時雨家は代々鬼狩りを生業としそれは初代から連面と続いている、時雨家の長男は九歳になると同時に鬼狩りになる為の修行が開始される。
そして剣術の基礎を会得した後に、家に隠されている日輪刀別名色変わりの刀を持ち変わった場合はその呼吸の適正に合わせて育手の元へと送られる。
時雨家当代長男、時雨滝美もまた九歳になり今日より祖父瀧に剣術の手ほどきを受ける。
「ふぅお前も九歳か………………はやいのぅ」
と瀧は何やら感慨に老けている。
「お爺さん感慨に吹けるのはいいですが、早く始めましょ」
「あぁそうだのぅ、て言うかお前って大きくなるにつれて何か女の子っぽくねぇか?」
「?おっしゃる意味が分かりません」
「儂の気にし過ぎか良しでは先ずは刀の握りから入るとするかな」
そこからは瀧に徹底的に剣術の基礎を仕込まれた瀧は、鬼狩り時代は風の呼吸を使い甲迄上り詰めたらしい。滝美は柱と呼ばれる甲よりも上の階級がある事を以前父から聞いていたので瀧に質問したが。
「儂では柱にはなれん、我ら一族で柱になったのは初代だけじゃ」
「初代……………」
修行に入りしばらくたち滝美は庭で一息付いていたら母である凛華が声をかけてきた。
「頑張ってるわね滝美」
「母さん」
「貴方は日に日に私に似て可愛くなっていくわね、間違っても男を好きになれないでね」
「母さん迄お爺さんみたいな事言うんだね何か俺山降りたくなくなってきたよ」
「あらお爺ちゃんも?今度ゆっくり対策を練るとしましょうかね」
とぶつぶつと言いながら凛華は屋敷に戻ろうとするが。
「滝美今日はお父さんの命日だからちゃんと挨拶するのよ?」
「わかってるよ、母さん」
父さんは五年前に任務の途中で無くなっている、何でも柱と共に闘い柱に勝たせる為に捨て身で鬼の動きを封じたとか。
他の誰かの為に、仲間の為に命を賭けて闘う俺はそんな父を誇りに思っている。
「滝美休憩は終わりじゃ今から深夜まで打ち込み稽古じゃ」
「お願いします!」
瀧の一声で現実に戻り、再び滝美は汗を流す。
瀧は滝美の才に驚いていた、自身の息子が滝美と同じ歳の時と比べて見ても明らかに滝美の方が遥かに強いこの子が将来どんな剣士になるか楽しみで仕方なかった祖父であった。
修行を始めて一年が過ぎ今日俺は始めて日輪刀を触る、何故家に日輪刀があるかを瀧に聞いたがそれは秘密だと教えてくれなかった。
瀧と滝美そして凛華の三人は今、日輪刀を静かに見つめている。
「良いか滝美よ、この刀を手に取れそうすればお前に適正のある呼吸が分かる」
「いよいよ滝美の適正が分かるのね」
凛華はやけにソワソワしているよっぽど息子の刀の色が気になるのだろう。
「では手に取ります」
滝美が日輪刀を手に取ると刀身がその場から消えてしまった。
「あれ?」
「滝美の刀身が無くなっちゃった」
「……………………………………………………………」
滝美と凛華は驚いているが瀧は滝美の刀を見つめて涙を流していた、それに二人が気が付きあたふたしている。
瀧は滝美の刀の色は青色に変わると思っていたが滝美の刀身は。
「いやすまんの滝美、凛華や思わず泣いてしまった漸く現れたのじゃな」
その瀧の話しを聞き頸を傾げる、滝美と凛華。
「お主等には話していない事がある、時雨家にもな全集中の呼吸があるんじゃよ代々受け継がれて来た……………な」
滝美と凛華は静かに瀧の話しを聞いている。
「じゃがその呼吸を会得するには完全な適正が無いと会得する事は出来ない、そう雨の呼吸に適正する日輪刀はな透明な刀身なんじゃ初代時雨家当主雨竜の刀も透明じゃったらしい」
「透明そうかだから俺の日輪刀は刀身が無いように見えるのか!」
「流石は私とあの人の息子ね!」
「ではお爺ちゃん俺はどうすればいいですか?」
と時雨が瀧に質問すると、瀧は押し入れから一つの箱を取り出して来た。
「此処にな雨竜が残した指南書がある、もし透明な刀身を持つ子が産まれたならその子に託す様代々言われて来ているこれをお主に託す」
「お爺ちゃん……………………」
「儂はその指南書を見る事は出来んのでな後は時雨、お前一人でやれいいな?」
「はい!」
「そして自分自身で手応えを感じたらなら儂に言え、最終選別へ行ってもいいか見極める」
「わかりました!」
そしてその日以降時雨は、山に籠もり一人指南書を読みながら鍛錬をし時雨は十二才になっていた。
瀧が凛華と二人で縁側でお茶を啜っていたら二人も目を引く様な美少女が現れたが二人はそれが時雨だと遅れて気が付く。
「時雨!たまには帰って来なさい心配するでしょ?男の人には襲われなかった?」
「大丈夫だよ母さん俺は山に籠もってたし、それに今日家に来たのも」
と時雨が瀧に視線を向けると瀧は木刀を手に持ち立ち上がる。
「なる程自信があると言う事か、柱には届かなかった儂じゃがまだまだ時雨お前には負ける気がせんがな、凛華頼む」
時雨と瀧は距離を取り見つめ合う、凛華は二人の丁度中心に立ち手を上げる。
「始め!」
二人はその場から消える。
「風の呼吸、伍ノ型、木枯らし颪」
瀧は一瞬で時雨の頭上を取り落下の力を利用しながら突きを放つが時雨はその場から消えてしまう。
(何と!、儂が姿を見失うだと?)
「雨の呼吸、霧雨・舞踏」
時雨は木刀の切っ先を後ろから瀧に向かってちょこんと触れる程度の力で押す。
「ふー、まさかこれ程とはな流石は雨の呼吸いや儂の孫じゃな」
「何か照れるから辞めてお爺ちゃん」
「きゃあああああああ!流石は時雨!格好いい!」
「母さんもそんなに頭を撫でないでよ、恥ずかしいよ」
その後は、三人でゆっくりご飯を食べ漸く最終選別当日の朝を迎える。凛華は息子の無事を祈る為にめちゃんこ丁寧に化粧をし何故か女物の着物を着せた。
「どう?時雨この格好でも動きやすい?」
「ねぇ母さんこれって物女じゃない?大丈夫?」
「大丈夫!似合ってるわ!ねぇお爺ちゃん?」
「似合っとるぞ時雨!だが忘れるなお前は男だからな!」
「わかってるよ!そんくらい!じゃ俺は行くから!」
こうして時雨は最終選別のある藤襲山へと旅立つのであった。
時雨の母は実は女の子も欲しかった、だが産まれた時雨は女の子の様にかわいいかったから時雨を女装させればいいと考えたらしい。