PRINCESS ART ONLINE ※更新停止   作:日名森青戸

6 / 11
(・大・)<もたついてたらいつの間にか大晦日……。

(・大・)<ともあれ今年本当に最後の投稿です。

※タグの『原作改変』を『原作改変箇所あり』に変えました。
※タグに『オリジナル設定、オリジナルスキルあり』を加えました。

※一部スキルの所得条件に関する記載を変更しました。


歌紡ぐ再会~血盟と商業のカヴァティーナ~

2023年 4月1日。

 

 

デスゲーム開始から年を跨いで、5ヶ月が経った。

支援ギルド【ゴスペル・メルクリウス】の商業を中心にした活動は、波風を受けることなく順調に進んでいった。もちろん、レベリングも怠ることなく続け、ノゾミ達のレベルは20台に突入している。

今日は気分転換として、生産職2人とチカを連れて16層の主街区へと来ていた。

 

「それで、今回はどうするのですか?」

 

「んー、今回は観光って感じかな?」

 

主街区へと転送された4人が目にしたのは、オアシスだった。南国情緒あふれる白塗り煉瓦の街並みはまるでハワイを連想させる。

街を行き交うNPCも人間以外の様々な種族が見られ、所々露店を並べる者達もいて、ちょっとしたバザールだ。

 

「うわぁ……!」

 

「すっごい賑やかですね。始まりの街もこれくらいは欲しいんじゃないでしょうか?」

 

デスゲームが始まる前、始まりの街にも大通りには屋台が並んであったし、プレイヤー同士での交流が絶えなかった。

あの時の活気を取り戻すには他の層の主街区を参考にするのは悪くないだろう。

 

「確かフィールドは赤土と草原だけですから、メインはこちらになりそうですね」

 

「んじゃあ、観光がてらに回ろっか」

 

「「「おー!」」」

 

 

 

 

それから1時間後。

軽いショッピングや街の探索を済ませた4人は広場に集まっていた。

 

「ふぅ、久しぶりの休暇ってのも悪くないわ」

 

「そうだね。ここの所、かなり忙しかったから」

 

「まあおかげで、始まりの街の治政はマシになったほうですかね?」

 

実際、この5ヶ月は彼女らにとっても休まる暇も無かった。

前線の支援の為にポーションの生産と、その素材確保の為の採集とその護衛。始まりの街に残ったプレイヤーの心のケアの為のライブ。6人前後しかいない小規模ギルドにはかなり無理のある活動内容だった。だがそれでも、治政はギルドメンバーではないとはいえユースやティアナとの相談を重ね、サーシャもはぐれた子供がいないかと街の見回りを行うプレイヤーとの助力を経て、初日の夕方と比べれば大分マシな状態に戻していった。

 

「……あら?」

 

「どうしました?」

 

「……声が」

 

「声?」

 

ノゾミとチカに続いて、メディとツムギが耳に意識を集中させる。

周囲の喧噪の中に交じって、南国風の街の中、僅かだが場違いな声が聞こえてくる。

 

「……こっち」

 

ノゾミが突如――おそらく声のするほうへと――駆けていく。

後に続いてチカ、ツムギ、メディが白塗りの煉瓦の街を過ぎていく。

ヤシの木の通りを抜け、角を曲がり、大通りを過ぎていく。

かれこれ3分。4人は広場へと到着する。

 

広場はまるでノゾミが夢にまで見たステージ舞台のように石畳で作られ、中央に立っているのは一人の少女。吟遊詩人のような純白の衣装に身を包み、同じく白い弦楽器を手に歌を披露している少女は、大体ノゾミと同年代だろう。周囲には彼女の歌に聞き入るギャラリーのプレイヤーもちらほら見かける。

 

「「……」」

 

ノゾミもチカも、ツムギの感想は右から左に流れていったかのように立ち尽くしている。

やがて歌が終わると、彼女に拍手が送られた。そしてプレイヤー達が少女に感想や感謝を述べるよう彼女の近くに集まってくる。

 

「素晴らしい歌でしたね。ノゾミさんはどう――あれ?ノゾミさん?チカさん?」

 

「2人とも、どこに行ったの?」

 

隣のノゾミの意見を聞こうと振り返ると、ノゾミだけでなく、チカもいつの間にかツムギの隣から消えていた。慌てて周囲を見渡すといつの間にか感想を述べている観客の集団に交じっていた。

 

「いつの間に!?」

 

そんなツムギの叫びもさておき、観客たちは少女に「ありがとう」や「歌が聞けてラッキーだった」などの感想を口々に述べている。

そしてあらかたの観客が去って行った後、ノゾミが少女と対面する。

 

「綺麗な歌だったよ」

 

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

「本当、前より上手くなったんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ。悠那」

 

「……え?」

 

ノゾミの一言で悠那と呼ばれた少女は顔をひきつらせた。

硬直した少女は自分の記憶を探るように目線を泳がせ、たっぷり1分間の沈黙の後、思い出したように叫ぶ。

 

「ノゾミ!?」

 

「やっぱり悠那だったんだ!」

 

「え、嘘!?本当にノゾミなの!?」

 

「ホントにホントだって!」

 

はしゃぐノゾミに未だ信じられない様子の悠那。

下手をすればパニックになりかねない状況で、今度はノゾミの隣にいたチカが口を開いた。

 

「私の事も知ってますよね、重村先輩」

 

「え?あ、三角さん!?あなたまでSAOに来てたの!?」

 

どうやらチカも悠那の事を知っているようだ。相手は思いがけない再会に羽目を外しているかの如く取り乱している。

慌てふためいている悠那、再会に喜んでいるノゾミ、そして再会に喜びつつも何故こんな所に居るのかと疑問を残すチカ。今石畳のステージの上ではしゃぐ3人はその場に呆然と立つ観客を完全に置いてきぼりにしていることに気付いていない。

 

「……」

 

「……」

 

「……どういうことなんでしょうね?」

 

「……さぁ?」

 

無論、それは外野から歌を聞いていたツムギとメディも例外ではなかった。

 

 

 

 

「じゃあ改めて紹介するわ。彼女は重村悠那――」

 

「ウェイト、ウェイト。プレネよく見てプレネ」

 

「あーごめんごめん。えーっと……《YUNA》、か。これがSAO(こっち)での名前なのね?」

 

あの後、ツムギの介入で漸く一息吐くことになった3人。広場にはもう観客は去っており、ヤシの木の木陰で改めてノゾミとチカが悠那――もといユナを紹介する。

 

「この子は私の幼馴染でね。SAOやる前は歌やダンスの録画とかもやっていたんだ。ほら、3層でのあの戦い方覚えてる?」

 

「ああ、アスナさんとの。ひょっとして、その録画に載せてたダンスを参考にしてたの?」

 

思い返すメディの質問に、ノゾミは「その通り!」と言わんばかりに笑顔で親指を立てて肯定する。

 

「で、なんでチカはユナの事知ってるの?」

 

「ああ、その事はちょっと現実の事に触れることになるんですけど、私と重村先輩――いや、ユナさんは元々花乃丘中学に通っていたんです」

 

「花乃丘中っていうと、音楽の教科に力を入れてる学校ですよね?となると高校は蝶ノ森にですか?」

 

「ええ、そうだったんですけど……」

 

だんだんとチカの声から力が抜けていく。

流石に申し訳ないと思ったのか、メディが話題を現実の話から逸らせる為に切り出した。

 

「あ、あの!ユナさんはどうしてSAOを?」

 

「あー、それもそうね。さっきは興奮して気付いてなかったけど、ユナって音ゲー中心だった筈でしょ?」

 

このSAOは、今はデスゲームと化してはいるが、ゲームとしてのジャンルはVR、それもMMORPGだ。明らかに音ゲーとは異なるジャンルである。普通ならユナはプレイヤーとしてこのSAOには存在してはいないはずというのが普通だ。

 

「確かにそうだけど、実はエーくんからこのスキルの存在を知らされてね。それがこっちに来る動機だったのよ」

 

「スキル?」

 

「《楽器演奏》と《歌唱》」

 

「……え?」

 

ユナの口から告げられたスキルの存在に、ノゾミがとチカが固まった。

 

「ん?どうしたの?ラグった?」

 

「ゆ……ユナ……そのスキルがあったって…、本当?」

 

「そうだけど?今のも熟練度上げに利用してるのよ」

 

「嘘でしょ……!?」

 

「さっきからどうしたの?」

 

首を傾げて近づいたユナがチカとノゾミから両肩をがっちり掴まれた。

いきなりの事に頭がついていけていないユナに、2人が顔をずいと近付けた。

 

「「なんでそれ教えてくれなかったの!?」」

 

「はぁ!?」

 

「なんでそんな面白そうなスキル使っていたの!?私そんな話聞いてないよ!?」

 

「私もそんなスキルがあったのなら真っ先に所得していましたよ!」

 

「え、あ、いや。私もこのスキル取ったばかりだから……あ、じゃあそのお詫びとして2人にも所得する場所教えるから!ね?」

 

「「是非に!!」」

 

目を爛々と輝かせる2人。この2人は現実でも音楽関係をしていたから、そのスキルに興味を持っているのは無理もないだろう。

半ば呆れたメディとツムギのジト目も2人からすればさほど気にするよう点でもない。

 

 

 

 

25層:ギルドシュタイン

 

 

「「スキル、取ってきましたー!」」

 

「お疲れ様」

 

あれから10分後。ユナの案内で16層から8層で《歌唱》スキルを入手し、そして25層へとやってきた一行。

場所は南国風の街並みからうって変わってファンタジーの大都市となり、大小様々な建物が立ち並ぶ。

 

「で、これって歌えば熟練度が上がるんだよね?」

 

「そういうこと。どうせならこの大都市の広場で試そうと思ってね」

 

「け、けど人が多すぎません……?」

 

チカの言う通り、この25層は現在最前線から最も近い層。当然攻略を目指すプレイヤーの多くがこの地を仮拠点としている。

とはいえ、迷宮のような場所が多数ある園外エリア、毒沼や落とし穴などの幾多のトラップ、一つ下の階層に比べて異様に強い、フィールドボスでもないモンスター。

次の街に行くまでに死者も出るほどの現段階では最難関の階層だ。フロアボスで【アインクラッド解放隊】が潰滅するほどの被害を被ったのは記憶に新しい。

――最も、今回は園外に出るつもりは無いので彼女らにとってはただの大都市なだけなのだが。

 

「んじゃあ、早速熟練度上げにあの広場に行こうか」

 

「……はい?」

 

ノゾミが指すのは右手にある広場。始まりの街と比べれば人は少ないが、最前線に最も近いが故に人だかりも多く、ライブを行うには丁度良いだろう。

早く使いたくてたまらないノゾミとは対照的に、チカは顔を青ざめている。

 

「ま、まさかあそこで……?」

 

「そうだけど?」

 

「むっ、無理です!無理無理無理!!人前で歌を披露なんて私やったこと無いですよ!?楽器演奏ならまだしも、いきなりあの人だかりはハードルが高すぎます!!」

 

「そう?じゃあユナ、久しぶりに一緒に歌う?」

 

「――いいですとも!」

 

人だかりに怖気づいたチカに代わり、どや顔でノゾミの提案に応じるユナ。

早速石造りのステージの上に立つ。何事かと

突然始まったゲリラライブに道を行くプレイヤーは足を止める。ユナとノゾミ、2人の歌に惹かれて次第に観客も集まってくる。

 

「やれやれ。あの2人、生粋の歌好きですね」

 

「うぅ……彼女らの大胆さが少し羨ましい……」

 

「まぁそこはゆっくり治していくしかないよ」

 

突然のライブを観客に交じって2人の歌を聞くチカ、ツムギ、メディ。

チカも混ざりたいように唸り声をあげる。そんな表情をするチカを尻目に周囲に目を向けた。

 

「あれ?」

 

「どうかしました?」

 

「なんですか?あの石板」

 

ふと周囲に目をやった時にツムギの目に映ったのは、広場をぐるりと囲うように立つ石板だった。

観客の邪魔にならないようにその場所に行く。

 

「これは……」

 

石板はどれも高さ10メートルはある。上部分には刀、剣と盾、細剣とSAOに存在する武器のシルエットが刻まれている。

下部分には文字が刻まれている。それらがぐるりと、10枚の石板が通路を挟む様に立てられている。

 

「何かの暗号、でしょうか?」

 

「一応文字は読めるみたいですね。いくつか読んでみましょうか」

 

 

 

 

――その剣を持つ者、秒と秒の間に住まう怪物と呼ばれし者。

――迫る殺意に誰よりも早く察し、両の手に宿した刃をもって、迫る殺意を切り裂き、道を切り開く。

――浮遊上の頂上にて、全ての神を討ち倒す英雄とならん。

 

 

 

――その剣を持つ者、神に選ばれし者だけが齎される祝福。

――聖なる剣と、守護の盾を携え、強大な殺意を己が身一つで民を守り抜く。

 

 

 

――その剣を持つ者、曲刀の煌めきを躍らせる者。

――五線譜の流れに身を任せるかの如く舞踏の刃を振るい、流水の如く刃を躍らせて敵を切り裂かん。

 

 

 

――その軽やかな身のこなしは猿の如し。その爪牙は猛虎の如し。その剛力は猛熊の如し。

――獣の力をその身に宿し、双爪を煌めかせる者よ。獲物の喉を食い破れ。荒野を駆けその爪牙で獲物を引き裂け。

 

 

 

 

「……なんでしょうか、これ?」

 

「さぁ……?」

 

だが、石板の文字は読めたのだが、まるで意味が解らない。

25層の攻略のヒント、というには既にクリアしてあるのでありえない。隠しアイテムの存在を匂わせるものか、それとも……。

 

「でも、100層に関係があるっていうのは確かかもしれないね。ほら、ここ見て」

 

「ひょっとして、あの片手剣が交差してる石板ですか?」

 

「うん。これだけ“浮遊城の頂上”ってあるでしょ?多分これ、100層のダンジョンを指してるんだと思うの」

 

メディでも推測できたのはそこの一文だけだった。

まだ75層もあるというのにここでなぜこんな情報が公開されるのか?

未だに疑問が残る中、その思考は2人の乱入で中断せざるを得なかった。

 

「あー楽しかったー!」

 

ライブを終えたノゾミとユナが合流してきた。その顔は想像以上に清々しい。

 

「いやー、最後に一緒に歌ったのはいつだったっけ?」

 

「よく覚えてないよ。けど、一緒に歌えて楽しかったわ!」

 

どちらも肩で息をしているが、疲弊は感じられない。それどころか傍から見ても分かるほどに爽快感で満ち溢れている。

やがて呼吸を整えたノゾミは一言、隣で共に歌った少女に告げる。

 

「よし、決めた。ユナ」

 

疑問符を浮かべるような表情を向けるユナに対して、ノゾミは右手をすっと差し出した。

 

「入ろう、私達のギルドに」

 

何の迷いの無い勧誘。自分の幼馴染と共に、攻略組の支援をしていこうという決意。

だからこそノゾミは、この選択が間違いだとは思っていない。それ故に――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!」

 

――ユナの拒否の言葉に撃沈した。

 

「ど、どういうこと!?」

 

「……あれ?何かタグ付いてますよ?」

 

「え?」

 

ここでギルドの説明をしておこう。といってもこっちは某サイトで得たにわか知識程度でしかないが。

ギルドを結成するには前話にも登場した【約定のスクロール】を、3層のギルド結成クエストをクリアして入手するというもの。その際のパーティリーダーがギルドマスターになる。

【約定のスクロール】によってギルドマスターになったプレイヤーは【ギルドリーダーの印章(シギル)】という指輪を持つ。また、【約定のスクロール】は1人だけ、サブリーダー権限を持つ1人のプレイヤーが操作可能だ。

このギルドマスターの役割を与えられたプレイヤーは、ギルド名やプレイヤーの加入、会計の操作、上納金の設定が可能となる。カラー・カーソルに表示されるギルドタグも設定が可能だ。今まで脚注はしていなかったが、ノゾミ達【ゴスペル・メルクリウス】もタグが設定されており、「鹿の頭と金貨」の紋章がギルドタグとして設定してある。

見ればユナにも、HPを表す曲線のバーの上に「白地に赤い十字」のギルドタグが表示されている。それはつまり……。

 

「私、実はエーくんと一緒に【血盟騎士団】っていうギルドに入ってるのよ」

 

えへへ、と悪戯っぽい笑顔を浮かべるユナ。

 

更に補足をするとプレイヤーはギルドに所属することは可能だが、その分双方からの上納金を払わなければならない。

例えば仮にプレイヤーAが【ゴスペル・メルクリウス】と【血盟騎士団】の双方に所属していたとする。

【ゴスペル・メルクリウス】の上納金が100コル。

【血盟騎士団】の上納金が150コルとする。

片方に所属しているプレイヤーはギルドにそれぞれの上納金を払うだけで済むのだが、双方に所属しているプレイヤーは双方の上納金、この場合は合計250コルをそれぞれのギルドに納めなければならないのだ。

それ故にギルドの掛け持ちはプレイヤー同士のHPを全損させること――いわゆるPK行為と同様に、暗黙の了解として進んで行う者はいなくなっていった。

 

「そっか~……入ったら面白くなると思ってたのに……」

 

「ごめんね。先に団長……うちのギルマスが先に勧誘してきたから」

 

「……仕方ありませんね。《歌唱》のスキルも手に入れたことだし、勧誘は無しにしましょう」

 

「そのスキルを使いこなす為にも、毎日歌を歌っておかないとね?」

 

「よ、余計なお世話ですってば!」

 

ユナのからかいにどっと笑いが噴き出した。

 

「でも良かった。あんなことがあって不安だったけど、ノゾミは相変わらずだった見たい。それじゃあ私、これからギルドのみんなの所に戻るから、フレンド登録しとこうか」

 

戻る前に、ユナは一行とフレンド登録をする。全員のフレンド登録を終えるとすぐに通路の先へと走って行く。

ふと足を止めると振り返り、ユナは一行に――ノゾミに向けて声を張り上げた。

 

「ノゾミ!貴女のその迷わず行動するところ、私好きだよ!」

 

 

 

 

一行と別れ、【血盟騎士団】の集合地へと足早に向かうユナ。その集合地は26層の広場前。

広場に集まっているプレイヤー達は、先のフロアボス攻略ですっかり意気消沈気味だ。

 

「遅かったじゃない。どこで道草食ってたの?」

 

ユナが到着すると、赤と白の装いという、3層で見かけた時とはうって変わって人目を引くような姿のアスナが声をかける。

 

「申し訳ありません。現実での幼馴染に会って来たんだ」

 

「幼馴染?ひょっとして桜井と?」

 

ユナに質問を投げかけたプレイヤー、ユナ命名の「エーくん」ことプレイヤー名《Nautilus》に、ユナはうなずいた。

 

「まぁいいわ。さぁ、行くよ」

 

すたすたと、赤い鎧の男性の後を追いつつ、赤と白のカラーで構成されたカスタム装備を纏ったプレイヤー達が集団となって広場に現れる。

いきなり広場に現れた集団に暗い顔をしていた攻略組メンバーは、揃って目を丸くして一行をまじまじと見つめる。

 

「アスナ君」

 

「はい?」

 

「君が先頭に立ちたまえ」

 

「ちょっ、団長!?」

 

団長と呼ばれたプレイヤーの提案に隣にいたアスナがギョッと彼のほうに顔を向ける。

 

「君が先頭に立ったほうがより大きな効果が期待できる」

 

さらっと、真顔でそんなことを言い出した。

呆れたアスナが思わず顔に手を当てるが、やがて折れたアスナが改めて団長から一歩前に、集団の戦闘に出る。

 

「ここから先、我々【血盟騎士団】が攻略に加わります」

 

「なっ、なんだお前達は!?」

 

プレイヤーの一人が思わず立ち上がって叫ぶ。

 

「我々の目的は、限りなく犠牲をゼロに抑え、かつ迅速な攻略を行うことだ」

 

続けて鎧の男性プレイヤーが続けて前に出る。

 

「で、できるのかよ!?」

 

ある種、トンデモ発言とも呼べるその宣言に別のプレイヤーが信じられないといった様子で聞き返す。

1層ではリーダーたるティアベルの死、25層【アインクラッド解放隊】の半壊という大きすぎる犠牲を払ったのだ。それをこれから限りなく犠牲を出さずに攻略していくなんて、彼らからすれば夢物語である。

 

「それは我々が保障しよう。これから先の犠牲は、我々が限りなく抑えて見せるさ」

 

アスナとはまた異なる女性プレイヤーが前に出て言い切った。それでもまだ、一部のプレイヤーは未だに信じられないと言った表情を浮かべて集団を見ている。

その宣告にも関わらず鎧の男性プレイヤー、《Heathcliff》は高らかに宣言した。

 

「一刻も早い帰還を願い我々も戦う。諸君も、我々に力を貸してほしい。すべては解放の日の為に!」

 

ヒースクリフの宣言の後、周囲は水を打ったように静まり返った。

だが、次第に客席から集団、【血盟騎士団】へと拍手が飛んでくる。

拍手から歓声へと変わっていく。

 

これから後に、アインクラッド第75層まで彼らを中心とした攻略が開始される。

その騎士たちの始まりの瞬間が、今まさにこの時だった――。




次 回 予 告


ツムギ「ウィスタリアさんの提案で、中小ギルドの合同会を兼ねたダンジョン探索が行うことになりました」

ツムギ「【月夜の黒猫団】、【レジェンド・ブレイブス】との3ギルド合同でのダンジョン攻略です」

ツムギ「なんか、意外な人も交じってるそうですよ?」

ツムギ「次回、【ギルド合同ダンジョン攻略~迷宮迷走協奏曲~】」

ツムギ「あ、ちなみに私は出ませんからね?」





了読ありがとうございました。感想をお願いします。

( ・大・)<……よく考えたら文章の最初の空白があると、皆さん読みやすいですか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。