PRINCESS ART ONLINE ※更新停止 作:日名森青戸
(・大・)<お祝いを兼ねての久々のUP。
(・大・)<因みに今回ノゾミは登場しない。
カルミナすこすこ侍「のぞみーん!のーぞーみーん!のぞっ……の、のーっ、ノアァーッ!ノアァーーーッ!」
(`0言0*)<ヴェアアアアアアアア!!!!
(・大・ )<誰だあんな所にピンクにペイントされた野生の奇怪竜どもを放った奴は。
1月初頭。
デスゲームも2年目に突入した早々、攻略組は50層の階層ボス攻略が行われていた。
第2のクォーターボスの名は《GeneralHorn》。鹿型の巨大モンスターだ。
自己
が、動きを予測できた今攻略組が反撃し、最早HPバーは1本のみ残し、その残量も黄色く染まっていて、決着の時があと一息だということを知らせている。
「突進攻撃が来ます!」
「ッ!!撤退!」
直後、突然ボスが暴れだした。突然の行動にさしものアスナも声を上げ、アタッカー達も慌てて踵を返して避難する。
立ち上がったジェネラルホーンは頭をぶんぶんと振り回し、近付けさせまいと暴れまわる。
「シズルさん、HPは!?」
「ごめん、まだ掛かる!」
「私もだ」
HPが徐々に回復するタンクに任せる訳にもいかない。かといって他のプレイヤーを危険に飛び込ませる真似は、【血盟騎士団】の摂理に反する。
撤退も辞さない。アスナの脳裏にその言葉がよぎった瞬間、彼女の横を黒い影が走る。同時にその影に別方向から小さい何かが飛来する。――投擲用ダガーだ。
黒影はそれを避けて暴れまわるジェネラルホーンの正面へと飛び込み、高い跳躍でジェネラルホーンの額に剣を突き立てた。
その攻撃でジェネラルホーンのHPが完全に尽き、最期の嘶きの後ポリゴン片となって爆散した。
「すげぇ……あのボスに1人で特攻しやがった……」
下手をすれば間違いなく死ぬ。そんな荒業をやってのけたプレイヤーに思わず唖然となる。
その影――黒い衣装の剣士はすたすたとボス部屋の扉へと向かう。
「……彼、あんな調子なの?」
「ええ。去年からずっとね」
「何か、癪に障る事でもあったのだろう。我々はアクティベートを済ませよう」
コツコツとボス部屋から去る剣士を見やりながら、シズル、アスナ、ヒースクリフが呟く。
その影から背を向けて、先の階層へと続く道へと向き直ると、ヒースクリフは目線を右後ろへと向ける。
「
「な、なんだよ!相手は卑怯者のMPK野郎だぞ!」
「それなら、今の君がやったのは所謂BMPK……ボスモンスター・プレイヤー・キルと呼ばれる行為ではないのか?」
「ぐ……!」
ダガーを投げたプレイヤーに対して、顔色一つ変えずにヒースクリフは正論を返す。
次第にプレイヤーはヒースクリフが次々繰り出す正論に、力なく拳を握るだけで反論する気力も無くなっていった。
「では、次は配慮もしておくように。彼も我々と同じく、解放の日を目指すものだからな」
†
雑多な建物が並び、まるで迷路のような複雑な構造の主街区アルゲート。
その裏路地に足を踏み入れた剣士は、通い慣れた様子で裏路地を進み、ある店の扉を開ける。
「よぉ、キリトか。今日も戦利品を売りに来たのか?」
「まぁな」
カウンター越しに声をかけた店主、エギルに対してそっけない返事を返す少年、キリト。
キリトはストレージを操作しててきぱきと売却する品を並べていく。
エギルはそれらに値を着けて、引き取ると同時に合計金額を纏めてキリトのストレージに渡した。
「じゃあな」
「お、おい!待てって!」
金を受け取ったのを確認した直後、もう用は無いと言わんばかりに店を出ていこうとするキリトを思わず呼び止める。
店のノブに手をかけていたキリトはその声に対し、不服そうな表情を浮かべて振り返る。
「何だよ?もう用は無いんだろ?」
「お前なぁ……ちょっとは話を聞いてけよ」
キリトも、これからは別に用事は無い。少しくらい話だけは聞いておこうとノブから手を離した。
「お前、最近無茶しまくってるだろ?」
「……何が言いたい?」
「ここ最近、ボス攻略やレベ上げに明け暮れていて、ロクに休んじゃいねぇんだろ?」
「……アルゴか」
キリトはここにはいない情報屋に悪態をつく。
事実、彼の現状はエギルの言った通りだった。
階層ボスの攻略へと赴き、倒し、そしてレベルを上げる。それは攻略組としては大差ない行動ではある。
だがキリトの場合、生活におけるリズムを崩してでもレベルを上げ続けていたのだ。それこそ睡眠や食事を切り捨てて。まるで、いつ死んでも構わないような。
「たまには息抜きがてら下の階層に降りたらどうだ?」
「降りる理由なんてねぇよ。何を今更」
「実はな、始まりの街の居残り組の人数がここ最近で100人近く減ったそうだ」
エギルの言葉をキリトは十二分に理解できなかった。
【月夜の黒猫団】が顕在だった頃、1度だけケイタに誘われて参加した複数ギルド合同の親睦会には参加した。
あの時は17層の現地集合、17層主街区の広場で解散だったので始まりの街には足を踏み入れていない。彼が最後に始まりの街を出ていったのは、あのデスゲーム開始の夕方。
「……そんなに自殺したのか?」
考えたくは無いが、彼の中であり得そうな答えを出す。
デスゲーム開始の日、ログアウトできるかもしれないと始まりの街の外周から飛び降り、実際に命を落としたプレイヤーは何人もいると小耳に挟んだ。
しかしエギルから返ってきた答えは、キリトの予想を大きく覆した。良い意味で。
「違う違う。そこを出て、自分達にも何かできないか模索し始めた奴らを筆頭に、ギルドを起ち上げたらしい。簡単に倒せる獣型モンスター相手に狩猟で肉や魚を得たり、自分で育てた穀物や野菜を売買するギルドだそうだ」
「そうなのか?」
「下層域の奴らは最近、《料理》系や《農耕》系を育ててるそうだ。最近主街区でサンドイッチ売りを見かけただろ?」
エギルに言われ記憶を掘り起こしてみると、確かにそういったプレイヤーがいたのを思い出す。野菜だけの簡素なサンドイッチだったので、売り上げも好調とは呼べなかったが。
「中にはレストラン染みた事をやろうっていう計画も立ち上がってるけどな」
「無理があるだろ」
実際、SAOで手に入る調味料では現実世界で使われる調味料の再現は困難とされている。100種もある味覚再生エンジンを分析するには相当根気がいる。レストランギルド起ち上げ計画の発端は誰だか知らないが、それは夢のまた夢に終わるだろうと顔も知らない誰かに早々に諦めてもらいたいと願う。
「そういや。22層で農業を営んでいるギルドが、最近ギルドハウスを購入したんだっけな」
思い出したように語るエギル。直後、キリトの目が僅かに見開いた。
「……マジ?」
「ああ。あそこは迷宮区以外園内みたいなもんだから、話を聞きつけた居残り組が――って、キリト?」
視線をキリトに戻してみると、当のキリトの姿は影も形も無くなっていた。
出入り口の扉は大きく開け放たれ、数秒後にはパタリと音を立ててひとりでに閉じる。
「……やっぱ息抜きが必要みたいだな」
、
大方の予想がついたエギルは、商品の整理を始めるのだった。
†
22層。
「ったく、エギルの野郎……」
不服を口にしながらキリトが来た道を戻ってくる。
ギルドハウスを購入したとエギルから聞かされた時は、キリトは背筋が凍り付くものを感じ、居ても立っても居られずに22層へ駆け出した。
彼が当時からお目当てだった森の中のログハウスは、結論から言ってしまえば無事だった。
よくよく考えれば農業を営もうとするギルドが拠点にするには、キリトの目当てとしていたログハウスは立地が悪すぎる。それ以前にここに来るまでにプレイヤーらしき通行人とは会っていないのだ。気付かれていないというのが自然な推測だろう。
改めて装備を《コートオブ・ハーミット》というフード付きのコートを選択。《隠蔽》スキルの他に、《暗視》のスキル、更には1メートル以上離れた相手には顔が見えないようになっているスキルも施されている。外見的にも性能的にも、キリトはこの装備が気に入っていた。
「にーちゃん、何してんだ?」
「!!」
自分の事を告げ口した鼠と、紛らわしい情報を提供した色黒男をどうシメてやろうかと思っていた時、突然背後から聞こえてきた声にキリトは咄嗟に背中に回していた剣を引き抜き、背後の相手に突きつける。
「うわぁっ!?」
剣を向けられて思わず尻もちを付いたのは、20代くらいの男だった。殺気立ったキリトはその男を見て思わず殺気を引っ込めてしまう。
短い髪が芝生のような印象を受ける男の服は、鎧らしきものを装備しておらず、更に武器らしいものと言えば、先程音を立てて倒れた鍬しかない。最前線で見てきた彼からすれば、とても武器と呼べるようなものではなかった。
「あっぶねぇなぁ……攻略組は相手に剣突きつけるのが挨拶なのか?」
「……悪い」
どうやら敵対心は無いらしい。剣を納めて、謝罪と共に彼を引き上げる。
「オメェは買い物に来たのか?」
「……いや、22層でギルドが立ち上がったって知り合いが言ってたから、ちょっと見に来たんだ」
「ひょっとして、【エリザベスパーク】に入りたいのか?」
「違ェよ」
掴んできた肩を振り払い、ため息交じりに拒否する。
芝生頭は声のトーンを下げて肩を落とし、キリトに頭を下げる。
「悪い。加入者かと思ってな。じゃあ見学でもするか?園内だから安全だし」
「いや22層ほぼ園内みたいなもんだろ」
「それもそうだな。あ、俺ぁテンスイだ」
軽い自己紹介の後、男、テンスイの案内で22層唯一の園内村《コラル》へと向かっていった。
†
「すげぇな。これ全部畑か?」
テンスイに連れられて、22層主街区の東側の隅にある開けた場所へと訪れたキリトが目にしたのは風になびいて葉を揺らす野菜の畑だった。その横ではトマト等の野菜も大きく実が生っている。
「ああ。まあ俺ぁ、どっちかっていうとコメを作りたかったんだけどな」
「米ぇ?」
「ああ。そのコメだ」
「あったか?米系の生産スキル」
「お、テンスイかー?」
キリトがベータ時代の記憶を探っていると、一人の少女が気が付いてこちらに駆け寄ってくる。
「紹介するよ。この【エリザベスパーク:コラル地区】のマスターのマヒルだ」
「マヒルだべさ、よろしく。あ、そうだ!」
自己紹介を終えたマヒルが生っているトマトの一つをもいでキリトに渡す。
「お近付きの印に、食ってみるべさ」
「……毒はねぇよな?」
「今採ったばっかの奴でどうやって毒を盛るんだよ?」
正直食べたいとは一言も言っていないが、目の前の男の好意を無下にするのも申し訳ない。
思い切って一口齧ると、現実で食べていたトマトとさほど変わらない味と果汁が口の中にあふれてくる。
「……うまいな」
「だろ?俺は6層にあるギルドマスターで、そっちは麦を使ったパン類の生産を進めているんだ。こっちは野菜を育てていて、現実でも農耕関連に興味があったからな」
「オラは故郷が北海道の牧場だべさ。将来的には大阪に越す予定だべ」
この男、まだ若いのに興味があるのか。マヒルのほうは北海道の牧場の子。
自分とは偉い違いを持つ目の前の2人の片割れは続ける。
「キリト、《天穂神話》ってゲーム知ってるか?」
「ああ。確か、据え置き機でトンデモブームを巻き起こしたんだっけな」
SAOが発売される2年前に発売された据え置き期のゲーム、《天穂神話》。日本神話をモチーフにしたそのゲームは、農作をモチーフにしており、田植で育てた稲穂を米にして、主人公を強化していくというもの。
だがこのゲーム、アクション以上に稲作に妙に力を入れていて手こずる人が続出し、そのリアルに作り込まれた稲作に魅了された人も多い。農業関連の本の購入部数が跳ね上がり、挙句の果てには農林水産省が公式ホームページで説明をするほどの反響を起こしたのだ。
キリトはそのゲームはプレイしていないが、ニュースでそのゲームの爆発的反響はよく知っている。
「俺ぁ、実を言うとそれがきっかけだったんだよ。最初は農作なんて田舎臭いって吐き捨てていた。けどあのゲームで碌なモンができなかったから、ムキになって必死に農作関連を調べて行って、気が付いたら農作にハマっていたんだ。ゲームと現実じゃ勝手が違うけど、将来的には農耕関連の仕事をやってみたいって気持ちが芽生え始めたんだ」
「なるほど……。ん?じゃあなんでSAOを?」
「いやー、それがちょっと息抜きにと思ってな」
「オラも……大体同じだべ」
「息抜きでデスゲームに参加されたなんてお前らくらいだよ」
「おお!ナイスツッコミ!」
思わず出てきたツッコミにテンスイも思わず笑い声が上がる。
「まあいいさ。今はまだ売り上げは少ねぇけどよ、いつかはうまい料理の素材として生産していくつもりだ。長い付き合いになるかもしれないから、よろしく頼むぜ」
「……ああ。そうするよ」
今度あの店を見たら、一つ買っておこうかと思いつつ、キリトはテンスイらと別れて転移門へと歩いていった。
(そういや、あんな風にまともに会話したのって、何時以来だろう……?)
†
【【月夜の黒猫団】MPK潰滅事件】。
読んで字の如く【月夜の黒猫団】という小規模ギルドがMPKによって壊滅した事件は、キリトの評判を大きく落とした。
園外で姿を見かければ遠巻きに警戒して武器を構えられ、園内外を問わず嫌悪感を曝した目線を向けられた。中には殺しへの抵抗が薄いプレイヤーからの襲撃も受けることもあったほどだ。実際、50層到達までの間、頻繁に襲われることが日常的だったくらいに。
彼を糾弾する声は方々から上がっていった。今や最前線の園内も彼にとってはモンスターが闊歩する園外と言っても差し支えない。彼の拠点は、人気の無い園外村か迷宮区の安全地帯のみ。
一応ソロでのレベリングでキャンプ慣れはしていたが、心が休まる、という意味では否だ。冷える床、園外と言う場所でいつモンスターや命を狙うプレイヤーの襲撃という可能性。
《ビーター》と呼ばれていても、まだ15かそこらの少年。7千人もの悪意の目線に晒され続けて、そして人の死を、身近な相手の死を目の当たりにして気丈に振る舞えるはずがない。
クラインやエギル、ヒースクリフなどの――ヒースクリフは戦力の喪失を恐れての話だが――ごく一部、所謂《否定派》もいるにはいるが、彼からすればどうでもいいことだ。
テツオが、ダッカーが、ササマルが、サチが自分の目の前でポリゴン片となって死亡し、ケイタもまた11層で崖下に転落して消滅したあの日――。そして、去年のクリスマスの時から、彼は、自分がこれまで刻んできた人とのつながりを、ほとんどを絶ってしまったのだから。
†
歩いて数分、転移門に差し掛かろうとした時。誰かとぶつかって身体をよろつかせる。
「あ、悪い」
が、ぶつかった相手、紫色で纏められた装備に背中に回した巨大な両手剣の女性プレイヤーは、頭痛がするのか頭を押さえながらふらふらと覚束無い脚取りで、園外へと歩いていく。
無視した相手に不快感……というより、違和感を感じたキリトは思わず声をかけてしまった。
「おい、アンタ中層プレイヤーか?」
「……?」
薄紫の髪をした女性プレイヤーは、寝起きのような顔を向ける。
二日酔いでも起こしたのかと思ったが、それはない。SAOの酒類アイテムは、アルコールも無く飲んでも時続的なバフが着くだけで、未成年でもちゃんと飲むことができる。
だが、目の前のプレイヤーは時折僅かに顔をしかめながらも、虚ろな目でキリトを見る。
対面することで更にキリトの疑問が増えた。
(アイコンが無い……?バグか?)
本来ならSAOのプレイヤーなら接近した時、あるいはお互いの距離が近い時には頭上にカーソルが現れるはず。が、目の前の彼女は目線を頭上に向けても無いのだ。犯罪者を現すオレンジでも、一般人を現す緑でも、NPCを現すイエローでもない。プレイヤーの証左たるマーカーが存在していないのだ。
「迷宮区はあっちだ」
「……」
「……湖は向こう」
「……」
「【エリザベスパーク:コラル地区】はそっちだけど……」
「……」
何を言っても答えない相手に、キリトの違和感はますます膨れ上がる。
――新手の不意打ちか?
やがて違和感が警戒心へと変わり、背中に回した剣を握る。
園内では攻撃を与えても、攻撃したプレイヤーと攻撃を受けたプレイヤーとのレベル差に応じて威力が高まるノックバックへと変換される。
目の前の彼女とのレベル差はまだ不明だが、一撃加えて怯ませるくらいは可能だ。
きらりと鞘から僅かに刀身が覗いた時、女性プレイヤーは転移門を指した。
「……街」
「は?」
「始まりの街……どこ……?」
ますます警戒心と疑問が膨れ上がる。
《始まりの街》なんて、SAOプレイヤーであるならば誰もが最初に訪れる場所だ。知らないはずがない。
剣から手を離したキリトは、すぐそばの転移門を指す。
「転移門の前に立って、街の名前を言えばすぐ到着する」
「……」
それを聞いて理解したのか、女性はふらふらと転移門へと近づく。がっちりとキリトの腕を掴んで。
「え?ちょっ、おい!?」
「……転移、《始まりの街》」
女性はキリトを連れ添ったままそう呟くと、光に包まれる。それから数秒もしないうちに、始まりの街へと転移していった。
次 回 予 告
チカ「キリトさんと、始まりの街で再会した私達」
チカ「昼食に誘ったのは良い物の、そこから激昂したキリトさんと売り言葉に買い言葉で決闘が始まって……」
チカ「次回、【黒の夜想曲:中編~引き金はピアノソナタ『激昂』にて~】」
チカ「うわぁ……これ、かなりヤバいですよ……!?」