。
ザガン
「でも、それは『したくない』」
議長
「したいのに、『したくない』とは……これ如何に?」
ザガン
「うーん……今、思いついたんだけどさ」
「議席持ちなら、『反対』したくて堪らなくても『したくない』時って、あるんじゃない?」
議長
「ほほう……」
「感情任せと思いきや……中々、『芯』のあるメギドであったか」
「また会える日を楽しみにしとるぞ。ここは余り『良い所』でも無いじゃろうがな」
ザガン
「頭冷やして、気が向いたらね♪」
ザガンも、議場を去っていった。
優美なメギド
「(一直線なトコは可愛かったけど……)」
「(私も『今』はもう、『つまみ食い』は控えなきゃだしね……)」
※ここからあとがき
日頃から原作のように、会話で充分な描写がなされるよう「ト書き」を簡潔に済ます事を心がけているのですが、今回は舞台が終始議会でキャラの動きも少なく、いつものノリでは些か説明不足な気もしています。
小説書くのは難しい……。
書いてみたい事を書きまくって、不自然にザガンさんの知能指数が乱高下してしまったかも知れません。
ヴィータの思春期によくある、夢見がちなのに理論武装したがる頃だったという事で。
取捨選択の未熟さは、文字数の問題にも繋がるので、強く反省していきたい所存です。
考えるだけなら得意そうなメギドの原作での活躍は、筋肉イベ以外はまだ未読なため、原作より"かわいく"描写しすぎてるかもしれません。何卒、大目に見ていただければと。
ついでに優美なメギドも同イベントの姿しか確認してないのでキャラが少し違うかもです。(シトリーさんを最初期からお迎えしてるのに、このていたらく……)
本来の派閥に関係なくザガンさんが猛反発されてる&サタン派の計画に賛同が集まっているのは、議長の「忠告」にも一部ある通り、既に傀儡計画が充分な推敲の上で軌道に乗りつつあるからです。つまり、「全」の観点で言えば、急にやってきて中途半端な知識で水を差してきたザガンさんの方に非が大きいです。
筆者の脳内では、ここでザガンさんが一石投じた結果、傀儡計画が原作の形に一部修正されたり、この作戦に対する議席持ち達の最終的な認識に繋がってたりして……なんて妄想してます。
まあ、まだメギモンとかにも会って無いので、もしかしたらとんでもない食い違い描写になってるかもしれませんが……。
この辺の説明を差し込む箇所を見繕えなかったので、言い訳半分にここで書いておきます。
あと、リジェネおじいちゃん等をお迎え出来ていないので、当時の議長が誰かは筆者の中で定まっていません。適度に脳内補正していただけると幸いです。
メギトレのようなストーリー無しにそこそこ期間のあるイベントは、正直ちょっと助かります。
「ストーリー読まなくちゃ」と身構えなくて済む分、メインクエストやキャラストを読む時間を作れる(かもしれない)ので。
どうにか、おじさまも召喚できましたし。
ここからメインクエでのザガンさんの活躍が増えると思うと、ワクワク半分、おっかな半分。
点穴や連撃でターンかけがちだったので、筆者はラッシュ編成がちょっと苦手なようです。
特に点穴は前々から何故か苦手意識が……。