自分はかつて主人公だった   作:定道

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15話 ドッジボール?えげつねェな……

 おかしいぞ?僕は何をしているんだ?

 

「よーし、行くぞ!!アニキ!!ガラル魂を見せてやるぞ!!」

 

「ああ、その通りだホップ!!レッツ・ガラルドッジボールタイムだ!!」

 

「おー!」

 

「お、おー!」

 

「はいはい、おー」

 

 向こうのチームは良いな、チームワークが良さそうで。

 

 チャンピオンにジムチャレンジャーが3人、さらに博士の助手も入れてバランスもいい。

 

「じ、じゃあ僕達も、頑張りましょうか?ジョウト・カントー魂を……」

 

「はあ?俺様はジョウト魂なんてねーよ」

 

「フフ、ユーリ君。実はボクもジョウト出身ではありません」

 

「………うん」

 

「………」

 

 グリーンさん、あんたがこのチーム分けにしようって言った癖に……そして、あなたはわざわざカミングアウトする必要があるのか?レッドさんについてはもう諦めよう。

 

 そして4人目の味方は完全に沈黙を保っている、僕はそれに何も言えない。

 

 自分の顔がプリントされたボールを真剣な表情で構えるダンデさん、それをキャップの奥から鋭い視線で迎えるレッドさん。極めてシュールな光景だ、現実感がない。

 

 僕はモンスターボールを投げる練習をしてたはずだ、ホップ達と一緒に。

 

 それが何故?ガラル対ジョウト・カントー連合の国際ドッジボール対決になるんだ?ここはグリードアイランドか?

 

 

 

 

 

 

 レッドさんとグリーンさんが僕の前に現われ、僕がしばらく我を失っていると、次なる刺客がネイティオと共に空から舞い降りた。

 

「あっ!?仮面の人だ!?」

 

「やあユーリ君、久しぶりですね。ボクも混ぜてくれませんか?」

 

 何でこの人達は空からやってくるんだ?しかも自力で浮いて来てさあ、歩いて来いよ、エンジンシティからそんなに離れてないんだからさあ。

 

「ユウリちゃんもしばらくですね、また強くなったようで何よりです」

 

 ユウリにちょっかい出した不審者はこの人か。

 

 かつての僕と同じクラス7の超能力者、未来の四天王であるイツキさんがそこに居た。

 

「へえ、エスパー協会の犬がガラルまで来てたのか。四天王を蹴ってやる事が使い走りか」

 

 四天王を蹴った?

 

「フフ、グリーンさん。貴方こそガラルまでユーリ君を追ってくるなんて、随分と負けず嫌いですね?」

 

「あ?何言ってんだ?俺はそのガキの事なんて気にしてねーよ」

 

「おやおや」

 

 凄いバチバチしてる、他所でやって欲しい。レッドさん止めて……駄目だ、レックス達に興味津々で気付いていない。

 

「キミたち!ケンカは辞めよう!子どもたちの前だ、大人として恥ずかしくない姿を見せよう!」

 

 ダンデさんが二人を嗜める、大人だ。

 

「それに、今からドッジボール・タイムなんだ。キミ達も参加するだろう?」

 

 ええ?ダンデさんそれは、

 

「ああ、参加させてもらうぜ。おい!レッド!こっちに来いよ」

 

 レックス達と握手していたレッドさんがこちらへ歩いて来る。

 

「…うん」

 

 ……はい

 

「これは失礼しました。チャンピオンダンデ、ボクも参加させてください」

 

 ええ?本気なのか?イツキさんがドッジボールするイメージがわかない。超能力は禁止だよ?

 

「折角だからカントーとガラルに分かれて戦おうぜ、親善試合ってヤツだ」

 

 うん?その理屈だともしかして僕は、

 

「そうですね、ジョウトとガラルの交流の架け橋となりましょう」

 

 やばいぞ、せめてこの人達と同じチームは勘弁だ。

 

「待ってください。僕達は9人、奇数です。公平を期すためにもここはじゃんけんで」

 

「おや?ユウリ君、その必要はなさそうですよ」

 

「えッ?」

 

 イツキさんの声に、僕等は皆でイツキさんの視線を追う。

 

 視線の先は、エンジンシティとワイルドエリアを隔てる壁の上。

 

 そこには、人影があった。あのシルエットはまさか!?

 

 黒い影は壁の上から跳び立つ、推定15メートルの高さからこちらへと飛んでくる。

 

 そして着地、僕達の前に物凄い音を立てて。

 

「きゃ!?」

 

「ひゃっ!?」

 

「へぇッ!?」

 

 ユウリとソニアさんのかわいい悲鳴が聞こえる、最後のは僕だ。

 

「私も参加する」

 

 黒い仮面に、黒いバトルアーマーを見に纏った参戦者。

 

 僕の幼馴染のミカンだ!何で壁から跳んで来るの?

 

「み、ミカン?ドッジボールがやりたいんですか?」

 

 確かにミカンはスクールでよく一緒にドッジボールをした、だけど跳んでくるほどやりたいか?

 

「………」

 

 完全に沈黙している、見事なまでに無視されている。

 

 昔は僕の言葉を無視したりはしなかった、むしろ喜んで反応してくれていた。少しからかいたくて、あれをやってと言えば恥ずかしそうにシャキーンを披露してくれた。それが今やこの対応、悲しすぎる。

 

「おやおや、鋼の女王。いきなり跳んできてそれは少し不躾ですよ?」

 

 いや、あんたも人の事は言えない。

 

「私もジョウトの関係者、権利はあるはず」

 

 僕以外にも対応が冷たい、やはりミカンは変わった。やっぱり原因は僕なのか?

 

「OK!これで10人で偶数だ!ガラルとカントー・ジョウト連合に別れて戦おう!!正々堂々勝負だ!!」

 

 ダンデさん、ジョウト・カントー連合でお願いします。

 

 

 

 ドッジボールのルール、勝利条件は相手の内野を全滅させる事。

 

 スタート時に内野は5人、外野にはポケモンが2匹でスタート。

 

 人間はボールを当てられたら外野に移動して、外野で相手にボールを当てれば内野にもどれる。

 

 そして、ポケモンにボールを当てられても外野への移動は起こらない、ポケモンも外野から移動する事もできない。あくまで外野からの人間へのパスのみだ。ポケモンが本気でボールを投げたら洒落にならない可能性がある。それにポケモンを外野に置くのは、内野から人間が全力でボールを投げても大抵はカバーしてくれるからだ。

 

 割とスタンダードなルールだ、ガラルでは大体このルールらしい。アサギシティでも大体同じだった、違うのはポケモンが3匹だったところぐらいだ。

 

 そして、人間とポケモン両者共に超能力使用の禁止。あくまで身体能力のみでの勝負だ。いやいや?ミカンのバトルアーマーは?

 

「み、ミカン?それは脱がないと駄目じゃないかな」

 

 ついでに仮面も取ってくれると嬉しい、久しぶりにミカンの顔が見たい。

 

「このアーマーは身体能力を強化するものではない」

 

「そうか!ならば許可しよう!」

 

 ダンデさんの器の大きさが、今は恨めしい。

 

「よし!外野のポケモンを決めるぞ」

 

「超能力禁止なら、人型に近いポケモンの方がいいよね」

 

 そう言って、ガラルチームはホップのゴリランダーとユウリのエースバーンを外野に選んだ。

 

 しかし、人型のポケモン?僕の手持ちではくまきちだけど、ちょっと身長が足りないかな?

 

「べあーま?」

 

 僕の視線にくまきちは疑問の声で返事をする、かわいいなあ。この混沌な状況での癒やしになる。

 

 ミカンに頼もう、ミカンにはルカリオのオルルいる。僕も久しぶりに会いたい。

 

「ミカン、オルルに外野をお願いできないかな?」

 

「………」

 

 駄目だ、反応がない。

 

「何だ、喧嘩か?しょうがねーな、おいレッド!」

 

 そう言うとレッドさんはポケモンを出す。

 

「うげぇっ!?」

 

 ミュウツーだ、恐るべき超能力を秘めたポケモン。

 

 僕とオーキスが誰にも見せたことがなかった本気の姿で挑んでも勝てなかったポケモン、こっちが奥の手を出したと思ったら向こうも変化した。XでもYでもない謎の変化をするミュウツー、恐ろしい奴だ。まさか一緒にドッジボールをやる事になるとは思わなかったが。

 

 そしてグリーンさんのポケモンは……はぁ!?

 

「み、ミュウツー!?ミュウツーが2匹も!?」

 

 何だ!?影分身か!?それとも幻術なのか!?

 

「うるせーぞユーリ、昔いろいろあったんだよ。はやく始めるぞ」

 

 いろいろで済ませないでほしい……まあレジ達も複数匹いるからありえるのか?

 

「でも、ミュウツーですか?超能力禁止ですよ………ひぃっ!?」

 

 2匹のミュウツーが僕を睨んで来る、圧が強い。プレッシャーを止めてほしい。

 

「こいつ等は超能力を使わなくても、そこらへんのポケモンには負けねーよ」

 

「……うん」

 

「はい……生意気言ってすみませんでした……」

 

「よし皆よ、余はユーリ達の勝利にこのキズナのタズナを賭けるぞ!」

 

 ギャラリーのポケモン達が、レックスを中心に賭け事をしてる。違法賭博だ、そんな大事なものを賭けないでほしい。

 

「なぬ!?ピカチュウ殿はポケモンの笛を賭けるとな?何と!ガラルチームの勝利に?ふむ………受けてたとう」

 

 いいのかなあと、レッドさんを見ると………駄目だ、やっぱり何を考えているのか分からない。

 

 

 

 

 

 

「では、試合を始めよう!!行くぞ!!」

 

 そう言ってダンデさんはボールを勢いよく投げる。

 

 っ速い!!

 

 狙いはレッドさんだ!!レッドさんが捕球体制に入る!!微塵も動揺は見られない!!これは!?

 

 レッドさんは、普通にボールを取り損ねる。

 

「チッ、昔から下手くそだな。速く外野にどいてろレッド!」

 

「……ああ」

 

 心なしか悲しそうなレッドさんは、トボトボと外野に去っていく。迎える2匹のミュウツーがレッドさんを睨んでいる、許してあげて?

 

 転がったボールは再び、向こうチームの手に渡る。

 

 「よし、行くぞ、ユーリ!」

 

 ホップが僕に宣言をしてボールを投げる、これも速い!取れるか!?

 

 僕の前に飛び出たミカンがボールを片手でキャッチする。

 

「あ、ありがとうミカン」

 

 ミカンは返事をしないまま、投球体制に入り、ボールを投げる。

 

 狙いはホップのようだ。かなりの速度でボールがホップへと向かう。

 

「うおっ!?」

 

「ホップ!!」

 

 横から飛び出たユウリがボール蹴ってホップを庇う。真上に飛んだボールをユウリは自分でキャッチする。凄いボールコントロールだ。

 

 ユウリはミカンを見つめる、両者の間に重い空気が流れる。

 

「ミカン、ユウリ、ドッジボールは楽しく……」

 

「行くよ、ラビ!!」

 

 ユウリは自分のエースバーンに声をかけるとボールを蹴った。ボールは勢いよく飛んで行き、それをエースバーンが勢いを殺さずに蹴り返す。

 

 ボールを地面につけない高速のパス回し。速い、速すぎる。僕の目では追えるが、身体は絶対についていかない。仲間はずれで少し寂しそうなホップのゴリランダーだけ見えた。

 

「はぁっ!!」

 

 ユウリのシュートが勢いよくミカンに迫る。

 

「ふっ!」

 

 ミカンはそれを掌底でユウリ目掛けて跳ね返す。

 

「はいっ!!」

 

 それをさらにユウリが回し蹴りでミカンに跳ね返す。

 

「はぁっ!」

 

 ミカンは腕をしなるように振ってそれを返す。

 

 そして続くラリーの応酬、完全に2人の世界だ。僕も他の面々も見守る以外にできない、立ち入る隙がない。

 

 そして2人の力の応酬に、ボールがゆがんでいる。プリントされているダンデさんが苦しそうだ。

 

 そして遂に。

 

「はいっ!?」

 

 ユウリの放った蹴りで、ボールが大きな音を立てて破裂した。

 

「ああ!やっちゃった……」

 

 ごめんホップとユウリが謝っている、ホップはそれを許しているが若干引いてる。少し怖いよな、気持ちはわかるよホップ。

 

「これは……ユウリが最後に触れていたので、外野に移動してくれ」

 

 ダンデさんが冷静に指示を出す、表情は複雑だ。ボールとはいえ自分の顔がボコボコにされたら当然か。

 

「そしてこれからは先は、ボールを投げる動作以外で相手に当てるのは禁止だ!ボールを直接弾いて返すのも禁止にしよう!一度捕球しないと当たった事にする、その方が良いだろう?」

 

「文句はねーよ、それでいこう。しかしボールがなくなっちまったな………仕方ねえな、フーディン!」

 

 エレン達とポケウノしていたグリーンさんのフーディンが迷惑そうにカバンからボールをこちらへとねんりきで飛ばす。

 

「これを使わせてやるよ、同じオフィシャル品だぜ?」

 

 そう言ってグリーンさんが掲げたボールにプリントされていたのは、レッドさんの顔だった。

 

 思わずレッドさんの方を見る、レッドさんは帽子を深く被って表情が見えない。だけど僕にも喜んでいないのは分かる。

 

 しかしあのボールカントーにもあったのか……流行っているのか?もしかして僕のボールも存在してるのか?いかん、恐ろしい想像をしてしまった、そんなはずがない。

 

 その後の試合は平和な展開となった。

 

 ユウリも、表情は分からないがミカンもやり過ぎたと思ったのだろう。その後は普通にドッジボールをしていた。

 

 全体的には、僕とレッドさん、向こうはマサルとソニアさんがチームのお荷物となり。それ以外の面々はハイレベルな攻防を繰り広げた。

 

 意外だったのは、ミカンが僕に取ったボールを渡してくれた事だ。無言でだけど、もしかして嫌われてない?それともこの集まり本来の主旨である僕がボールを投げるのに慣れるという目的を優先してくれたのか?

 

 そして勝敗の行方は、ガラルチームの勝利だ。3試合を行って、ジョウト・カントー連合チームは初戦でしか勝利できなかった。チームの人達が僕に投球の機会を譲ってくれる事が多かったのが敗因かな、それ以外は割と拮抗していたと思う。

 

「なんと!?ユーリよ、負けてしまうとは……余のポケカノロゴ入りキアイのたすきが……」

 

「ピカピカァ!」

 

 レックスがピカチュウにキアイのタスキを渡している、毎試合賭けていたようだ。後で賭け事はしないように言わなきゃな。

 

「いやー盛り上がったね、久しぶりにドッジボールしたけど楽しかったなあ。ねえ?ダンデ君」

 

「ああ、熱い良い勝負になったな、ソニア」

 

 ソニアさんとダンデさんは満足そうだ、僕も最初は不安だったけど途中からは普通に楽しかった。

 

「いやー、やっぱり難しいよね。ドッジボール」

 

「マサル兄さんは昔から苦手だったよね」

 

「ユウリは凄かったぞ、やっぱり運動が得意だな」

 

 運動が得意だってレベルを超えていた気がする、まあホップ達も満足そうだから良しとしよう。

 

「フフ、勝てなくて残念でしたが。貴重な体験でした」

 

 イツキさんはよくわからん、避けるのはやたらうまかった。本人は満足そうなので楽しめたのだろう。

 

「チッ、負けちまったか。カントーに帰ったら特訓するか……」

 

「………うん」

 

 あの2人がドッジボールの練習している風景は、見たいような、見たくないような……しかし負けず嫌いな人達だ。

 

「………」

 

 そしてミカン、誰とも喋らずに佇んでいる。彼女と久しぶりにドッジボールできて僕は楽しかったし、嬉しかった。それを伝えなくては。

 

「ミカン、ドッジボール久しぶりだったね。僕は昔みたいで楽しかったよ」

 

「………」

 

 無視されるのは悲しいけど、伝えなくては始まらない。

 

「やっぱりミカンと一緒だったからかな?ミカンはどうだった?」

 

「私は……」

 

 答えてくれた!?

 

「ミカン?」

 

「私も……楽しかった……」

 

「そうだよね!またやろうよミカン!」

 

 良かった!変わってしまった所があってもミカンも同じ気持ちでいてくれた。

 

「よし、お昼にしよっか。こんなに運動したのは久しぶりだからお腹空いちゃった、あなた達も食べて行きなよ」

 

 カレー作るねと、ソニアさんは鍋の方に向かう。下ごしらえは既にマサルのインテレオンとダンデさんのリザードンが始めている。

 

「ソニアの作るカレーは絶品だ!あなた達も食べていくだろう?」

 

「ああ、ガラルで流行っているキャンプカレー、一度は食べとかないとな」

 

「………うん」

 

「ええ、ご相伴にあずかります」

 

 3人も食べていくつもりだ、ミカンは?

 

「ミカン、カレーも一緒に食べてかない?ソニアさんのカレーは美味しいよ、ごちそうになろうよ?」

 

「………食べていく」

 

 良かった!ミカンもカレーキャンプに参加だ!

 

 カレーを食べるなら黒い仮面は外すだろう!仮面をしたまま食事する奴なんていない!ミカンの顔を見て、一緒にカレーを食べれば仲直りに近づけるだろう。

 

「ミュウツー殿達、カレーはお好きか?余は甘口が好みである」

 

「………ワレハ」

 

 レックス凄いな、よくミュウツーに絡みに行けるな。

 

 まあ、食事を共にするのは友好を深めるのには効果的だ。それに屋外でのキャンプでとなれば効果は倍増する。

 

 予定外が多い1日だが、これはチャンスだ!ピンチをチャンスに変えるのが出来る男だ。

 

 行くぞ、僕がガラルで手に入れた力を今こそ!

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