PRINCESS ART ONLINE ※更新停止   作:日名森青戸

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(・大・)<今回からアインクラッド編の物語のタイトルに、

(・大・)<「MAD RAT DEAD」等のゲーム内の楽曲もタイトルに含まれることとなりました。

(;・大・)<にしても、他は思いついているのにアインクラッド序盤が中々思いつかん……

(・大・)<あ、そうそう。ソードスキルは【SAO】アインクラッドでおっかなびっくり生きる【安価】とアリリコのをベースにしています。

(・大・)<なんか最近妙に内容がグダついている……。


ギルド結成~大連合のDancing Wind~

デスゲーム開始から1ヶ月弱――。

攻略組は1層と2層のボスの討伐に成功し、3層を解放できた。

足を踏み入れた時、ノゾミらの目に飛び込んできたのは大森林。

第1層の草原や、第2層の荒野とうって変わって自然豊かな場所だ。

この光景を見てノゾミは一瞬、2年前に見たポ〇モン映画の光景にそっくりだと思ってしまったらしいが、現状とその世界観は全くの別物である。

 

「で、この層でギルドを結成できるのか?」

 

「うん。ここの主要区で受けられるギルド結成クエストのクリアで、晴れてギルドが結成できるの」

 

「なるほど。アルゴさんと別行動をとった時には意外でしたが、これはこれで心強いですわ」

 

「まぁでも、ギルド造るのはこのモンスターを倒してからね!」

 

アルゴとは別行動を取っているメディの付き添いで、主街区からほど近い森の中。メディ、ノゾミ、チカ、ウィスタリアはレベリングを行っていた。

襲ってきたフードを被った鼠、マリス・シュリューマンの攻撃をバックステップで回避し、攻撃直後に肉薄。そのまま斜め斬りと水平回転切りのコンボ――アドマイアーを繰り出して倒す。

 

「それはそうと、森林っていう割には鬱蒼としていますわね!」

 

「いや、リトルペネントの群れに比べればまだまだマシな法ですってば……おっと」

 

今度はティキット・スパイダーが茂みからの不意打ちを避け、大剣で叩き潰すアキノに対し、チカがホルンカの村での出来事を思い出しながら片手槍で貫いて倒す。

一通りのモンスターを倒して全員が1つレベルアップした。

 

「さて、耐久値を回復させに戻りましょう」

 

「……」

 

「あら?如何なさって?」

 

メニュー画面から武器を見て、一旦耐久値を回復させようと主街区へ戻ろうとしたウィスタリアが、チカの顔が蒼くなっていることに気付く。

 

「いやさ。私達例のクエストに行ったんだよね。これの為に」

 

「それは聞いていますわ」

 

「その時にあんな気持ち悪いモンスターを何時間も見る羽目になるなんて……」

 

そう言いつつ、剣舞のサーベルを見せるノゾミ。これを取る為にあのキモグロモンスターを何時間も狩りをさせたとなると、思い返すだけで気が滅入る。

経験者たるメディはベータテストの時、そのクエストで何度も死に戻りしたなぁと思い返していた。

 

「あぁ、なんかごめん……」

 

「そう腐ることもありませんわ。さあ、戻ったらまたレベルアップに勤しみますわよ」

 

パンパン、と手を叩いたアキノが当事者2人を我に返して街へと戻る。

このルーティンを繰り返してかれこれ2時間。レベリングを終えた一行はギルド結成クエストをクリアして、ついにギルドの結成を成し遂げたのだった。

 

 

 

 

「さて、これでギルドができたんだが……支援ギルド、で良いんだよな?」

 

「正確には商業兼支援ギルドですわ。あぁ……長く辛い道のりでしたわ」

 

「いやまだ1ヶ月ちょっとしかたってないからね?」

 

主街区のとある食堂。ギルドクエストを終えた一行は食事をしながらギルドの方針を確認していた。

 

「ともかく、私達はポーション生成等の最前線攻略組をする一方で、始まりの街で留まり続けるプレイヤー達の為に、その街での問題行為を速やかに解決する治政を主な活動としますわ」

 

「ポーション生産か……優衣、大丈夫か?」

 

「うん。これから攻略組全員に行き届ける……っていうのは無理だけど、自分なりに頑張ってみるつもり。これでも、ベータの生産職としては優秀な部類だったからね」

 

ふんす、と気合を入れるメディ。ポーション等を筆頭としたアイテム生成のスキルを持ったプレイヤーはベータ時代でもそうはいなかった。ポーションを生成するメディが今後、NPCショップを通じての売買が可能になれば、攻略組を中心に広く使われるだろう。NPC売買が不可能でも商人プレイヤーとの連携で売買を行えばいい。

ノゾミやチカはメディの手伝いの為、知っている中で良質な素材が手に入る場所へ同行と護衛を引き受けることを中心に行動していく。

 

「あのさ、一ついいかな?ボス攻略やマッピングはしなくていいの?」

 

「……10層までは相談に乗りますわ。マッピングのほうは……積極的に行く必要はありませんわね。攻略組がいる以上マッピングもやってくれるのですし、こちらは積極的にやる必要は無いかと」

 

あくまで自分達は商業兼支援ギルド。そのスタンスは崩さないことがウィスタリアの方針らしい。

実際ここ数日、「アインクラッド解放隊」、「ドラゴンナイツ・ブリゲード」なる攻略組ギルドが正式なギルドとして立ち上がっている。これ以上攻略を主とするギルドを立ち上げても団栗の背比べだ。ならここは別の目的を主とするギルドを立ち上げてしまったほうが早い。

 

「さて、どうする?物資の調達をするか?」

 

「そうですね……確かに現状ではポーションも物資もまだまだ足りない。暫くは素材集めと人材集めに動きますか?」

 

支援といっても今は物も人もまるで足りてない。本格的な活動はかなり先になるのだろう。

ともあれ今はポーションの素材を確保や人員を増やすというチカの判断は間違ってはいない。

しかし、そこに待ったをかけたのはウィスタリア本人だった。

 

「いいえ。人材は最低でも50人前後。そのあたりがベストですわ」

 

「は?多いほうが良いんじゃねぇのか?」

 

「――そっか。プレイヤーは限られてるから、誰もが同じギルドに入るはずがない。少なすぎるとギルドの方針が頓挫する可能性もあるし、多すぎるとギルド内で亀裂が生じる可能性が高い、そうですよね?」

 

「ええ。実際現実でも、舵取りがうまくいっていないのに人員過多で潰れた企業は幾つも知っていますわ」

 

「お前はどこのお嬢だよ」

 

口では呆れているが、案外的を射ているとマコトは思う。このデスゲームの参加者が10万とあらばそれ以上の人材を確保できただろう。

とはいえ、人材が限られている以上自分の舵取りの能力を見極めなければこの先頓挫してしまうかもしれない。それを見越してのギルド人員の制限は存外間違いではない。

まずはある程度の人員確保と物資を集めなければ。そう思っていた矢先だ。

 

「なあ、嬢ちゃんたち」

 

「なんだ?あたしらギルドに就いてるから勧誘はできないぞ。ナンパだったら他を当たりな」

 

いきなり呼びかけた男性プレイヤーにマコトが突っ撥ねる。

 

「いや、違う違う。まぁ、ギルドに所属してなかったら勧誘も考えてたけど。俺はハフナー。ドラゴンナイツブリゲードでサブリーダーをやっている」

 

ドラゴンナイツブリゲード。

先程話に出ていた攻略組ギルドの一つだ。

 

「そのサブリーダーが何の御用で?」

 

「ああ。それはだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺らと一緒にフロア攻略を頼みたい」

 

 

 

 

翌日の朝方。

ハフナーからの紹介によって一行は主街区の広場に赴いた。

そこには30人近い様々なプレイヤーが集まっていた。

 

「悪い、待たせたな」

 

「いや、こちらも今さっき集まった所だ。早速だが、改めて攻略会議を始めるぞ」

 

4人も来た所で水色の髪をした青年が声を上げ、会議を始める。

 

第3層のボスは巨大樹型モンスター【ネリウス・ジ・イビルトレント】。

広範囲における毒の状態異常を与えるブレスを多用することもあって、相応の強敵であることがうかがえる。

攻略組の作戦は基本の多人数で挑み、スイッチやPOTでボスの行動パターンを見切り、攻撃を続けること。

 

「さて、質問がそろそろ飛んでくる頃だろうが……」

 

「はっ、空気読んでおったんか。なら遠慮なく言わせてもらうで」

 

青年、リンドが周囲に質問を促すように視線を流す。その中で立ち上がったのは棘付き鉄球のような髪型の男だ。

 

「何でそいつらを呼んだんや?この前の出来事があったばっかっちゅうのに、新しい奴こさえて亀裂が生じる可能性はあるんとちゃうか?」

 

「あの時?」

 

「そこは割愛させてくれ」

 

「まぁともかくや、ワイらからすればそいつらはとても信用できん連中や。それを承知で誘った以上、全員理解できるような理由があるんやろうな?」

 

「ん。そうだな理由としては――これからの関係性だ」

 

棘頭、キバオウの質問にリンドは自分の考えを提示した。

 

「これからギルドを組むプレイヤー達は増えていくだろう。仮に今いる我々が全滅した場合には、その後を継ぐ攻略組も必要となってくるはずだ。そうでなくとも、ギルド間の連携は早いうちに取れるべきだろう」

 

「あんなことがあって連携も減ったくれもあるかいな」

 

その一言で、一層空気が張り付いた。

当事者でないノゾミ達が双方のピリピリとした空気にキバオウがいる樹木に背を預けて居たり、倒木を椅子代わりにして座るプレイヤー達と、リンドを交互に見る。

 

「双方剣を納めなさい。攻略会議だというのに何喧嘩腰になっているんですの?」

 

「あ……ああ、悪い悪い。ともかく君らとも今後関わっていくことになるかもしれないし、関わっていたほうが良い事に変わりないんだ」

 

「……ハッ」

 

剣を収めたリンドに続き、キバオウも倒木を椅子代わりにして座る。

両者からぎすぎすした空気がある程度解消された後、ウィスタリアがリンドに話しかける。

 

「お気持ちは確かにお受けいたしますわ。連携の事も確かに賛同できます」

 

「そうだろ。だから」

 

「ですからボス攻略には参加しません」

 

バッサリ断った。

直後にリンドを含めた彼の賛同者がどよめきだす。それだけではない、キバオウを始め、彼の賛同者も驚きを隠せない様子で互いの顔を見合わせてている者もいる。

 

「な、なぜ!?」

 

「私達はあくまで商業を通じた前線の支援と救助を待つ下層プレイヤーの街の治政。攻略も大切ですが、そればかりに気を取られていてはいけません。救助もといクリアまでの間、街は放っておくとお思いで?」

 

「んぐ……」

 

「それに、そこの棘鉄球頭の方が言った通りレイドを組むこととなって、ボス攻略中に背中から攻撃されるリスクもあるのではなくて?」

 

「棘鉄球ってなんつーマニアックなものを……。大体さっきのは身内以外での、や。そうホイホイ身内同士で殺し合ってたらワイら今頃全員墓の下やぞ」

 

「ギルド間の連携には賛同しますが、攻略の意思を持たない方たちを無理に誘うのは頂けませんわね。誰も彼もクリアを目指したいのは分かる。ですが、事を急かして死んでしまっては元も子もありませんわよ?」

 

10メートル先の的から銃撃するかのように的を射ている。

実際始まりの街を拠点とし、周囲のモンスターを狩りながらその日の収入を得るのがやっとというプレイヤーも多い。そんな彼らを最前線に出すのは正気の沙汰とは呼べないだろう。

一瞬だけ、ウィスタリアが最後のほうを言った時にリンドの眉がピクリと動いたが、一行がそれに気付く前にまるで落ち着かせるように息を吐いたリンドが切り出した。

 

「……まあいい。だが1つだけ確かめさせてほしい」

 

「確かめる?何を?」

 

「君たちの実力だ。攻略に尽力しないとはいえ、将来的に参加せざるを得ない時も来るだろう。その時の実力や戦い方を少なからず知っておけば多人数パーティを組む時の参考にもなるだろう」

 

「今回はいやにお前らと意見が合う日やな。お前らがいざって時に役に立たへんかったら攻略組の俺らにも迷惑がかかるっちゅうもんや」

 

この2人のギルドマスター、ウィスタリア達の実力を測る意図があるのだろう。

もしもの時には彼女らが後続の攻略組となるかもしれないのだ。その時にふさわしい、メンバーを引っ張っていくカリスマや実力が問われるだろう。そのリーダーが貧弱なら当然話にならない。

マコトはと言えば、バカバカしいと踵を返そうとした時、わずかにプレイヤー達が腰を上げ、まばらながらも自分達をかこっているように立っているのを目撃する。

まさか本気で捕まえてでもやらせるつもりじゃないだろうな?

そんな考えが脳裏に浮かび、冷や汗を垂らす。

 

「まぁ待てよ。何も袋叩きにしちまうこともあるまい」

 

その中でごく少数の、褐色の禿頭の男性プレイヤーが声をかける。

 

「だがまあ、いざって時に頼りないんじゃ信頼にもならないだろう。ここはお前ら2人と俺、それからあいつらを含めた5人の代表戦デュエルしたほうが良い。ご両人も意義は無いよな?」

 

その一言で一行を囲うように立っていたプレイヤー達が一斉に敵意を含めた視線を向けた。

何事かとノゾミが振り返り――鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。

それは、相手も同じだった。

 

「……うそん」

 

黒いコートに背中に挿した片手直剣。あの時と装いは異なっていたが、雰囲気と黒髪の姿は、ノゾミとチカ、マコトはよく覚えている。

 

「……えぇ…」

 

悪名高い《ビーター》として名を上げた、キリトという剣士だった。

 

 

 

 

その後、キリトとその暫定コンビのアスナ、両手斧使いの禿頭のエギル、そしてALSリーダーのキバオウとDKBリーダーリンドを含めた、5対5の代表戦デュエルが行われることとなった。

デュエルには以下の3種類が存在する。

 

相手にクリーンヒットを叩き込んだほうが勝者となる【初撃決着】。

相手のHPを50%以下まで削ったほうが勝つ【半減決着】。

どちらかのHPが全損するか、どちらかが降参するまで続く【完全決着】。

 

無論、デスゲームとなる前のSAOであれば自分の腕試しとして敢行していたプレイヤーもいただろう。

しかし、今では【完全決着】デュエルなんて以ての外。【半減決着】でも満場一致で「時間がかかる」とのことで却下。

結果的に【初撃決着】に落ち着いた。

 

そして最初のデュエルは、エギルvsマコト。

 

「一応聞くが、スペアはあるか?できればそっちで戦ったほうが攻略に支障は出ないと思うが」

 

「ああ。それなら持ってるよ」

 

カウント中、エギルからのアドバイスでマコトは予備のアイアンソードを装備する。エギルもまた予備のワンランク下の両手斧を装備した。

遠心力任せに振るったそれを、担ぐように構えた数秒後、カウントが0になった直後にサージを放たんと一気に肉薄してきた。

 

「ふっ!」

 

対するエギルは斧を腕力に遠心力を加えたフルスイングでソードスキルを弾き返す。続け様に遠心力を殺すことなく一回転してルーインの如き水平回転切りをカウンターとして見舞う。

咄嗟の防御で反撃を直撃することなく受け流し、蹴りを放つ。一撃がエギルの脇腹を捉えた。

 

「――うっし!」

 

クリーンヒットしたと確信を持つ。

 

「蹴りを交えた戦いか。悪くないな」

 

「……あれ?」

 

――だがッ!

再び、今度はソードスキルのルーインが襲い掛かる。

 

ここで解説を入れると、今のマコトの行動は何ら意味の無い行動だ。

彼女らは第2層へは行かずレベルを2桁まで上げて直接この第3層に来たのだ。

だが体術系スキルは仙人NPCのあるクエストをクリアしなければ得られることは無い。現状、情報屋A女史とビーターのK氏はこのクエストで苦労させられたし、コンビ片割れは散々セクハラを受けられた。

とまあ前置きはさておき、決闘のシステムとしては体術スキル以外による攻撃はダメージに認定されない。

要約すると今のマコトの行動は攻撃とはいえど、ダメージ認定には至らないとシステムで判断されたのだ。

 

蹴りを入れた足を引っ込め、斧の刃を受け止め、一歩下がる。

その時に生じたのだ。一瞬の隙が。それを逃さなかったエギルが、両手斧を振り下ろす。

避ける暇は無い。咄嗟に剣で振り下ろされた斧を受け止めた。鈍い金属音が響く。

ぴしり、と。マコトの両手剣から小さな音がした。

 

「え?」

 

次の瞬間、ばきりと根元から剣が砕け、宙を舞った刀身が地面に刺さって消滅。次いで根本側も後を追うように消滅した。

 

「ぶ、武器破壊……!?」

 

「おぉ、まさか本当にできるとは思ってなかった」

 

「ディバークルの攻撃を利用した武器破壊か。やるな」

 

武器破壊。そんなスキルはSAOには存在しない。所謂システム外スキル。

SAOの武器――ひいてはアイテムオブジェクト全般には耐久値が設定されている。

布は汚れを落とすと、食料は時間経過と共に減っていき、0になると消滅してしまう。

では武具の場合はどうか?今のように攻撃を受ける、攻撃を行うことで同じように減っていく。重い一撃を受ければ、当然受けた側の耐久値はごっそりと減るものだ。

ならば、いち早く相手の武器を破壊したらどうなるか?実体化させていない武器の予備を再度装備しなおすには、幾ら頑張っても10秒単位の時間を要する。その10秒単位が生死に関わる。

最も、武器破壊という未だ武器を持つモンスターはボスクラスの強さを誇り、デュエルでもあまり試そうとするものはおらず、机上の空論程度のものでしかなかったのだが。

ある意味一番最初に武器破壊という荒業をやってのけたのは、彼なのかもしれない。

 

「どうする?まだやるか?」

 

「……いいや。降参だ」

 

両手を上げ、降参の意を示す。

決着を知らせるブザーが鳴り、「AGIL WINNER!」とウィンドウが表示された。

 

 

 

 

槍が空を割きながらくるくると回転する。回転しながら放物線を描く槍が、石畳に突き刺さった。

続く2回戦。キリトvsチカのデュエルはまさに電光石火の決着だった。勝者――キリト。

戦闘時間――30秒。

 

「あんた、まさか限界重金属装備は持ってないのか?」

 

「え?ええ。軽金属装備だったら多少は上がっていますけど……」

 

「……お前、よくまあ今の今まで生き残れたな。まぁこの際言っておいたほうが楽なのかもな」

 

「?」

 

チカの装備はメダイで手に入れた金属鎧に身を包んでいる。明らかに初期のころとは全く持って装いが異なっている。

そんな彼女に呆れたようにふぅ、と溜息を吐いたキリトに、チカは思い当たる節が無いように首を傾げる。

 

「まず装備品と自分のバランスがなってない。デカい堅い強いが良いって考えはよくあるケアレスミスだ。身に合わない武器を装備したらロクに扱えないし、かえって装備を変える前より弱くなる奴だっている。お前はその典型的なミスに陥っている状態だ。遊撃が得意な奴に壁役やらせるのと一緒だぞ」

 

「ほごっ!?」

 

「それにお前、前会った時には両手槍だったんだろ?自己防衛の為の片手槍なら問題は無いが、明らかにデカすぎる得物や重すぎる鎧が足を引っ張っている。大盾片手槍は基本前衛に出て攻撃を受け止める壁役だからアンタのバトルスタイルとは合っていない」

 

「げふっ、ぽげっ!!」

 

「問題を総合してまとめると、アンタはホルンカで会った時より弱体化している。ステータスじゃなくて戦い方の意味でだ。両手槍に戻して装備品を軽金属系のものにしておけ。でないとトラップや雑魚モンスターにリンチにされて死ぬ可能性が1000%だ」

 

「あばぎゃす!!」

 

キリトからの鋭すぎる容赦のない指摘に滅多打ちにされるチカ。漫画のような絵的表現で例えるなら、キリトの吹き出しから矢印が伸びてチカを滅多刺しにしていただろう。

HPは減っていないのにも関わらずチカは今、HPを全損していたかのようなショックを受けているだろう。

 

「ひ、酷い……死なないように頑張って考えたのに……」

 

「ベータでも同じような思考の奴がいて、思いっきりモンスターに袋叩きにされてたぞ。武器防御があるんだからそれ使ったほうがまだ死なない可能性が高いよ」

 

トドメの一撃にチカは完全に撃沈した。

周囲が引くレベルの舌戦(という名のリンチ)で潰れたチカをマコトが退場させる。

デュエルも3回戦を迎え、キバオウvsメディだ。

 

「女やからて容赦はせんぞ」

 

「大丈夫ですよ。すぐに終わりますから」

 

メディの確信めいた呟きにキバオウの神経は更に逆撫でられた。

――今すぐこの小娘を黙らせたる。

目の前のメディにこれ以上ない敵対心を宿し、片手直剣を垂直に、まるで弓の弦を引き絞るような構えでカウントを待つ。

そしてカウントが0になり――ほぼ同時にリーパーで攻撃を仕掛けて来て――メディも行動を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「降参します!」

 

刹那、ソードスキルを空撃ちさせた勢いで足を滑らせてカーリング宜しく地面を滑っていき、進路上の樹木に激突した。

決闘所要時間、わずか3秒。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

呆れたマコトが顔面から突っ込んだキバオウに声をかける。

 

「なんでや!?反撃どころか秒速で降参ってありか!?つか、今の台詞自分が降参するからっちゅう意味か!?」

 

「ええ。基本調薬系しか覚えていませんので」

 

「それ要は戦いには参加せんってことか!?」

 

「さ、次行きますわよ。私のお相手はどなたですの?」

 

「無視!?」

 

まさか秒速降参なんて思っていなかっただろう。攻略組は残らずあんぐり口を開けている。

顔面をこすり付けながら樹に激突したとしてもキバオウ自身には園内のシステム保護でダメージは無い。もし現実だったら間違いなく顔面を擦り減らしていただろう。

 

続く4回戦。ウィスタリアvsリンド。

曲刀と両手剣のぶつかり合いをかれこれ5分ほど繰り返し――ステータスの差でリンドが勝利した。

 

「普通だ……」

 

「普通や……」

 

「普通ね……」

 

上からキリト、キバオウ、アスナの感想である。

 

「……なんか物足りなさそうな感想だな?」

 

「いや、仕方ないだろ。俺はまだしも、キリトとキバオウのはデュエルと呼べないからな」

 

かたや舌戦リンチ。かたや速攻降参。確かに4回中2回は普通じゃない決着だった。100歩譲ってエギルも普通のデュエルをしていたが、特にリンドのは見ている側にとってはちゃんとしたデュエルを見られて安心している。

早くも攻略組のプレイヤーからは、5人の少女――特にチカとメディ――に対して疑いと落胆を交えた目を向けている。

ともかく次は最終戦。5回戦目の大トリを飾るのはアスナvsノゾミ。

 

「ふッ!せいッ!」

 

端的にいえば、現状はアスナが優勢だった。

ソードスキル込みでキリト曰く速過ぎて見えないレベルと言われる細剣の刺突は、ノゾミからすれば回避や防御が精一杯だ。

碌に攻撃に回れない。しかし、クリーンヒットを辛うじて回避し続けている。

 

「こらあかん。素人過ぎて話にならんわ」

 

「ああ。彼女と手合いをした時も、ステータスが弱すぎた感じだ」

 

「――ああもう!こんな所で私達が全敗なんて笑えませんわよ!」

 

完全に諦観しきった様子の攻略組に対し、ウィスタリアが叫ぶ。だが、経験差故の戦いのキレはアスナのほうが数段上手だ。そう簡単に逆転をするのは不可能だろう。

他の4人がうぐぐ…、と唸る中、メディが声を上げた。

 

「ノゾミさん!現実で何かやっていたのならそれを参考にして!」

 

ある種、それは無謀な賭けに近かった。

ここにいる誰もがノゾミの現実を知るはずがない。かくいうメディもその一人だ。

彼女の趣味が映画鑑賞や絵画のような、いわゆるインドア系の趣味を持っていたら、このSAOで生き残る為のスキルとしては無用の長物だろう。

 

(現実でって……私の趣味は舞台鑑賞でしょ?あとはダンスくらい……ダンス?)

 

メディからのアドバイスで思いついたノゾミはアスナの猛攻を回避し、バックステップで5メートルほどの距離を取る。

 

(そういやアインクラッドに来る前は、あの子と一緒にダンス動画を撮ってたっけ)

 

思い返す、現実世界での日常。

ノゾミがアイドルを目指すきっかけとなったアニメを見た影響で、本気でアイドルになろうと挑んで暫くして、音楽が好きな歌の上手い女の子と仲良くなった。

それからしばらくして、彼女から思いつきも同然の提案を出してきたのだ。ゲームの中の音楽をダンスを録画していこう、と。

当然投稿せずに、当時は本当に単なる趣味程度のもので。女の子のほうは家が厳しかったので時間を造っては自然公園やそれでも時間を見つけてはそんなダンスもどきの録画を撮っていた。

そんな記憶の中の、これまで築き上げた努力の中で得た経験で、最も適した音楽を選択する。

 

(相手はスピード重視の細剣の使い手。ここは回避よりも攻撃を続けて相手に反撃の余地を与えないほうがベストかも。だったら)

 

電子のアバターと化した脳髄から、自分専用のスピーカーを起動する。小学生生活最後の秋にやった音ゲーのBGMの一つを。

選択してリズムに合わせんとカツカツと踵で床を打ち鳴らしリズムをとる。

周囲が突然ノゾミの雰囲気が変わったことに思わず諦観していた表情から何事かと顔色を変える。

それでも好機と見たアスナは一気に間合いを詰め――、

 

 

眼前に曲刀の切っ先が迫っていた。

 

(――ッ!?)

 

首を傾け、一拍前まで頭のあった空間を突き抜ける。

その攻撃を回避できたのは、咄嗟の反射によるものだ。

体勢を立て直す間も無く、サーベルの刃がアスナの首に垂直になるよう傾き、剣閃が走る。

そこから始まるノゾミの反撃。ノゾミの猛攻をアスナが回避するというさっきとは立場があべこべにな舞台ができあがってしまった。

上下左右から鋭い剣閃が走る。

 

(この子、普通の剣士じゃない!これじゃあまるで――)

 

踊らされている。

こちらが僅かな隙を突いた攻撃を放っても踊るように回避される。

 

(ここは回転しながら袈裟斬り3連続を3回。そこから――)

 

回転と遠心力を利用した袈裟斬りの3連続。これまでの剣戟で何とか防いでいたが、既に手が僅かに震え始めた。次の攻撃を防いでも剣を叩き落とされる。そうすれば詰みだ。

最後の3連続回転斬り、そして最後一薙ぎが放たれる。アスナは気力を振り絞って何とか4回の攻撃を防ぎ切った。

それが、アスナの防御の限界でもあった。

 

「くッ……!――あれ?」

 

完全にノゾミのチャンス。だったのに、ノゾミはアイドルのようなキメのポーズのまま動かない。

アスナも、観客も、この最大のチャンスに何やってんだと開いた口が塞がらない。いや、ノゾミだけは若干やりきったようなどや顔をしている。

 

「ふふん、どう?決まって……た?」

 

目を見開いて視界に飛び込んできたのは、無言のままソードスキルを発動させようとするアスナの姿だった。

 

「……え?」

 

「ふざけるのは大概にして」

 

1秒後、リニア―を受けて吹っ飛ばされるノゾミ。地面に背中を打ち付けた時には、既にアスナの頭上でウィナー表示が現れていた。

総合戦績は……攻略組の完全試合にて幕を閉じた。

 

 

 

 

「即戦力にならんな」

 

「だな。君達には悪いが今回の攻略に君らは入れられない。まあ、実力が知れても良い結果になったよ」

 

「こちらこそ。やはりこちらは攻略は任せるべきですわ」

 

気付けば既に日は暮れて夜の帳が下りてくる。明日は大事なボス攻略だ。彼女らがこれ以上留まる理由も無いだろう。

彼女らも宿を取りに攻略会議の場から去ろうとした。

 

「おい、待てや」

 

「……まだ何か?」

 

突如キバオウが呼び止める。

多少ウンザリしながらも彼のほうへ振り返り、質問を返すウィスタリア。

 

「任せられるんやな?始まりの街を。任せられるんやな?」

 

「……」

 

その言葉の真意はウィスタリアには表面上にしか理解できないだろう。

彼の言葉には今は亡きリーダー、ティアベルが言っていた「始まりの街に残ったプレイヤーに、クリア可能だという希望を伝える」という叶わぬ夢の続きを語っているようだった。

自分達が攻略に進む中、始まりの街に残るプレイヤーを任せられるのかを。

 

「……ええ。そうでなければ提案はしていませんわ」

 

しっかりと、聞こえるように返した。

ウィスタリアとてそう子供ではない。

己が言い出した以上、まっとうに責務を果たす。現実で生還を待つ両親からそう教えられてきたのだから。

 

「私からも一言伝えておきますわ」

 

「なんや?」

 

「そう感情的になるのは悪いとは言いませんが、時には立ち止まって頭を冷やすのも大事ですわ」

 

ウィスタリアの一言はある種、それは警告のようにも聞こえた。

 

 

 

 

攻略組との邂逅の翌日。

 

始まりの街にある最も巨大なギルドホームのリビングにて。

ウィスタリアを筆頭にギルドメンバーが集められた。

 

「では、皆さんには簡単な自己紹介をしてもらいますわ。この方々はギルドには直接入らず、暫くは協力者という立場で活動していただきます」

 

「では私達から」

 

ウィスタリアの号令に続き、40代後半の男性が名乗りを上げる。

続き、彼と同い年のような女性も立ち上がる。

 

「私はユース。隣はティアナ。ここの治政を任されました。現実でも夫婦です」

 

「へぇ。政治家でもやってたのか?」

 

「え?え、えぇ……そんなところです」

 

最後のほうは口ごもっていた点に全員疑問を感じたが、そこに深いツッコミを入れようとする無粋な考えは起こさなかった。

ユースとティアナが座ると、次に眼鏡の女性が立ち上がる。教師のような雰囲気を持った女性だ。

 

「私はサーシャといいます。子供たちと一緒に教会で暮らしています」

 

「彼女には子供たちの保護とその世話を。私も先程足を運んだのですが、かなりの人数でしたわ」

 

ウィスタリアの補足に、サーシャに対して感心しながらも、子供たちに対してレーティング無視じゃないかと疑問を上げる。

その後はノゾミ、チカ、ツムギ、マコト、メディ、そしてウィスタリアの順で自己紹介を終える。

 

「さて、初めはこんな所ですわね。それでは――」

 

「待って。ギルド名は?」

 

早速【約定のスクロール】を使おうとした時、メディが止める。

確かにギルド名はまだ決まっていない。

肝心のギルド名は何なのかと、全員期待の籠った目線をウィスタリアに向ける。

 

「ギルド名?ああ、そうでしたわ。名前は……まだ決めてませんでしたわね」

 

全員ずっこけた。

名前を決めるタイミングはそれぞれだが、このタイミングでまだ決めてないのはどうなのだろうか。

 

「そうですわね……メルクリウスは加えるのは絶対ですわ」

 

「メルクリウス……商業の神ですね。このまま使うのもありですが?」

 

「それだとありきたりですわ。もっとこう……このギルドだからこその名前っていうのが……」

 

変なところで躓いてしまった。

今適当な名前で【約定のスクロール】でギルド名を決めると、解散以外で名前を変更はできない。

変な名前を決めてしまうと、ギルドの活動意欲に支障が出てしまう。

何か良い名前は無いかと考えている中、正午を告げる鐘の音が耳に入ってきた。

 

「……ゴスペル」

 

「ん?」

 

「ゴスペル・メルクリウスなんてのはどうかな?」

 

「“メルクリウスの福音”という意味ですか。悪くないんじゃないですか?」

 

「確かにそうだね。希望となる福音を鳴らす商業の神。悪くないんじゃない?」

 

「では、ここに【約定のスクロール】の元、約定を」

 

商業を通じて解放の日を待つまでの希望となる。

その理念を通じた者達が一人ずつスクロールに名を刻む。

全員がギルドに名を刻んだ後、ウィスタリアが宣言した。

 

「それでは、今ここに【ゴスペル・メルクリウス】の設立を宣言します!」

 

 




次 回 予 告


ノゾミ
「デスゲーム開始から早5ヶ月。私達のギルドは順調にその方針を進めていた」

ノゾミ
「ふと私達は、16層の街へと赴いた。一応レベル的には問題は無かったけど、レベ上げ……というよりは観光って感じかしら?」

ノゾミ
「その時、私は出会ったの。あの子と!」

ノゾミ
「次回、【歌紡ぎの再会~血盟と商業のカヴァティーナ~】」

ノゾミ
「嘘でしょ……!?そんなのあるなんて、聞いてないよ!!」
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