アブラクサス近郊の森深く。
潜伏する騎士団と合流した一行。即席の駐屯所が築かれており、テントと呼ぶにはしっかりした作りの居住施設が幾つか造成されている。その1つの前で一息ついているソロモン、バルバトス、エリゴス。
男女一組の騎士が3人の元にやってきた。
騎士ヒラリマン
「お待たせしました、皆さん。改めてご挨拶を」
騎士ジョーシヤナ
「皆さんの補佐を任されました、ジョーシヤナです。お会いできて光栄です、ソロモン王」
「で、ガブリエル様を護送したこっちが、部下のヒラリマン。どうぞお見知りおきを」
ソロモン
「ああ、よろしく頼むよ」
バルバトス
「もっと気楽にしてくれて構わないよ。うちのリーダーは格式張った事が苦手なんでね」
エリゴス
「それに、野営にしちゃべらぼうに快適だしな。むしろコッチがかしこまるべきじゃねえかってくれえだ」
ソロモン
「着いた時には俺達の寝床を男女別で用意済みで、昼食まであんなに沢山……」
「すっかり自分達で野宿とかに慣れてたから、ちょっとムズムズしちゃうな。ハハハ」
騎士ヒラリマン
「何せ森の中なんで、楽しんでいただける物なんて食事くらいしか無いって事情もありますけどね」
エリゴス
「ただ、文句言うわけじゃねえが……いかにもな連中が挨拶無しなのは片手落ちだけどな」
諦め半分なような皮肉を交えたような、「やれやれ」といった様子の苦笑で森の一角を見るエリゴス。
視線の先では、明らかにジョーシヤナより階級の高い騎士数名が真剣な面持ちで、ガブリエルと何やら報告を交わしている。
騎士ジョーシヤナ
「すみません、彼らも後から挨拶に伺いますので」
「任務の都合上、話せないこ……ああっと、いや、まあ、ととにかくまあ、後ほど……!」
エリゴス
「冗談だよ、そこまで露骨に慌てなさんなって。こっちだってそう鈍かねえ」
バルバトス
「ヴァイガルドの威信をかけて働いてくれてる君達なんだ。守秘義務の1つも無くっちゃね」
ソロモン
「うん。そこは気にしてないよ。お互い余計な詮索はしない方が『対等』って気がするし」
「さっきバルバトスが言った通り、余り気を遣ってくれない方が、俺達も気が楽だからさ」
「(幾ら何でも王都の『隠し事』を、現場の騎士に問い質そうなんて思わないしな)」
騎士ジョーシヤナ
「ありがとうございます……」
騎士ヒラリマン
「ご覧の通り良くも悪くも歯に衣着せない人なんで、部下としてもよろしくお願いします」
騎士ジョーシヤナ
「ってコラ、恥ずかしい事バラすんじゃないの!」
バルバトス
「ハッハッハ、そのくらいが、俺達も接しやすくて助かるよ」
「それより……サルガタナスの方は、何か面倒起こしたりしてないかい?」
「彼女は気難しくって、不覚にも来るまでにちょっとご機嫌を損ねてしまってね……」
エリゴス
「虫やら土やら嫌うわ、あたしらとツルむのは面倒だとかで早速テントに籠もっちまったし」
「……テント、だよな?」
騎士ヒラリマン
「専らテントって呼んでますけど、正式には『ゲル』と呼ぶそうです」
「東の方の、遊牧しながら生涯を送る民族の技術を参考にしたとかで」
騎士ジョーシヤナ
「薀蓄はさておき、サルガタナス様なら変わったご様子はありませんでしたよ」
「先程も様子を伺いましたが、物資からお出しした白チョコレートを摘んでゆったりされてました」
騎士ヒラリマン
「皆さんの護送と一緒に、久々に嗜好品の補給があったもので、部隊一同大助かりでした」
エリゴス
「まあ、そりゃ良かったけど……白チョコレート?」
「チョコなら前にアジトでも流行ったけど……黒とか茶色系じゃなかったか?」
騎士ジョーシヤナ
「人気なだけに新商品の開発も進んでるんですよ」
「確か……カカオを絞ると白い油が出て、その油だけを牛乳とかと固めて甘くしたんだとか」
バルバトス
「ほほう、早速、アジトの女性たちに土産話ができたよ」
ソロモン
「チョコか……」
騎士ジョーシヤナ
「あら? ソロモン王は、チョコお嫌いでした?」
ソロモン
「ああいや! チョコは好きだよ、何でも無いんだ……」
「それより、サルガタナスなんだけど……価値観がかなりメギド側なやつでさ」
「かなりキツい事を言うかも知れないけど、出来れば……大目に見て欲しいっていうか……」
騎士ジョーシヤナ
「ああ、そういう事なら心配いりません、うちにはこのヒラリマンが居ますから」
「ゲルの中以外の事は全部こいつに任せとけば大丈夫です」
「そういった手合いの女にコキ使われるのが生き甲斐みたいな男ですからバッチリですよ」
騎士ヒラリマン
「ちょっ、よしてくださいよ人前で!」
ソロモン
「(否定はしないんだな……)」
バルバトス
「それはまた中々素晴らしい趣味をお持ちで」
エリゴス
「まあ、サルガタナスにブツけるにはお似合いかもな……」
ソロモン達の隣に建つ『ゲル』の出入り口が、内側から軽く叩かれた。中からソロモン達へ声が届く。
グレモリー
「私だ。全員、準備は終わったぞ」
ソロモン
「おっと、終わったか。こっちも特に問題ない、いつでも大丈夫だ」
エリゴス
「挨拶の騎士さん達も来てるし、むしろタイミングばっちりだぜ」
ソロモンらの返事と共に、ゲルからグレモリー、ザガン、ハルファス、ハーゲンティが出てきた。
全員、普段の装いより幾分質素な格好をしている。
ザガン
「はいはーい、皆お待たせ。どうかな?」
バルバトス
「うーん。こうして久々に見てみると、何だか新鮮にさえ思えるねえ」
ザガン
「気付いたら滅多に着なくなっちゃってたしねえ」
ソロモン
「最初に召喚した頃は、皆そんな感じの服だったよな」
ザガン
「私のこれは、闘牛士としても駆け出しだった頃の思い出の一着ね」
「旅に出る時に『心機一転、初心から』って事で、ソロモンに会うまでなるべくこれ着てたんだ」
グレモリー
「そういう話題なら、生憎と私の場合は召喚に応じた時、偶然この衣装だっただけだな」
「鍛錬が誰かに見られているでも無い限りは、装飾を廃したこれに着替えて打ち込んでいてな」
「ハルファスはどうだ?」
ハルファス
「私? 私は、お母さんが同じ服、いっぱい作ってくれてたから……かな」
「とりあえず、一番動きやすそうで、洗濯も簡単そうなのから着てた」
「服を選ぶのが苦手だから、違う服とかもらっても、あんまり着ないし」
ハーゲンティ
「そして……もちろん、あたいは、一・張・羅っ!」
ソロモン
「うん、知ってた……。にしても流石に今と比べると──」
「変わっ……た?」
ハーゲンティ
「変わったって! ボスのお陰で服とかバッグとか、ウンと良いヤツになったし!」
バルバトス
「服……そんなにジロジロ見たりはしないから、はっきりとした記憶は無いんだけど……」
「今のハルファスの普段着も、余す所なくボロボロじゃなかったっけ?」
ソロモン
「何でか、わざとボロボロにしたやつの方が気に入ってもらえて……」
ハーゲンティ
「ダメージ加工ってヤツですよ、野性的なカッコ良さがイマドキの女子にバカウケらしいよ?」
バルバトス
「ちょっとダメージ深すぎないかい……?」
エリゴス
「野生っつーか、野人っつーか……」
ソロモン
「そ、それは流石に酷くないか?」
グレモリー
「まあ、雑談はここらで切り上げるとしよう」
「待たせたな、ジョーシヤナ。問題があれば指摘を頼む」
騎士ジョーシヤナ
「いえいえ、お気になさらず、そのままで結構です。ちょうど『確認』していた所ですし」
ジョーシヤナがどこからか取り出した書類と、着替えて出た4人とを交互に眺めている。
騎士ジョーシヤナ
「……はい、問題ありません。『筋書き』ともピッタリです」
ザガン
「ふふっ、何だか女優になったみたいでワクワクしちゃうな♪」
ソロモン
「えっと……ジョーシヤナ、良いかな?」
「一応、グレモリー達に別の身分を用意して、それから潜入させるとは聞いてるけど……」
バルバトス
「念の為、その『筋書き』を俺達とも共有してもらえるかな」
「グレモリーなんかは十中八九、名前も変わるだろ? 後々、連絡に支障を来しかねないからね」
エリゴス
「増員のサルガタナスはともかく、王都で説明聞いたあたしが潜入組から外されてるしな」
騎士ジョーシヤナ
「あ、はい。すみません、説明する予定だったのが、だいぶ後回しになっちゃって……」
「念の為、前置きから失礼します。まずアブラクサスには『入国審査』があります」
騎士ヒラリマン
「もちろん国なんかじゃ無いわけですが、あくまで便宜上として、そう呼んでます」
ソロモン
「『入国審査』……アブラクサスの仲間に入れても良いか、取り調べがあるって事か」
バルバトス
「ま、立場を弁えてるなら、間者の1つや2つ警戒しないはずが無いしね」
騎士ジョーシヤナ
「ちなみに一年ほど前に信じて送り出した、私の部下からの確かな情報です」
「審査と言っても、調べる側も素人なので、基本的には出自の確認と持ち物検査程度ですが」
ソロモン
「その部下の騎士と落ち合って、協力して調査するわけだな」
エリゴス
「んで、その前に審査で出自を誤魔化すために、それっぽい『筋書き』を用意した、と」
騎士ジョーシヤナ
「はい。それなりに大きな任務なので、筋書きを決めた後から背後関係も手配してます」
バルバトス
「架空の身の上を証明する架空の人物や証拠も……ってわけか」
「なるほど、そりゃあ準備に日を要するわけだ」
騎士ヒラリマン
「しかもその筋書きのあらすじを書き起こしたのが、我らが分隊長なんですよ」
騎士ジョーシヤナ
「こら、今それ関係ないでしょ!」
グレモリー
「ほう、それは私達も初耳だったな」
ザガン
「四人分でしょ? 結構大変だったんじゃない?」
騎士ジョーシヤナ
「あ、あはは……オッホン。まあ、密かな趣味と言いますか何と言いますか……」
「かのメアリー・チェリーに感銘を受けて以来、日頃からこういうのを良く考えてまして」
ソロモン
「(メアリー・チェリーって、どっかで……)」
「(あ、フルーレティの小説家としての名前か)」
バルバトス
「文化の力がこんな形で……いやあ、ヴァイガルドに芸術があって本当に良かった」
騎士ジョーシヤナ
「まあ私の事は置いといてですね。改めて、潜入組の皆さんの『筋書き』について説明します」
「まず皆さんに共通しているのが『アブラクサスに落ち延びるだけの事情がある』事──」
「それと、『偶然に出会って助け合い、アブラクサスの噂を頼って旅してきた』。この2つです」
バルバトス
「元よりそう言った事情で訪れる女性ばかりだろうからね」
「そして4人が道中でも協力してたとあれば、アブラクサス内部で日頃寄り集まってても誤魔化せる」
騎士ジョーシヤナ
「そんな所です。お一人ずつ『筋書き』を紹介しますと──」
「まずグレモリー様は『元・貴族の近衛兵ギーメイ』と名乗っていただきます」
エリゴス
「へえ、領主様から私兵に降格か」
グレモリー
「元が領主では箔が付きすぎるとの事でな。中で要らん期待や妬みを買わんとも限らん」
「ギーメイは、都市『ペープカンプ』の領主、『ハリー・ボーテン』の下で働いていたそうだ」
「無論、領地も領主も実在せんがな。『筋書き』の内容は、行きでしっかり頭に入れておいた」
エリゴス
「(馬車で読んでたの、もしかして全部『ギーメイの筋書き』だったのか……?)」
バルバトス
「さっきの話からすると、もしアブラクサスがグレ……ギーメイの出自を怪しんだとして──」
「普通の手段でペープカンプと連絡を試みれば、通じてしまうよう準備してるわけだね」
ソロモン
「実在しないのに?」
バルバトス
「王都が政務の脇にそれらしく仕込めば充分だし、領主の手紙やらは誰かが代筆すれば良い」
ソロモン
「な、なるほど……実際に探して確かめるのも現実的じゃないもんな」
騎士ジョーシヤナ
「グレモリー様は、こういった偽装の類が苦手との事でしたので、そこも盛り込んであります」
「叩き上げで地位を築き、貴族の隣に立つに相応しい作法を領主から教わっていた……と」
グレモリー
「そして、ギーメイ自身も戦士として品格を得た己を誇りとしているとの事だ」
「お陰で、名前や経歴と言った『情報』以外は、堂々と普段の私として振る舞える」
ソロモン
「あ、ああ、うん。それは何よりだな……」
「(グレモリーと王都の『隠し事』が分からないでいる今、ちょっと複雑な気分……)」
騎士ジョーシヤナ
「4人が遠くアブラクサスを訪ねた理由も、ギーメイと領主の確執が原因という事にしました」
エリゴス
「さしずめ追手を寄越されて、他の3人と協力しながら逃げてきたってか」
「良いねえ、仲間意識まる出しでも、あたしにゃ疑えそうにねえや」
騎士ジョーシヤナ
「次にザガン様は、経歴通り『闘牛士カリナ』として」
ザガン
「はーい、『カリナ』だよ、よろしくね♪」
ソロモン
「ははっ、ザガンも素のままで大丈夫そうだな」
バルバトス
「見た目から職種が1つしか出てこないもんねえ」
「人前で戦う時に支障が出ても困るし、基本は本人をベースにした『筋書き』なんじゃないかな」
ザガン
「結局は私達、お芝居は素人だもんね」
騎士ジョーシヤナ
「実はカリナの経歴はザガン様からもアイディアを頂きまして──」
「アブラクサスで戦う事になっても心配無いよう、類まれな闘牛の才能を持っている事にしました」
エリゴス
「まあ実際そうだし……ああでもそうか、『才能あれば食いっぱぐれないだろ』ってなるな」
ソロモン
「他の皆にも言えるけど、そこそこ戦えるってだけで、流れの傭兵くらいには入れる世の中だしな」
騎士ジョーシヤナ
「はい。ですので事情も用意しました」
「カリナは領主に八百長を強要され、やむにやまれず応じてしまった……と」
「しかし! それが発覚してしまい、領主に全ての責任をなすりつけられたカリナ……!」
「哀れカリナは、逃げるように放浪の旅へと出たのです……!」
ソロモン
「け、結構重い……!」
「つまり、八百長を持ちかけたのはカリナの方……みたいなデマを流されたんだな」
「不正をする闘牛士って誤解されたら、確かにどこも雇ってくれないだろうな……」
バルバトス
「ギーメイもカリナも、権力者の根回しで醜聞と共に顔も世間に知られてしまったのだろうね」
「まともな仕事に就こうにも、噂を聞いた連中からの通報や嫌がらせは世の常」
「才能を持て余しながら、行き場に困るのもやむなし……筋も通るな」
エリゴス
「つか、騎士のねーちゃんノリノリだな」
ザガン
「ちなみに八百長やれって言われたのはホントだけど、私はちゃんと華麗に突き返してやったからね」
ソロモン
「そこから監修!? ……っていうか、ええっ!?」
ザガン
「私は今『カリナ』だから、『ザガン』の話はまた今度ねー♪」
バルバトス
「これはこれは、どうやら『カリナ』は魅惑の駆け引きも得意なようだねえ」
騎士ジョーシヤナ
「次は、ハルファス様。これと言った経歴が少なかったので、『剣闘士のチータ』という事に」
エリゴス
「まあこんな武器担いでりゃ無難なとこか」
ソロモン
「(『経歴も何も』だったみたいだしなあ……)」
騎士ジョーシヤナ
「ただ、こんなにお若くて荒事の最前線で働く人なんて、今日び滅多にある事じゃないので──」
「物心付いた頃から闘技場で働かされていた孤児……と、私的にも少々ヘヴィな『筋書き』に……」
バルバトス
「まあ、身の上の辻褄合わせるためにも、それでいいんじゃないかな」
「有り得そうな範囲で重苦しいなら詮索もしにくくなるだろうし、ハルファスも気にしてなさそうだし」
ハルファス
「うん。とっても考えられてて、すごいなって思う」
騎士ジョーシヤナ
「おぉ……あ、ありがとうございます……! は、話を戻しまして──」
「ただ、剣闘士とするにはハルファス様は何というか、キレイな肌をされていますので……」
エリゴス
「そうそう、特にヴィータ相手にしてたんなら、傷痕の1つや2つ無いと不自然だもんな」
ソロモン
「今の皆は、基本的に治療の『技』とかでそういう事も滅多に無いけどな」
「そもそも、幻獣相手だともっと酷い事になりそうだけど、傷痕ってヴィータ相手限定なのか?」
グレモリー
「幻獣退治が専門なら、傷が目立たぬくらい珍しくない」
エリゴス
「爪だの牙だの一発でももらえば、生き延びられても普通は傷が膿んだりでオダブツだしな」
ソロモン
「ああ、そういう……」
騎士ジョーシヤナ
「そんなわけなので、剣闘士チータは真剣勝負を組まれる事は余り無かった事にしました」
「生まれ持った力強さで、専ら怪力ショーや、見た目に屈強そうな男との出来レース等など」
バルバトス
「広告塔かあ、ハルファスなら華もあるからねえ」
エリゴス
「そこ、ちょっと興味持ってんじゃねえよ」
バルバトス
「ご、誤解だ! 俺はあくまで筋書きの妥当性について……!」
ソロモン
「あー……バルバトスはひとまず置いといて、続きを頼むよ」
騎士ジョーシヤナ
「あ、はい」
バルバトス
「(とうとうソロモンにまでこの扱いか……!?)」
騎士ジョーシヤナ
「そして、ここからが重要なのですが……」
「ハルファス様は、ともすれば『演技』を忘れてしまう恐れがありそうなので、その対応を少々」
ザガン
「私も自分がウッカリしちゃわないかちょっと心配だけど、ハルファスは……うん」
ソロモン
「そ、そうか? ハルファスって、見た目に感じるより、ずっとしっかりしてるぞ?」
バルバトス
「例えば……4人の素性を怪しんで、ハルファスから聞き出そうとする女性が居たとしよう」
「その女性が、まずハルファスと信頼関係を築く所から始めて、終始、味方として振る舞ったら?」
ソロモン
「ハルファスの信頼を得てから、聞き出す……あっ」
「もしハルファスが、その人をどこまで信じて良いか『よく分からない』ってなったら……」
ハルファス
「私も、言っちゃダメなことは言わないって自信、無いかも?」
「もしかしたら、全部教えちゃっても、私達に協力する方を選んでくれるかもしれないし」
ハーゲンティ
「ダ、ダメ! ハルちゃん、メッ!」
ソロモン
「この任務にしたって、本来なら俺達は知るはずも無かった部外者って言えるしなあ……」
「どんな時にどこまでが言っちゃダメか……流石に指示しきれない」
騎士ジョーシヤナ
「はい……そんな訳で、ここは敢えて『筋書き』を『入れ子』にしてみました」
ソロモン
「入れ子?」
騎士ジョーシヤナ
「つまり……ちょっと無体な『筋書き』なんですが……」
「まず、剣闘士チータは生まれてから、闘技場以外の世界を知らずに育ってきました」
「言われるままに舞台に立ち、従う事だけを要求される生活……」
「そんな環境で育ったチータの中では、自分で物を決められない人格が形成されていったのです」
バルバトス
「極度の優柔不断の理由付けってわけだね」
「無学という『筋書き』なら、マズイ質問には『よく分からない』で押し切らせる事ができるな」
エリゴス
「うちの『わからん』担当達はホイホイ喋りそうだけど、性格もだいぶ違うしな」
騎士ジョーシヤナ
「しかし……チータの若い心は、密かに日々鬱屈を重ね続けていたのです!」
「自由が欲しい……私だって自分で決めたい……でも出来ない……!」
「『こんな……こんな私は、本当の自分じゃない』!!」
騎士ヒラリマン
「ぶ、分隊長?」
エリゴス
「無体な『筋書き』とか言っときながら、何かどんどんヒートアップしてんぞ……?」
ソロモン
「身振りまで交えだした……」
バルバトス
「世のそういった伝承を残した人達も、こんな感じだったのかな……」
騎士ジョーシヤナ
「そしていつしか、チータは願望と現実を混同するようになってしまったのです!」
「『大人たちのお人形チータ』は仮の姿……その正体は、『宿命の戦士ハルファス』ッ!」
「世界を救うためにヴァイガルドに生まれ落ち、真実の仲間と旅立つ未来があるのだとッ!!」
ハルファス&ハーゲンティ
「おおー(ぱちぱち)」
エリゴス
「とうとう雰囲気に流されて拍手始めちゃってんぞオイ……」
バルバトス
「えーっと……つまり、ハルファスの正体を一部脚色しつつ『筋書き』に落とし込んだわけだね」
「うっかり素性を明かしてしまっても、思春期の夢見がちな一人語りと思わせようってわけだ」
「……で、良いんだよね……?」
騎士ジョーシヤナ
「……ハッ!?」
「ぁ……ゥオッホン、オホン!! し、失礼しました……そういう事です」
グレモリー
「ちなみに、以上のチータの身の上を、私の方から説明する段取りになっている」
「全文は書類11枚半に渡る大作だ。一見して筋も通っていた。しっかりこなして来よう」
エリゴス
「当の作者が今、めちゃくちゃ『しまった』って顔してるけど、大丈夫なのか……?」
バルバトス
「大丈夫……考えてた時の自分がテンション高すぎて、今になって恥ずかしくなってるだけだよ」
ソロモン
「でも、ハルファスを潜入させるための辻褄合わせとは言え、何だか──」
「剣闘士が良くない仕事みたいというか……ガープに聞かれたら怒られたりしないかな」
「ガープも昔の事、余り教えてくれないから、どんな仕事なのかとか詳しくないけど」
バルバトス
「ま、そこはしょうがないさ。良くない所に居なけりゃ、こんな所に来ようなんて思うはずもない」
「(ガープも結構な所で働かせられてた雰囲気だけどね……)」
エリゴス
「まあとにかく、最後はハーゲンティだな」
「こっちもパッと見で身の上決まるナリでもねえし、ハルファスほど力自慢でもねえし……」
騎士ジョーシヤナ
「ハーゲンティ様の場合は……えー……」
「負けました……!」
ハーゲンティ
「フッ……」
ソロモン
「はい?」
エリゴス
「そんな今にも崩れ落ちそうなツラで……」
バルバトス
「ハーゲンティも何を勝ち誇ってるんだ……?」
騎士ジョーシヤナ
「まず、ハーゲンティ様は『サシヨン』と名乗っていただきます……」
「とても多くの場所で働いてらしたので、名を知るアブラクサス住民が居るかもしれませんし」
バルバトス
「まあ、それは妥当な判断だけれど……」
グレモリー
「ちなみに、ハーゲンティについても『入れ子』の措置がなされている」
「とある職場で『ハーゲンティ』という別名を与えられたという『筋書き』でな」
ソロモン
「どういう筋書き……?」
グレモリー
「拉致同然に労動所で生活し、別の名前を名乗るよう強いられたと言うものだ」
「本名と身元を封殺されたまま何年も働かされ、二つの名前が『染み付いた』」
「どちらも自分の名として、自分自身でさえ区別できなくなっているのだとな」
バルバトス
「そりゃあ、呼ばれても名乗る時もヘマしたって誤魔化せそうだけど……」
ソロモン
「また重い話を……」
騎士ジョーシヤナ
「ついでに、そこでは『ハーゲンティ』の名が複数人に宛てられた事にしています」
バルバトス
「もし本物の『ハーゲンティ』を知る住人が居ても、誤魔化せるようにだね」
「その人が知る『ハーゲンティ』は目の前にいる『サシヨン』の事じゃない」
「かつてその労働所で働かされていた何人もの『ハーゲンティ』に過ぎないと」
エリゴス
「メギド的につらすぎんだろ……流石にやりすぎじゃねえか?」
騎士ジョーシヤナ
「こんなの、まだまだ甘かったんですよ……」
ソロモン
「へ……?」
騎士ジョーシヤナ
「まず、『どんな旅をしてきたか』とか、4人全体の『筋書き』を覚えていただいて──」
「後は、ハーゲンティ様には……後は……!」
「後はもう全部、聞かれた事にハーゲンティ様の経験そのままにお答えいただく形に……!」
エリゴス
「悔しそうな顔して言う事か、それ……?」
ソロモン
「そのままって……身分がバレないための『筋書き』なのに、正直に答えちゃダメなんじゃ?」
騎士ジョーシヤナ
「ただでさえ職種が多いし、『追跡調査』が難しい案件ばっかりなんですよ!」
「王都の諜報力でだって一筋縄じゃいきませんし、ましてやその王都の使いだなんて誰も思いません!」
ソロモン
「『追跡調査』……?」
バルバトス
「実際に職場に行って『こんな奴が働いてたか』って確かめたりする事だよ」
「その調査が難しいのは日雇いの仕事とか、気軽に参加できるけど福祉も悪いって仕事が大体だね」
エリゴス
「ああ、港の荷降ろしの手伝いとかか」
バルバトス
「無難な仕事も多いけど、最近は不当な賃金で働かせてる職場の事例が増えてるらしいよ」
「誰を働かせてるか、ワザと記録も記憶もさせないよう、働く人員や場所を工夫するんだ」
「後から『職員を毎日20時間働かせたろ』と問われても『そんなヤツ誰も知らない』ってね」
エリゴス
「あー、ハーゲンティ気にしなさそうだしなあ……」
「そっか、さっきの別の名前付けてくる職場ってのも、そういう隠れ蓑のためにやるわけか」
ソロモン
「追跡調査もトーターバウムの仕事とか、雇い主どころか土地まで残ってないしな……」
バルバトス
「本来なら経歴不詳って事でもある。王都発の任務になんて普通は選ばれない」
騎士ジョーシヤナ
「何より……何より、私の『筋書き』より、ずっと苦労なされてるんです! もう完敗です!!」
「過酷な労働環境の『筋書き』を提案するたびに、あっけらかんと『あったあった』って……!」
「しかも斜め上行くような現場の生の声までセットで紹介される始末なんですよ!!」
ハーゲンティ
「そして、あたいは勝った! ぶいっ!」
エリゴス
「いやいやいや、逆境苦労人自慢やってるわけじゃねえんだから!」
ソロモン
「何ひとつ勝ち誇れる状況じゃないから!」
バルバトス
「ちょっと待て? じゃあ、さっきの拉致同然の労働所ってのも……」
ハーゲンティ
「流石に何年もじゃないけど有ったよ、そん時ゃ確か『48号』って呼ばれてた」
一同
「(ハーゲンティ、一体どんな人生送って来たんだろう……)」
バルバトス
「ま、まあ何にせよ、王都がそのプランを認めたって事は、『それほど』なのは分かったよ……」
「つまり、逆に王都がハーゲンティみたいな間者を送り込まれても、すぐには身元が割れない」
ソロモン
「ハーゲンティをスパイか何かと疑った上で取り調べて来ない限り、何も取り繕わなくて良いのか……」
「ある意味、無敵だな……」
エリゴス
「で、結局何であたしだけハブられたんだ?」
「不満って事はねーけど、こう色々『筋書き』考えてもらうの見てるとさ──」
「あたしだったら何者になってたのか興味湧いてきて、ちょっと残念つーか、あはは……」
ちょっと照れくさそうなエリゴス。
ザガン
「案外、可愛い役もらえたりしちゃって?」
エリゴス
「バ、バッカ、茶化すなって!」
ソロモン
「ははは。でも俺も同じ事、ちょっと思ったな」
「俺は男だし指輪持ちだから、『筋書き』を考えてもらえる側じゃないけど──」
「俺がモデルの『もしも』の誰かって、考えてみるとちょっとワクワクしてくるし」
バルバトス
「とはいえ作者ご本人は、いささかハードな『筋書き』を好むみたいだけどね」
騎士ジョーシヤナ
「さ、さっきのお見苦しい部分は、どうか忘れてください……」
「実は私も色々考えては居たのですが、諸々の事情でポシャってしまいまして」
バルバトス
「言い方からすると、『筋書き』……もとい、作者とは関係ない所でボツになった感じかな?」
騎士ジョーシヤナ
「はい。2,3の理由から、『潜入組は4人で行こう』と上からのお達しが」
騎士ヒラリマン
「一番の理由は、ソロモン王を守備する『監視組』を考慮しての事と聞いています」
ソロモン
「ああ、そういえば。『監視組』に決まってるメギドは2人しか居ないからな」
バルバトス
「それも俺とサルガタナス。どちらも後衛タイプで、火力を振るう役でも無いな」
「王都と対等な別組織って建前と、ヴィータを守る本分を考えれば、騎士団を盾にもしたくない」
エリゴス
「なるほど、それで前衛5人から一人ぐらい『監視組』に回そうってなったわけか」
バルバトス
「こっちの都合にハッキリ口出せるとなると、決定したのはガブリエル辺りかな」
ソロモン
「こればかりは、気を利かせてくれた事に素直に感謝かな」
「分かれての潜入作戦なんて慣れない依頼で、俺自身、考えが『浮ついてる』自覚はあったし」
騎士ヒラリマン
「まあ、作戦の責任者が誰かとかまでは私達からは何とも」
騎士ジョーシヤナ
「でも、何かあれば遠慮なく頼ってくださいね。協力関係にある事は事実なんですから」
グレモリー
「機会があれば、指導の方もミッチリと頼む」
「メギド72の仕事は、幻獣やメギドの征伐が主だからな。異なる仕事の『空気』を学ぶに丁度いい」
バルバトス
「ふむ。その点で考えると、ソロモンはどうしても『指揮者』として振る舞ってばかりだ」
「今回の任務の主導は王都なのだし、『管理職』として間を取り持つ経験も積めるかもね」
ソロモン
「そ、そういうのは、できればお手柔らかに……」
エリゴス
「しかし、するってえとあたしが『監視組』に回った理由も、バランスの問題か?」
「私ならリジェネ使い分けりゃ前衛で攻撃も防御もいけるし」
ザガン
「でも、張り合うわけじゃないけど、それって私でも出来なくは無いよね?」
エリゴス
「そう、あたしも同じ事思った」
「あたしの方が小回り効くけど、奥義使う事まで考えたらザガンの方が良い場合もありそうだしよ」
ソロモン
「リジェネレイトしたエリゴスなら敵をまとめて倒す事もできるけど、それならハルファスが居る」
「バルバトスの治療とサルガタナスの補助があれば並の幻獣は誰でも何とでもなるだろうし……」
バルバトス
「つまり、そこがエリゴスを『監視組』にした『一番以外の理由』って事かな?」
騎士ヒラリマン
「っぽいですね。私もそこまでは聞いてないのですが、分隊長なら何か──」
騎士ジョーシヤナ
「一言で言うと……迫力ぅ……ですかね」
ソロモン
「迫力……?」
エリゴス
「まあお世辞にも温和ってナリじゃねえけど、グレモリーほどじゃ……あ、いやワリイ」
グレモリー
「問題ない、私には褒め言葉だ」
騎士ジョーシヤナ
「まず、部下との連携や、作戦全体を把握している人員として、グレモリー様が欠かせません」
「弱者として打ちひしがれた女性達の前に、グレモリー様とエリゴス様が並び立たれると……」
ソロモン
「2人を知らない人間の前に、2人揃って現れると、問題が……?」
バルバトス
「そういった女性は、何かと傷を抱えて、些細な事にも過敏になっている事が多い……」
「そして初対面なら、2人の態度も否応なく、俺たちほど打ち解けたものじゃなくなる」
ハルファス
「近づきにくそうって思われちゃうかもしれないって事……?」
ザガン
「2人とも、女子トークとか余り得意なタイプじゃないし……」
一同
「……」
・ ・ ・ ・ ・ ・
誰かの脳内。
アジトの広間のような、学校の教室のような謎の空間。
見覚えのありそうな女性たちと、どこにでも居そうな女性たちが思い思いにざわついている。
どこかの世界では7歳から聞き慣れていそうな鐘の音が鳴る。
女性たちが軍隊のように整然と並んで座席に着き、静まり返った。
音声通信の電源を入れた時のブツッと言う音を挟んで、どこからともなく声がする。
???その1
「あ~、テス、テス、テス……」
「はあいどーも、始まりました『DE・る~女ンちゃんねる』~、担当はアテクシこと──」
「え、何……世界観? あ~……もう、しょうがないにゃぁ」
???その2
「初っ端こんなにハッチャケといて今更ですけどね~」
「皆さんオハヨーゴザーマース。皆さんが静かになるまでに……え、3秒かかってない?」
「ちぇー、一度言ってみたかったのにな~……じゃあとっとと始めちゃいましょね~」
???その1
「ハイそれじゃあネ、今回は皆さんに新しいお友達がネ、やって来たわけなんですけどもネ」
???その2
「まあ取り敢えず見てもらった方が早いわよね。そんじゃ見てもらいましょっかドゾー」
バン、と勢いよく何か開く音がして、女性たちの首がグリッと音源の方角へ回った。
両外開きアーチ型の窓の向こうで、青々とした空にアクセント程度の雲が点々と。
景色を遮るように窓枠に人影。縦の辺を背もたれに、やや膝を曲げながら足を組んで投げ出し、対辺の窓枠に足裏を預けている。
人影の正体が、無限に続くそよ風に、前髪と、大ボリュームのハイポニーと、上着の裾をいつまでも靡かせながら、腕のバンデージを口で咥えて巻き直している。
リジェネなお友達
「……あたしは、エリゴスってんだ。ま、よろしく頼むよ」
野性的な視線と、ぶっきらぼうな挨拶だった。
バラエティ番組でよく聞くような三者三様の感情を混ぜたどよめきが、どこからともなく湧き立った。
???その1
「みんなの感想聞く前にねー、実は……もう一人お友達が来ちゃってたりしちゃいまーっす」
???その2
「はいバンバンいきましょ~、どうぞ~」
空間の照明が落ち、女性たちの座席から見て正面にバンッと、スポットライトが照らされる。
ライトの下にはガラスの靴でも落ちていそうな大階段が広がり、コツコツとライトに近づく足音。
照らし出された人物が伏せた顔を上げると同時、纏っていたマントが風も無いのにはためき、どこからともなく黒い花びらが舞い上がった。
ゴージャスなお友達
「私はグレモリーだ。諸君らと迎える新たな日々……楽しみにしているぞ?」
語尾の方に吐息が大目に混じっている。
誰かの脳内なので、実在のグレモリーよりも雰囲気どころかデザインまで微妙に異なっている。例としてはまつ毛が長いというか、濃い。唇の紅も普段より深く印象強い。
これまたわざとらしい声の波が押し寄せる。女性たちは整然と着席したまま。
???その1
「気になったコは早速チャンネル登録と……あ、はい世界観。ハイ……」
???その2
「期限は3年間なんつって。そんじゃみんな仲良くしたげてね~」
どよめきが延々とリピート再生されている。
スポットライトの下で、いつの間にか合流したエリゴスとグレモリーが、スタイリッシュな立ち姿で女性たちに射抜くような視線を送っている。
舞台装置のように着席したままの女性たち。2人を目の当たりにして、その胸中に去来する言葉は……。
・ ・ ・ ・ ・ ・
ハーゲンティ
「こ……こいつらタダモンじゃねえッ!」
バルバトス
「こらこらこら……」
現実に戻る。
バルバトスが苦言を呈するが、肝心のフォローが出てこない。
仲間たちも大体似たような表情をしている。
ソロモン
「その……二人とも、見るからに強そうだもんな……」
騎士ヒラリマン
「大変な思いしてきたに違いないとしても、レベルが格段に上がりそうな……」
ザガン
「追いやられたっていうより、渡り合ってそう……」
エリゴス
「自分の事とはいえ、あたしもちょっと分かった気がする……」
騎士ジョーシヤナ
「王都が懸念したのがまず、『厄介の種を持ち込まれる』と思われかねないという事で」
ザガン
「そっか、ギーメイの追手から逃げて……って『筋書き』だったもんね」
ソロモン
「充分戦えそうな2人に差し向けられる程の刺客って、相当な腕だと考えちゃうな」
「それがギーメイを狙ってアブラクサスに入り込まれるリスクを考えると……」
バルバトス
「シュラー始め、アブラクサス幹部の心象は良くないだろうね」
「『入国審査』をパスできたとしても、特例で行動を制限されるなんて事も……」
騎士ジョーシヤナ
「それと、『注目』を集めすぎる、と」
「最悪、アブラクサスのヒエラルキーを揺るがし、余計な騒動を起こしかねないそうです」
ソロモン
「ヒエラルキー……シュラーを頂点としたアブラクサスの体制を変えちゃうかもって事か?」
「確かに、二人とも頼り甲斐のある人柄だけど、そこまではちょっと大げさな気が……」
バルバトス
「いや、有り得るよ。老若男女、居場所を失えば新たな拠り所を常に求めるようになる」
「アブラクサスの住人は、自分を『安心』させてくれる存在に飢えていると考えていい」
「だがシュラーは1人だ。『シュラーが私を守っている』と実感させられる人数には限界がある」
騎士ジョーシヤナ
「ご婦人向けのお話でも定番の展開ですね!」
「領主の側室になれた女が、しかし一番になれない不安を抱え続けるよりはと身近な男に……」
エリゴス
「ドロドロした話をイキイキと語りなさんなって……」
グレモリー
「ふむ。つまり、シュラーに縋る住人どもとの精神的落差が問題になるのだな」
「現行の4人なら、私が司令塔だという『役割』が存在感を多少紛らせるかもしれんが──」
「エリゴスが付くと、互いの存在感に『余裕』が生まれ、求心力として周囲に波及する」
ザガン
「『シュラーに愛想尽かされてるかも』って不安になった人が、勝手に頼ってきちゃうわけだね」
ハーゲンティ
「あたいがアブラクサスの住人だったら、迷わずマム達の舎弟になってる所だもんね……」
バルバトス
「図らずもアブラクサスのパワーバランスを乱し、グループ抗争まで起こしかねない、か」
「二人共、組織を率いている実績と、それに足るカリスマもあるからねぇ」
ソロモン
「任務の都合上、グレモリーは潜入組から外せない。だからエリゴスを……」
エリゴス
「まあ、そういう事なら仕方ねえやな」
「あたしも、そういう湿っぽい頼られ方は好かねえ性分だし、むしろ都合が良いくらいだ」
グレモリー
「私も『戦士』としてそういった信頼は好まないが、それ以前に『領主』だからな」
「民の在りように私情を持ち込みはしない。擦り寄るなら許容し、活用する」
エリゴス
「適材適所ってな。よろしくお願いしますよ、領主サマ」
グレモリー
「うむ。任せろ」
足音が近寄ってくる。ガブリエルだった。
ガブリエル
「話は終わりましたか」
騎士ジョーシヤナ
「これはガブリエル様……ひとまず、一通りの事はお伝えできたかと」
ソロモン
「潜入組の4人の筋書きと、エリゴスが『監視組』に入るって事は確認したよ」
バルバトス
「4人は潜入後、先に内部で待ってる仲間と協力して調査を始めるって事もね」
ガブリエル
「ならば充分です。早速、4人にはアブラクサスへ向かってもらいます。行動は早いに限りますので」
エリゴス
「なんでえ、結局『潜入組』にはお偉いの挨拶は無しってかい?」
ガブリエル
「生憎と『監視組』も多忙なもので」
「代わりと言っては何ですが、『潜入組』は本作戦のNo.2の者とアブラクサスへ向かいます」
ソロモン
「No.2? 2番めに偉い人も『潜入組』に?」
ガブリエル
「いえ。彼はキャラバン隊の長を偽装して、度々アブラクサスと取引に出向いています」
バルバトス
「つまり、キャラバンに扮する騎士部隊と隊長殿に、アブラクサスの門前まで案内してもらうわけか」
「(この様子だと、騎士団との取引でも、怪しい動きは掴めていないようだな)」
「(本当に『原種』を取引しているなら、有力者だけを狙って卸すだろうから無理もないか)」
騎士ジョーシヤナ
「すみません、説明が漏れていました……」
ザガン
「そのキャラバンに頼んで、ここまで乗せてもらったって事にするんだね?」
ガブリエル
「ええ。『筋書き』の関係上、降ろした後は早々に退散する段取りですので悪しからず」
「後の行動は、内部の騎士が補助するだろうとは言え、『潜入組』の努力にかかっています」
グレモリー
「多少のミスは私が埋め合わせる。任せておけ」
エリゴス
「まあそれなら、移動の途中で顔合わせの体裁くらいは立つか……」
「でも、お偉いが直々にか?」
ガブリエル
「任務の性質上、人員が限られますので。仕事は極力、回せる者で回しています」
騎士ジョーシヤナ
「では改めて、『潜入組』の皆さんは付いてきてください」
「キャラバンの方の隊長、結構なお人好しなんで、楽にしていただいて大丈夫ですよ」
騎士ヒラリマン
「『監視組』の皆さんは早速ですみませんが、幻獣の捜索にご協力願います」
「向こうから襲っては来ませんが、放っといて良い事もありませんしね」
ソロモン
「ああ、そういう仕事なら任せてくれ!」
「『潜入組』の皆も、頑張ってくれ!」
二手に分かれるソロモン一行。
※ここからあとがき
すっかり書くのを忘れていましたが、エリゴスのキャラストーリーはお迎えできてないために未確認です。
ただ、地元の暴走族的な自警団の総長をやっているという情報とギギガガス&リャナンシィイベでの活躍だけ確認済みですので、そこから勝手なイメージで補完しています。
原作でそこまで族のヘッドやってる感じで無かったら申し訳ありません。
各々の「筋書き」は筆者のオリジナルなので、キャラに褒めさせたりなんかすれば手前味噌もいいとこなのですが、ハルファスなら素直に感心してくれたり、したら良いな……と。
ストーリーでは星3あたりがメイン衣装なのに、召喚時点では星1な格好な理由をオリジナルで考えてみました。
「召喚に応じた時点でその服だったけどデフォではない」と無難な方向にしてみましたが、そうなると今度は、イポスやバフォメットのようにどのような経緯で召喚されたかがある程度判明していると、そのメギド達の場合は「召喚時では星3だけど召喚後しばらくは星1の格好をしていた」となってしまい、これはこれで難しいものがありますね。
「召喚後は、戦闘で破れても良いような服を着ていたけど、ソロモンの贈り物で予備が出来たので気に入ってる服でも働けるようになった」みたいにしても、メギドの性格によりけりでしょうし。ハーゲンティとか、贈り物を大切に保管して星1で通す所ありそうなイメージですし。
ガチャやパイモンのように唐突に呼ばれるケースならともかく、ソロモンの性格を考えると仲間一人ひとりに某お空のように出会いのエピソードがありそうで、この辺がいずれ公式で補完されたらどうなるか楽しみです。あるいは覚えていたら次回の質問箱に送ってみようと思います。
そしてその質問箱の回答でさり気なくハルファス……セーフっ!!
ネタバレじみてしまいますが、ハルファスの過去を考えて少々ストーリーに絡ませているので、あまりにも食い違ったら危ない所でしたが、ほぼほぼ路線変更の必要が無い内容でした。解釈一致の節まであり、非常にホッとしました。
更なる情報が明かされないうちに、二次創作をいい事に早く書き上げてしまいたい所です。
そして代わりにフルフルのヴィータ時代&ラッシュリジェネを妄想したオリスト構想が潰れました。これが二次創作の楽しみってやつですね。
推しの一人だけに名残惜しいので、機会があったらプロットだけアップしてみたいかもです。
次はベレトイベントの確認だ……。
最後に、デカラビア前編を今回も期日ギリギリでストーリーだけ消化してきました。
これもネタバレじみた話になりますが、前編だけでこの話の要点の半分くらいを持っていかれた気分です。
ソロモンの心情の推移などを考えると、今回の二次創作が「最後の計画」を踏まえた上で本編のどの時期に起きたかを考えるのも難しい形になりそうな。
こうして二次設定が公式に答え合わせされていくのは、妙な興奮と嬉しさがあります。我ながら些か倒錯的ですが。
多分、筆者が見つけた掘り下げの余地を、公式も興味を持ってくれていたからかも知れません。
何にせよ、本作の今後の展開については、真剣に考えたものでもあるので変更はありません。デカラビアイベント読破組には些か薄味になるかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。