自分はかつて主人公だった   作:定道

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19話 タマタマ

 ルミナスメイズの森、ここは木漏れ日一つないのに淡い光で溢れている、どこか恐ろしくも美しい神秘的な森だ。

 

「本当ボルかー?本当に何も見えなかったボルかー?」

 

「う、嘘じゃないです、何も見てません」

 

 ルミナスタウンへと続く本道から少し外れた森の片隅で、僕は不審者達に絡まれていた。

 

「おかしいボルねー?あんなに深く潜ったのに何も見えなかったボルかー?」

 

「だ、だから言ってるでしょう、ラテラルタウンでの探知は声を聞く為にやったんですよ。何かを見るためではありません」

 

 そもそも何でこいつ等は、僕の超能力の行使を把握してるんだよ。

 

 そう、こいつ等だ。リーグ非公認のオフィシャル気取りおじさん、意味がわかると怖い系のマスコット、ボールガイ。

 

 僕の周りには、6人のボールガイがいる。薄暗い森の中で淡く照らされるこいつ等の筋肉質なシルエットは普通に恐怖だ。

 

「うーん、でもボスが言うにはあれだけ深く潜れば見るとか聞くとかは些細な違いらしいボルよ?」

 

「ぼ、ボスが?へ、へぇー」

 

 誰だよボスって、知らないよそんなの。深く掘り下げるとこいつ等の親玉が出てきそうなのでツッコムのはやめよう。

 

「うーん、ユーリ選手が嘘を言っている様には見えないボル、やはりボスの勘違いだったボルよ」

 

「ユーリ選手、ごめんボル。引き止めてしまったお詫びにこの特選ボールセットを差し上げるボル」

 

「え、うえっ!?いやっ駄目でしょう!?」

 

 本物のガンテツボールだ、箱にシリアルナンバーが刻まれている。しかも全種類?100万………いや、200万はするぞ?嬉しいとかの感情以前に怖いわ。

 

「受け取ってほしいボル、ボスからも頼まれれているボル」

 

「ボールはトレーナーに使われて始めて完成するボルよ」

 

「僕らモンスターボール友の会は、ボールの素晴らしさの普及活動が本懐ボルよ」

 

「ユーリ選手、応援してるボル。ぜひチャンピオンになってほしいボル」

 

「チャンピオンになったらリーグに口利きしてほしいボルー」

 

 言いたい事を言って、6人のボールガイ達はルミナスメイズの森の奥へと走っていった。来るのも急だったが、去るのもいきなりだ。

 

「ふむ、ユーリよ、余は一度ラブラブボールに入ってみたかったのだ」

 

「え、ええ?このボールは怖いから手を付けないよ?今度会ったら返そう」

 

 タダより怖い物はない。ユウリもボールガイには注意した方がいいって言っていた、彼等がリーグとは無関係だとも教えてくれた。ぱっと見では無害そうなところが恐ろしい。

 

「なんと!ボールガイ殿達の好意を受け取らないと!?」

 

「好意は押し付けちゃ駄目でしょう」

 

 まあそれを抜きにしても高価過ぎる、軽々しく使い捨てられる物じゃない。

 

「ああァァアア!!あのバァーさんはあぁァァァア!!」

 

「ひいっ!?」

 

 何だ!?叫び声!?

 

「ピンク!!ピンク!!ピンク!!!!ピンク!!!ピンカー!!!ピンキストォォォぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「ひえっ………」

 

 姿は見えないが恐ろしい、ルミナスメイズの森怖いよお。

 

「なんと不気味な!?ユーリよ見に行って見るか!?」

 

 ワクワクしちゃ駄目でしょう、レックス。

 

「危ない人には近づかない、トレーナー旅の鉄則だよレックス。早く森を抜けよう」

 

「むう、残念である」

 

 帰りはタクシー使おうかなぁ………

 

 

 

 

 

 森での恐怖体験は終わり、アラベスクタウンに辿り着く。自然と融合した凄い街だが、ルミナスメイズの森と地続きな感じがして今の僕には不安でもある。

 

「ふむふむ、幻想的な街である、実に美しい」

 

「ぴゅー♪」

 

 レックス達はご機嫌そうだが僕はそんな気分ではない、早めにジムチャレンジをクリアしてこの街に長居するのはよそう。

 

 そのままスタジアムに向かい、ジムチャレンジの申請を済ませる。残念ながらジムチャレンジは3日後、しかもその日のチャレンジャーはまたしても僕だけのようだ。

 

 スタジアムで相変わらず子供に絡んでいたボールガイを見つけ、恐る恐るガンテツボールセットを返そうとしたが、覚えがないと断られた。このマスコット共は個体の判別が難しい、全員一緒に見える。これから僕はボールガイを見つける度に声をかけなきゃならんのか……でもどうせ向こうから絡んで来るから同じことなのかな?ははっ……

 

 暗く重い足取りでホテルに向かう、アラベスクタウンは昼夜がわかりにくいがもういい時間だ。森を抜けるのは何だかんだで消耗した、チェックインして食事を取ったら今日は寝よう。

 

 ホテルの部屋の窓からぼんやりと見えるルミナスメイズの森の光が恐ろしく、その日はくまきちとふわふわちゃんを抱きしめて眠った。まあ、レックス達も遅くまでアニメ見てガヤガヤしてるから心細くはなかった。

 

 ジムチャレンジまで空いた日にちは、アラベスクタウンを散策して埋める事にした。この街のジムチャレンジは他の街の様な鬼畜アトラクションを要求しない、ジムトレーナーを勝ち抜きながらクイズに答える形式だ。不正解でも先には進めるらしいので、特別な特訓は特に必要ないと言う事だ。

 

 せっかくなのでホップ達に教えてもらった店を周ってみよう、ユウリは美味しいキノコ料理を出すお店、マサルはリーグカードの専門店、ホップはフェアリータイプポケモンの歴史館があると、それぞれオススメしてくれた。

 

 とりあえず腹ごしらえでユウリのオススメの店に向かった、出されるキノコが全て光っているのに目を瞑れば、確かに美味しい。くまきちはキノコが苦手なのできのみコースを、レックスはキノコ料理を大分気にいった様だ。うーん、レックスのシルエットはキノコに見えない事もないなあ。

 

 食後の休憩を挟んでカードショップに向かう、ガラル地方ジムリーダーのカードは既に揃えていて、会った人のはサインもゲット済みだ、もちろん3枚。ダンデさんのカードも確保済み。

 

 ただ、この前のマサルとレッドさん達のやり取りを見て、収集欲が再燃した。ガラル地方限定のカードがほしい、ダンデさんの別バージョンとか、マスタード師匠の若い頃のとか、後で調べてわかったローズさんの弟のピオニーさんのカードが欲しい。

 

「おお、見よみんな!ユーリのカードだ!髪が黒いしキラキラしておるぞ!?」

 

「うげっ……」

 

 カードショップなら置いてあるか………ちなみにキラキラとはキラ加工だけではなく実際に僕が戦闘中サイコパワーをキラキラさせていたからだ、当時はそれが格好良いと思っていた。カードの中の自分の不敵な笑みに腹が立つ、本当にさあ……調子に乗るなよお前さ……

 

「そうだなふわふわよ、浮いててキラキラで見栄えが良い。ユーリよ?もうこれはやらんのか?」

 

 レックス達が何故か期待するように僕を見てくる、勘弁してください。

 

「ごめん皆、ジムチャレンジでは超能力禁止だから無理だよ」

 

「ふむ、そうか……残念である」

 

 納得してくれたか、僕は地に足付けて生きると決めたのだ。

 

 お目当てのカードはゲット出来た、店長が僕のサインと引き換えに譲渡してくれたのだ。20枚もサインを書かされたが、必要な痛みと我慢する。

 

 

 フェアリータイプポケモンの歴史館、興味深い展示内容が多かった。

 

 カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウにフェアリータイプのポケモンは少ない。ポケモンのタイプは住む土地と密接な関わりがあり、これらの地方にはその土壌が少ないからだ。

 

 ピッピやトゲピーにブルーといったこちらではノーマルタイプだったポケモンが海を渡ったカロス地方ではフェアリータイプとなる事がその証拠だ、ポケモンは周囲の環境に敏感に適応する。

 

 そしてこのガラル地方は、フェアリータイプを育む環境としては最適で、このアラベスクタウン周辺は特にそうだ。

 

 ルミナスメイズの森がポケモンに与える影響、元は外来種だったポケモンがフェアリータイプを得た過程、他の地方とのフェアリータイプポケモンとの相違点などが解りやすく展示されていた。

 

 レックスとふわふわちゃんはあまり興味が無さそうだった、妖精みたいな見た目なのに………逆に他の皆は割と熱心に展示物を見ていた。

 

 他にも色々と散策し、アラベスクタウンを楽しく堪能できた。マスコットはスタジアムにしかいないし、例の叫び声もあれ以来聞こえない。必要以上に怯えていただけだった。

 

 夜にオススメスポットの感想をホップ達に報告すると、皆は口々に会ったら、ビートの様子を教えてくれ、後はよろしくと頑張れを伝えてと言っていた。何でもジムチャレンジーの1人らしく、脱落してポプラさんの元で修行しているらしい。

 

 ジムチャレンジを諦めても、トレーナーとして強くなる事を諦めない、一途な努力家だな、仲良くできたらいいな。

 

 

 

 

 

 そして、ジムチャレンジ当日僕はそのビートと対峙していた。

 

 グレンタウンやミアレシティとは違って戦闘中に飛んでくる理不尽なクイズ攻撃には驚いたが、何とか2人のジムトレーナーを撃破した。

 

 そして現れた3人目のジムトレーナー、それがビートだった。

 

 ホップ達の伝言を伝えようとしたが、僕は言葉を発せなかった。彼が余りにも異様なオーラを発していたからだ。

 

 超能力ではない、彼も超能力者らしく首輪をしていてそれは当然封じられている。

 

 超能力ではなく剥き出しの感情、鬱屈した情念の様な物が、僕に彼のオーラをを幻視させているのだ。

 

 顔を俯かせて僕と対峙していた彼が、ポツリと言葉を発する。

 

「ようやく………ようやく来ましたねユーリ」

 

「は、はい?」

 

 えっ………面識ないよね?前科があるからちょっと自信がない。

 

「アナタはぼくを知らないでしょう、でもぼくはアナタが来るのをずっと待ってましたよ?」

 

「は、はあ?」

 

 何だろう………怖い。場の雰囲気を和ませなくては……

 

「あ、あのービート………くん? ホップとマサルとユウリからよろしくと頑張れって伝えてくれとね?」

 

 ビートの身体がぴくんと揺れた。

 

「よろしく?頑張れ?………………………………ふふふっ」

 

 あっ、これ絶対喜びの笑みじゃない。

 

「頑張れ…………ええ!!頑張りますともォ!!!今ァ!!ここでェ!!アナタを倒すゥ!!!」

 

「ひえっ……」

 

「バアァさんはァ!!!約束しましたァ!!!アナタを倒せばァ!!!ピンクを捨てても良いとおォォォ!!!!」

 

「ぴ、ピンク?」

 

 何だ?何を言っているんだ?

 

「ぼくがピンクに染まる前にぃィ!!!アァナタを倒してぇェェ!!!!僕は僕を取り戻すぅゥゥ!!!!!」

 

 げ、言動が何一つ理解出来ない。

 

「受けてみろぉォ!!!ぼくの力をぉォォ!!!ピィンクの力をぉォォォォ!!!!」

 

 も、もう手遅れそう………

 

「ピィンクぅゥ!!!ピィンカアァァァ!!!!ピィンキィストトぉォォォォォォ!!!!!」

 

「ひえぇ……」

 

 

 

 

 

 怒れるビートのプレッシャーは恐ろしかったが、怒りで指示が単調になっており、動きを予測し避けるのはそう難しくはなかった。普通に勝利する。

 

 僕に負けたビートはその場で崩れ落ち、他のジムトレーナーに引きずられて舞台の奥に消えて行った。

 

 そしてジムリーダーのポプラさんとの戦いも、クイズに苦戦しつつも攻撃を全て避けきり勝利した。ちなみにクイズは全問不正解だった、ポプラさんの初恋の年齢なんて知らないよ。

 

 勝利後、ポプラさんからサインを貰う時に、さっきビートの様子について尋ねると。

 

「教育の最中なんだけど、ちょっとピンクを濃くし過ぎてねぇ。ガス抜きの為に焚き付けたのさ」

 

 やっぱりピンクに近道はないよと呟きつつ、ポプラさんはスタジアムを去っていった。ピンク………ピンクって何?

 

 やっぱりアラベスクタウンは恐ろしい所なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヨロイじま、ヤドンがのびのびと過ごしている良い島だ。訪れるのはマスタードの息子ハイドが4才の時以来だ、はたして何年ぶりか?歳をとると時間の経過に疎くなる。

 

 あの子は才ある子だ。本人が望み、マスタード達が許すのであれば後継者に欲しいと思うほどに、

 

 近年、世間では才ある若者達が、あらゆる分野でどんどんと頭角を現している。素晴らしい事だ。

 

 世界は一つのボールの中にある、我々人間もポケモンも等しくは球の中で暮らす一つの生き物。個にして全、全とは個、若き才能が育まれるのは世界の成長と進化にほかならない。

 

 だが今回この島に来た理由はハイドではない、ガラル地方に置いて監視の目が少ない場所が必要でここに来たのだ。マスタードは快くこの島を提供してくれた。

 

 海岸にそびえ立つ目的の塔に辿り着く、ここが会合の場所だ。

 

 塔を登り、最上階に辿り着く。自分以外の面々はほぼ揃っていた。部屋には10数人の人間が座っており、全員が顔見知りだ、一部をのぞいて。

 

「ああ!ボス!遅いボルよー待ちくたびれたボルー」

 

 この地方を取りまとめる会員が、文句を言ってくる。しかし幾ら言ってもふざけた被りものを脱がん奴だ、優秀な男だかそのこだわりは理解出来ない。

 

「オウッ!!ようやく到着!!重役出勤!!流石モンスターボール友の会の会長!!あっしは脱帽でございやす!!」

 

 相変わらず騒がしい男だ、前に見た時と姿が違う。この男は会うたびに違う姿をしている、共通点は中年男性なところぐらいだ、騒がしい癖に慎重な男だ。

 

「まーまー喧嘩はやめよーよ、みんな揃ったから早速本題に入るよん」

 

 マスタードが取りなす、しかし揃った?

 

「揃った?まだイッシュのデルダマのところが来ておらんやん?」

 

「オウッ!!彼等は欠席!!今イッシュはプラズマ団の残党がモクモク暗躍!!ハイルツリーの守りに専念でございやす!!」

 

 ロケット団と同じでろくでもないない連中だ、壊滅しても残党がワラワラと悪事を企む。ジョウトも最近きな臭い事件が多い。

 

「ゴールデンボールもボスは欠席、ワシちゃんが代理だよん」

 

「さよか、遅れてすまんかった、始めよう」

 

 席に付き、始まりを促す。たまの同盟が全員揃う事の方が珍しい。何時もの事でただの確認作業だ。

 

「じゃあ報告ボルー、ユーリ選手のラテラルタウンで超能力による探知、その際にユーリ選手はたまの境界を認識してないボル。同士たちと6人で実際に聞き取りしたからまちがいないボルー」

 

「目的はポケモンを助ける為だったみたいだねー、無事解決したみたいだよ。ワシちゃんも師匠として鼻が高いよん」

 

「ふんっ」

 

 悪態を付きつつも、思わず顔がにやける。あの小僧はクソ生意気だが性根は優しい子供だ。ヒワダタウンに来た時も迷子のヤドンを見つけてくれた、そのあとボールを作れと要求してはきたが。

 

 敗北を知り、変わったと聞いて不安だった。あれ程の才を持つ子が道を踏み外した時、世界に、ボールにヒビをいれてしまうのではないか、それどころか境界すら壊してしまうのではないか懸念していた。

 

 杞憂だった、やはりマスタードが教え導いたのも良かったのだろう、性根は変わらず、力を悪事に使ったりはしていない様だ。問題があるとすれば………

 

「オウッ!!それは安心!!同時に残念!!マイブラザーは相も変わらずシクシク喪失、自身を喪失でございやす」

 

 そう、敗北はあの小僧に必要以上の謙虚さを与えてしまった。うぬぼれとは肥大しても駄目だが全く持ち合わせないのも健全ではない。適度なうぬぼれとは才能でもあるのだ。

 

「ユーリちんは真面目な子だからね、一度失敗した事を二度と犯さないように慎重になってる、あの子の良い所でもあるし悪い所でもあるね」

 

 報告をみるとそれがわかる、あの小僧は意識的にも無意識にも自分の力をセーブする様になった。

 

 それは本来成長と呼ばれるものだ、子供が現実を知り大人になる過程で覚える自重のさじ加減。それを身を持って学んでいるのだ。誰しもがそれを経てゆっくり大人になっていく。

 

 だが、小僧の場合は違う、周囲がそれを許さない。自重が、謙虚さが力に群がる愚か者たちへの隙になってしまう。腹立たしい現実がある。

 

 そして自身も結局は群がる愚か者の1人だ。

 

 自身の作ったボールを間接的に渡そうなど、自信の罪悪感を解消する行為に他ならない。結局自分はこの年になっても正しい大人ではないのかもしれない。

 

「みんな同じだ、おぬしだけではない。ワシらは皆それを自覚している、だからそんな顔をするな」

 

 マスタードの声にようやく気づく、自分はどうやら随分と情けない面をしていたらしい。

 

「特に子供達の前ではそんな顔をしてはならん、大人達の不安を彼等は敏感に感じ取る」

 

「わかっとるわい、子育てに関してはわしが先輩やぞ」

 

 気合を入れ直す、自分らしくもない。

 

「フハハ、そうだな。それにお前はそれをさせない為の物を作って来たんだろう?」

 

 当たり前だ、世界を小僧なんかに託せるか。何にも知らずにガラルを旅してジョウトへと帰る、あの小僧はそれでいい。

 

「たまの外から来たGSボール、それをわしが解析して作ったEXボールや、このガンテツ魂の逸品や」

 

 たまの外、つまりこの世界の外から時間を超えてやって来たGSボール。このボールなら外から来たポケモンへもトレーナーの想いを伝える事ができる。

 

「おおー!!感激ボル!!ボスが作る新たなモンスターボールを拝めたボルー!!」

 

「オウッ!!それで解決!!ムゲンダイナをサクサク捕獲!!そして奴らの野望は霧散でございやす!!」

 

 そうだ、その予定だった。しかし………続けて3つのボールを取り出す。

 

「ボル!?ボスはEXボールを4つも作ったボルか!?予備まで作る何て用意周到ボル!!」

 

 違う、軽々しく予備がつくれる物ではない。特殊なぼんぐりにきんのはっぱにぎんのはっぱ、加えて膨大なOPを作成には必要とする。

 

「ガンテツ、おぬしの顔はそれを予備のボールではないと言っている。一体何を予見した?」

 

「シルフカンパニーでこのボールを作る時にヤマブキシティのジムリーダーが訪ねてきたんや。1つでは足りない、最低でも4つは必要やとぬかしおった」

 

「ぬぅ、ヤマブキシティのジムリーダーが」

 

「オウッ!!ヤマブキシティのナツメ!!ヨチヨチ未来を予知するエスパーレディ!!その忠告を無視するのは危険でございやす!!」

 

 その通りだ、シルフカンパニーの社長もそれを理解しているからかなり骨を折ってくれた、だからこそ4つ。無理を押して作れた。

 

「このEXボールは普通のボールとはちゃう、リミッターなんて付ける余裕はあらへん、1人のトレーナーが投げるのは1回が限界や。もちろん並のトレーナーじゃアカン」

 

 つまり予知を信じるなら予定にあったチャンピオンダンデ以外にも3人のトレーナーが必要になる。チャンピオン級のトレーナーだ。

 

 マスタードもかつてはその資格があっただろうが、流石に高齢過ぎる。OPの量は加齢と共に減少するものだ、いくらポケモンバトルが強くてもその摂理には逆らえない。

 

「幸いわしはレッドとグリーンに伝手がある、ただそれを勘定に入れても1人足らへん」

 

 あの2人はリーグ関係者でもあるが、個人としては信用できるトレーナーだ。性格的にも危機となれば協力してくれるだろう。

 

「なるほど、ワシの方でも伝手を当たっておく。みなも頼むぞ」

 

「オウッ!!ガッテン承知でございやす!!マイブラザー達とのキズナの輪!!バリバリ披露でございやす!!」

 

「僕達も探すボル!!しかしボス?ムゲンダイナ以外に3つもボールが必要になるなんて一体何が起こるボル?」

 

「あほぅ!!わしが聞きたいわ!!ガラルの事はお前たちの方が詳しいやろ!!」

 

「ぼ、ボルー!」

 

 思わずため息が漏れる、不吉な予感に胸がザワつく。

 

 もしかして小僧にボールを使わせるはめになってしまうのか?

 

 あるいは、最悪のケース。

 

 小僧にEXボールを使う事態に陥るのか?

 

 わからない、未来なんて誰にもわからないのだ。人もポケモンも超能力者であろうとも予知はできても確定した未来を見通すことなど。

 

 枝分かれる未来から一つを見出して、現実とする。

 

 それは未来を確定させる所業に他ならない。それが出来る存在、そんな者がいたらそれは……

 

 それはきっと、カミと呼ばれる者だろう。

 

 


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